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概日リズム睡眠障害

執筆者:

Karl Doghramji

, MD, Jefferson Sleep Disorders Center, Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2016年 2月
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概日リズム睡眠障害は、体内の睡眠-覚醒リズム(体内時計)が地球の明暗(昼夜)サイクルと一致していないときに起こります。

  • 時差ぼけや交代勤務は、通常の睡眠-覚醒リズムを乱すことがよくあります。

  • 概日リズム睡眠障害があると、必要なときや望むときに目を覚ましたり眠ったりすることができません。

  • 診断は症状に基づいて下されますが、睡眠日誌の記録や睡眠検査室での検査結果が用いられることもあります。

  • 適切な睡眠習慣と、明るい光を浴びることは、睡眠-覚醒リズムを再調整するのに役立ちます。

概日(circadian)とは、「おおむね(circa)一日(dies)」という意味です。概日リズムとは、約24時間の周期で起こる精神的・身体的状態の規則的な変化のことであり、これをその人の体内時計と呼びます。このリズムは、光により影響を受ける脳領域(概日ペースメーカーと呼ばれます)によって制御されています。光が眼に入ると、眼の後部(網膜)にある細胞が刺激され、信号が神経を伝わって、この脳領域に届きます。この信号は、睡眠を促進するホルモンであるメラトニンの分泌を止めるように脳を刺激します。

人によって就寝時刻と起床時刻がまちまちなのは、正常なことです。早寝早起きが好きなヒバリのような人もいれば、就寝時刻も起床時刻も遅いフクロウのような人もいます。そのような違いがあっても、次のようなことができるのであれば、病気とは判断されません。

  • 午前中に用事があるときは起きることができる。前日の夜、起床時刻までに十分な睡眠がとれるような時刻に寝ることができる。

  • しようと思えば、毎日同じ時刻に寝て起きることができる。

  • 就寝時刻や起床時刻を変えたとき、2~3日以内に慣れることができる。

概日リズム睡眠障害があると、不適切な時間帯に眠ってしまい、必要な時刻や望む時刻に就寝したり起床したりできません。睡眠-覚醒リズムが崩れているのです。

原因

概日リズム睡眠障害の原因は、内的なものであることもあれば、外的なものであることもあります。

内的な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 脳の損傷(脳の感染症[脳炎]、脳卒中、頭部外傷、アルツハイマー病など)

  • 昼夜の周期に対する感受性の低下

外的な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 時差ぼけ(特に西から東に移動した場合)

  • 常に不規則な交代勤務

  • 就寝時刻と起床時刻が頻繁に変わる生活

  • 長期間の寝たきり生活

  • 盲目あるいは日光を長期間浴びない生活

  • 特定の薬剤の使用

睡眠-覚醒リズムの逆転は、入院中の人によくみられます。入院中の患者は夜中に目を覚ますことが多く、眼に日光があたる時間も十分でないためです。

概日リズム障害には、以下のようにいくつかのタイプがあります。

時差ぼけは、短時間で複数のタイムゾーンを越えて移動すると起こります。

交代勤務障害は、以下の要因に応じて重症度が変わります。

  • 交代勤務のシフトが変わる頻度

  • シフトが変わる場合、どの程度時間がずれるか

  • シフトが変わる場合、就寝時刻と起床時刻は早くなるか遅くなるか

  • 夜間に連続で何日働かなければならないか

  • シフトの長さ

望ましいのは、常に夜間勤務か夕方勤務をして、休日も就寝時刻と起床時刻を変えないことです。しかし、そのようにしても、昼間の騒音と光が睡眠の妨げになることがあります。また、休日に社会行事や家族行事に参加するため、睡眠時間が短くなって眠る時間帯も変わることが少なくありません。

睡眠相後退症候群では、就寝時刻と起床時刻が常に遅くなります(例えば、午前3時に寝て、午前10時以降、遅い場合は午後1時に起きるなど)。この症候群は青年や若い成人に多くみられます。この症候群の人は、早く寝ようと思っても寝ることができません。

睡眠相前進症候群では、入眠時刻と覚醒時刻が常に早くなり、このパターンを変えることができません。高齢者により多くみられます。この症候群の人は、遅くまで起きていようと思っても起きていることができません。

非24時間睡眠覚醒症候群では、睡眠-覚醒リズムが毎日変化します。睡眠-覚醒サイクルの長さは変わりませんが、24時間以上あります。そのため、就寝時刻と起床時刻が、毎日1~2時間ほど遅くなります。この症候群ははるかに少なく、眼が見えない人で起こる傾向があります。

症状

必要なときに眠ることができないため、昼間に眠くなり、意識の集中、明瞭な思考、日常活動などが困難になります。眠ろうとしたり、逆に起きていようとしたりして、アルコール、睡眠薬、刺激物などを乱用することがあります。

タイムゾーンを越える旅行が多かったり仕事のシフトが頻繁に変更されたりして、睡眠スケジュールが頻繁に変わると、概日リズム睡眠障害の症状が悪化することがあります。就寝時刻は早くするより遅くする方が容易なので、就寝・起床時刻が早くなった場合(睡眠周期が前にずれた場合)にも症状が悪化します。東の方に飛行機で旅行した場合や、仕事のシフトが昼間~夜間~夕方のパターンで変わる場合に、睡眠周期は前にずれます。

外的な原因による場合は、体温やホルモンの分泌など、その他の概日体内リズムのタイミングが影響を受けます。そのため、眠くなる以外にも、心身の不調、いらだち、吐き気、抑うつなどがみられることがあります。心疾患や代謝性疾患のリスクも高まります。

概日リズムを乱す原因が是正されれば、数日ほどでリズムが再調整されて症状が解消します。ただし高齢者の場合は、2~3週間から数カ月かかることもあります。

診断

  • 医師による評価

この病気は症状から疑われます。通常、睡眠日誌をつけ、就寝時刻と起床時刻を1~2週間ほど記録するよう指示されます。睡眠検査室での検査が必要になることはめったにありません。

治療

  • 行動の修正

  • 睡眠薬や脳を刺激する薬剤

適切な睡眠習慣を身につけることが有用です。

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睡眠を改善するための行動修正

行動

方法

規則的な睡眠-覚醒リズムを作る

毎晩同じ時刻に床につく。さらに重要なのは、休日や休暇中も含めて、毎朝同じ時刻に起きる。ベッドの上で過ごす時間が長くならないようにする。

就寝前の日課を作る

ゆっくり歩く、くつろぐ音楽を聞く、歯を磨く、顔を洗う、目覚まし時計をセットするなど、就寝前の活動パターンを決めると、眠る気分が整う。自宅でも外出先でも、毎晩このパターンを守る。その一環として、就寝前には明るい光を避けるようにする。

眠りやすい環境を整える

寝室は暗く静かで、暑すぎず寒すぎないようにしておく。騒音があると、たとえ目が覚めなくても睡眠が乱される。耳栓をする、ホワイトノイズ発生器やシーリングファンを使う、寝室に厚手のカーテンを掛けて屋外の雑音と光を遮断するなどの方法が役立つ。日中、完全に暗くできない部屋で眠らなければならない人には、アイマスクが役立つ。夜中に目が覚めてしまった場合は、明るい光を避ける。

枕を使用する

膝の間や腰の下に枕を挟むと、より快適に眠れるという人もいる。背中が痛む人は、膝の間に大きな枕を挟んで横向きに寝るか、膝の下に大きな枕を置いてあお向けに寝ると楽になる場合がある。

寝室は主に寝るためだけに使用する

寝室は睡眠と性行為のためだけに使用する。寝室では、食事、読書、テレビを見る、請求書の処理をするなど、目がさえるような行為をしないようにする。

起きる

20分経っても寝つけないときは、ベッドに横になってなんとか眠ろうとするより、起きて別の部屋で何か他のことをして、眠くなったら寝室に戻ってくる方が効果的である。

定期的に運動する

運動をすることは自然な入眠に役立つ。しかし、就寝前5時間以内に運動をすると、心臓と脳が刺激されて、逆に目がさえてしまう場合もある。

リラックスする

ストレスや心配事は睡眠を妨げる。就寝時刻になっても眠くならないときは、温かい風呂に入ったり、本を読んだりするとリラックスできる。リラクゼーション法として、視覚的イメージ、段階的筋弛緩法、呼吸訓練などもある。ストレスや心配事を寝室に持ち込まないように意識することや、就寝時間帯に悩まなくて済むよう、心配事について考える「心配タイム」を日中に設けるという方法もある。

就寝前は刺激的な活動を避ける

就寝前の約1時間以内に、興奮するようなテレビ番組を見たり、スリリングなゲームをしたり、複雑な作業をしたりすると、眠りにくくなる。

睡眠の妨げになる飲食物を避ける

アルコールやカフェインを含む飲食物(コーヒー、紅茶、コーラ、ココアなど)は睡眠を妨げる。食欲抑制薬、利尿薬、(タバコやニコチンパッチに含まれる) ニコチンも同様である。カフェインを含むものは、寝る前12時間以内には摂取しないようにする。夜に大量のアルコールを摂取すると、朝早く目が覚めてしまう。禁煙も睡眠に役立つことがある。

軽食をとる

空腹も入眠を妨げる要因である。胃食道逆流症でなければ、場合に応じて軽食(特に温かいもの)をとると睡眠に役立つ。しかし、就寝時刻の少なくとも数時間前には食べるのをやめ、就寝前にしっかりした食事(特に消化されにくいもの)はとらないようにするべきである。重い食事をとると、胸やけが起こって、睡眠の妨げになる可能性がある。

不安を催す行動を避ける

時間に注意が向かないように、時計の向きを変える。ベッドにいるときは時計を見ないようにする。

日中に明るい光を浴びる

日中に明るい光を浴びると、睡眠-覚醒リズムを地球の明暗サイクルに同期させやすくなる。

交代勤務労働者とナルコレプシーの患者を除き、日中の仮眠を控える

不眠症の人が日中に仮眠をとると、夜眠りにくくなる可能性がある。しかし、ナルコレプシーの患者は仮眠により薬剤の必要量を減らすことができ、交代勤務労働者は仮眠により仕事の効率が向上する。仮眠が必要な場合は、毎日同じ時間に30分以内と決めて行うべきである。

最も役立つ対策となりうるのは、適切な時間に眼に太陽の光を浴びることで、これは体内時計のリセットに役立ちます。例えば、旅行をするときには、目的地に到着したら(特に午前中に)日光を浴びるようにします( 移動中に起こる問題 : 睡眠障害(時差ぼけ))。交代勤務をしている人は、起きていなければならない時間帯に明るい光(日光または人工の光)を浴びるようにします。仕事からの帰路でサングラスをかければ、就寝前に明るい光を浴びるのを避けることができ、帰宅後眠りやすくなります。寝ているときは、寝室をできるだけ暗く静かにしておきます。アイマスクやホワイトノイズ装置を使用してもよいでしょう。睡眠相後退症候群の人は明るい光を午前中に、睡眠相前進症候群の人は夕方に浴びると効果的です。

別の対策として、望ましい睡眠-覚醒リズムに近づくよう、就寝・起床時刻を徐々にずらしていくというものがあります。旅行をする場合は、出発日より十分に前から、目的地でのスケジュールに近づくように徐々にスケジュールをずらしていくと有益です。

薬剤

症状が続く場合、作用が短時間だけ続く(短時間作用型の)睡眠薬によって、睡眠が改善し、脳を刺激する薬剤(モダフィニルなど)によって、日中(交代勤務障害の人は勤務時間中)に目がさえるようになることがあります。しかし、これらの薬剤で体内リズムが早くなるわけではありません。

メラトニンは、時差ぼけの影響や交代勤務に伴う問題の軽減に役立つ可能性があります。しかし、その使用については意見の相違があります。メラトニンは、短期間(2~3週間まで)の使用なら安全と考えられていますが、長期に使用した場合の影響は分かっていません。

タシメルテオンにはメラトニンのような作用があります。夜間の睡眠時間を増やし、日中の睡眠時間を減らすことにより、全盲の人や非24時間睡眠覚醒症候群の人に役立つことがあります。この薬剤は、毎晩就寝前の同時刻に服用します。最も一般的な副作用は、頭痛と異常な夢または悪夢です。

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