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痛みの治療

執筆者:

James C. Watson

, MD, Mayo Clinic

最終査読/改訂年月 2018年 10月
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基礎疾患を治療することで、痛みを解消したり最小限に抑えたりできるケースがあります。例えば、骨折をギプスで固定することや、感染を起こした関節に抗菌薬を投与することは、鎮痛に役立ちます。しかし、痛みの基礎疾患が治療可能な場合でも、痛みに速やかに対処するために痛み止め(鎮痛薬)が必要になる場合もあります。

医師が鎮痛薬を選択する際、痛みのタイプと持続期間、それぞれの鎮痛薬の便益とリスクを考慮します。ほとんどの鎮痛薬は侵害受容性疼痛(通常の組織の損傷による痛み)に対しては効果がありますが、神経障害性疼痛(神経、脊髄、脳の損傷や機能障害による痛み)に対してはあまり効果がなく、多くの場合は他の薬剤が必要になります。特定のタイプの痛み(特に慢性疼痛)に対しては、薬剤以外による治療法も重要です。

知っていますか?

  • ほぼすべての症例において、痛みは少なくとも部分的に緩和できます。

鎮痛薬は以下の3つに分類されます。

  • オピオイド(麻薬性)鎮痛薬

  • 非オピオイド鎮痛薬

  • 鎮痛補助薬(通常はけいれん発作やうつ病など別の症状の治療に用いられる薬剤であるが、痛みを緩和する作用もある)

オピオイド鎮痛薬

オピオイド鎮痛薬(ときに麻薬性鎮痛薬とも呼ばれます)は、様々な種類の痛みに対して効果的です。通常は最も強力な鎮痛薬です。

オピオイドとは、ケシから抽出される天然物質であるモルヒネと化学構造が類似する一群の化合物で、ケシ以外の植物から抽出されるオピオイドもあれば、研究室で合成されるオピオイドもあります。

以下の病態に対する治療では、オピオイドが中心的な役割を果たします。

  • 重度の痛み、比較的持続時間の短い(急性の)痛み(術後の痛みや熱傷または骨折による痛みなど)

  • がんなど余命を短縮する病気(終末期疾患)による慢性疼痛

  • ホスピスケアを受けている人の慢性疼痛

このような病気による痛みのコントロールには、オピオイドが効果的であるため、よく選択されます。

これらの状況でオピオイドが十分に使用されていない理由として、以下のものが考えられます。

  • 効果を得るのに必要な用量を医師が過小に見積もっている

  • 依存を始めとするオピオイドの副作用のリスクを医師が過大評価している

しかし、オピオイドの副作用は通常予防ないし管理できるものであり、依存の心配もあまりないため、がんなどの終末期疾患による痛みがある人やホスピスケアを受けている人では、副作用の心配からオピオイドの使用を制限するべきではありません。

慢性疼痛ががんや終末期疾患によるものではない場合には、長期に及ぶオピオイド使用の副作用が重篤になる可能性があるため、オピオイドは通常治療の第一選択にはなりません。オピオイドの副作用としては、オピオイド使用障害(依存)、過剰摂取、呼吸抑制(危険な水準の呼吸数の低下)、死亡などがあります。したがって、慢性疼痛ががんや終末期疾患によるものではない場合には、非オピオイド鎮痛薬薬剤以外による治療法など、他の治療法がまず用いられます。それらの治療法が無効に終わった場合、医師はオピオイドの使用を検討することがありますが、痛みの軽減と機能の改善というニーズがオピオイドのリスクを上回る場合に限られます。

オピオイドは誰にでも適した薬剤というわけではありません。

医師はオピオイドを処方する前に問診を行います。その問診は、以下の事態が生じる可能性が高いかどうかを判断するために行われます。

  • 誤用または乱用の可能性

  • 別の目的(売却や睡眠薬としての使用など)で使用する可能性

  • オピオイドの副作用が生じる可能性

医師はまた、オピオイドのリスクと副作用、ならびにオピオイドの正しい使用方法と保存方法について説明します。

オピオイドの用量は、痛みがなくなるか副作用に耐えられなくなるまで、徐々に段階的に増やします。高齢者や新生児は、オピオイドの作用に敏感なため、通常は少ない用量で投与されます。

オピオイドは、痛みが激しくなる前は、投与スケジュールに従って使用するのが最も効果的です。

以下のようにオピオイドだけでは十分な鎮痛が得られない場合は、用量を増やすか、他の薬剤(NSAIDや鎮痛補助薬など)を追加します。

  • 痛みが一時的に悪化した場合

  • 運動をする必要があり、動くと痛みが悪化する場合

  • 包帯を交換する前

慢性疼痛がある場合、オピオイドの用量を増やしたからといって必ずしも鎮痛効果が高まるわけではなく、むしろ副作用のリスクが高まる可能性があります。

慢性疼痛には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの非オピオイド鎮痛薬またはガバペンチン(抗てんかん薬)や三環系抗うつ薬などの鎮痛補助薬とともに、オピオイドが使用されます。アセトアミノフェンなどの非オピオイド鎮痛薬とオピオイドが1つの錠剤になった製品もあります。

医師は通常、患者のオピオイドへの反応をモニタリングし、オピオイドが効果的に痛みをコントロールしているか、副作用が起こっていないかを判定します。こうした情報に基づき、医師はオピオイド療法を続けることが適切かどうかを判断します。痛みが軽減すれば、医師はオピオイドの用量を徐々に減らし、可能であればオピオイドを中止して非オピオイド鎮痛薬に切り替えるか、非オピオイド鎮痛薬を併用していた場合はその服用だけを継続します。

オピオイドによる治療を受けている患者で、長期的な痛みの緩和が得られるのは一部のみに過ぎず、効果があっても部分的な緩和であるのが通常です。オピオイドの副作用に耐えられなかったり、オピオイドを使用しても期待していたほど症状が緩和されなかったりするために、使用の中止を決断する患者もいます。

オピオイドの副作用

オピオイドには多くの副作用があります。特定の病気、例えば腎不全肝疾患慢性閉塞性肺疾患(COPD)、未治療の睡眠時無呼吸症候群認知症、その他の脳疾患などがある人では、副作用が起こりやすい傾向があります。

オピオイドの開始時には、以下のような副作用がよくみられます。

  • 眠気

  • 意識混濁または錯乱

  • 吐き気と嘔吐

  • かゆみ

  • 便秘

  • 尿閉(膀胱に尿がたまっても排尿できない状態)

  • 呼吸抑制(危険な水準の呼吸数の低下)

  • ミオクローヌスと呼ばれる筋肉の不随意な収縮

眠気はオピオイドの一般的な副作用です。オピオイドを使用し続けると、数日中に眠気がなくなるかまたは軽くなる患者もいます。オピオイドの種類によって眠気の程度も異なるため、眠気が続く場合は別のオピオイドを試すことがあります。目覚めていなければならない重要なイベントの前には、眠気を打ち消すために、メチルフェニデートやモダフィニルなどの中枢刺激薬を使用することもあります。一部の人では、カフェイン入り飲料の摂取が眠気を打ち消すのに役立ちます。オピオイドを使用した後に眠気を感じる場合は、車の運転を避け、転倒したり事故を起こしたりしないよう特に注意を払う必要があります。

錯乱もオピオイドの副作用の1つであり、特に高齢者によくみられます。オピオイドは、高齢者の転倒リスクを高めます。

痛みに吐き気を伴う場合がありますが、オピオイドは吐き気を悪化させることがあります。制吐薬は、吐き気の予防と軽減に役立ち、内服、坐薬、または注射で投与できます。広く使用されている制吐薬にはメトクロプラミド、ヒドロキシジン、プロクロルペラジンなどがあります。

オピオイドの使用によりかゆみが生じた場合は、ジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン薬を、経口または静脈内投与することで、症状を緩和できることがあります。

便秘が起こることも多く、特に高齢者でよくみられます。便秘の予防や軽減には、センナなどの刺激性下剤が役立ちます。水分と食物繊維の摂取量を増やすことも有用です。浣腸が必要になる場合もあります。このような方法で効果がない場合、胃腸でのオピオイドの作用のみを阻害し、鎮痛作用を弱めない薬(メチルナルトレキソンなど)が処方されることがあります。

オピオイドが尿閉(膀胱に尿がたまっても排尿できない状態)を引き起こすこともあり、特に前立腺肥大症がある男性でよくみられます。その場合は、小休止を挟んで2回排尿(2段排尿)したり、排尿中に腹部の最下部(膀胱にあたる部分)を軽く押したりすると、役立つ場合があります。タムスロシンなど膀胱の筋肉を弛緩させる薬剤も使用されることがあります。

ほとんどの人では、吐き気とかゆみは数日でなくなるか軽快します。しかし便秘と尿閉は、軽快するとしても長い時間を要するのが通常です。

オピオイドを大量に使用すると、重篤な副作用が発生することがあります。重篤な副作用としては、呼吸抑制(危険な水準の呼吸数の低下)や昏睡などがあり、死に至ることもあります。これらの副作用は、解毒剤であるナロキソン(通常は静脈内に投与されます)で解消できます。看護師や患者の家族はオピオイドの重篤な副作用に注意しておく必要があります。ナロキソンは、医療従事者だけでなく、家族が(注射などで)投与できる場合もあります。

オピオイドを長期間繰り返し使用すると、耐性が生じることがあります。このような患者では、体がオピオイドに慣れてしまい、反応が弱くなってしまっているため、より高用量のオピオイドが必要になります。しかし、ほとんどの人では、オピオイドの用量を変えなくても長期間にわたって効果が得られます。多くの場合、オピオイドの増量が必要になることは、耐性が生じているのではなく、病状が悪化していることを意味します。

オピオイドを長期間使用している人には、通常、身体依存が生じます。身体依存とはすなわち、薬剤を中止すると離脱症状が現れるということです。離脱症状(禁断症状ともいいます)としては、悪寒、腹部けいれん、不安、神経過敏などがあります。長期間使用していたオピオイドを中止する際には、離脱症状の発生を最小限に抑えるため、時間をかけて用量を徐々に減らします。

身体依存は嗜癖(しへき)とは異なります。嗜癖には、使用者自身や他者に害が及ぶにもかかわらず、薬物を渇望し、自制心が効かない状態で強迫的に薬物を使用するという特徴があります。これまでに薬物乱用の既往がなく痛みのコントロールのためにオピオイドを使用している人に、オピオイドの嗜癖が生じることはめったにありません。それでも医師は、オピオイド鎮痛薬を使用している患者には定期的なモニタリングを行い、嗜癖の徴候がないか確認します。

オピオイドの投与

オピオイドは、服用が可能であれば経口投与されます。オピオイドを経口投与する場合は、用量と服用回数は比較的容易に調節できます。長期間の投与が必要な場合は、経口投与または皮膚に貼るパッチ剤が用いられます。痛みが急に起こった場合や、経口剤とパッチ剤がどちらも使用できない場合は、オピオイドは注射で投与されます。

オピオイドの長期使用が必要で、オピオイドの服用が有用でありながら、副作用に耐えられない状況では、ポンプを使用して脊髄周囲の隙間にオピオイドを直接注入する投与方法が選択できます。こうすると高濃度の薬剤が脳に届きます。

典型的なオピオイドであるモルヒネは、経口または注射によって投与できます。モルヒネの経口薬には、徐放製剤、放出制御製剤、即放製剤があります。

即放性のモルヒネは、短時間の緩和作用があり、通常は急性疼痛の治療に用いられます。

放出制御性または徐放性のモルヒネは、8~24時間にわたって痛みを緩和します。これらの製剤は、非オピオイド鎮痛薬で十分な鎮痛が得られない慢性疼痛に対して広く使用されています。しかし、痛みががんに関連するものでない場合には、これらの長時間作用型オピオイド(放出制御製剤や徐放製剤)の使用を制限することが推奨されています。

速効性のオピオイド(トローチまたは可溶性錠剤)は、舌の下(舌下錠)または歯ぐきと頬の間(バッカル錠)に置き、錠剤が溶けて頬の内側または舌の下の粘膜から吸収されるのを待ちます。舌下錠やバッカル錠は飲み込んではいけません。効果は非常に速やかに現れます。迅速に作用するため、副作用のリスクが高くなる可能性があります。これらはがん患者の突出痛に使用されます。突出痛とは、定期的な治療で痛みをコントロールできないときに現れることのある、短く(しばしば)激しい痛みの再燃です。

モルヒネを注射で投与する場合は、即放性の経口薬の2分の1から3分の1の用量で済みます。経口投与されたモルヒネは、その大部分が血流に入る前に肝臓で代謝されて化学的に変化してしまうからです。通常、投与経路が異なると投与するモルヒネの用量も異なりますが、薬効は変わりません。注射薬は経口薬より痛みの緩和作用が早く現れますが、作用の持続時間は経口薬ほど長くはありません。

モルヒネは、静脈内、筋肉内、または皮膚の下に注射します。

  • 静脈内注射:ほぼ即座に痛みが緩和されますが、効果は長くありません。

  • 筋肉内注射:痛みの緩和は少し遅れますが、効果はいくぶん長く続きます。筋肉内注射は痛みを伴い、しかも鎮痛作用を予測しにくいため、この投与経路はあまり用いられません。

  • 皮下注射:痛みの緩和作用が現れるのは最も遅いのですが、最も長く持続します。

注射は2~3時間おきに繰り返すことができますが、何度も繰り返すのは煩わしいと感じる患者もいます。代わりの方法として、カテーテルを静脈内または皮膚の下に挿入し、連続注入ポンプに接続してモルヒネを持続的に投与することもできます。持続投与をする際は、必要に応じて追加投与することもできます。ときに、患者がボタンを押すと薬剤が放出される装置が使用されることもありますが、その場合も薬剤の用量と投与回数の上限は医師が決定します。この手法は自己調節鎮痛法(PCA)と呼ばれています。通常、持続投与の対象になるのは、術後に起こる強い痛みや重篤な病気(がんや鎌状赤血球症の疼痛発作など)による強い痛みがある入院患者です。

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オピオイド鎮痛薬

薬剤

作用時間

備考

モルヒネ

静脈内または筋肉内注射:3~4時間

経口投与(即放製剤):3~6時間

経口投与(放出制御製剤および徐放製剤):8~24時間

モルヒネは作用の発現が速い。経口剤は慢性疼痛に対して非常に効果的な場合がある。他のオピオイドに比べて、かゆみが起こりやすい。

ブプレノルフィン

注射:2~3時間

パッチ剤:約26時間

バッカル錠:12時間

ブプレノルフィンは、オピオイドの一部の作用を示すと同時に、オピオイドの作用の一部を遮断します。慢性疼痛を緩和するために使用されることがあるほか、オピオイド依存になった人がその使用を止められるように、強力なオピオイドの代わりに使用される場合もあります。しかし、体内にまだオピオイドが残っている人に投与すると、ブプレノルフィンは離脱症状を引き起こす可能性があります。

コデイン

経口投与:4~6時間

モルヒネより効力が弱い。通常はアスピリンまたはアセトアミノフェンと併用される。

フェンタニル

トローチまたは可溶性錠剤:1~3時間

鼻腔スプレーまたは舌下錠:1時間以下

パッチ剤:最長72時間

フェンタニルのトローチ剤と舌下錠は、突出痛(慢性疼痛の治療中に、短く、しばしば激しい痛みが再燃すること)の治療に使用できる。

フェンタニルのトローチ剤は、小児において(痛みを伴う処置の前に)痛みの緩和と鎮静を目的として使用することもできる。

フェンタニルのパッチ剤は、慢性疼痛の治療にしばしば使用される。

ヒドロコドン(hydrocodone)

経口投与:4~8時間

ヒドロコドンはコデインと同程度の有効性を示す。

ヒドロモルフォン

静脈内または筋肉内注射:3~4時間

経口投与:3~6時間

坐薬の直腸内投与:6~8時間

徐放製剤:24時間

ヒドロモルフォンは作用の発現が速い。モルヒネの代わりとして使用でき、慢性疼痛に有用である。

坐剤は就寝時に使用する。

レボルファノール(levorphanol

静脈内または筋肉内注射:4~8時間

経口投与:約4~8時間

経口剤は作用が強い。モルヒネの代わりに使用できる。

ペチジン

静脈内または筋肉内注射:約3~4時間

経口投与:あまり効果的でない

ペチジンは短期間の使用で効果的となる可能性がある。ただし、ペチジンには筋れん縮、振戦、けいれん発作、錯乱、せん妄などの副作用があるため(特に高齢者でよくみられる)、長期間の使用は好ましくない。使用を好まない医療従事者もいる。

メサドン

経口投与:6~8時間。場合によってはさらに長い

注射:3~8時間

メサドンはヘロインや他のオピオイドへの依存症の治療に使用される。慢性疼痛の治療にも使用できる。

メサドンは重篤な副作用を引き起こすことがある(特に最初の使用時)。例えば、使用し始めて数日以内に、(たとえ用量を増やさなくても)呼吸が危機的に遅くなったり停止したりすることがある。重篤な副作用を予防するには、指示通りに使用するよう注意しなければならない。

オキシコドン

経口投与(短時間作用型):3~6時間

経口投与(長時間作用型の放出制御製剤):8~12時間

オキシコドンは、慢性疼痛の治療にモルヒネの代わりとして使用できる。短時間作用型の製剤は、アスピリンまたはアセトアミノフェンと併用されることが多い。

オキシモルフォン(oxymorphone)

経口投与:4~6時間

経口投与(放出制御製剤):12時間

静脈内または筋肉内注射:3~6時間

坐薬の直腸内投与:4~6時間

オキシモルフォンは、慢性疼痛の治療にモルヒネの代わりとして使用できる。

ペンタゾシン

経口投与:最長で4時間

注射:3~4時間

ペンタゾシンは他のオピオイドの鎮痛作用を阻害することがある。作用はコデインと同程度に強い。増量しても鎮痛作用は高まらず、錯乱と不安を生じる可能性があるため(特に高齢者の場合)、ペンタゾシンの有用性は限定的である。高齢患者では良い選択肢ではない。

タペンタドール

経口投与(短時間作用型):3~6時間

経口投与(長時間作用型):12時間

タペンタドールは、糖尿病による神経障害性疼痛、中等度から重度の急性疼痛、および中等度から重度の慢性疼痛に使用される。

トラマドール

経口投与(短時間作用型):4~11時間

経口投与(長時間作用型):12~24時間

トラマドールは、他のオピオイドと比べて乱用される可能性が低い。他のオピオイド鎮痛薬ほど強力ではない。

非オピオイド鎮痛薬

非オピオイド鎮痛薬には様々なものがあり、多くの場合、軽度から中等度の痛みに有効です。非オピオイド鎮痛薬は、しばしば痛みの治療に好まれて使用されます。非オピオイド鎮痛薬は、身体依存や、鎮痛作用への耐性を生じません。

アスピリンとアセトアミノフェンは、処方せんがなくても市販薬(OTC薬)として入手できます。これ以外に、OTC薬としても処方薬としても利用できる非オピオイド鎮痛薬(イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンなど)がいくつかあります。処方薬には、OTC薬と比べて1回分の用量に含まれる有効成分の割合が高くなっています。

OTC薬の鎮痛薬は、短期間の服用であればかなり安全ですが、痛みの治療には7~10日以上服用しないよう注意書きがされています。症状が悪化または持続する場合は、医師の診察を受ける必要があります。

非ステロイド系抗炎症薬

非オピオイド鎮痛薬の多くは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)に分類されます。NSAIDは軽度から中等度の痛みの治療に使用されます。中等度から重度の痛みの治療ではオピオイドと併用されることもあります。NSAIDは痛みを緩和するだけでなく、炎症も軽減します。炎症は、しばしば痛みに伴い、痛みを悪化させます。しかし、炎症を軽減するには、通常、NSAIDを高用量で比較的長く使用する必要があります。

すべてのNSAIDは経口で使用できます。ケトロラクとジクロフェナクという2種類のNSAIDは、静脈内注射や筋肉内注射による投与も可能です。インドメタシンは坐薬として投与することもできます。

NSAIDは広く使用されていますが、副作用が起こることもあり、ときとして重篤な場合もあります。

  • 消化管で生じる問題:NSAIDはいずれも胃の粘膜を刺激する傾向があり、消化器の不調(胸やけ、消化不良、吐き気、腹部膨満、下痢、腹痛など)、消化性潰瘍消化管出血を引き起こす可能性があります。COX-2阻害薬(コキシブ系薬剤)は、他のNSAIDと比べると胃への刺激や出血があまりみられません。しかし、COX-2阻害薬とアスピリンを併用すると、これらの問題が他のNSAIDと同様に起こります。NSAIDを食後に服用することや、制酸薬を併用することは、胃の不快感を予防するのに役立ちます。ミソプロストールという薬剤は胃の不快感や潰瘍の予防に役立ちますが、下痢などの他の問題を起こすことがあります。消化性潰瘍の治療に使用されるプロトンポンプ阻害薬(オメプラゾールなど)やH2遮断薬(ファモチジンなど)は、NSAIDによる胃への副作用を防ぐ目的でも使用されます。

  • 出血:NSAIDはいずれも血小板(血管が傷ついたときに出血を止めるのを助ける、細胞に似た血液中の粒子)の血液凝固作用を阻害します。結果として、NSAIDは出血のリスクを高めますが、同時に胃の粘膜を刺激する作用もあるため、消化管出血のリスクが特に高くなります。COX-2阻害薬(コキシブ系薬剤)は、他のNSAIDと比べると出血を引き起こす可能性が低くなっています。

  • 体液の貯留に関連する問題:NSAIDはときに体液の貯留とむくみを引き起こします。また、NSAIDを習慣的に服用すると腎疾患の発生リスクが上昇し、ときには腎不全(鎮痛薬腎症と呼ばれます)を引き起こすこともあります。

  • 心臓と血管の病気のリスクの上昇:アスピリン以外のNSAIDを使用すると心臓発作、脳卒中、下肢の血栓症のリスクが高まることが研究結果から示唆されています。このリスクは、薬剤の使用量が多いほど、また使用期間が長いほど高くなると考えられています。また、NSAIDの中でも、このリスクが高いものと低いものがあります。こうした問題は、この種の薬剤が血液凝固に及ぼす直接的な作用に起因する可能性もあれば、わずかながら持続的に血圧を上昇させるという間接的な作用に起因する可能性もあります。

NSAIDの短期間使用しても、深刻な問題が生じる可能性は低いですが、NSAIDを長期間使用した場合には、問題が発生する可能性が高くなります。そのような人は、高血圧、腎不全、消化管潰瘍、消化管出血の有無を確認し、心臓病や脳卒中のリスクを評価するために、定期的に医療機関を受診する必要があります。

以下のような集団では、副作用のリスクが高まります。

  • 高齢者では、NSAID、特にインドメタシンとケトロラクによる副作用のリスクが高まります。

  • 飲酒の習慣がある人がNSAIDを使用すると、消化器の不調、消化性潰瘍、肝傷害などのリスクが高くなることがあります。

  • 冠動脈疾患など、心臓や血管(心血管系)の病気がある人、あるいはこれらの病気の危険因子をもつ人では、心臓発作と脳卒中のリスクが高くなることがあります。

高齢者や、心不全、高血圧、腎臓または肝臓の病気がある人がNSAIDを服用する場合は、医師による監督指導が必要です。心臓の病気や血圧に対する処方薬の中には、NSAIDと併用すると効果が下がるものもあります。

知っていますか?

  • NSAIDは、処方せんなしで購入できる薬剤も含めて、長期間服用すると重篤な副作用を起こす可能性があります。

NSAIDの鎮痛作用が現れる速さや持続時間は、薬剤によって異なります。NSAIDの効果はどれも同程度ですが、反応には個人差があります。人によって、特定の薬剤が他の薬剤より有効であったり、副作用が少なかったりすることもあります。

アスピリン

アスピリン(アセチルサリチル酸)は、およそ100年前から使用されています。アスピリンは経口薬で、4~6時間にわたって中程度の鎮痛作用を示します。

アスピリンは胃を刺激することから、その副作用を軽減するために制酸薬を配合した錠剤(緩衝剤配合錠)もあります。制酸薬によってアスピリンの溶解を促進するアルカリ性の環境が作られ、それによりアスピリンが胃の粘膜に接触する時間を短縮できます。しかし、アスピリンは胃の粘膜を保護する物質の分泌も減少させるため、緩衝剤が配合されたアスピリン製剤でも胃を刺激する可能性があります。粘膜を保護する物質とは、ホルモンに似た物質であるプロスタグランジンの一種です。

アスピリンの腸溶錠は、胃をそのまま通過して小腸で溶けるように設計されているため、胃への刺激は最小限に抑えられます。しかし、アスピリンの腸溶錠は設計通りに吸収されないことがあります。食べものとアスピリンの腸溶錠をほぼ同時に摂取すると、食べものの存在によって胃の通過に時間がかかるため、アスピリンの吸収が遅れます。それにより、鎮痛作用の発現が遅くなります。

アスピリンは血液の凝固を助ける粒子(血小板)の働きを阻害するため、全身で出血リスクが高まります。皮下出血しやすい人は、特にこの影響を受けやすい可能性があります。出血性疾患やコントロール不良の高血圧が過去に一度でもある人は、医師の監督指導がある場合を除いて、アスピリンを使用すべきではありません。アスピリンと抗凝固薬(ワルファリンなど)を併用している人では、生命を脅かす出血を予防するために、綿密なモニタリングが必要になります。通常、手術予定日の前の1週間は、アスピリンを使用すべきではありません。

アスピリンは喘息を悪化させることがあります。鼻茸(はなたけ)のある人がアスピリンを使用すると、高い確率で喘鳴が生じます。少数ですが、アスピリンに対する過敏症(アレルギー)がある人は、激しいアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こすことがあり、発疹、かゆみ、重度の呼吸障害、ショックなどに至ることがあります。こうした反応が起こった場合は緊急の医学的処置が必要です。

アスピリンを非常に大量に使用すると、呼吸異常、発熱、錯乱などの重篤な副作用が起こる可能性があります。過量投与の初期徴候の1つは耳鳴りです。

小児および20歳未満の若年者は、インフルエンザまたは水痘(水ぼうそう)にかかっているか、これらの感染症から回復した直後の場合、ライ症候群を発症する可能性があるため、服用すべきではありません。まれですが、ライ症候群は死亡を含む重篤な結果をもたらすことがあります。

NSAIDの外用薬

痛む箇所の皮膚の上に直接塗布できるNSAIDのクリームまたはゲルもあります。例えば、ジクロフェナクは変形性関節症による痛みの緩和のために関節に塗ることができ、動きの改善に役立ちます。ジクロフェナクにはパッチ剤もあり、軽いねんざ、肉離れ、挫傷による急性疼痛の緩和に用いられます。

イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン

イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンなどのNSAIDは、実際に比較した研究は少数ではあるものの、一般にアスピリンよりも胃への刺激が少ないと考えられています。アスピリン同様、これらの薬剤も消化器の不調、潰瘍、消化管出血を起こす可能性はあります。また、喘息を悪化させ、血圧を上げる可能性もあります。これらの薬剤を使用すると、脳卒中、心臓発作、脚の動脈血栓のリスクがやや上昇すると考えられています。

イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンは、一般にアスピリンほど血液の凝固を阻害しませんが、医師による厳重な監督の下でなければ、これらの薬剤をワルファリンなどの抗凝固薬と一緒に使用すべきではありません。

アスピリンにアレルギーのある人は、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンに対してもアレルギーを起こすことがあります。発疹、かゆみ、呼吸障害、ショックなどが生じた場合は、直ちに医学的処置を受ける必要があります。

COX-2阻害薬(コキシブ系薬剤)

セレコキシブなどのコキシブ系薬剤(COX-2阻害薬)は、その他のNSAIDとは異なります。他のNSAIDは以下の2種類の酵素を阻害します。

  • COX-1:胃の保護と血液凝固に不可欠な役割を果たすプロスタグランジンの産生に関与します。

  • COX-2:炎症を促進するプロスタグランジンの産生に関与します。

COX-2阻害薬は、主にCOX-2という酵素を阻害する傾向があります。したがってCOX-2阻害薬は、痛みと炎症の治療においては他のNSAIDと同程度の効果があります。しかし、COX-2阻害薬は胃を荒らす可能性が低いため、吐き気、腹部膨満、胸やけ、出血、消化性潰瘍を起こしにくく、他のNSAIDほど血液凝固を阻害することもありません。

こうした違いがあるため、COX-2阻害薬は、他のNSAIDの副作用に耐えられない人や、他のNSAIDで特定の合併症(消化管出血など)を起こすリスクの高い人に有用です。対象となるのは以下のような人です。

  • 高齢者

  • 抗凝固薬を使用している人

  • 潰瘍の既往がある人

  • 鎮痛薬を長期にわたり使用する必要がある人

しかし、他のNSAIDと同様、COX-2阻害薬を使用した場合でも血栓ができやすくなると考えられており、そのため心臓発作、脳卒中、脚の血栓症のリスクが高まります。そのため、特定の条件を有する人がCOX-2阻害薬を使用する場合、そのリスクと綿密なモニタリングの必要性について説明を受けます。特定の条件とは、以下に挙げるようなものです。

  • 心血管疾患(冠動脈疾患など)

  • 脳卒中

  • これらの病気の危険因子

COX-2阻害薬は、他のNSAIDと同様、心不全のある人や心不全のリスクが高い人(心臓発作を経験したことがある人など)には、適していません。

非ステロイド系抗炎症薬の作用

非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)には次の2通りの作用があります。

  • 痛みの感覚を軽減します。

  • 高用量では炎症を軽減します(痛みは炎症を伴うことも多く、それが痛みをさらに悪化させます)。

NSAIDにこれらの効果を示すのは、プロスタグランジンという、ホルモンに似た物質の生成を減らすことによります。プロスタグランジンにはいくつか種類がありますが、痛みの信号に対する神経細胞の反応性を高めたり、血管を拡張させたりするなど、その機能は種類によって異なります。

プロスタグランジンの生成にはシクロオキシゲナーゼと呼ばれる2種類の酵素(COX-1とCOX-2)が不可欠で、ほとんどのNSAIDはこの両者を阻害することによってプロスタグランジンの生成を減少させます。NSAIDの一種であるCOX-2阻害薬(コキシブ系薬剤)は、主にCOX-2のみを阻害する傾向があります。

一方、プロスタグランジンのうち炎症を促進して痛みをもたらす作用があるものの生成に関与している酵素はCOX-2だけです。この種類のプロスタグランジンは、熱傷、骨折、ねんざ、肉離れ、微生物の侵入といった損傷に反応して放出され、それにより生体の防御反応としての炎症が起こります。すると損傷を受けた部位への血流が増加して体液と白血球が運ばれ、損傷した組織を取り囲むとともに、そこに侵入してくる微生物を排除します。

COX-1の作用によって生成されるプロスタグランジンは、消化管を胃酸から保護するのを助けるとともに、血液凝固にも重要な役割を果たしています。NSAIDの多くはCOX-1を阻害することによってプロスタグランジンの生成を抑えるため、胃の粘膜が刺激されます。このような刺激により、消化器の不調、消化性潰瘍、消化管出血が起こる可能性があります。

一方、COX-2阻害薬は主にCOX-2のみを阻害するため、胃の不快感による問題は起こりにくくなっています。しかし、COX-2阻害薬であっても、ある程度はCOX-1を阻害するため、このような副作用が起こるリスクはわずかながら上昇する可能性があります。

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非ステロイド系抗炎症薬

種類

薬剤

サリチル酸塩

アスピリン

トリサリチル酸コリンマグネシウム(choline magnesium trisalicylate

ジフルニサル

サザピリン

COX-2阻害薬

セレコキシブ

その他

ジクロフェナク

エトドラク

フェノプロフェン

フルルビプロフェン

イブプロフェン

インドメタシン

ケトプロフェン

ケトロラク

メクロフェナム酸(meclofenamate

メフェナム酸

メロキシカム

ナブメトン

ナプロキセン

オキサプロジン

ピロキシカム

スリンダク

トルメチン

アセトアミノフェン

アセトアミノフェンの鎮痛・解熱作用はおおむねアスピリンに匹敵します。

しかしNSAIDと異なり、アセトアミノフェンには以下の特徴があります。

  • 抗炎症作用は実質ない

  • 血液凝固作用に影響を与えない

  • 胃への副作用はほとんどない

アセトアミノフェンが作用する仕組みは、まだはっきり分かっていません。

アセトアミノフェンには内服薬と坐薬があり、効果は4~6時間持続するのが一般的です。

アセトアミノフェンは非常に安全な薬剤だと考えられています。ただし、大量に服用すると肝傷害につながり、その傷害は不可逆的なこともあります。肝疾患がある人は、通常の処方量よりも少ない用量を使用すべきです。低用量を長期間使用した場合に肝臓に有害な作用が出るかどうかは明らかではありません。日頃から大量に飲酒をする人は、アセトアミノフェンを過剰使用した場合に肝傷害をきたすリスクが最も高いと考えられています。アセトアミノフェンを服用している人が、ひどいかぜやインフルエンザなどの理由で食事をとらなくなると、肝傷害を起こしやすくなる可能性があります。

アセトアミノフェンを高用量で長期間服用すると、腎臓に損傷が起きる可能性があり、NSAIDやアスピリンと併用した場合には特にそのリスクが高くなります。

鎮痛補助薬

鎮痛補助薬とは、通常は別の病態の治療に使用されるものの、痛みを軽減する目的でも使用できる薬剤のことです。

鎮痛補助薬は、神経が痛みを処理するプロセスに影響を与えることで作用を発揮すると考えられています。

神経の損傷による痛み(神経障害性疼痛)や線維筋痛症などによる痛みの治療において、鎮痛補助薬は最初のかつ唯一の薬剤として用いられることが増えてきています。

痛みの治療に最もよく用いられる鎮痛補助薬は以下のものです。

  • 抗うつ薬(アミトリプチリン、ブプロピオン[bupropion]、デシプラミン、デュロキセチン、ノルトリプチリン、ベンラファキシンなど)

  • 抗てんかん薬(ガバペンチン、プレガバリンなど)

  • 経口や外用の局所麻酔薬

抗うつ薬

抗うつ薬は、抑うつがない人においても、しばしば痛みの緩和に役立ちます。鎮痛目的では、三環系抗うつ薬(アミトリプチリン、ノルトリプチリン、デシプラミンなど)が他の抗うつ薬より効果的な可能性がありますが、副作用が出にくく使用が制限されないのは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や選択的 ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SSNRI、デュロキセチンやベンラファキシンなど)などの新規抗うつ薬です。

三環系抗うつ薬は、神経障害性疼痛頭痛線維筋痛症、内臓(臓器)が過敏になる症候群(慢性腹痛や骨盤痛など)に効果的です。痛みの治療に使用される三環系抗うつ薬の用量は通常、抑うつや不安を治療するには少なすぎます。そのため、痛みの治療に三環系抗うつ薬を使用する状況で抑うつや不安もみられる場合には、通常は追加の薬剤が必要になります。

デュロキセチンは、糖尿病による神経障害性疼痛(糖尿病性神経障害と呼ばれます)、線維筋痛症、慢性腰痛、慢性の筋骨格痛、化学療法による神経の痛みに効果的とみられています。痛みの治療に使用されるデュロキセチンの用量は、抑うつや不安がある場合のその治療にも十分な量となっています。ベンラファキシンにも同様の効果があります。

ある抗うつ薬で効果がみられても、他の抗うつ薬では効果が得られない場合もあります。

抗てんかん薬

抗てんかん薬は、神経障害性疼痛の緩和に使用されることがあります。ガバペンチンとプレガバリンが最もよく使用されますが、カルバマゼピン、クロナゼパム、ラコサミド、ラモトリギン、オクスカルバゼピン、フェニトイン、チアガビン(tiagabine)、トピラマート、ゾニサミドなど、他の多くの薬剤も一部の人で疼痛の緩和に役立ちます。

ガバペンチンは、帯状疱疹による痛み(帯状疱疹後神経痛)や他の様々な神経障害性疼痛の治療に使用できます。

プレガバリンは、線維筋痛症、糖尿病による神経損傷(糖尿病性神経障害)、帯状疱疹後神経痛、脳または脊髄の問題に起因する神経障害性疼痛を緩和するのに使用できます。

トピラマートなどの抗てんかん薬は片頭痛の予防にも用いられます。

麻酔薬

リドカインなどの局所麻酔薬を皮膚の下に注射すると、けがによる痛みのほか、神経障害性疼痛さえコントロールできることがあります。痛みを遮断するために神経の周りに局所麻酔薬を注入する方法もあり、これは神経ブロックと呼ばれます。例えば、交感神経ブロックでは、脊椎付近にある一群の神経の周りに局所麻酔薬を注射します(上半身の痛みには首に、下半身の痛みは腰に注射します)。

表面麻酔薬(リドカインのローション、軟膏、皮膚に貼るパッチ剤など)が特定の病態による痛みのコントロールに使用されることがあります。

不整脈の治療に使用されるメキシレチンは、ときに神経障害性疼痛の治療に使用されることがあります。

こうした麻酔薬は通常、短期間のみ用いられます。例えば、1日に2~3回少量の麻酔薬で口をゆすいで、口内炎による痛みを緩和する方法があります。しかし、慢性疼痛に対して表面麻酔薬の長期使用が有益な場合もあります。例えば、リドカインパッチまたはゲルは帯状疱疹後神経痛の緩和に使用できます。

その他の薬剤

炎症(痛風など)による重度の痛みがあれば、プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)やデキサメタゾンなどのコルチコステロイドを使用することがあります。

バクロフェン(筋弛緩薬)が三叉神経痛による神経障害性疼痛の緩和に有用であることを示唆する科学的証拠もあります。

(ある種の骨の病気の治療に用いられる)パミドロン酸は、複合性局所疼痛症候群による神経障害性疼痛の緩和に有用になることがあります。

チザニジン(筋弛緩薬)の経口薬や、クロニジン(高血圧の治療薬)の経口薬またはパッチ剤も、神経障害性疼痛や片頭痛を予防する助けになることがあります。

高濃度カプサイシン(唐辛子に含まれる物質)のパッチ剤は、帯状疱疹後神経痛による神経障害性疼痛の緩和に有用です。低濃度カプサイシンクリームも、帯状疱疹後神経痛による痛みや変形性関節症などの病気による痛みに有用となる可能性があります。カプサイシンクリームは、関節炎による局所的な痛みがある人に最もよく使用されます。このクリームは1日に数回塗布しなければなりません。

薬剤以外による痛みの治療法

薬剤のほかにも鎮痛に役立つ方法は数多くあります。

冷湿布または温湿布を痛む部位に直接貼ると痛みが和らぐことがよくあります( 痛みと炎症の治療)。

経皮的電気神経刺激法が一部の人には有益となります。この治療では、皮膚の表面に電極を置いて、そこに電流を流します。チクチクする感覚がしますが、筋緊張が亢進することはありません。1日に20分から数時間、続けて行うこともあれば何回かに分けて行うこともあります。反応に個人差があるため、刺激を与えるタイミングや長さは人によって異なります。多くの場合、必要に応じて自分で使用できるように、患者が経皮的電気神経刺激装置の使用方法を教わります。

脊髄刺激療法は、背中の手術による神経の損傷または複合性局所疼痛症候群による神経障害性疼痛のある人によく用いられます。この治療では、脊髄刺激装置を(通常は殿部または腹部の)皮膚の下に埋め込みます。この装置は、心臓のペースメーカーと同じように電気信号を発生させます。装置から伸びる小さなワイヤー(導線)を、脊髄の周りの空間(硬膜外腔)に留置します。この導線から、信号が脊髄に伝えられます。この信号により、痛みの信号が脳へ送られる過程に変化が生じ、不快な症状の受け止め方が変わります。

神経ブロックは、特定の大きな神経の損傷に起因する痛みの治療にしばしば用いられます。この治療では、以下のいずれかの方法によって、痛みの信号が伝わる経路を遮断します。

  • 神経の周囲に局所麻酔薬を注射して、その神経から痛みの信号が脳に送られるのを阻止する(一般的には超音波検査を行いながら治療対象の神経の位置を確認する)

  • 神経節と呼ばれる神経が集まった部分の周囲に注射して、痛みの信号の伝達を調節する

  • 腐食性物質(フェノールなど)を注射して神経を破壊する

  • 神経を凍結する(凍結療法)

  • 神経を高周波電流で焼き切る

神経ブロックは、がんによる終末期の激しい痛みや、薬剤で緩和できない重度かつ持続性の神経障害性疼痛 の治療に用いられることもあります。

鍼治療では、体の特定の部位に細い針を刺します。鍼治療がどのように効くのかは、ほとんど解明されておらず、専門家の中には鍼治療の有効性に疑問をもつ人もいます。しかし、人によっては、また少なくとも一時的には、鍼治療で痛みがかなり軽減します。

バイオフィードバック法その他の認知療法(リラクゼーション訓練、催眠術、注意転換法など)は、注意の向け方を変えることにより、痛みをコントロールまたは軽減したり、痛みに対処したりするのに役立つことがあります。ある注意転換法では、痛みを感じたとき、ハンモックや浜辺などの快適で静かな場所にいる自分の姿を心に思い描くよう教わります。

鏡療法は、幻肢痛と脳卒中後の神経障害性疼痛に有益となる場合があります。この治療法は医療従事者に教わります。患者は大きな鏡の前に座って、健側の腕または脚を鏡に映します。患側(痛みがあるか、なくなった方)の腕または脚を隠します。そうすると、患者には正常な腕または脚が2本あるかのように見えます。患者は鏡に映った像を見ながら、健側の腕または脚を動かします。すると、患者は2本の正常な腕(脚)を動かしているかのように感じます。この訓練を1日30分、4週間続けると、通常は痛みがかなり軽減します。この治療により、脳が体の知覚(感覚)をコントロールする経路に変化が生じます。

痛みのある人に対する心理的支援の重要性は過小評価されるべきではありません。家族や友人は、痛みのある人が苦しんでいること、支援を必要としていること、抑うつや不安を生じる可能性があること、そして抑うつや不安には心理カウンセリングが必要になる場合もあることを認識しておくべきです。

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