通常、以下のいずれかに当てはまる痛みは慢性疼痛とみなされます。
3カ月以上続く
痛みのもともとの原因になったけがや病気がなくなった後も、1カ月以上続く
数カ月から数年にわたって再発と消失を繰り返す
慢性疾患( がん がんの概要 がんは、細胞が異常に増殖する病気です(通常は1つの異常な細胞から発生します)。がん細胞は正常な制御メカニズムを失っているため、増殖を続けたり、周辺の組織に侵入したり、体の離れた部位に移動したり、がん細胞が栄養を獲得できるように新しい血管の成長を促したりすることができます。悪性(がん)細胞は全身のあらゆる組織から発生する可能性があります。... さらに読む 、 関節炎 変形性関節症 変形性関節症は軟骨と周囲の組織の損傷を伴う慢性疾患で、痛み、関節のこわばり、機能障害を特徴とします。 関節の軟骨と周囲の組織の損傷による関節炎は、加齢に伴い、非常によくみられるようになります。 痛みや腫れ、骨の過剰な増殖がよくみられ、起床時や動かずにいた後に生じて30分以内に治まるこわばり(特に関節を動かしていると治まりやすい)も一般的です。 診断は症状とX線所見に基づいて下されます。... さらに読む
、 糖尿病 糖尿病 糖尿病は体が必要とするインスリンを十分に産生しないため、血糖(ブドウ糖)値が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇き、減量しようとしていないのに体重が減少します。 神経を損傷し、知覚に問題が生じます。 血管を損傷し、心臓発作、脳卒中、慢性腎臓病、視力障害のリスクが高まります。... さらに読む 、 線維筋痛症 線維筋痛症 線維筋痛症は、睡眠不足や疲労、意識障害のほか、軟部組織(筋肉、腱、靱帯など)に広がる、うずくような痛みとこわばりを特徴とします。 睡眠不足、ストレス、挫傷、けが、場合によってはある種の性格上の特性によって、線維筋痛症のリスクが高まる可能性があります。 痛みは広範囲にわたり、体の特定の部分を触ると圧痛があります。 線維筋痛症の診断は、確立された基準と広範囲に及ぶ痛みや疲労などの症状に基づいて下されます。... さらに読む など)または治らないけがに伴うもの
慢性疼痛があると、痛みに対する神経系の感受性が高くなることがあります。例えば、慢性疼痛があると、痛みの信号を検出し、送り、受け取っている神経線維と神経細胞が繰り返し刺激されます。刺激が繰り返されると、神経線維と神経細胞の構造が変わったり(リモデリングと呼ばれます)、これらの活動性が高まったりすることがあります。その結果、通常なら痛くないはずの刺激でも痛みが生じたり、痛みの刺激がより強く感じられたりします。この作用を感作と呼びます。
また、筋肉や結合組織から成る領域が、触覚に非常に敏感になったり、触ると痛んだりするようになります。このような領域に触れることで、体の別の領域へ放散する説明のつかない痛みが誘発(トリガー)されることから、このような領域をトリガーポイントと呼んでいます。
慢性疾患(がん、関節炎、糖尿病など)は、慢性疼痛を引き起こすことがあります。慢性疼痛は、けがに起因することもあり、神経線維や神経細胞を感作するものであれば、たとえ軽いけがでも原因になることがあります。
不安やその他の 心理的要因 痛みに寄与する心理的要因 痛み、特に慢性疼痛に寄与する一般的な心理的要因には、不安、抑うつ、不眠などがあります。 (痛みの概要も参照のこと。) 心理的要因は、痛みの感じ方に大きな影響を及ぼす可能性があり、特に慢性疼痛のほか、ときに痛みに関連した身体障害に強い影響を及ぼします。ほぼすべての痛みには、何らかの身体的要因があります。しかし、不安や抑うつなどの心理的要因があると、症状をうまくコントロールできないような感覚に陥り、日常生活に支障をきたすことがあります。例え... さらに読む は、痛みを不快に感じやすい人や、痛みによって活動が制限されやすい人がいることを部分的に説明できるかもしれません。例えば、慢性疼痛がある人は、痛みが再発することを知っているため、痛みを予期することで恐怖や不安が生じることがあります。恐怖や不安があると、痛みに対する神経細胞の感受性を低下させる物質の生産が減少することがあります。原因が解消した後も痛みが続いたり、痛みが予想以上に強く感じられたりすることがあるのは、痛みに対する感受性がこのように変化することも理由の1つです。
痛みの知覚に影響を与える要因はほかにもあります。痛みの治療を受け、保険を利用し、仕事を休むために病気であることを証明し続けなければならない場合、無意識に痛みを大げさに感じてしまうことがあります。このような反応は詐病とは異なります。詐病とは、何らかの利益を得るために意識的に症状を誇張することです。家族や友人は、患者に痛みがあるかどうかしつこく尋ねたり、代理で何かをしてあげることによって、図らず患者の痛みの知覚を強めてしまうことがあります。
けががきっかけで慢性腰痛が起きた場合など、もともとの原因がはっきりしていることもあれば、慢性頭痛などのように、原因が分からないこともあります。
症状
慢性疼痛がある人は、しばしば疲労を感じていて、睡眠障害、食欲減退、味覚減退、体重減少などがみられます。便秘になったり、性欲が減退したりすることもあります。このような問題は徐々に発生します。持続的な痛みがあると、普段楽しんでいた活動ができなくなることがあります。抑うつ状態になり不安を感じるようになることもあります。今までの活動をやめてしまい、引きこもり、体のことばかり気にするようになります。
突出痛とは、慢性疼痛の治療中に、短く(しばしば)激しい痛みが再燃することです。定期的に痛みをコントロールする治療を行っているにもかかわらず突然出現するために、突出痛と呼ばれます。突出痛には個人差があり、多くの場合は予測不能です。
診断
医師による評価
ときに精神医学的評価
医師は痛みの原因を特定し、日常生活への影響を評価するために、患者の状態を徹底的に評価します。最終的に原因が特定できない場合は、痛みを緩和し、支障なく生活を送れるようにすることに重点を移します。
医師は抑うつや痛みへの不安があるかどうか、よく眠れているかどうかを尋ねます。これらの症状は痛みを悪化させる可能性があり、痛みを効果的に治療するにはこれらの症状を治療する必要があるため、あらかじめ特定しておくことが極めて重要です。正式な精神機能の評価や 睡眠の評価 検査 睡眠関連の問題で最も多い訴えは、不眠症と日中の過度の眠気(EDS)です。 不眠症とは、寝つきが悪い、途中ですぐに目が覚める、朝早く目が覚める、あるいは、睡眠の質が悪く、寝足りない感じがしたり、すっきりした感じが得られなかったりする状態です。 日中の過度の眠気は、日中に異常なほど眠くなったり、眠り込んでしまったりする状態を指します。 寝つきが悪い、途中ですぐに目が覚める、朝早く目が覚めるという症状は、年齢を問わずみられます。成人の約10%... さらに読む が必要になる場合もあります。
治療
痛みを緩和する薬
理学的方法(理学療法など)
精神療法と行動療法
原因が特定された場合は、それを治療します。
慢性疼痛の治療には以下のものがあります。
痛みを緩和する薬(鎮痛薬)
理学的方法( 理学療法 理学療法 (PT) 理学療法は、リハビリテーションの中心となるもので、運動療法と整体を行います。関節や筋肉の機能を改善し、患者がより容易に立ち、バランスをとり、歩き、階段を昇れるようにします。理学療法では以下のような訓練が行われます。 関節可動域訓練 筋肉強化運動 協調・バランス運動訓練 歩行訓練 さらに読む や 作業療法 作業療法 (OT) 作業療法は、リハビリテーションの中心となるもので、基本的なセルフケア活動、有用な動作や作業、余暇活動を行う能力を高めることを目標としています。こうした活動には、基本的な日常活動(食べる、服を着る、入浴する、身だしなみを整える、トイレに行く、移乗する[いすからトイレやベッドに移る]など)や、より複雑な日常活動(食事の準備をする、電話やコンピュータを使う、お金や日々の投薬スケジュールを管理する、買い物をする、運転するなど)が含まれます。... さらに読む など)
鍼治療 鍼治療 中国伝統医学の1つである鍼(はり)治療は、欧米で最も広く受け入れられている代替医療の1つです。痛みの専門医などの医師が鍼治療の技術を習得し、免許を取得することはありますが、認可を受けている鍼灸師が必ずしも医学部を卒業しているとは限りません。毎日、何百万人もの人が鍼治療を受けています。 鍼治療では、皮膚と皮下組織に極細の鍼を刺し、体のツボに刺激を与えます。これら特定の部位を刺激することで、気の流れの障害が取り除かれると考えられています。「... さらに読む 、 マッサージ マッサージ療法 マッサージ療法は体の組織に対する手技で、健康状態を向上させ、痛みやストレスを和らげます。マッサージ療法には、なでたり按摩したりするものから(スウェーデンマッサージなど)、特定の部位に圧力をかけたりするものまで(指圧、鍼治療、神経筋マッサージなど)、軽く触れるものから体の深部に触れるものまで様々です。 マッサージ施術者は、体の筋骨格系や神経系、循環系にマッサージが有用であると主張しています。また、人の手で親身にケアを施してもらいたいという... さらに読む 、 経皮的電気神経刺激 薬剤以外による痛みの治療法 など、補完的かつ総合的な疼痛緩和法
精神療法と行動療法
これらの治療法で効果がなければ、ペインクリニックに紹介されることもあります。
薬剤
痛みの強さに応じて、以下のような様々な薬剤が使用されます。
鎮痛補助薬 鎮痛補助薬 基礎疾患を治療することで、痛みを解消したり最小限に抑えたりできるケースがあります。例えば、骨折をギプスで固定することや、感染を起こした関節に抗菌薬を投与することは、鎮痛に役立ちます。しかし、痛みの基礎疾患が治療可能な場合でも、痛みに速やかに対処するために痛み止め(鎮痛薬)が必要になる場合もあります。 医師が鎮痛薬を選択する際、痛みのタイプと持続期間、それぞれの鎮痛薬の便益とリスクを考慮します。ほとんどの鎮痛薬は侵害受容性疼痛(通常の組織... さらに読む と呼ばれる薬剤( 抗うつ薬 うつ病に対する薬物療法 うつ病とは、日常生活に支障をきたすほどの強い悲しみを感じているか、活動に対する興味や喜びが低下している状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がうつ病の一因になる可能性があります。 うつ病になると、悲しみに沈み、動作が緩慢になり、以前は楽しんでい... さらに読む や 抗てんかん薬 抗てんかん薬 けいれん性疾患では、脳の電気的活動に周期的な異常が生じることで、一時的に脳の機能障害が引き起こされます。 多くの人では、けいれん発作が始まる直前に感覚の異常がみられます。 コントロールできないふるえや意識消失が起こる場合もありますが、多くの場合は、単に動きが止まったり、何が起こっているか分からなくなったりするだけにとどまります。... さらに読む など)
慢性疼痛に対して痛み止め(鎮痛薬)を使用している人のほとんどでは、1日の内で痛みの強さが変わります。痛みの強さは、以下のようないくつかの要因によって変わります。
異常のある神経の特性(例えば、その神経が信号を伝える速さ、その神経の位置など)
痛みを引き起こす活動(動くことや患部を触ることなど)
精神的ストレス
痛み止めの血中濃度の変化
痛み止めの血中濃度が低くなり過ぎないように、医師はこれらの薬剤の用量や使用回数を変更することがあります。
薬剤の併用により、通常は1つの薬剤を使用する場合より痛みを効果的に緩和できます。
オピオイド オピオイド鎮痛薬 基礎疾患を治療することで、痛みを解消したり最小限に抑えたりできるケースがあります。例えば、骨折をギプスで固定することや、感染を起こした関節に抗菌薬を投与することは、鎮痛に役立ちます。しかし、痛みの基礎疾患が治療可能な場合でも、痛みに速やかに対処するために痛み止め(鎮痛薬)が必要になる場合もあります。 医師が鎮痛薬を選択する際、痛みのタイプと持続期間、それぞれの鎮痛薬の便益とリスクを考慮します。ほとんどの鎮痛薬は侵害受容性疼痛(通常の組織... さらに読む は、がんなど余命を短縮する病気(終末期疾患)による中等度から重度の痛みに対して最もよく使用されます。オピオイドは ホスピスケア ホスピスケア ホスピスプログラムでは、主に症状の軽減、緩和ケア、患者と家族に対する精神面のサポートを行います。 ホスピスプログラムでは診断検査や治癒を目的とした治療、あるいは延命に重点を置きません。 ホスピスとは、死が迫っている患者とその家族の苦痛を最小限にすることを主な目的とするケアのプログラムであり、またその概念を意味します。米国では、ホスピスは、居住場所で重病患者を支援するために広く利用されている唯一の総合的プログラムです。ホスピスプログラムは... さらに読む にも使用されます。オピオイドは、こういった状況の人に十分使用されていない場合があり、不必要な痛みで苦しませる結果となっています。
オピオイドが十分に使用されていない理由として、以下のものが考えられます。
効果を得るのに必要な用量を医師が過小に見積もっている
依存 物質使用障害 物質使用障害は、一般に物質の使用により問題が生じているにもかかわらず、その使用を続ける行動パターンがみられるものです。 関係する物質は、以下のような物質関連障害の典型的な原因として知られる10種類の薬物のいずれかであることが多くなっています。 アルコール 抗不安薬と鎮静薬 カフェイン さらに読む を始めとする オピオイドの副作用 オピオイドの副作用 基礎疾患を治療することで、痛みを解消したり最小限に抑えたりできるケースがあります。例えば、骨折をギプスで固定することや、感染を起こした関節に抗菌薬を投与することは、鎮痛に役立ちます。しかし、痛みの基礎疾患が治療可能な場合でも、痛みに速やかに対処するために痛み止め(鎮痛薬)が必要になる場合もあります。 医師が鎮痛薬を選択する際、痛みのタイプと持続期間、それぞれの鎮痛薬の便益とリスクを考慮します。ほとんどの鎮痛薬は侵害受容性疼痛(通常の組織... さらに読む のリスクを医師が過大評価している
しかし、オピオイドの副作用は通常予防ないし管理できるものであり、依存の心配もあまりないため、がんなどの終末期疾患による痛みがある人では、副作用の心配からオピオイドの使用を制限するべきではありません。
最近、余命を短縮しないがん以外の病気による慢性疼痛を治療する上でのオピオイドの使用に関するガイドラインが改定されました。この改定は、依存、呼吸抑制、過剰摂取による死亡など、オピオイドの副作用に対する認識が高まっていることを受けて行われました。そのため、医師は通常、このような病気の人に対してオピオイドではなく、 薬剤以外による治療法 薬剤以外による痛みの治療法 基礎疾患を治療することで、痛みを解消したり最小限に抑えたりできるケースがあります。例えば、骨折をギプスで固定することや、感染を起こした関節に抗菌薬を投与することは、鎮痛に役立ちます。しかし、痛みの基礎疾患が治療可能な場合でも、痛みに速やかに対処するために痛み止め(鎮痛薬)が必要になる場合もあります。 医師が鎮痛薬を選択する際、痛みのタイプと持続期間、それぞれの鎮痛薬の便益とリスクを考慮します。ほとんどの鎮痛薬は侵害受容性疼痛(通常の組織... さらに読む (理学療法など)や 非オピオイド鎮痛薬 非オピオイド鎮痛薬 基礎疾患を治療することで、痛みを解消したり最小限に抑えたりできるケースがあります。例えば、骨折をギプスで固定することや、感染を起こした関節に抗菌薬を投与することは、鎮痛に役立ちます。しかし、痛みの基礎疾患が治療可能な場合でも、痛みに速やかに対処するために痛み止め(鎮痛薬)が必要になる場合もあります。 医師が鎮痛薬を選択する際、痛みのタイプと持続期間、それぞれの鎮痛薬の便益とリスクを考慮します。ほとんどの鎮痛薬は侵害受容性疼痛(通常の組織... さらに読む (NSAIDや補助鎮痛薬など)を処方するようになっています。
ただし、以下のすべてに該当する場合には、これらの病気による中等度から重度の痛みに対して、オピオイドが考慮されることがあります。
他の治療法や薬剤を使用しても痛みが持続する
痛みが日常生活に支障をきたしている
リスクを上回るメリットがある
その患者がオピオイドを服用しつつ、定期的なフォローアップとモニタリングのために受診を継続する可能性が高い
余命を短縮しないがん以外の病気による痛みにオピオイドを使用するかどうかを決定するにあたり、医師は、そのような病気による痛みに対して通常どのような治療が行われるか、他の治療法が役立つかどうかといったことも検討します。医師がオピオイドによる治療が適切かどうかを判断するのに役立つガイドラインが公開されています。
何らかの慢性疼痛に対してオピオイドを処方する前に、医師は患者に対して問診を行い、以下のことを判断します。
患者が薬剤を誤用または乱用する可能性が高いかどうか—例えば、患者にアルコール乱用や薬物乱用の経歴があるか、うつ病などの重大な精神障害やその病歴があるか
オピオイドを使用することのリスクを高める他の薬剤(抗不安薬や睡眠補助薬など)を使用しているかどうか
患者が薬剤を他の目的(売却目的など)で使用する可能性が高いかどうか
オピオイドは通常、他の治療法(理学療法や精神療法など薬剤を使用しない治療法を含む)と一緒に使用されます。
医師が慢性疼痛に対してオピオイドを処方する場合、オピオイドを使用することに関するリスクを記載したパンフレットを渡します。また、オピオイドを使用する際に必要な条件(特殊なモニタリング方法など)を明記した合意書への署名を求められます。例えば、医師は患者の尿を定期的に検査し、薬剤が正しく使用されているかどうか判定します。また通常は、患者がオピオイドを受け取れる薬局を1つに限定します。
医師は患者にペインクリニックを紹介したり、物質乱用のリスクが高い患者には、物質乱用を専門的に扱っている精神医療従事者を紹介したりすることがあります。例えば、依存症の既往がある患者には通常、紹介が必要です。
医師はオピオイドのリスクと副作用を説明します。患者は以下の助言を受けます。
オピオイドの使用中は、飲酒をやめ、抗不安薬または睡眠補助薬を使用しないこと
推奨された用量を推奨された回数使用し、用量を勝手に変えないこと
オピオイドを他の人の手の届かない安全な場所に保存しておくこと
他の人とオピオイドを共用しないこと
薬剤を服用して眠気をもよおしたり、他の副作用(錯乱、便秘、吐き気など)がみられた場合は、主治医に連絡すること
使用しなかった錠剤は、指示通りに処理すること
ナロキソン(オピオイドの解毒薬)を手元に置いておき、オピオイドを過剰摂取した場合のナロキソンの使用方法を学んでおくこと
オピオイドによる治療中、医師は定期的に患者を評価し、オピオイドの効果があるか、患者の生活は楽になっているか、副作用が起こっていないかを確認します。多くの患者はオピオイドの副作用に耐えられなかったり、オピオイドを使用しても期待していたほど症状が緩和されなかったりするために、使用の中止を決断します。オピオイドによる治療を受けている患者で、長期的な痛みの緩和が得られるのは一部のみに過ぎず、効果があっても部分的な緩和であるのが通常です。
オピオイドは、一般的には内服薬か皮膚に貼るパッチ剤として使用されます。必要であれば、オピオイドを静脈または筋肉に注射したり、ポンプを使用して脊髄の周りの隙間に直接注入したりすることもあります。このような方法によるオピオイドの投与は、通常は病院または診療所で行われます。
抑うつがあれば、その治療のために抗うつ薬や精神療法が用いられます。
理学的方法
理学療法士または作業療法士は、様々な手段を用いて患者の痛みを緩和し、支障なく生活を送れるように手助けをします。トリガーポイントがあれば、スプレーでその領域を冷却し、その後筋肉をストレッチさせます。この(スプレー&ストレッチと呼ばれる)方法により痛みを軽減できることがあります。(損傷を受けた関節、靱帯、腱、筋肉、骨などを支える)装具の装着が有用な場合もあります。
ときに、運動をしたり、活動レベルを上げたりすることも有用です。例えば、定期的に歩く習慣をつけると、ベッドで休んでばかりの生活よりも効率的に腰痛を緩和できます。
精神療法と行動療法
様々な 心理的技法 心身施術 心身施術は、精神的または感情的要因が健康に影響を与えるという理論に基づく治療法です。行動的、心理的、社会的、スピリチュアルな手法を使い、健康の維持と病気の予防や治療を行います。 心身施術の有益性を裏付ける科学的根拠が豊富であることから、今日では、こうしたアプローチの多くが主流とみなされています。ただし、十分に確立され、科学的根拠に基づいているのはリラクゼーションの有益性のみです。他の心身施術に関しては、リラクゼーションを促す以外に立証さ... さらに読む (リラクゼーション訓練、注意転換法、催眠術、バイオフィードバック法など)が痛みのコントロールに役立つこともあります。注意転換法では誘導イメージ療法を用います。例えば、落ち着いた心地よい場面(ビーチで休んだりハンモックに揺られたりしているところなど)を想像するように指導を受けます。
行動療法は、痛みを軽減するわけではありませんが、日常生活をより円滑に送る上で役立ちます。医師は、身体的および社会的な活動を徐々に増やすための具体的なアドバイスをすることがあります。より円滑な生活を送る努力を痛みのために諦めないようにアドバイスを受けます。この方法を採用すると、多くの患者は痛みが減少したと言います。医師は患者の進歩を褒め、こういった努力を続け、必要に応じた治療を続けるよう励まします。
医師は家族や同僚とも話をして、患者が痛みに注意を向けてしまうような言動をしないように忠告します。例えば、家族や同僚は、患者に健康状態をしつこく尋ねたり、雑務や仕事をしないよう禁じたりするべきではありません。