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重症筋無力症

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM, Weill Cornell Medical College

最終査読/改訂年月 2018年 7月
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重症筋無力症は、神経と筋肉の間の信号伝達が妨げられる自己免疫疾患で、筋力低下の発作を引き起こします。

  • 重症筋無力症は、免疫系の機能不全により起こります。

  • 通常、まぶたの下垂と複視が起こり、運動後は筋肉の著しい疲労と筋力低下が起こります。

  • 診断を確定するためには、アイスパックや安静によってまぶたの下垂が軽減するかをみる検査、筋電図検査、血液検査が役立ちます。

  • 筋力を速やかに改善できる薬や、病気の進行を遅らせる薬があります。

重症筋無力症は若い女性と高齢男性に多くみられ、女性では通常20~40歳、男性では通常50~80歳の間に発生します。しかし、どの年齢層の男女でも起こりえます。まれに、小児期に始まることがあります。

神経と筋肉の間の情報伝達は、神経が放出する化学伝達物質(神経伝達物質)を介して行われ、これが(神経筋接合部における)筋肉の受容体と相互作用し、筋肉を刺激することで、筋肉が収縮します。重症筋無力症では、免疫系によって作られた抗体が、神経筋接合部の筋肉側の受容体(神経伝達物質のアセチルコリンに反応する受容体)を攻撃します。その結果、神経細胞と筋肉の間の信号伝達が妨げられます。

免疫系によって体内のアセチルコリン受容体が攻撃される現象(自己免疫反応)がどのような原因で起こるのかは不明です。ある理論では、胸腺の機能不全との関連が考えられています。免疫系の一部の細胞は、自分の体と異物とを区別する能力を胸腺で獲得します。理由は不明ですが、胸腺が免疫系の細胞にアセチルコリン受容体を攻撃する抗体を作るよう指示するのかもしれません。この自己免疫異常の素因は遺伝することがあります。重症筋無力症がある人の約65%では胸腺の肥大がみられ、約10%では胸腺腫瘍(胸腺腫)がみられます。これらの胸腺腫の約半数は悪性の腫瘍です。

重症筋無力症は、関節リウマチや自己免疫性甲状腺機能亢進症(甲状腺の活動が過剰になる自己免疫疾患)、橋本甲状腺炎など、他の自己免疫疾患をもつ人でもしばしばみられます。

一部の重症筋無力症では、アセチルコリン受容体に対する抗体がみられない代わりに、神経筋接合部の形成に関与している酵素に対する抗体がみられます。そのような場合は、通常とは異なる治療が必要です。

重症筋無力症は以下をきっかけとして発生することがあります。

  • 感染症

  • 手術

  • 特定の薬剤の使用(高血圧治療薬のニフェジピンやベラパミル、マラリア治療薬のキニーネ、不整脈治療薬のプロカインアミドなど)

新生児筋無力症

新生児筋無力症は、重症筋無力症の女性から産まれた子どもの12%で起こります。アセチルコリン受容体を攻撃する抗体は、血流に乗って体内を循環していて、妊婦の胎盤を通じて胎児に移行することがあります。その場合、新生児に筋力低下が生じますが、この症状は生後数日から数週間で消失します。残り88%の新生児はこの病気になりません。

症状

発作的に症状が悪化すること(増悪)がよくあります。そうでないときには症状は軽いか、まったく現れません。

重症筋無力症で最もよくみられる症状は以下のものです。

  • 眼瞼下垂(まぶたが力なく垂れ下がる)

  • 眼筋の筋力低下による複視

  • 特定の筋肉を使った後に起こる過剰な筋力低下

筋力低下は、筋肉を休ませると解消しますが、また筋肉を使うと再発します。寒い環境では、筋力低下が軽減します。

重症筋無力症患者の約40%では、眼の症状が最初に現れ、最終的には85%の人に眼の症状が現れます。15%の人では眼の筋肉にしか症状が現れませんが、大部分の人では全身に症状が現れます。

話すことや飲み込むことが困難になり、腕や脚の筋力も低下します。手を握ったとき、乳搾りをするときのように、握り方の強弱が変動することがあります。首の筋肉も弱くなることがあります。感覚の障害は起こりません。

重症筋無力症では、筋肉を繰り返し動かすと筋力が低下します。例えば、以前はハンマーを問題なく使えていた人が、数分間打っただけで力が出なくなります。しかし、筋力低下の程度は分刻み、時刻毎、日毎に変化し、病気の経過も非常に多様です。

重症筋無力症

重症筋無力症患者の約15~20%は、筋無力症クリーゼと呼ばれる重度の発作を人生のうち少なくとも1回経験します。筋無力症クリーゼは感染症がきっかけで起こることがあります。腕と脚に極度の筋力低下が起こりますが、それでも感覚は失われません。

呼吸に必要な筋肉に筋力低下が起こることもあり、その場合は生命が脅かされます。

診断

  • アイスパックまたは安静によって症状の改善をみる

  • 筋電図検査

  • 血液検査

発作性の筋力低下があり、特に眼や顔面の筋肉に症状がある場合や、ある筋肉を使うと筋力低下が強まって安静時に症状が消える場合には、重症筋無力症が疑われます。

重症筋無力症による筋力低下は、冷やしたり安静にしたりすると軽減するため、医師は患者の眼の上にアイスパックをのせたり、暗い部屋で目を閉じたまま数分間静かに横たわるよう指示したりすることがあります。この検査は通常、まぶたが明らかに垂れ下がっている患者にのみ行われます。手順後にまぶたの下垂が軽減していたら、医師は重症筋無力症を疑います。

診断を確定するには、他の診断検査が必要です。具体的には以下のものがあります。

  • 筋電図検査(筋肉を刺激してから電気的活動を記録する検査)

  • 血液検査(この病気の人にみられるアセチルコリン受容体に対する抗体やその他の抗体を検出する)

血液検査により、甲状腺疾患などのその他の病気の有無を確認することもあります。

重症筋無力症の診断が確定すれば、胸部のCTまたはMRI検査を行い、胸腺について評価するとともに胸腺腫の有無を調べます。

治療

  • ピリドスチグミンまたは同様の薬剤

  • コルチコステロイドまたは免疫系を抑制する薬

  • ときに免疫グロブリン製剤の静脈内投与または血漿交換

  • しばしば胸腺の摘出

重症筋無力症の人には、以下の目的で薬剤が投与されることがあります。

  • 筋力を速やかに回復させる

  • 自己免疫反応を抑え、病気の進行を遅らせる

筋力を速やかに回復させる薬

アセチルコリンの量を増加させるピリドスチグミン(経口薬)などの薬剤により筋力が改善することがあります。朝、目覚めたときに重度の筋力低下や嚥下困難がみられる場合は、長時間作用型の錠剤を夜間に服用します。

薬剤の用量は医師が定期的に調整する必要があり、筋力低下の発作があるときには増量しなければならない場合もあります。しかし、投与量が多すぎても筋力低下が起こることがあり、病気による筋力低下との区別が困難になります。この作用をコリン作動性クリーゼと呼びます。コリン作動性クリーゼが発生した場合、薬の使用を数日間中止する必要があります。コリン作動性クリーゼが起きると(筋無力症クリーゼのときと同様に)、呼吸に必要な筋肉の筋力が低下することがあります。そのような場合は、集中治療室で治療を行うことになります。

また、これらの薬剤は長期間使用すると有効性が低下することがあります。筋力低下が進んでいる場合は、薬剤の有効性が低下している可能性があり、重症筋無力症の治療経験が豊富な医師の診察を受ける必要があります。

ピリドスチグミンでよくみられる副作用は、腹部けいれんと下痢です。これらの副作用に対処するため、アトロピンやプロパンテリンなどの消化管活動を抑える薬が必要になることがあります。

自己免疫反応を抑える治療

自己免疫反応を抑えるために、医師は以下の薬剤も処方することがあります。

  • プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)などのコルチコステロイド

  • ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリン、アザチオプリンなどの免疫系を抑制する薬(免疫抑制薬)

これらはいずれも経口薬です。

大半の患者は、コルチコステロイドを無期限に服用する必要があります。コルチコステロイドの服用を開始すると、最初は症状が悪化することがありますが、2~3週間以内に改善がみられます。その後は効果が得られる最小限の用量まで減らします。コルチコステロイドを長期間服用すると中等度から重度の副作用が起こる可能性があります。そのため、コルチコステロイドを中止または減量できるように、アザチオプリンを使用することがあります。アザチオプリンによる改善がみられるには、およそ12カ月かかります。

これらの薬剤でも改善しない場合には、リツキシマブやエクリズマブなどのモノクローナル抗体が役立つことがあります。使用するモノクローナル抗体は、免疫系の特定の部分を標的にして抑制する、人工的に製造された抗体です。

筋無力症クリーゼが発生した場合は、免疫グロブリンの静脈内投与または血漿交換が行われることがあります。これらの治療法は、薬剤で症状が改善せず、胸腺を手術で切除する場合にも(手術の前に)用いられます。

免疫グロブリン製剤(複数のドナーから採取した多くの様々な抗体を含む溶液)は、1日1回、5日間静脈内投与します。この製剤には、免疫系の制御を助け、重症筋無力症を引き起こしている自己免疫反応を止めるのに役立つ抗体が含まれています。3分の2以上の人は1~2週間で改善がみられ、効果が2カ月続きます。

血漿交換では、フィルターによって血液中から有害物質(この場合は異常抗体)を取り除きます。血漿交換後の経過は、免疫グロブリン製剤の投与後と同様です。

その他の治療

胸腺腫がある場合は、胸腺腫が広がるのを防ぐために胸腺を摘出する手術が必要です。胸腺を摘出すると、症状が寛解するか、コルチコステロイドの用量を減量できるようになります。

ときに、胸腺腫がなくても胸腺を摘出する医師もいます。この治療は効果があるとみられています。

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