Msd マニュアル

Please confirm that you are not located inside the Russian Federation

読み込んでいます

筋萎縮性側索硬化症(ALS)とその他の運動ニューロン疾患(MND)

(ルー・ゲーリッグ病;Lou Gehrig病;Lou Gehrig's病)

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM, Weill Cornell Medical College

最終査読/改訂年月 2018年 7月
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
本ページのリソース

運動ニューロン疾患は、筋肉の運動を開始させる神経細胞が進行性に変性することを特徴とします。その結果、これらの神経に刺激されていた筋肉も萎縮し、正常に機能しなくなります。

  • 筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリッグ病)は、最も一般的な運動ニューロン疾患です。

  • 通常は、筋力の低下や萎縮が起こって、動きが固くなり、ぎこちなくなります。

  • 医師は主に診察結果からこの病気を疑い、筋電図検査、神経伝導検査、MRI検査、血液検査の結果を参考にして診断を確定します。

  • 特別な治療法はなく、治癒することはありませんが、薬剤によって症状を軽減することができます。

運動ニューロン疾患には、末梢神経系だけでなく、中枢神経系(脳と脊髄)が関与する場合もあります。

筋肉が正常に機能するためには、筋肉組織だけでなく脳と筋肉をつなぐ神経も正常でなければなりません。筋肉の運動は、脊髄と脳の前方(運動皮質)にある神経細胞(ニューロン)によって開始されます。この神経細胞は、筋肉の運動を刺激する神経(運動神経)とつながっています。運動ニューロン疾患では、これらの神経細胞が進行性に変性します。その結果、筋肉自体に問題がなくても、筋力の低下や萎縮が起こり、完全に麻痺することもあります。

脳を使って筋肉を動かす

筋肉の動きは通常、脳と筋肉との間で神経を介して情報が伝達されることによって起こります。ときに、感覚が筋肉を動かすきっかけとなることがあります。例えば、とがった石を踏んだり、非常に熱いコーヒーの入ったカップに触れたりすると、皮膚にある特殊な神経終末(感覚受容器)で痛みや熱さが感知されます。この情報は脳に伝えられ、脳はどう反応するかの司令を筋肉に送ります。このタイプの情報交換は、2つの複雑な神経伝達経路に沿って行われます。

  • 脳に向かう感覚神経経路

  • 筋肉に向かう運動神経経路

脳を使って筋肉を動かす
  • 皮膚の感覚受容器は、痛みや温度変化を感知すると信号を発する(この信号は最終的に脳に届く)。

  • その信号はまず、1本の感覚神経に沿って脊髄まで伝わる。

  • ここで信号は、感覚神経と脊髄の神経細胞との間のシナプス(2つの神経細胞同士の接合部)を通過する。

  • 信号は、その脊髄の神経細胞から脊髄の反対側に送られる。

  • 信号は脊髄に沿って脳に向かって上っていき、脳幹を通過して、脳の深部にある感覚情報処理の中枢である視床に到達する。

  • 信号は、視床のシナプスを通過して、大脳の感覚皮質(感覚受容器からの情報を受け取って解釈する領域)につながる神経線維に伝わる。

  • 感覚皮質が信号を受け取る。その結果、この人が何らかの動作を起こそうと決めた場合は、運動皮質(随意運動を計画、制御、実行する領域)から新たな信号が発せられる。

  • この信号を伝える神経は脳の底部で体の反対側に移る。

  • そして信号は脊髄に沿って下行していく。

  • 信号は続いて、脊髄内で、脊髄の神経線維と運動神経との間にあるシナプスを通過する。

  • 脊髄から出た信号は運動神経に沿って進んでいく。

  • 信号は神経筋接合部(神経が筋肉と接続している部分)で運動神経から筋肉の運動終板にある受容器まで進み、そこで信号が筋肉を刺激することにより、実際に筋肉が収縮する。

運動ニューロン疾患には、以下のような様々な病型があります。

運動ニューロン疾患は男性に多くみられ、通常は50代で発症します。通常は原因不明です。約5~7%の患者は遺伝性の運動ニューロン疾患で、その家族にも同じ疾患をもつ人がいます。

病気の種類によって、最初に侵される神経系の部位が異なります。例えば、口とのどの筋肉が最初に影響を受ける運動ニューロン疾患もあれば、手足の筋肉が最初に影響を受けたり、手足の筋肉に最も重い影響が出たりする運動ニューロン疾患もあります。

麻痺が長く続くと、筋肉が短くなって元に戻らなくなること(拘縮)もあります。

症状

筋力が低下しますが、痛みや感覚の変化はみられません。抑うつがよくみられます。

筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリッグ病)

筋萎縮性側索硬化症は進行性の病気です。最初の症状は多くの場合手の筋力低下で、より頻度は下がりますが、足、口、のどの筋力低下から始まることもあります。筋力低下の進行は左右どちらか一方でひどくなる傾向があり、通常は腕または脚を上向きに広がっていきます。筋肉(通常は手足のもの)は萎縮し始めます。強い痛みを伴う筋肉のけいれんもよくみられ、筋力が低下する前にけいれんが起こることもありますが、感覚の変化はありません。体重が減少し、異常な疲れを感じる人もいます。

時間の経過とともに筋力の低下が進みます。

筋肉はピクピク動きます(線維束性収縮)。筋緊張は典型的には亢進し、筋肉は硬くこわばる傾向があり、筋れん縮に至ります(けい縮)。動きは硬くぎこちなくなります。患者の中には、筋緊張が低下し、四肢がだらんと垂れ下がったように見えることもあります。

顔の表情をコントロールすることが困難になることがあります。のどの筋肉が衰えると、話し方が不明瞭になったり、ものを飲み込みにくくなったり(嚥下困難)します。ものが飲み込みにくいため、ときによだれが垂れたり、液体でむせやすくなったりします。食べものや唾液を肺に吸い込む(誤嚥する)と、肺炎のリスクが高まります(誤嚥性肺炎といいます)。通常は鼻声になりますが、声がれがみられることもあります。

病気が進行すると、情動反応をコントロールできなくなる場合もあり、不適切な場面で笑ったり泣いたりしてしまうことがあります。

最終的に呼吸を行う筋肉の力が低下して呼吸困難が起こり、一部の人では人工呼吸器が必要になります。

筋萎縮性側索硬化症の進行の速さは様々です。

  • 約50%の患者は最初の症状の出現から3年以内に死亡します。

  • 約20%の患者は5年間生存します。

  • 約10%の患者は10年間以上生存します。

  • 診断後30年以上生存する人もわずかにいます。

原発性側索硬化症と進行性仮性球麻痺

これらの運動ニューロン疾患は、筋萎縮性側索硬化症のまれな変異型で、ゆっくり進行します。

  • 原発性側索硬化症では主に腕と脚が侵されます。

  • 進行性仮性球麻痺では主に顔面、あご、のどの筋肉が侵されます。

いずれの病気でも、筋力が低下し、筋肉が非常に硬くこわばります(けい縮)。筋肉はピクピク動くようになり(線維束性収縮)、萎縮します。

感情が変化しやすくなる場合もあり、進行性仮性球麻痺では、理由なく幸福感と悲しみとが素早く切り替わることがあります。不適切な感情の爆発もよくみられます。

通常は、数年間にわたる進行を経て、全身の身体障害に至ります。

進行性筋萎縮症

進行性筋萎縮症はどの年齢層でも発生します。筋萎縮性側索硬化症と似ていますが、進行がより遅く、けい縮は起こらず、筋力低下もそれほど重症化しません。最初期の症状として、筋線維の不随意な収縮やピクピクした動きがみられます。

筋肉が減っていき、筋力が低下します。通常はまず手に症状が出て、次に腕、肩、脚に広がります。最終的には全身に影響が出ます。

多くの人は25年以上生存します。

進行性球麻痺

進行性球麻痺は、ものをかんだり、飲み込んだり、言葉を話したりするのに使う筋肉を制御する神経が侵されるため、それらの動作が次第に困難になる病気です。鼻声になることがあります。感情が変化しやすくなる人もいます。

ものがうまく飲み込めなくなるため、食べものや唾液がしばしば肺に吸い込まれて、むせたりのどに詰まったりするため、肺炎のリスクが高まります。

症状が現れてから1~3年後に死に至ることが多く、死因の多くは肺炎です。

診断

  • 医師による評価

  • MRI検査、筋電図検査、神経伝導検査などの検査

成人に痛みや感覚消失を伴わない進行性の筋力低下がある場合は、運動ニューロン疾患が疑われます。医師は以下の点について尋ねます。

  • 体のどの部位に症状があるか

  • 症状はいつから始まったか

  • 最初に現れた症状は何か

  • 時間の経過とともに症状に変化があったか

これらの情報は症状の原因を探る手がかりになります。

筋力低下の原因には様々なものがあります。可能性を絞りこむために、次のような診断検査が行われます。

  • 脳のMRI検査のほか、ときに脊髄のMRI検査を行い、同様の症状を引き起こす他の病気の可能性を否定します。

  • 筋電図検査(筋肉を刺激して電気的な活動を記録する検査―)は、神経と筋肉のどちらに問題があるかを判断するのに役立ちます。

  • 神経が信号を伝える速度を測定するため、神経伝導検査を行うこともあります。運動ニューロン疾患では、信号が伝わる速度は、末期になるまで変わりません。したがって、信号が伝わる速度が予想より遅い場合は、別の病気による症状である可能性があります。

  • 筋力低下の原因になりうる別の病気を調べるため、さらに他の検査を行う場合もあります。

他の病気に対する検査として、医師は以下の検査を行うことがあります。

  • 感染症や代謝疾患の有無を確認するための血液検査

  • 重金属(鉛や水銀など)にさらされたことがある人では、重金属を検出するための尿検査

  • 炎症の有無を確認するための腰椎穿刺

  • 遺伝性ニューロパチーなどの遺伝性疾患の有無を確認するための遺伝子検査

時間が経つにつれ、運動ニューロン疾患は非常に特徴的な症状を引き起こす傾向があるため、検査をしなくても診断が明らかになることがあります。

治療

  • 理学療法

  • 症状を緩和する薬

運動ニューロン疾患に対する特別な治療法はなく治癒することはありません。ですが、安全かつ効果的な治療法を探す研究が続けられています。

複数の分野の医療従事者で構成されるチームがケアにあたることは、患者が身体障害の進行に対処する上での助けとなります。理学療法は、筋力と関節の柔軟性を維持し、筋肉の短縮(拘縮)を防ぐのに役立ちます。ものを飲み込むのが困難になった場合は、食事の際にのどを詰まらせないよう、看護師やその他の介護者が十分注意して介助する必要があります。場合によっては、腹壁から胃に挿入したチューブ(胃瘻チューブ)を介して栄養を投与する必要が生じます。

以下の薬剤は、症状の緩和に役立ちます。

  • バクロフェンはけい縮を軽減するのに役立ちます。

  • フェニトイン、キニーネはけいれんを軽減するのに役立ちます。

  • 抗コリン作用の1つに唾液の産生の減少があるため、抗うつ薬のアミトリプチリンなど、抗コリン作用のある薬は、よだれを軽減するために使用されることがあります。

  • アミトリプチリンや同じく抗うつ薬であるフルボキサミンは、感情が変化しやすい場合や、抑うつがある場合に役立ちます。デキストロメトルファン(せき止め薬)とキニジン(マラリア治療薬)を組み合わせた薬剤は、感情のゆれのコントロールに役立つことがあります。

筋萎縮性側索硬化症では、神経細胞を保護する働きがある薬であるリルゾールにより、数カ月余命を延長できる可能性があります。リルゾールは経口投与します。新薬のエダラボンは、筋萎縮性側索硬化症の人の機能低下をある程度遅らせる可能性があります。

病気の進行に伴って痛みが発生した場合は(例えば、同じ姿勢で長時間座っていると痛くなることがあります)、弱い鎮静薬であるベンゾジアゼピン系薬剤が使用されることがあります。

進行性球麻痺では、嚥下を改善する手術が少数の人で有用です。

筋萎縮性側索硬化症と進行性球麻痺は、進行性の治癒不可能な病気であるため、これらの病気になった場合は、終末期にどのような医療を望むかを記した事前指示書を作成しておくことが推奨されます。

ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
よく一緒に読まれているトピック

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP