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末梢神経系の概要

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center

最終査読/改訂年月 2018年 7月
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末梢神経系とは、中枢神経系以外の神経系、すなわち脳と脊髄以外の神経のことを指します。

末梢神経系には以下のものが含まれます。

  • 脳と頭部、顔面、眼、鼻、筋肉、耳をつなぐ神経(脳神経

  • 脊髄と体の他の部位をつなぐ神経(31対の脊髄神経を含む)

  • 体中に分布している1000億個以上の神経細胞

脳を使って筋肉を動かす

筋肉の動きは通常、脳と筋肉との間で神経を介して情報が伝達されることによって起こります。ときに、感覚が筋肉を動かすきっかけとなることがあります。例えば、とがった石を踏んだり、非常に熱いコーヒーの入ったカップに触れたりすると、皮膚にある特殊な神経終末(感覚受容器)で痛みや熱さが感知されます。この情報は脳に伝えられ、脳はどう反応するかの司令を筋肉に送ります。このタイプの情報交換は、2つの複雑な神経伝達経路に沿って行われます。

  • 脳に向かう感覚神経経路

  • 筋肉に向かう運動神経経路

脳を使って筋肉を動かす
  • 皮膚の感覚受容器は、痛みや温度変化を感知すると信号を発する(この信号は最終的に脳に届く)。

  • その信号はまず、1本の感覚神経に沿って脊髄まで伝わる。

  • ここで信号は、感覚神経と脊髄の神経細胞との間のシナプス(2つの神経細胞同士の接合部)を通過する。

  • 信号は、その脊髄の神経細胞から脊髄の反対側に送られる。

  • 信号は脊髄に沿って脳に向かって上っていき、脳幹を通過して、脳の深部にある感覚情報処理の中枢である視床に到達する。

  • 信号は、視床のシナプスを通過して、大脳の感覚皮質(感覚受容器からの情報を受け取って解釈する領域)につながる神経線維に伝わる。

  • 感覚皮質が信号を受け取る。その結果、この人が何らかの動作を起こそうと決めた場合は、運動皮質(随意運動を計画、制御、実行する領域)から新たな信号が発せられる。

  • この信号を伝える神経は脳の底部で体の反対側に移る。

  • そして信号は脊髄に沿って下行していく。

  • 信号は続いて、脊髄内で、脊髄の神経線維と運動神経との間にあるシナプスを通過する。

  • 脊髄から出た信号は運動神経に沿って進んでいく。

  • 信号は神経筋接合部(神経が筋肉と接続している部分)で運動神経から筋肉の運動終板にある受容器まで進み、そこで信号が筋肉を刺激することにより、実際に筋肉が収縮する。

それぞれの末梢神経は以下の部分から構成され、このいずれが損傷を受けても、末梢神経の機能障害が生じます。

  • 軸索(信号が伝わる部分)

  • 神経細胞の細胞体

  • 髄鞘(軸索を包んでいる膜で、電線の絶縁体のような働きがあり、神経信号が伝わる速度を高めている)

多発性硬化症などでみられる髄鞘の損傷は、脱髄と呼ばれます。

神経線維を絶縁する組織

脳の内外のほとんどの神経線維は、脂肪(リポタンパク)でできた何層もの組織(ミエリンといいます)に包まれています。それらの層は髄鞘と呼ばれる組織を形成しています。髄鞘は電線を包む絶縁体のような役割を果たしていて、この働きによって、神経の情報伝達に必要な信号が神経線維に沿って速やかに伝えられます。

髄鞘が損傷すると、信号が神経を正常に伝わらなくなります。

神経線維を絶縁する組織

末梢神経疾患では以下のものが侵されます。

  • 1つの神経(単神経障害

  • それぞれ別の領域にある2つ以上の末梢神経(多発性単神経障害

  • 全身にわたる多数の神経、ただし通常は体の両側のほぼ同じ領域にある神経(多発神経障害

  • 脊髄神経根(脊髄神経が脊髄と接続している部分)

  • 神経叢(神経線維のネットワークであり、ここで神経線維が並び替えられ、再び組み合わされて体の特定の領域へ向かう)

  • 神経筋接合部(神経と筋肉の接続部)

筋肉の運動を刺激する運動神経が損傷すると、筋力の低下または麻痺が生じます。(痛み、温度、振動などの)感覚情報を伝える感覚神経が損傷すると、異常な感覚や感覚の消失が起こります。

運動神経の病気(運動ニューロン疾患)はまれですが、進行性で、しばしば死に至ります。

末梢神経疾患には、遺伝性のものもあれば、後天性のもの(毒性物質への曝露、けが、感染症、代謝性疾患、炎症性疾患などによるもの)もあります。

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末梢神経疾患の主な原因

種類

運動ニューロン疾患

遺伝性

突然発症する後天性疾患

ポリオコクサッキーウイルス、その他のエンテロウイルス(まれ)、ウエストナイルウイルスによる感染症

慢性の後天性疾患

神経根疾患

遺伝性

神経線維腫(軟らかく肉のように増殖した神経組織)

後天性

椎間板ヘルニア、感染症、けが、がんの転移

神経叢疾患

後天性

急性腕神経叢炎自己免疫疾患出産中の新生児のけが糖尿病、血腫(血の貯留)、重症外傷(高速度の自動車事故など)、がんの転移、神経線維腫症(まれ)、神経の腫瘍

末梢神経疾患

遺伝性

遺伝性ニューロパチー(シャルコー-マリー-トゥース病など)

感染性のもの

発展途上国では、ジフテリアハンセン病寄生虫感染症

炎症性のもの

虚血性(血液供給の途絶による)

血管炎(血管の炎症)

代謝性

アミロイドーシス、糖尿病、ビタミンB欠乏症、慢性の過度の飲酒による低栄養、腎不全

圧迫に関連するもの(神経絞扼症候群と呼ばれる)

毒性物質(毒素)

ヒ素、、水銀

神経筋接合部疾患

様々

乳児のボツリヌス症イートン-ランバート症候群重症筋無力症殺虫剤または神経ガス(サリンなど)への曝露による機能障害、特定の薬物の使用による機能障害

筋肉の病気*

遺伝性

内分泌

先端巨大症(成長ホルモンの過剰分泌による過度の発育)、クッシング症候群、糖尿病、甲状腺機能亢進症(甲状腺の活動が過剰になった状態)、甲状腺機能低下症(甲状腺の活動が不十分になった状態)

炎症性

感染症(通常はウイルス性)、多発性筋炎や皮膚筋炎

代謝性

脂質糖原病、アルコール依存症、低カリウム血症(血液中のカリウム濃度が低いこと)

*神経ではなく筋肉を侵す病気は、末梢神経障害と同様に、筋力低下を引き起こします。医師は、筋力低下の原因が筋肉の異常なのか神経の問異常なのかを判断するための検査を行います。

診断

  • 医師による評価

  • ときに筋電図検査と神経伝導検査、画像検査、または生検

  • 遺伝性ニューロパチーが疑われる場合は遺伝子検査

末梢神経疾患を診断する際、医師は患者に以下のような質問をします。

  • 症状はいつ始まったか

  • 最初に現れた症状は何か

  • 時間の経過とともに症状に変化があったか

  • 体のどの部位に症状があるか

  • 症状を軽減または増悪させる因子は何か

医師は可能性のある原因について探るため、感染症またはその他の病気にかかったことがあるか、毒性物質にさらされたことがあるか、家族に同様の症状をもつ人がいるかなどの質問をします。これらの情報は症状の原因を探る手がかりになります。

医師による徹底的な身体診察と神経学的診察は、原因の特定に役立ちます。神経学的診察では以下の点が評価されます。

診察で得られる所見により、可能性のある原因が示唆されたり、必要な検査の指針が立てられたりします。

以下のような検査が行われます。

  • 筋電図検査と神経伝導検査:問題が神経にあるのか筋肉にあるのかを判断するのに役立ちます。

  • 画像検査:脳神経または脊髄に影響を及ぼす異常(腫瘍など)がないか確認し、同じ症状を引き起こす他の異常を否定します。

  • 筋肉と神経の生検:問題の種類(神経が脱髄しているのか、炎症を起こしているのかなど)を特定します。

  • 遺伝性ニューロパチーが疑われる場合は、遺伝子検査(異常な遺伝子を検出するための血液検査)を行うこともあります。

治療

  • 可能であれば原因の治療

  • 症状の緩和

  • ときに、理学療法、作業療法、言語療法

症状を引き起こしている病気がある場合、可能であればその治療を行います。それ以外の場合、医師は症状の緩和に重点を置きます。

複数の分野の医療従事者で構成されるチームがケアにあたることは、患者が身体障害の進行に対処する上での助けとなります。このチームは以下のメンバーで構成されます。

  • 理学療法士は、患者が筋肉を使い続けられるよう支援します。

  • 作業療法士は、患者が日常生活を送る上で役立つ補助器具(歩行を補助する器具など)についてアドバイスします。

  • 言語療法士は、患者が意思疎通できるよう支援します。

  • 嚥下困難や呼吸困難などの特定の症状に対処する専門家も参加します。

余命を短縮する末梢神経疾患の場合、患者、家族、介護者は医療従事者と対話の場を設け、患者が治療に関する決定をする能力がなくなったときにどうするかということを率直に話し合っておくべきです。最善のアプローチは、患者が治療に関する意思決定ができなくなった場合に備えて、治療に関する患者の希望を書いた法的文書(事前指示書と呼ばれます)を作成しておくことです。

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