スティッフパーソン症候群は、しばしば1型糖尿病、特定の自己免疫疾患、または特定のがんがある人に起こります。
まず体幹や腹部の筋肉が徐々に硬く大きくなっていき、最終的には症状が全身の筋肉が侵されます。
医師は症状からスティッフパーソン症候群を疑いますが、診断を確定するには筋電図検査と血液検査の結果を参考にします。
治療では症状の緩和に重点が置かれ、ジアゼパム(鎮静薬)、バクロフェン(筋弛緩薬)、コルチコステロイドのほか、ときにリツキシマブまたは血漿交換などが用いられます。
スティッフパーソン症候群(以前はスティッフマン症候群と呼ばれていました)は、主に脳と脊髄(中枢神経系)を侵しますが、一部の末梢神経疾患に似た症状を引き起こします。
スティッフパーソン症候群は女性に多くみられ、しばしば1型糖尿病、特定の自己免疫疾患(甲状腺炎 橋本甲状腺炎 橋本甲状腺炎は、甲状腺に慢性的な自己免疫性の炎症が生じる病気です。 橋本甲状腺炎は、体内の抗体が自身の甲状腺の細胞を攻撃すること(自己免疫反応)で発生します。 最初、甲状腺は正常に機能していることもあれば、活動が不十分なこともあり(甲状腺機能低下症)、まれですが活動が過剰になっていること(甲状腺機能亢進症)もあります。 ほとんどの人が最終的に甲状腺機能低下症になります。 甲状腺機能低下症では通常、疲労を感じ、寒さに耐えられなくなります。 さらに読む など)、または特定のがん(乳がん[最多]、肺がん、腎臓がん、甲状腺がん、結腸がん、 ホジキンリンパ腫 ホジキンリンパ腫 ホジキンリンパ腫は、リンパ球と呼ばれる 白血球のひとつががんになる病気で、リード・シュテルンベルク細胞と呼ばれる特殊ながん細胞が認められることで区別されます。 発生原因は分かっていません。 リンパ節の腫れがみられますが、通常は痛みを伴いません。 ほかにも、がん細胞が増殖している場所によっては、発熱、かゆみ、息切れなどの症状が出ることがあります。 診断にはリンパ節の生検が必要になります。 さらに読む など)がある人に起こります。
スティッフパーソン症候群の原因は、 自己免疫反応 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む (体が自分の組織を攻撃する抗体を作る反応)であると考えられています。スティッフパーソン症候群では、筋肉の運動を制御する脊髄の神経細胞が、これらの抗体によって攻撃されます。スティッフパーソン症候群の人のほとんどに、グルタミン酸脱炭酸酵素という酵素を攻撃する抗体がみられます。この酵素は、神経が筋肉を過剰に刺激するのを防ぐ化学伝達物質(神経伝達物質)の生産に関与しています。この酵素の生産量が少なくなると、神経が筋肉を過剰に刺激するようになり、筋肉が硬くこわばります。
スティッフパーソン症候群はときに原因不明の場合もあります。
スティッフパーソン症候群の症状
スティッフパーソン症候群の人では、体幹や腹部の筋肉が徐々に硬くなり、肥大します。腕や脚の筋肉も侵されますが、それほど症状はひどくありません。
スティッフパーソン症候群は、治療しないでいると進行して、全身に及ぶこわばりと身体障害をもたらします。
スティッフパーソン症候群の診断
筋電図検査
血液検査
スティッフパーソン症候群の診断では、症状からこの病気が示唆されます。そして、診断の確定を補助するために検査を行います。具体的には、 筋電図検査 筋電図検査 病歴聴取と 神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 脳波検査は、脳の電気的な活動を波形として計測して、紙に印刷したりコンピュータに記録したりする検査法で、痛みを伴わずに容易に行えます。脳波検査は以下の特定に役立つ可能性があります。 けいれん性疾患 睡眠障害 一部の代謝性疾患や脳の構造的異常 さらに読む のほか、スティッフパーソン症候群の多くの人にみられる抗体を検出する血液検査などが行われます。
スティッフパーソン症候群の治療
ジアゼパム(鎮静薬)または筋肉を弛緩させるその他の薬剤
免疫グロブリン製剤
ときにコルチコステロイド
ときにリツキシマブまたは血漿交換
スティッフパーソン症候群の治療では、症状の緩和に重点が置かれます。鎮静薬のジアゼパムで、ほぼ確実に筋肉のこわばりを和らげることができます。ジアゼパムで効果がなければ、バクロフェン(筋弛緩薬)などその他の薬剤が試されることがあります。
免疫グロブリン製剤(複数のドナーから採取した多くの様々な抗体を含む溶液)の静脈内投与が最大1年間にわたって症状の緩和に役立つことがあります。
コルチコステロイド コルチコステロイド 関節リウマチは炎症性関節炎の1つで、関節(普通は手足の関節を含む)が炎症を起こし、その結果、関節に腫れと痛みが生じ、しばしば関節が破壊されます。 免疫の働きによって、関節と結合組織に損傷が生じます。 関節(典型的には腕や脚の小さな関節)が痛くなり、起床時やしばらく動かずにいた後に、60分以上持続するこわばりがみられます。 発熱、筋力低下、他の臓器の損傷が起こることもあります。... さらに読む は有用ですが、長期間使用すると様々な副作用が起こります。
免疫グロブリン製剤で効果がみられない場合は、リツキシマブ(免疫系の活性を調節する薬剤)または 血漿交換 血小板献血 通常の 献血と 輸血に加えて、特別な処置が行われることがあります。 血小板献血では、全血ではなく 血小板だけを採取します。供血者から採取した血液を機器で成分毎に分け、血小板だけを選別して、残りの成分は供血者に戻します。血液の大部分が体内に戻るため、全血の場合と比べて、1回に8~10倍の血小板を安全に採取できます。3日毎に1回(ただし、供血は1年に24回まで)と、より頻繁に血小板を採取できます。全血の場合は採血にかかる時間は10分程度です... さらに読む (異常抗体などの有害物質をフィルターで血液から取り除く治療)が試みられることがあります。