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クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)

(亜急性海綿状脳症)

執筆者:

Pierluigi Gambetti

, MD, Case Western Reserve University

最終査読/改訂年月 2017年 9月
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クロイツフェルト-ヤコブ病(亜急性海綿状脳症)はプリオン病の一種で、進行性の精神機能の低下を特徴とし、認知症、筋肉が不随意にビクッとふるえる動き(ミオクローヌス)、歩行時のよろめきなどの症状が現れます。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は、汚染された牛肉を食べることで感染します。

  • 通常は自然発生的に起こりますが、汚染された牛肉を食べたり、異常な遺伝子を受け継いで起こることもあります。

  • ほとんどの人では、最初に錯乱と記憶障害が起こり、続いて筋肉が不随意にビクッとふるえる動きと協調運動障害が現れます。

  • ほとんどの場合、4カ月~2年以内に死に至ります。

  • 診断は通常、脳波検査、脳脊髄液(髄液)の分析、およびMRI検査によって確定されます。

  • 治療法はありませんが、一部の症状は薬剤によって軽減できます。

プリオン病の概要も参照のこと。)

クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)は、プリオン病の一種であり、細胞性プリオンタンパク(PrPC)と呼ばれる正常なタンパクが、病気を引き起こす異常プリオンに変化することで発生します。異常プリオンは脳にゆっくりと蓄積し、通常は脳細胞に小さな泡を形成し、その結果脳細胞が死滅します。一定数の脳細胞が機能不全に陥るまたは死滅すると、症状が現れ、患者が死亡します。

CJDには以下の発症様式があります。

  • 自然に発生する(孤発性CJDと呼ばれます)

  • 家族内で発生する(家族性CJDと呼ばれます)

  • 感染により発生する

孤発性CJDは、最もよくみられる病型で、全世界で毎年100万人に1人の割合で発生が確認されています。症例の約85%を占めます。通常は40歳以上、特に60歳前後で発症します。この病型の原因は解明されていません。

家族性CJDは、PrPC遺伝子の変異を原因とする病気で、それにより正常なPrPCが変化し(異常な形に折りたたまれ)、病気を引き起こす異常プリオンになります。全体の5~15%を占めます。家族性CJDは、しばしば遺伝し、通常は孤発性CJDより若年で発症して長く続きます。

獲得性CJDは、以下の場合に発生する可能性があります。

  • 汚染された牛肉を食べたとき(変異型CJDと呼ばれます)

  • 特定の医療上の処置を受けた際に汚染されている器具などが知らずに使われていた場合(医原性CJDと呼ばれます)

CJD患者との接触による感染については、日常的な接触か、より濃厚な接触かにかかわらず、これまで1例も報告されていません。

変異型CJD

変異型CJDは、ウシ海綿状脳症(狂牛病)にかかったウシの肉やそれから作られた加工食品を食べることで感染が起こります。

孤発性CJDは60歳頃に発生するのに対し、変異型CJDは30歳頃に発生します。

2017年6月までに発生した変異型CJDの症例数は以下の通りです。

  • 全世界:231例

  • 英国:178例

  • フランス:27例

  • その他:26例

英国では人々が何年もの間汚染された牛肉を知らずに食べていたことを考えると、変異型CJDの症例数は驚くほど少数です。英国では、ウシの大量処分と牛肉の処理方法の変更によって、この病気の拡大は抑えられています。また英国では、ウシを対象としたこの病気に対する広範な調査(サーベイランス)が実施されていて、変異型CJDの新規発生数は着実に減少しており、2011年以降はわずか2例にとどまっています。変異型CJDは米国で4例、カナダで2例診断されたことがありますが、いずれも北米に由来するものではありません。

英国では、2000人に1人が変異型CJDにみられる異常なプリオンタンパクをもっていますが、それらの人に症状はみられません。このような人が献血したり手術を受けたりすることで、他の人に感染するリスクが懸念されることがあります。しかし、献血者スクリーニングのための新たな基準(特に変異型CJDに関連するもの)によって、変異型CJDの感染リスクはさらに減少すると考えられています。フランスや英国以外の国では、このリスクはすでに非常に低くなっています。

狂牛病は北米の数頭(米国で4頭、カナダで19頭)のウシで報告されています。

知っていますか?

  • 汚染された肉を食べることで発生する人間の狂牛病(変異型クロイツフェルト-ヤコブ病)は、これまでに世界で231例しか起こっていません。

医療上の処置を介した感染により発生するCJD

CJDは、医療上の処置を介して伝播する可能性があります(医原性CJDと呼ばれます)。例えば、以下のうちいずれかに該当すると、CJDに感染する可能性があります。

  • CJD患者をドナーとする角膜を移植された場合(角膜以外の組織でも可能性がある)

  • CJD患者の手術に使用された器具で手術を受けた場合

  • CJD患者に由来する物質を治療に使用された場合

  • CJD患者の血液を輸血された場合

異常プリオンは通常の洗浄法や滅菌法では破壊できませんが、漂白剤は有効です。

また医原性CJDの別の感染源として、人間の下垂体から抽出されて治療用に使用されるホルモン製剤があります。例えば、異常プリオンが含まれる死体の下垂体から作られた成長ホルモン製剤で治療を受けた小児が、プリオン病を発症した例があります。しかし現在では、脳下垂体由来のホルモン製剤は死体から抽出するのではなく、遺伝子工学を用いて製造されているため、CJDの感染リスクはなくなりました。

汚染された血液を輸血されて変異型CJDに感染し、症状が生じたのは3例のみです。別の1人が汚染された血液の輸血を受けましたが、症状はみられませんでした。これらの症例はいずれも、変異型CJDのドナーからの感染です。2007年以降、輸血による感染例は報告されていません。

症状

最も一般的な初発症状は記憶障害と錯乱で、アルツハイマー病などの認知症の症状と似ていることがあります。これらの症状は、CJD患者のほとんどで最初にみられる症状ですが、最終的にはすべての患者に現れます。最初の症状が筋肉の協調運動障害であることもあります。変異型CJDでは、初発症状として記憶障害ではなく(不安や抑うつなどの)精神症状がみられる傾向があります。後期の症状は、どちらの病型でも似ています。

症状が徐々に始まった場合も突然始まった場合も、精神機能の悪化が進行し続け、しばしば身の回りの衛生状態への無関心、ぼんやりする、易怒性などの症状が現れます。人によって、疲れやすくなって眠気が生じる場合もあれば、逆に眠れなくなる場合もあります。

通常は発症して6カ月以内に、筋肉が不随意に素早くビクッと動く(ミオクローヌス)症状が現れます。筋肉がふるえ、動きがぎこちなくなり、協調運動が難しくなることもあります。歩行が不安定になり、泥酔した人のような足取りになります。動作が緩慢になることもあります。筋肉の制御機能が損なわれるために、体幹や四肢を前方や横向きにひねる不自然な姿勢がみられるようになります。筋肉を伸ばすと、ビクッとふるえることがあります。幻覚やけいれん発作を起こす人もいます。

患者は驚きやすくなり、大きな音が聞こえただけで跳び上がるなど、過剰な反応がみられます。驚いたときに筋肉がビクッとふるえることもあります。

通常は呼吸とせきの制御を担っている筋肉も侵されるため、肺炎のリスクが増大します。

ものがぼやけるか、またはかすんで見えることもあります。

通常、症状はアルツハイマー病の場合よりはるかに速く進行し、最終的には重度の認知症が生じます。

CJDにかかった人の多くは、発症後6~12カ月以内に亡くなります。2年以上の生存率は約10~20%です。変異型CJDの人は通常、発症後約18カ月生存します。多くの場合は、肺炎が死因です。

変異型CJDは、感染が起きてから10~20年間にわたって症状が現れないことがあります。

診断

  • MRI検査

  • 髄液(腰椎穿刺によって採取する)の分析

  • 脳波検査

次のすべてに当てはまる人がいれば、医師はクロイツフェルト-ヤコブ病を疑います。

  • 精神機能が急速に悪化する。

  • 筋肉が不随意にビクッと動く。

  • 歩行が不安定でよろめく。

  • 通常の検査でその他の認知症の可能性が否定されている。

比較的若い人に変異型CJDの典型的な症状がみられ、その人が英国、狂牛病が起こったその他の国、または英国から牛肉を輸入している国で牛肉加工食品を食べたことがある場合、医師は変異型CJDを疑います。比較的若い人にCJDの家族歴がある場合、医師は家族性CJDを疑います。

診断は困難なこともあります。別の病気が同様の症状を引き起こすこともあるため、医師はそのような病気(特に治療できるもの)がないかを確認します。

最も有用な検査はMRI検査です。MRI検査では、脳に特徴的な変化を検出することができ、変異型CJDにしかみられない特徴も検出できます。

腰椎穿刺を行って髄液のサンプルを採取し、プリオンが含まれていないか調べます。この検査では、髄液中に含まれる微量のプリオンを検出できるため、ほかの検査に比べてCJDの検出に優れています。同様の尿検査では変異型CJDを検出できます。

通常、脳波検査を行い、CJD患者の70%にみられる脳の電気的活動の特徴的な異常がないかを確認します。しかし、この異常は病気の後期に起こり、常にみられるとは限りません。

通常、患者が生きている間に生検(脳組織のサンプルを採取して顕微鏡下で調べる検査)を行う必要はありません。しかし、死後の検査(剖検)は診断とプリオン病の病型を確定する上で不可欠です。

予防

クロイツフェルト-ヤコブ病には効果的な治療が存在しないため、感染を防ぐことが非常に重要です。予防できるのは獲得性CJDのみです。

医療従事者はCJDや変異型CJDの感染を予防するため、以下のような対策を講じています。

  • 感染しているかまたは感染の可能性がある人の体液や組織を扱う場合には、手袋とフェイスマスクを着用する

  • 感染しているかまたは感染の可能性がある人に触れたもの(手術用の器具など)は廃棄処分とするか、厳密な方法を用いて消毒する(通常の洗浄や滅菌手順ではプリオンは破壊されません)

  • 死体の下垂体から作られた成長ホルモンではなく、合成ヒト成長ホルモンのみを使用する

  • CJDや変異型CJDにさらされたことがあるか、その可能性がある人からの献血、移植用の角膜やその他の組織の提供を受けないようにする

公衆衛生当局では、汚染された牛肉を食べることによる変異型CJD感染の予防のため、以下のような対策を講じています。

  • ウシが、ウシ海綿状脳症(狂牛病)にかかっていないかを定期的に調べる

  • 感染しているウシを処分する

  • 人が食べる動物(ウシ、ヒツジ、ヤギなど)のエサに何が入っているかを厳しく規制する

米国農務省(U.S. Department of Agriculture:USDA)では現在、ウシ海綿状脳症にかかっていないかどうかを確認するために、毎月2000~5000頭のウシをチェックしています。

治療

  • 症状を軽減する薬

現時点で、CJDは治癒不可能で、進行を遅らせることもできません。通常は数カ月または1~2年で死に至ります。しかし、特定の薬剤を使用することで症状を軽減できる可能性があります。例えば、抗てんかん薬のバルプロ酸や抗不安薬のクロナゼパムで、筋肉のビクッとふるえる動きが軽減する場合があります。鎮静薬または抗精神病薬は、ときに不安な患者を落ち着かせるのに役立つことがあります。

患者と家族に対する総合的な支援とケアが重要です。デイケア施設や、レスパイトケア、長期ケアなどの利用が役立つことがあります。米国ではCJD財団が支援と情報の提供を行っています(クロイツフェルト-ヤコブ病財団[Creutzfeldt-Jakob Disease Foundation]を参照)。

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