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骨粗しょう症

執筆者:Marcy B. Bolster, MD, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2022年 8月
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やさしくわかる病気事典

骨粗しょう症とは、骨密度の低下によって骨がもろくなり、骨折しやすくなる病態です。

  • 加齢、エストロゲンの不足、ビタミンDやカルシウムの摂取不足、およびある種の病気によって、骨密度や骨の強度を維持する成分の量が減少することがあります。

  • 骨粗しょう症による症状は、骨折が起こるまで現れないことがあります。

  • 骨折は、力がほとんどまたはまったくかかっていない場合にも起こり、軽い転倒で起こることもあります。

  • 骨折にはしばしば痛みが伴いますが、一部の脊椎の骨折では痛みは生じないものの、変形は生じることがあります。

  • 医師は、骨粗しょう症のリスクのある人に、骨密度の検査を行うことで診断します。

  • 骨粗しょう症は、危険因子を管理し、十分なカルシウムやビタミンDを確実に摂取するようにし、体重の負荷がかかる運動を行い、ビスホスホネート系薬剤などの薬を服用することで、通常は予防や治療ができます。

骨はカルシウムリンなどのミネラルを含み、これらの成分が骨を硬く、密にしています。骨密度(または骨量)を維持するためには、カルシウムなどのミネラルが体に十分供給されている必要があり、さらに副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、カルシトニンエストロゲンテストステロンなどの数種類のホルモンが体内で適量作られていなければなりません。食物からカルシウムを吸収して骨に取り込むために、ビタミンDが十分に供給されていることが必要です。ビタミンDは、食事から吸収されるほか、太陽光によって皮膚でもつくられます。

骨にかかる負荷の変化に対応できるように、骨を分解して新しく形成する再構築が常に行われています。この過程をリモデリングといいます。この過程では、常に骨組織の一部が取り除かれ、新しい骨が沈着します。リモデリングは、骨の形状と骨密度に影響を与えます。若いうちは体の成長に伴って骨の幅が広がり、軸方向へも伸長します。その後は、骨の幅や厚みが増すことはときにありますが、長さが伸び続けることはありません。

女性における骨密度の低下

女性の骨密度(または骨量)は、骨の強度が最大になる30歳頃まで増え続けます。その後は、骨密度は徐々に低下していきます。骨密度の低下は閉経(平均で51歳頃に起こります)の後に加速します。

成人でも若い頃は骨が分解される量より形成される量の方が多いため、30歳頃までは骨密度が徐々に上昇し、骨の強度はその頃に最大になります。その後、分解される量が形成される量を上回ると、骨密度は徐々に低下していきます。体内で十分な量の骨を形成し続けることができないと、骨密度が低下し続け、骨が次第にもろくなり、ついには骨粗しょう症になることがあります。

骨粗しょう症の種類

米国では、女性約800万人と男性約200万人が骨粗しょう症です。骨粗しょう症には、大きく分けて次の2種類があります。

原発性骨粗しょう症

女性の骨粗しょう症の95%以上と、おそらく男性の骨粗しょう症の約80%が原発性です。ほとんどの場合、閉経後女性と高齢の男性に発生します。

骨粗しょう症の主な原因の1つはエストロゲンの不足で、特に閉経後にみられるエストロゲンの急速な減少に起因します。50歳以上のほとんどの男性はエストロゲン値が閉経後の女性よりも高いのですが、この値も加齢とともに低下し、エストロゲン値が低いことが、男性、女性にかかわらず骨粗しょう症に関連しています。エストロゲンが欠乏すると骨の分解が増え、骨量が急速に減少します。男性では、男性ホルモンが少ないことも骨粗しょう症の一因です。カルシウムの摂取量やビタミンDの値が低いと、骨量の減少はさらに激しくなります。ビタミンDの値が低いと、カルシウムが欠乏し、副甲状腺の活動が亢進することで副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され(副甲状腺機能亢進症を参照)、そのことがさらに骨の分解を促すことになります。理由は不明ですが、骨の作られる量も減少します。

女性では、特定の薬、タバコの使用、大量の飲酒、骨粗しょう症の家族歴(例えば、親が股関節の骨折を経験している)、身長が低いことなど、他のいくつかの因子によって、骨量が減少し、骨粗しょう症が発生するリスクが高まります。これらの危険因子は男性でも重要です。

続発性骨粗しょう症

女性の骨粗しょう症の5%未満と、男性の骨粗しょう症の約20%が続発性です。

続発性骨粗しょう症の原因となる病気の例としては、慢性腎臓病や内分泌疾患(特にクッシング病副甲状腺機能亢進症甲状腺機能亢進症性腺機能低下症、プロラクチン高値、糖尿病)があります。続発性骨粗しょう症は、多発性骨髄腫など特定の種類のがんによって引き起こされることがあり、また関節リウマチなど他の慢性疾患によっても引き起こされることがあります。長期間使用した場合に続発性骨粗しょう症を引き起こす可能性がある薬の例として、プロゲステロン、コルチコステロイド、甲状腺ホルモン、特定の化学療法薬、抗てんかん薬が挙げられます。アルコールやカフェインの過剰摂取や喫煙は、骨粗しょう症の一因となる可能性があります。

原発性骨粗しょう症の危険因子

  • 家族に骨粗しょう症の人がいる

  • カルシウムやビタミンDが少ない食生活

  • 体を動かさない生活習慣

  • 白人またはアジア系人種

  • 細身の体形

  • 早期の閉経

  • 喫煙

特発性骨粗しょう症

特発性骨粗しょう症はまれなタイプの骨粗しょう症です。特発性という言葉は、単に原因が不明であることを意味しています。このタイプの骨粗しょう症は、閉経前女性や50歳未満の男性、小児や青年で、ホルモンやビタミンDの値が正常かつ骨が弱くなる明らかな原因がない人に起こります。

骨粗しょう症の症状

骨密度は非常にゆっくり低下するため、初期の骨粗しょう症では何の症状も起こりません。症状が一切現れない人もいます。しかし、骨粗しょう症によって骨折が起こると、骨折の部位に応じて痛みが出ることがあります。骨粗しょう症の人は骨折の治りが遅くなる傾向があり、骨折によって脊椎の弯曲などの変形が生じることがあります。

通常、腕や脚などの長管骨では、骨の中央部よりも骨端部が骨折します。長管骨の骨折は典型的には強い痛みを伴います。

脊椎の骨(椎骨)は、特に骨粗しょう症が原因で骨折するリスクが高い骨です。この骨折は、骨粗しょう症が関連する骨折の中で最もよくみられるものです。通常は背中の中ほどから腰にかけて起こります。典型的には、1つまたは複数の椎骨の円柱形の部分(椎体)がつぶれ、圧迫されてくさび型になります。こうした脊椎圧迫骨折は、骨密度の低下を引き起こす薬剤を使用している人も含めて、どのタイプの骨粗しょう症の人にも起こる可能性があります。もろくなった椎骨は自然に、またはささいなけがで骨折します。こうした脊椎圧迫骨折では、ほとんどの場合痛みがありません。しかし、痛みが生じることもあり、その場合通常は突然発生し、背中の特定の部分に持続し、立ったり歩いたりするとひどくなります。その部位に圧痛があることもあります。通常、この痛みと圧痛は、1週間経過すると徐々に消えていきます。ですが、長引く痛みが何カ月も続いたり、ずっと続いたりすることもあります。椎骨がいくつか骨折すると、脊椎の異常な弯曲(脊柱後弯症、老人性円背とも呼ばれます)が生じることがあり、変形に加えて、肉離れや筋肉の痛みが起こります。

脆弱性骨折は、ベッドからの転落を含め、立っている高さ以下からの転落・転倒など、正常であれば健康な骨が折れることはない、比較的軽い負担や転落・転倒を原因とする骨折です。脆弱性骨折は一般的に手首、股関節、脊椎(脊椎圧迫骨折)で起こります。その他の骨としては、上腕の骨(上腕骨)骨盤などがあります。

股関節の骨折は、最も重篤な骨折の1つで、高齢者に身体的な障害をもたらし、自立が失われる主な原因となっています。

手首の骨折がよく起こり、特に骨粗しょう症がある閉経後女性に多くみられます。

過去に一度骨折しており、その一因が骨粗しょう症であった場合、その人がそのような骨折をさらに起こすリスクは非常に高くなります。

肋骨鎖骨足の骨の骨折は、骨粗しょう症が関連する骨折とはみなされません。

知っていますか?

  • 過去に一度骨粗しょう症に関連した骨折をしている場合、その人がそのような骨折をさらに起こすリスクは非常に高くなります。

骨粗しょう症の診断

  • 骨密度の検査

  • 原因と危険因子を調べる検査

以下の人で骨粗しょう症が疑われることがあります。

  • 65歳以上のすべての女性

  • 骨粗しょう症の危険因子をもつ閉経後から65歳までの女性

  • 男性、女性にかかわらず、たとえ若いときであっても、ほとんどまたはまったく力がかかることなく起こる骨折を過去に経験した人

  • 背中の痛みがあるか1.2インチ(約3センチメートル)以上身長が縮み、その原因が不明な65歳以上の成人

  • X線画像で骨が薄いように見えるか、X線画像で脊椎圧迫骨折がある人

  • 続発性骨粗しょう症の発生リスクが高い人

骨粗しょう症が疑われ、X線検査を受けていない場合、医師は骨折の診断を下すために画像検査を指示することがあります。X線検査における特定の所見によって骨粗しょう症が疑われますが、骨粗しょう症の診断は骨密度の検査によって確定します。

骨密度の検査

骨密度の検査を行えば、骨折が起こる前でも、骨粗しょう症が疑われる人を発見したり、そうした人で診断を確定することができます。

二重エネルギーX線吸収法(DXAスキャン)は最も有用な骨密度の検査法です。DXAスキャンでは、脊椎や股関節など、大きな骨折が起こりやすい部位に高エネルギーのX線と低エネルギーのX線を照射します。高エネルギーのX線と低エネルギーのX線がそれぞれ示す値の差から骨密度を計算することができます。その結果はTスコアとして報告されますが、これはその人の骨密度を、骨量がピークに達する年齢(およそ30歳)の同じ性別かつ同じ人種/民族の健康な人の骨密度と比較したものです。骨密度が低いほど、Tスコアは低くなります。Tスコアが-2.5以下の場合が骨粗しょう症と定義されています。DXAスキャンは痛みを伴わず、使用する放射線の量がごくわずかで、10~15分で実施できます。骨粗しょう症の診断だけでなく、治療の効果をモニタリングするのにも有用となる場合があります。DXAスキャンによって、骨減少症(骨密度が低下するものの、骨粗しょう症ほど重度ではない状態)も明らかになることがあります。骨減少症の患者でも骨折のリスクが高まります。

すでにビスホスホネート系薬剤または骨形成促進薬を服用している人は、治療の効果をモニタリングするためにDXAスキャンを繰り返し受けるべきです。

その他の検査

血液検査を行って、カルシウム、ビタミンD、および特定のホルモンを測定することもあります。

骨粗しょう症に至った原因かもしれない、治療可能な状態がある可能性を否定するために、さらに検査が必要になることもあります。そのような状態が見つかれば、続発性骨粗しょう症と診断されます。

骨粗しょう症の予防

失われてしまった骨密度を回復するよりも、骨密度の低下を防ぐ方が簡単であるため、骨粗しょう症では、一般に治療よりも予防が成功します。骨粗しょう症に関連する骨折の有無にかかわらず、骨量が減少している人や骨量減少の危険因子がある人には、予防策が推奨されます。骨粗しょう症の予防策には以下のものがあります。

骨折の予防に役立つ対策を講じることができます。多くの高齢者では、協調運動や平衡感覚の障害、視力低下、筋力低下、錯乱、立つときにふらつきを起こす薬の使用、錯乱を起こす薬の使用によって、転倒のリスクが高くなります。安全のために自宅の環境を改善し、理学療法士と一緒に運動プログラムを作ることが転倒の予防に役に立ちます。体の中心部の筋力強化など、筋力を強化する運動がバランスの向上に役立つことがあります。

骨粗しょう症の治療

  • カルシウムとビタミンD

  • 体重の負荷がかかる運動

  • 薬剤

  • 骨折の治療

骨粗しょう症の治療では、カルシウムとビタミンDの十分な摂取を確保するとともに、体重の負荷をかける運動(ウォーキング、階段を昇る、ウェイトトレーニングなど、いずれも骨の強度を高めます)を行います。通常は薬物治療が推奨されます。骨粗しょう症の治療では、医師は骨粗しょう症を悪化させる可能性がある状態や危険因子の管理も行います。

カルシウムとビタミンD

十分な量の栄養素、特にカルシウムとビタミンDを摂取することが役に立ち、特に骨密度が最大となる(30歳頃)以前から行うと効果的ですが、それ以降でも有用です。ビタミンDは体のカルシウムの吸収を助けます。

男性も女性もすべて、毎日1000ミリグラムのカルシウムを摂取するべきです。閉経後女性、高齢男性、思春期の小児、妊娠中または授乳中の女性は、毎日1200~1500ミリグラム摂取する必要がある場合があります。食べものに含まれるカルシウムの方がカルシウムサプリメントよりも望ましいです。カルシウムを豊富に含む食べものとしては、乳製品(牛乳やヨーグルトなど)、一部の野菜(ブロッコリーなど)、ナッツミルク(アーモンドミルクなど)、ナッツ類(マカデミアナッツなど)などがあります。表「主な食品に含まれるカルシウムの量」を参照してください。

しかし、推奨量を食事だけで摂取できない場合は、サプリメントを摂取する必要があります。カルシウムのサプリメントが多く市販されており、なかにはビタミンDを含んでいるものもあります。一般的なサプリメントのほとんどは、炭酸カルシウムかクエン酸カルシウムです。胃酸分泌抑制薬(例えば、胃酸の分泌を抑えるために使用されるH2受容体拮抗薬やオメプラゾールなどのプロトンポンプ阻害薬)を服用している人や、胃バイパス術を受けたことがある人は、クエン酸カルシウムのサプリメントを服用するべきです。

骨粗しょう症の人は、毎日600~800国際単位(IU)のビタミンDサプリメントを摂取するべきです。骨粗しょう症の人でビタミンD欠乏症がある場合は、さらに高用量が必要である可能性があります。ときに医師は、服用すべきビタミンDのサプリメントの量を判断するために、血中のビタミンDの値を確認します。摂取源となる食品で最も一般的なのは、栄養強化食品(主にシリアルや乳製品)です。ビタミンDは、魚の肝油や脂の多い魚にも含まれています。ビタミンDのサプリメントは、通常は天然型ビタミンDのコレカルシフェロールか、植物由来の合成型であるエルゴカルシフェロールとして投与されます。

体重の負荷がかかる運動

骨に体重の負荷を与える運動(ウォーキング、階段を昇るなど)は、骨密度を増加させます。水泳などの体重の負荷がかからない運動では、骨密度は増加しませんが、体の中心部の筋力とバランスが強化され、転倒のリスクが低下します。多くの専門医が、体重の負荷がかかる運動を毎日約30分行うことを推奨しています。理学療法士は、安全な運動プログラムを作って、転倒や脊椎骨折のリスクを最小限にするために日常活動を安全に行う方法を実際に示すことができます。

興味深いことに、閉経前の女性が運動選手のするような激しい運動をすると、卵巣からのエストロゲン分泌が抑えられ、骨密度が若干低下することが実際に分かっています。

薬剤

骨粗しょう症の予防と治療には、ほとんど同じ薬が使用されます。

ビスホスホネート(アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、ゾレドロン酸)は、すべてのタイプの骨粗しょう症の予防や治療に有用で、通常は最初に使用されます。ビスホスホネート系薬剤は、骨の代謝回転を抑えることで、骨量の減少を軽減し、骨折のリスクを低下させることが分かっています。アレンドロン酸とリセドロン酸は内服(経口摂取)できます。ゾレドロン酸は静脈内注射により投与できます。イバンドロン酸は内服または静脈内注射で投与します。

内服のビスホスホネート系薬剤は、起床後の空腹時にコップ1杯の水(約250ミリリットル)で服用する必要があります。胃の中に食物があると薬の吸収が低下する可能性があるため、その後30~60分間は他の食べもの、飲みもの、薬は摂取しないようにするべきです。ビスホスホネート系薬剤は、食道粘膜を刺激するため、服用後少なくとも30分間(イバンドロン酸では60分間)は横にならないようにします。ものを飲み込みにくい人、胃腸症状(例えば、胸やけや吐き気)がある人、食道や胃に特定の病気がある人など、一部の人はビスホスホネート系薬剤を服用するべきではありません。そうした人には、イバンドロン酸またはゾレドロン酸の静脈内投与を行います。また、次に示す人は、ビスホスホネート系薬剤を服用するべきではありません。

  • 妊娠中や授乳中の女性

  • 血液中のカルシウム濃度が低い人

  • 重度の腎疾患のある人

今のところ、ビスホスホネート系薬剤をどのくらいの期間使用すべきかは分かっていません。しかし、副作用のリスクがあるため、無期限に服用し続けるべきではないことは明らかです。ほとんどの人では3~6年の投与が必要で、一部の人では最大10年間必要になることがあります。ビスホスホネート系薬剤を使用しなければならない期間は、患者の医学的な状況と骨折の危険因子に基づいて、医師が判断します。ビスホスホネート系薬剤による治療の最中やその後は、骨量が減っているかどうかを判断するために定期的に検査を行います。ビスホスホネート系薬剤の使用をやめた後に骨量が減っている場合は、ビスホスホネート系薬剤や別の薬による治療を再開することがあります。

ビスホスホネート系薬剤、デノスマブ、またはロモソズマブの投与を受けている人の一部に、まれに顎骨壊死が起こることがあります。この病態では、特にあごの骨に及ぶ侵襲的な歯科処置を受けた人で、あごの骨の治りが悪くなります。ビスホスホネート系薬剤の投与を受けている人の顎骨壊死の発生リスクは非常に低く、骨折を予防するために行う骨粗しょう症の治療で得られる可能性が高い便益の方が、潜在的なリスクをはるかに上回ります。ビスホスホネート系薬剤は、処方通りに使用すれば、それが引き起こす可能性のある顎骨壊死よりもはるかに多くの骨折を予防できます。ビスホスホネート系薬剤の静脈内投与を受けている人や、がんの治療で頭頸部への放射線療法を受けたことがある人で最もリスクが高くなります。

ビスホスホネート系薬剤を長期間使用すると、太ももの骨(大腿骨)に、まれな骨折が起こるリスクが増加する可能性があります。そのような骨折のリスクを減らすために、医師は1~2年またはそれ以上の期間、ビスホスホネート系薬剤の使用を中止させることがあります。このような計画された期間は、ビスホスホネート系薬剤の休薬期間と呼ばれます。ビスホスホネート系薬剤の休薬期間の長さは、医師が慎重に検討します。その判断は、患者の年齢、DXAスキャンの結果、骨折があったかどうか、転倒の可能性がどの程度あるかなど、特定の要因に基づいて下します。ビスホスホネート系薬剤の休薬期間中の人は、骨密度が低下してないか定期的にモニタリングを受ける必要があります。休薬期間中は骨折のリスクが高まるため、医師はビスホスホネート系薬剤の便益と起こりうる副作用のバランスを取るよう努めます。

全体として、処方通りに使用すれば、骨折の予防におけるビスホスホネート系薬剤の便益は潜在的なリスクをはるかに上回ります。

カルシトニンは、骨の分解を抑制する働きがあり、骨粗しょう症の治療法として研究されています。カルシトニンが骨折のリスクを低下させることは示されていませんが、脊椎骨折による痛みの緩和に役立ちます。通常、カルシトニンは鼻腔スプレーで投与します。使用すると血液中のカルシウム濃度が低下することがあるため、その値をモニタリングする必要があります。

ホルモン療法(例えば、エストロゲンによる)が女性の骨密度を維持するのに役立ち、骨粗しょう症の予防や治療のために用いられる可能性があります。この治療法は、閉経後4~6年以内に始めると最も効果的ですが、それ以降に始めても、骨量の減少を遅らせ、骨折のリスクを減らすことができます。ただし、多くの女性にとって、ホルモン療法はそのリスクが便益を上回る可能性があるため、通常は骨粗しょう症の治療に用いられる選択肢ではありません。閉経後にエストロゲン補充療法を用いることについての判断は複雑なものです(閉経に対するホルモン療法を参照)。

ラロキシフェンエストロゲンと似た薬で、骨量減少の予防と治療に有用である可能性がありますが、エストロゲンの副作用の一部がラロキシフェンにはありません。ラロキシフェンは、ビスホスホネート系薬剤を使用できない人や使用したくない人に使用されています。ラロキシフェンは脊椎骨折のリスクを減らすことができ、浸潤性乳がんのリスクを減らす可能性があります。

男性にはエストロゲンによる治療は利益がありませんが、テストステロン値が低い人では、テストステロン補充療法が有益な場合があります。

デノスマブは、骨量の減少を予防する点でビスホスホネート系薬剤と似ています。デノスマブは診療所で1年に2回、皮下注射で投与します。ビスホスホネート系薬剤と同様に、デノスマブはごくまれに顎骨壊死を引き起こし、太ももの骨にまれな骨折が起こるリスクを高める可能性があります。デノスマブは慢性腎臓病の患者を対象として研究されており、適切なモニタリングを行えば、安全に使用できることが判明しています。デノスマブを使用している人は、使用が遅れたりこの薬の使用を中止したりすると、骨密度の低下を引き起こし、脊椎骨折のリスクを高める可能性があるため、使用を忘れたり休薬したりしてはいけません。

ロモソズマブは、股関節と腰椎の骨密度を高め、閉経後女性の骨折リスクを減らします。ロモソズマブは、月1回1年間、注射で投与します。心臓発作または脳卒中が発症してから12カ月間は、ロモソズマブを使用してはいけません。

骨形成促進薬(テリパラチドとアバロパラチド)は、新しい骨の形成を促し、骨密度を増加させ、骨折の可能性を減らします。テリパラチド(副甲状腺ホルモンの合成剤)とアバロパラチド(副甲状腺ホルモンに似た薬剤)は、連日の自己注射で使用されます。この治療法は次のような人で用いられることがあります。

  • ビスホスホネート系薬剤による治療中に、著しく骨量が減少したか骨折を起こした人

  • ビスホスホネート系薬剤を使用できない人

  • 非常に重度の骨粗しょう症か、多数の骨折(特に脊椎骨折)がある人

  • コルチコステロイドを原因とする骨粗しょう症がある人

ロモソズマブは骨形成促進薬としても作用します。

痛みと骨折の治療

脊椎圧迫骨折による背部痛は、痛み止めのほか、ときに湿式の温熱療法マッサージや補助器具(体幹装具など)によって治療できます。脊椎骨折による痛みを減らすためにカルシトニンを投与することがあります。背部の筋肉を強化する運動は、慢性の背部痛を軽減させることに役に立ちます。通常、骨折した後は床上安静や重い物を持ち上げることは避けるべきです。可能になり次第、体重の負荷がかかる運動を行うべきです。

骨粗しょう症によって起こった骨折には、治療が必要です。股関節の骨折では、通常は関節を固定し、しばしば股関節の一部または全部を人工関節で置き換える手術を行います。手首の骨折では、手術をするか、骨折部位をギプスで固定することが必要です。さらに、骨粗しょう症が関連する骨折の経験がある人は、骨粗しょう症の薬で治療し、十分な量のカルシウムとビタミンDをとるようにするべきです。

圧迫骨折が起こった椎骨は、椎体形成術と呼ばれる手術で修復することができます。この手術(各椎骨につき約1時間かかります)では、メチルメタクリレートという物質(アクリル樹脂の骨セメント)をつぶれた椎骨に注入し、痛みを和らげ骨の変形を軽減するのに役立てます。バルーン整復による椎体形成術(kyphoplasty)も似た方法ですが、この手術では、小さなバルーンを使って椎骨を押し広げてから、メチルメタクリレートを注入します。これらの椎体形成術によって、メチルメタクリレートを注入した椎骨の変形は軽減できますが、隣接する脊椎の骨や肋骨が骨折するリスクは減少せず、かえって増加することさえあります。その他のリスクとして、肋骨の骨折や、骨セメントの漏れ、心臓や肺の問題が起こる可能性などがあります。これらの手術をいつ行うべきかについては明確に決まっていません。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

米国骨粗しょう症財団(The National Osteoporosis Foundation):骨粗しょう症や骨折の予防と丈夫な骨を生涯保つ方法に関する情報

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