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多発血管炎性肉芽腫症

(ウェゲナー肉芽腫症)

執筆者:

Carmen E. Gota

, MD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University

最終査読/改訂年月 2016年 12月
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多発血管炎性肉芽腫症(以前はウェゲナー肉芽腫症として知られていた)はしばしば、鼻、副鼻腔、のど、肺、または腎臓の、小型や中型の血管や組織の炎症から始まります。

  • 原因は不明です。

  • 通常、この病気は、鼻出血、かさぶたによる鼻づまり、副鼻腔炎、声がれ、耳の痛み、中耳にたまる体液、眼の充血と痛み、呼気性喘鳴、せきで始まります。

  • その他の臓器が侵されることもあり、ときには腎不全などの重篤な合併症が起こります。

  • 症状やその他の所見からこの病気の可能性が疑われますが、診断を確定するには通常、生検が必要です。

  • コルチコステロイドおよび免疫系を抑制する2つ目の薬が、炎症を抑えて寛解を達成するために必要になります。

血管炎の概要も参照のこと。)

多発血管炎性肉芽腫症は、白人に最も多くみられますが、あらゆる人種のあらゆる年齢層で起こる可能性があります。大半の患者は40歳頃に発症します。原因は不明です。感染症に似ていますが、原因となる微生物は特定されていません。炎症を引き起こす免疫細胞の集まり(肉芽腫と呼ばれる)が小結節を形成して、最終的に正常な組織を破壊します。多発血管炎性肉芽腫症は、しばしば生命を脅かします。

症状

この病気は、突然始まることもあれば、徐々に始まることもあります。通常、最初の症状は上気道、すなわち、鼻、副鼻腔、耳、気管に出ます。症状には以下のものがあります。

  • 鼻の内部や周囲のかさぶたによる鼻づまり、ときに血の混じった鼻水を伴う

  • 鼻橋がつぶれ、陥没する(鞍鼻[あんび]変形

  • 鼻腔を二分している鼻の軟骨(鼻中隔)に穴が開く

  • 副鼻腔炎と副鼻腔の痛み

  • 声がれ

  • 中耳の炎症(中耳炎)、一般的には耳の痛みとときに難聴を伴う

  • 呼吸困難

  • せき(ときに喀血)

  • 喉頭の痛み、呼気性喘鳴、まれに息を吸うときのヒューヒューというような大きな音(吸気性喘鳴)

ときに上気道の症状だけが、長年にわたって続くことがあります。発熱、全身の具合が悪い感覚、食欲不振がみられる場合もあります。眼に炎症が起こることがあり、眼の腫れ、充血、痛みが生じることがあります。

この病気は、進行して他の領域を侵したり、最初から複数の臓器を侵すこともあります。

  • 肺:通常、肺にはいずれかの時点で症状が出ます。息切れを感じたり、せきが出たりし、ときに喀血がみられます。肺に出血があると呼吸困難になることがあり、その場合は直ちに医師の診察を受ける必要があります。

  • 関節:関節や筋肉が腫れて痛むことがあります。関節炎が生じることもあります。

  • 神経:腕や脚に、しびれやチクチク感、筋力低下を感じたり、視力障害が生じることがあります。神経が損傷することがあります。ものが二重に見えることがあり、治療しないと失明することもあります。炎症によって組織が大きくなり、眼窩にある他の構造に圧迫されるために、眼が突出して痛むことがあります。

  • 皮膚:皮膚に発疹やびらんが現れることがあります。

  • 腎臓:しばしば腎臓が侵されます。腎機能の障害は、わずかなことも著しいこともあります。重度の腎障害があると、高血圧や体液の貯留によるむくみ(浮腫)が生じます。生命を脅かす腎不全が起こることがあります。しかし、腎臓の損傷が、症状を引き起こすことなく進行することもあります。

  • 静脈:脚に血栓ができることがあります(深部静脈血栓症)。

貧血がよくみられ、重度の場合もあります。

診断

  • 医師による評価

  • 血液と尿の検査

  • 生検

多発血管炎性肉芽腫症は、早期に診断・治療して、腎疾患、肺疾患、心臓発作などの合併症を予防しなければなりません。

この病気は通常、症状の特徴的なパターンから疑われます。例えば、原因不明の呼吸器の症状(他の場合にはまれな成人の中耳炎など)がみられれば、この病気が疑われ、特に他の臓器、とりわけ腎臓に異常がある場合に疑われます。また、副鼻腔の問題が長く続いており、抗菌薬を投与しても治癒しないか部分的にしか治癒していない場合にも疑われます。

通常は肺が侵されるため、胸部X線検査を行います。ただし、症状と胸部X線検査の結果は、いくつかの肺疾患のものと似ているため、診断は困難です。例えば胸部X線検査では、肺に、がんや感染症のように見える空洞や濃い陰影が認められます。

血液検査の結果では多発血管炎性肉芽腫症を特定できませんが、診断の強い支えにはなります。血液中の抗好中球細胞質抗体(c-ANCA)の検査がその例です。これらの抗体は、いくつかの種類の血管炎で発生し、特定の白血球を攻撃します。さらに検査することで、具体的な病気に対応する他の抗体が特定されます。この病気の患者では、腎臓の炎症によって血尿やタンパク尿が起こることがあります。腎臓の炎症によって症状がないまま腎臓に損傷が起こる場合もあるため、医師は必ず尿検査を行います。

医師は、組織の小片を顕微鏡で調べる(生検)ことで、診断を確定できます。組織サンプルは患部(鼻腔、気道、肺など)から採取します。皮膚や腎臓の生検が、ときに役立つことがあります。

予後(経過の見通し)

予後は、この病気がどの程度の範囲に広がっているか、どの程度の損傷が臓器に発生しているか、どの程度早く治療を受けるかによって左右されます。

重症の患者では、免疫の働きを抑える薬(免疫抑制薬)を使用することで予後が大きく改善しています。治療すると、約70%の患者で症状が完全に消えます(寛解と呼ばれる)。しかし、治療した患者の約半分は症状がぶり返します(再発と呼ばれる)。再発は、治療を中止したときに起きることもあれば、何年も経ってから起きることもあります。治療を再開したり強めたりすると、通常はこの病気を抑えることができます。かつては、90%の患者で、この病気または治療によって生じる永久的で有害な影響がみられていました。

治療

  • コルチコステロイド

  • その他の免疫抑制薬

  • ときに、血漿交換(プラズマフェレーシス)

炎症を抑制するために、コルチコステロイド(プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]など)がほぼ常に使用されます。ほとんどの患者は免疫抑制薬、例えばシクロホスファミド、メトトレキサート、リツキシマブ、アザチオプリンなどを必要とします。重症でなければ、コルチコステロイドとメトトレキサートを投与します。メトトレキサートの代わりにリツキシマブを投与することもあります。重症の場合は、高用量のコルチコステロイドと、シクロホスファミドまたはリツキシマブを投与します。ときに、血漿交換(プラズマフェレーシス)を行うことがあります。患者の大部分が、数日から数週間以内に気分が良くなります。しかし、人によっては状態の改善に数カ月かかることもあります。

寛解期には、薬の用量を徐々に減らします。通常は症状が消失してから少なくとも1年間は治療を続け、数年間続ける場合がよくあります。通常、コルチコステロイドは、徐々に用量を減らすことができ、最終的に投与をやめることができます。用量は、治療の全経過を通して調整しなければならないこともあります。症状が悪化または再発した場合、用量を増加するか、または薬の投与が中止されていれば再び投与を始めます。

免疫抑制薬は免疫の働きを弱めるため、重篤な感染症が発生するリスクが増します。長期間プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)を服用すると、体重増加、白内障、高血圧、骨密度の低下、糖尿病、気分の変化、睡眠障害が起こることがあります。シクロホスファミドは、膀胱刺激症状や、繰り返し使用した場合はときに膀胱がんを引き起こすことがあります。シクロホスファミドを静脈内投与する場合は、シクロホスファミドのもつ膀胱への毒性作用の一部を化学的に打ち消す、メスナという薬も投与します。強い免疫抑制薬を使用する患者には、血算を頻繁に(ときには週1回)行います。免疫抑制薬は、血球数を減少させることがあります。

多発血管炎性肉芽腫症の患者では、医師が綿密にモニタリングして、薬の用量が適切かどうか、薬の副作用がないか、感染症の可能性がないか、さらに寛解期であれば再発の徴候がないかを調べる必要があります。

そして患者もこの病気についてできるだけ学ぶべきです。そうすれば、患者自身が早期に再発の徴候に気づくことができます。さらに、患者が自分で血尿とタンパク尿を検査する方法を学ぶこともでき、それによって新たな異常の最初の徴候を医師に知らせることができます。

腎不全を伴う慢性腎臓病が発生した場合は、腎移植が必要になることがあります。

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