塩基性リン酸カルシウムとシュウ酸カルシウムは、体内で自然にできる化合物です。これらの化合物の結晶ができることがあり、それによって、足部痛風(ポダグラ)を含む痛風 痛風 痛風は、尿酸の血中濃度が高いこと(高尿酸血症)が原因で、尿酸の結晶が関節に沈着し蓄積する病気です。結晶が蓄積することで、関節とその周辺に痛みのある炎症の発作が起きます。 尿酸結晶が蓄積すると、関節や組織に激しい痛みや炎症が断続的に起こることがあります。 医師は関節から関節液を採取し、尿酸結晶の有無を調べます。... さらに読む 、ピロリン酸カルシウム関節炎 ピロリン酸カルシウム関節炎 ピロリン酸カルシウム関節炎(以前は偽痛風と呼ばれていた)は、ピロリン酸カルシウム二水和物の結晶が関節の軟骨に沈着することで生じる病気で、痛みを伴う間欠的な関節炎の発作、または関節リウマチに似た慢性関節炎が起こります。 結晶が、関節液や関節の軟骨に蓄積して、様々な程度の炎症や組織の損傷を起こします。 偽痛風の診断は、関節液中にピロリン酸カルシウムの結晶が見つかると確定します。 治療には、非ステロイド系抗炎症薬を用い、ときにコルチコステロイ... さらに読む (以前は偽痛風と呼ばれていた)、またはときに他の関節の病気に似た症状が起こります。塩基性リン酸カルシウム結晶とシュウ酸カルシウム結晶は、腱や結合組織にもできる場合があります。
塩基性リン酸カルシウム結晶沈着症
塩基性リン酸カルシウム結晶によって、関節が破壊され、関節とその周辺に強い炎症が起こることがあります。
ミルウォーキー肩関節症候群が一例で、これはほとんどの場合、高齢女性の肩関節としばしば膝関節に起こる破壊的な病気です。
急性足部偽痛風(acute pseudopodagra)も、塩基性リン酸カルシウム結晶によって起こる関節の病気で、痛風に類似している可能性があります。これは足の親指の関節に生じ、若年女性(若年男性では比較的まれ)に発生します。
シュウ酸カルシウム結晶沈着症
シュウ酸カルシウム結晶が蓄積して沈着することは、まれです。これはほとんどの場合、血液中の老廃物の値が高すぎるために、透析 透析 透析とは、体内の老廃物や過剰な水分を機械的に取り除く処置のことで、腎臓が十分な機能を果たさなくなったときに必要になります。 透析が必要になる理由はいくつかありますが、最も多いのは、腎臓が血液から老廃物を十分にろ過できなくなること(腎不全)です。腎臓の機能は急速に低下することもあれば(急性腎障害または急性腎不全と呼ばれます)、老廃物をろ過す... さらに読む (体内から老廃物と過剰な体液を取り除く人工的な過程)による治療を受けている慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD) 慢性腎臓病では、血液をろ過して老廃物を除去する腎臓の能力が、数カ月から数年かけて徐々に低下します。 主な原因は糖尿病と高血圧です。 血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなります。 症状としては、夜間の排尿、疲労、吐き気、かゆみ、筋肉のひきつりやけいれん、感覚の消失、錯乱、呼吸困難、皮膚の黄褐色への変色などがあります。 診断は、血液検査と尿の検査の結果により下されます。 さらに読む 患者でみられます。
診断
X線検査
関節液の顕微鏡検査
医師は、この結晶の有無を確認するために、X線検査 X線検査 筋骨格系の病気は、病歴と身体診察の結果に基づいて診断することがよくあります。医師が診断を下したり確定したりするのを助けるために、臨床検査、画像検査、またはその他の診断方法が必要になることがあります。 臨床検査は、筋骨格系の病気の診断にしばしば役立ちます。例えば、赤血球沈降速度(赤沈)は、血液を試験管に入れたときに赤血球が沈む速度を測定する検査です。炎症がある場合、通常は赤沈が上昇します。しかし、炎症は非常に様々な状況で起こるため、赤沈だ... さらに読む を行います。塩基性のカルシウム結晶がX線検査で関節の周囲にみられることがありますが、通常は関節の軟骨内にはみられません。
針で関節液を吸引し(関節穿刺 関節穿刺(関節液の吸引) 筋骨格系の病気は、病歴と身体診察の結果に基づいて診断することがよくあります。医師が診断を下したり確定したりするのを助けるために、臨床検査、画像検査、またはその他の診断方法が必要になることがあります。 臨床検査は、筋骨格系の病気の診断にしばしば役立ちます。例えば、赤血球沈降速度(赤沈)は、血液を試験管に入れたときに赤血球が沈む速度を測定する検査です。炎症がある場合、通常は赤沈が上昇します。しかし、炎症は非常に様々な状況で起こるため、赤沈だ... さらに読む )、これらの結晶がないか検査しなければならない場合もあります。シュウ酸カルシウム結晶は偏光顕微鏡で見えることがありますが、それよりはるかに小さい塩基性リン酸カルシウム結晶は、特殊な染色や特殊な顕微鏡(透過型電子顕微鏡)でしか通常は確認できません。
治療
非ステロイド系抗炎症薬
コルヒチンの経口薬
コルチコステロイドの関節内への注射
これらの病気は通常、痛風と同様に治療 治療 痛風は、尿酸の血中濃度が高いこと(高尿酸血症)が原因で、尿酸の結晶が関節に沈着し蓄積する病気です。結晶が蓄積することで、関節とその周辺に痛みのある炎症の発作が起きます。 尿酸結晶が蓄積すると、関節や組織に激しい痛みや炎症が断続的に起こることがあります。 医師は関節から関節液を採取し、尿酸結晶の有無を調べます。... さらに読む し、非ステロイド系抗炎症薬 非ステロイド系抗炎症薬 基礎疾患を治療することで、痛みを解消したり最小限に抑えたりできるケースがあります。例えば、骨折をギプスで固定することや、感染を起こした関節に抗菌薬を投与することは、鎮痛に役立ちます。しかし、痛みの基礎疾患が治療可能な場合でも、痛みに速やかに対処するために痛み止め(鎮痛薬)が必要になる場合もあります。 医師が鎮痛薬を選択する際、痛みのタイプと持続期間、それぞれの鎮痛薬の便益とリスクを考慮します。ほとんどの鎮痛薬は侵害受容性疼痛(通常の組織... さらに読む (NSAID)、コルヒチンの経口薬、またはコルチコステロイドの関節内への注射( 痛風の治療に用いられる薬剤 痛風の治療に用いられる薬剤
を参照)を用います。
これらの結晶を体内から完全に取り除く方法はありません。