間質性肺疾患は、びまん性実質性肺疾患とも呼ばれ、間質腔が傷害されるいくつかの病気をまとめた総称です。間質腔とは、肺胞(肺にある空気の袋)の壁や、血管と細い気道の周りの空間を指します。間質性肺疾患は、肺組織に炎症細胞が異常に集積する結果、息切れやせきが生じる病気で、それぞれの病気の画像所見は似ていますが、それ以外の点で関連性はありません。間質性肺疾患の中には、極めてまれなものもあります。
間質性肺疾患の初期には、間質腔に白血球やマクロファージ、タンパク質を豊富に含む液体が集積して炎症を引き起こします。炎症が持続すると、正常な肺組織が瘢痕化(線維化)した組織に置き換わることがあります。肺胞が進行性に破壊されるにつれて、肺胞部分に壁が厚くなった嚢胞(蜂の巣に似ているため、蜂巣肺と呼ばれます)が残ります。こうした変化によって生じた病気を肺線維症と呼びます。
間質性肺疾患には様々な病気があり、原因もそれぞれ異なっていますが、類似した特徴がいくつかみられます。いずれも、血液中に酸素を運搬する能力が低下し、肺の硬化や萎縮が生じるため、呼吸が困難になり、せきが出るようになります。しかし、血液中から二酸化炭素を除去する機能は、一般に影響を受けません。
まれな間質性肺疾患
疾患名 |
症状 |
治療 |
備考 |
重度の症状が数週間から数カ月かけて徐々に現れることもあれば、突然現れることもある 息切れ せき |
症状を引き起こしている薬剤を中止する コルチコステロイド(ときに効果的) |
多くの種類の薬剤が原因となる可能性がある。 高齢者では重症化することが多い。 一部の薬剤が肺に与える影響は、全身性エリテマトーデスによる影響と類似している。 病気の範囲と重症度は、薬剤の用量や使用期間によって変わることがある。 |
|
肺胞出血症候群(肺内部への出血) |
最もよくみられるのは、喀血(せきとともに血が出る) 慢性的な失血による貧血 腎不全(ときに) |
コルチコステロイドや細胞傷害性薬剤(シクロホスファミドなど) 失血のため必要であれば輸血 血液中の酸素レベル低下には酸素投与 |
これらのまれな病気では、毛細血管から肺の中へ血液が漏れ出し、原因は自己免疫反応であることが多い。 患者は、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、全身性エリテマトーデス、特発性肺ヘモジデローシス(肺に鉄が沈着する)、薬物反応などを有することがある。 大量出血により死亡する可能性もある。 |
呼吸困難 せき 胸痛 ときに血を伴うせき |
肺移植 シロリムス |
この病気はまれで、若い女性に発生する。 妊娠中に悪化することがある。 |
間質性肺疾患の種類
種類 |
例 |
自己免疫疾患 |
強直性脊椎炎(まれ)、ベーチェット病(非常にまれ)、グッドパスチャー症候群、混合性結合組織病、多発性筋炎と皮膚筋炎、再発性多発軟骨炎、関節リウマチ、全身性強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス |
感染症 |
真菌、マイコプラズマ(細菌の一種)、寄生虫、リケッチア、またはウイルスなどによる感染症や結核 |
有機粉塵 |
鳥の糞やカビ |
薬剤関連 |
アミオダロン、ブレオマイシン、ブスルファン、カルバマゼピン、クロラムブシル、コカイン、シクロホスファミド、金製剤、メトトレキサート、ニトロフラントイン、サラゾスルファピリジン、スルホンアミド系 |
化学物質関連 |
アルミニウム粉末、アスベスト、ベリリウム、金属、二酸化硫黄、タルク |
治療用または工業用の放射線関連 |
がんに対する放射線療法 |
特発性*間質性肺炎 |
|
その他の病気 |
アミロイドーシス、慢性の誤嚥、リンパ脈管筋腫症、神経線維腫症、肺胞タンパク症、肺ランゲルハンス細胞組織球症、サルコイドーシスのほか、血管炎疾患(血管の炎症を引き起こす病気)である好酸球性多発血管炎性肉芽腫症や多発血管炎性肉芽腫症など |
*特発性とは、原因が不明であることを意味します。 |
診断
間質性肺疾患では、これよりはるかに一般的な病気(肺炎や慢性閉塞性肺疾患など)と同様の症状がみられるため、最初は間質性肺疾患が疑われないことがあります。間質性肺疾患が疑われる場合は、診断検査が行われます。検査は疑われる病気の種類によって異なることもありますが、一般的には似たような検査が行われる傾向にあります。
ほとんどの場合、胸部X線検査、胸部CT(コンピュータ断層撮影)検査、肺機能検査が行われ、動脈血ガス分析もよく使用されます。CT検査は、胸部X線検査より感度が高いため、より特異的な診断を下すのに有用です。また、分解能を最大限に高めた技術を用いたCT検査(高分解能CT検査)も行われます。肺機能検査では、多くの場合、肺に吸い込める空気の量が異常に少ないことが明らかになります。動脈血ガス検査では、動脈血中の酸素と二酸化炭素レベルを測定し、動脈血の酸性度(pH)を判定します。
医師は、診断を確定するために、気管支ファイバースコープと呼ばれる器具で肺の小さな組織片を採取し、顕微鏡で調べる検査(肺生検)を行うことがあります。この方法で行う肺生検を、経気管支肺生検と呼びます。これより大きな組織サンプルが必要になることもあり、その場合外科的に採取しなければならず、場合によっては胸腔鏡を使用すること(胸腔鏡下肺生検と呼ばれる方法)もあります。
血液検査が行われることもあります。通常、血液検査で診断を確定することはできませんが、他の類似疾患を調べる検査の一環として行われます。