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胸水

執筆者:

Richard W. Light

, MD, Vanderbilt University Medical Center

最終査読/改訂年月 2017年 10月
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本ページのリソース

胸水とは、胸腔(厳密には2つの胸膜の間)に液体が異常にたまることや、その液体自体のことをいいます。

  • 胸腔に液体がたまる原因としては、感染症、腫瘍、外傷、心不全、腎不全、肝不全、肺血管の血栓(肺塞栓症)、薬物など、数多くあります。

  • 症状には、呼吸困難や胸痛などがあり、特に呼吸やせきをしたときに現れます。

  • 診断には、胸部X線検査や胸水の検査が用いられ、CT血管造影検査もよく使用されます。

  • 胸水の量が多い場合は、胸部に管を挿入して抜き取ります。

胸膜疾患の概要も参照のこと。)

健康な人では、2層の胸膜の間には少量の液体しか存在しません。しかし、心不全、肝硬変、肺炎、がんなどの様々な理由により、胸膜の間に大量の液体がたまるようになります。

胸水の種類

胸水には次の2種類があり、どちらの胸水がみられるかは、原因によって異なります。

  • タンパク質を豊富に含む液体(滲出[しんしゅつ]性)

  • 水のように透明な液体(漏出[ろうしゅつ]性)

医師は、この違いを利用して原因の特定に役立てます。例えば、心不全肝硬変は、漏出性胸水の一般的な原因です。肺炎がんウイルス感染症は、滲出性胸水の一般的な原因です。

胸腔内に血液がたまる状態(血胸)は、一般に胸部外傷の結果として生じます。まれに、外傷がなくても、血管が破裂して胸腔内へ出血したり、大動脈の一部が膨らんだ部分(大動脈瘤)から漏れ出した血液が胸腔内に入ったりすることがあります。

肺炎または肺膿瘍が胸腔内に波及すると、胸腔内に膿がたまる状態(膿胸)になることがあります。膿胸は、胸部の外傷や手術、食道の破裂、または腹部の膿瘍による感染症に伴って発生することもあります。

胸部にある主要なリンパ管(胸管)が損傷したり、腫瘍によって閉塞すると、胸腔内にミルク状のリンパ液がたまる状態(乳び胸)になることがあります。

胸腔内に尿がたまる状態(尿胸)はまれですが、腎臓から尿を排出する管(尿管)が閉塞すると起こることがあります。

結核関節リウマチなどの病気により、胸水がたまって長い間放置されると、胸腔内の液体に過剰なコレステロールが含まれるようになります。

胸水の一般的な原因*

*最も多い原因から、順に記載。

症状

胸水がある場合でも、まったく症状がないことがよくあります。胸腔にたまった液体の種類やその原因にかかわらず、最もよくみられる症状は息切れと胸痛です。

胸痛は通常、胸膜痛(胸膜性胸痛)と呼ばれる種類の痛みです。胸膜痛は、深呼吸やせきをしたときにだけ現れることもあれば、常に痛みがあり、深呼吸やせきによって痛みが強くなることもあります。この痛みは、一般に炎症が起こっている部位のすぐ上の胸壁に現れます。しかし、上腹部または首や肩にも、あるいはこれらの部位だけに痛みが現れることがあり、これを関連痛と呼びます( 関連痛とは)。胸膜痛は、胸水以外の異常によっても発生することがあります。

胸水による胸膜性胸痛は、液体の量が増えるとともに消える場合があります。液体の量が多いと、呼吸の際に片方または両方の肺が膨らみにくくなって、息切れを起こすこともあります。

胸膜性胸痛の主な原因

  • がん

  • 肺炎

  • 外傷(肋骨骨折や打撲など)

  • 肺塞栓症

  • ウイルス性胸膜炎

  • 膵炎

  • 関節リウマチ

  • 全身性エリテマトーデス

  • 結核

  • 薬物反応

診断

  • 胸部X線検査や超音波検査

  • 液体サンプルの臨床検査

  • ときにCT血管造影検査

一般に、診断を下す上で最初に行うのは、胸部X線検査により胸腔への液体の貯留を確認することです。しかし、液体の量が少ないと、胸部X線検査では写らないことがあります。

超音波検査は、わずかな液体の貯留を見つけるのに役立つことがあります。

胸腔穿刺が行われることもあります。この処置では、針で液体を抜き取って検査に送ります。胸水の外観が、原因の特定に役立つ場合があります。臨床検査を行って、胸水の化学組成を調べ、結核などの細菌の有無を判定します。また、胸水のサンプルに含まれる細胞の数や種類、がん細胞の有無についても調べます。

これらの検査で胸水の原因を特定できない場合は、別の検査を行うこともあります。

CT血管造影検査では、肺や胸水をより鮮明に描出できるため、胸水の原因となりうる肺炎、肺塞栓、縦隔腫瘤、肺膿瘍、または腫瘍などの徴候が明らかになることもあります。CT血管造影を行う患者は、撮影中、息を止めなければなりません。

重篤な病気の可能性が残っていれば、管状の機器を胸に挿入する検査(胸腔鏡検査)を行うこともあります。ときに、胸膜または肺から、サンプルを採取しなければならないこともあります(生検)。胸水がみられる患者の約20%では、最初の検査で原因が明らかにならず、さらに広範な検査を行っても原因が分からないままのこともあります。

治療

  • 胸水の原因となっている病気の治療

  • 胸水の量が多ければ、胸水を抜き取る処置(ドレナージ)

胸水の量が少ない場合は、治療の必要がないこともありますが、基礎疾患は必ず治療する必要があります。胸水を抜き取るまで、または胸水が自然に排出されるまで、鎮痛薬を投与することもあります。

胸水の量が多く、特に息切れがある場合は、胸水を抜き取る処置(ドレナージ)が必要になります。ドレナージを行うことで、通常は息切れが劇的に軽快します。多くの場合、胸水は、胸腔穿刺によって抜き取ることができます。下方の2本の肋骨の間の皮膚に局所麻酔を施した後、そこに細い針を刺して、胸水に届くまでゆっくりと挿入していきます。肺に穴を開けてしまい、気胸を引き起こすリスクを低下させるために、多くの場合、合成樹脂製の細いカテーテルで針を覆い、胸水に届くまで針を誘導します。胸腔穿刺は、一般に診断目的で行われますが、この方法を用いると、1回で約5リットルもの胸水を安全に抜き取ることができます。

さらに大量の胸水を抜き取る必要がある場合は、胸腔ドレーンという管を胸壁から挿入することがあります。2本の肋骨の間に局所麻酔薬を注射して麻酔を施した後、合成樹脂製のチューブを胸腔内に挿入します。次に、この管の片方の端を、胸腔に空気が漏れないようにしたウォーターシール式のドレナージ装置につなぎます。胸腔ドレーンの位置を確認するために、胸部X線検査を行います。胸腔ドレーンの位置が正しくない場合やねじれている場合は、ドレナージがうまくできないことがあります。また、胸水の粘り気が強い場合やかたまりが多い場合も、うまく流れ出てこないことがあります。

肺炎による胸水

肺炎によって胸水がたまっている場合、抗菌薬の静脈内投与が必要です。医師は通常、胸水のサンプルを採取して、検査に送ります。膿がたまっていたり、胸水にある種の特徴がみられる場合は、一般に胸腔ドレーンにより胸水を抜き取る必要があります。胸腔内にできた瘢痕で仕切られた区画に胸水がたまっている場合は、ドレナージがさらに困難になります。ときには、血栓溶解薬と呼ばれる薬剤と、粘性の強い胸水を薄める薬剤(ドルナーゼ アルファ)を胸腔に注入することで、ドレナージが容易になり、手術の必要がなくなることもあります。(効果を得るには、血栓溶解薬とドルナーゼ アルファを両方使用しなければなりません。)

手術が必要な場合は、胸腔鏡下デブリドマンと呼ばれる方法、または胸壁に切開を入れる手術(開胸手術)が行われます。手術では、肺の表面を厚い皮のように覆う線維性物質を切除して、肺が正常に膨らむようにします。

がんによる胸水

胸膜のがんによって胸水がたまっている場合は、胸水を抜き取ってもまたすぐにたまってしまうことが多いため、治療が困難なことがあります。胸水を抜き取って抗腫瘍薬を投与することで、液体が再びたまらないようになることもあります。定期的に胸水を真空のびんに抜き取ることができるように、細い管を胸部に留置しておくこともあります。それでも胸水がたまり続ける場合は、胸腔(厳密には胸膜と胸膜の間の空間)をふさいでしまう手術(胸膜癒着術)が有効な場合があります。この胸膜癒着術では、ドレーンを介して胸水をすべて抜き取った後に、そのドレーンから、ドキシサイクリン溶液、ブレオマイシン、またはタルク配合剤などの胸膜を刺激する物質を注入します。この刺激物質により2層の胸膜が癒着するため、それ以上液体がたまる空間がなくなります。また、胸腔鏡を利用して胸膜癒着術を行うこともできます。

乳び胸

乳び胸の治療は、リンパ管からの漏れをなくすことに焦点が置かれます。そのような治療として、リンパ液の流れを妨げている腫瘍に対して手術、化学療法、または放射線療法を行うこともあります。

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