病院で発生する肺炎は、普段の生活環境で発生する市中肺炎に比べて一般に重症であり、これは病原体がより攻撃的な傾向にあるためです。このような病原体は、抗菌薬に反応しにくく(「耐性がある」といいます)、そのため治療もより困難です。さらに、入院患者は肺炎にかかっていなくても、普通に生活している人に比べて健康状態が悪い傾向にあるため、感染症に対する抵抗力が弱くなっています。
(肺炎の概要も参照のこと。)
危険因子
原因
症状
症状は一般に市中肺炎と同じで、具体的には以下のものがあります。
病院で感染する肺炎は、一般の生活環境で感染する肺炎と比べ、気づかれにくい場合があります。例えば、肺炎を発症する入院患者の多くが、高齢であったり、気管に挿管されて人工呼吸器をつけていたり、認知症であったり、極めて重篤な状態であったりして、胸痛、息切れ、脱力などの症状を訴えられない場合があります。そのような場合、しばしば発熱、呼吸数の増加、心拍数の増加に基づいて肺炎が疑われます。
肺炎の高齢者は、錯乱、食欲不振、落ち着きのなさや興奮、転倒、失禁(尿を漏らすこと)をきたすこともあります。
診断
院内肺炎の診断は、症状に加え、胸部X線検査または胸部CT検査の結果に基づいて下されます。医師は通常は血液サンプルを採取し、検査室で細菌を増殖させる検査(培養検査)と特定を試みます。
院内肺炎の患者は病状が非常に重い場合もあるため、最適な治療法を決定するために肺炎の原因微生物の特定が必要になることもあります。このような理由から、原因微生物を特定するために医師は気管支鏡検査を行って肺そのものの中からサンプルを採取することがあります。気管支鏡検査では、気管支鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を気管から肺へ挿入します。検査用のサンプルとして、膿や分泌物に限らず、肺の組織を採取することもあります。分泌物が見えない場合は、肺の一部を液で洗浄し、その洗浄液を回収して分析する検査(気管支肺胞洗浄と呼ばれる処置)を行うこともあります。液体が肺を覆う膜にたまっている場合(胸水と呼ばれる)、医師は胸部に針を刺してこの液体を採取し(胸腔穿刺と呼ばれる処置)、培養させることがあります。
予後(経過の見通し)
治療
院内肺炎の治療では、最も可能性が高い原因微生物と、個々の患者の危険因子に基づいて抗菌薬が選択されます。重篤な患者は、集中治療室で治療を行うことがあり、場合によっては人工呼吸器を装着します。治療法には、抗菌薬の静脈内投与、酸素補給、輸液などがあります。
以下のものを始め、いくつかの抗菌薬が使用できます。
これらの薬剤は単独で使用されることもあれば、他の薬剤と併用されることもあります。
重篤な肺炎患者における終末期の問題
一部の院内肺炎患者では状態が非常に悪くなります。肺炎はしばしば強力な抗菌薬で治療され、必要であれば人工呼吸器が用いられます。死期を悟った患者がこれほど積極的な治療を望んでいない場合もあります。重症疾患または末期疾患である場合は、入院に際して、肺炎または他の重篤な合併症の治療に関する希望を主治医や家族に伝えておくとよいでしょう。