肺腎症候群

執筆者:Joyce Lee, MD, MAS, University of Colorado School of Medicine
レビュー/改訂 2021年 9月
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肺腎症候群とは、びまん性肺胞出血(繰り返すまたは持続する肺の中での出血)と糸球体腎炎(腎臓の微細な血管が損傷し、むくみや高血圧をきたし、尿中に赤血球が出る病気)が組み合わさったものです。

  • 肺腎症候群は、ほぼ常に自己免疫疾患によって引き起こされます。

  • 診断検査として、尿検査のほか、血液検査を行って体が自己の組織に反応していることを示す特定のタンパク質(抗体)を検出したり、ときに肺または腎臓から組織を採取して分析することがあります。

  • 治療にはコルチコステロイドのほか、しばしばシクロホスファミド(化学療法の薬剤)またはリツキシマブ、免疫系を抑制するその他の薬剤を使用します。

免疫系の重要な機能に、感染に対する防御があります。免疫系は、感染から体を守るために、微生物を自己に対する異物と認識し、その微生物と結合するタンパク質(抗体)を生産して、微生物を体内から除去できるようにします。自己免疫疾患では、自己の組織が異物であるかのように体が誤って反応してしまいます。肺の自己免疫疾患では、肺の組織が免疫系の攻撃を受けて損傷します。肺が侵される自己免疫疾患では、しばしば他の臓器、特に腎臓も侵されます。

肺腎症候群は、1つの病気ではなく、症候群です。症候群とは、同時に起こる一群の症状や異常のうち、その原因として複数の異なる病気が考えられるものです(あるいは別の症候群が原因となることさえあります)。肺腎症候群ではびまん性肺胞出血と呼ばれる肺の病気がみられますが、これは肺に血液を供給する細い血管が広範囲に損傷し、肺にある小さな空気の袋(肺胞)に血液がたまることです。また糸球体腎炎と呼ばれる腎臓障害の一種もみられますが、これは糸球体(腎臓にある、血液をろ過するための小さな穴が空いた微細な血管のかたまり)の病気です。糸球体腎炎は、体のむくみ(浮腫)、高血圧、尿中への赤血球の出現を特徴とします。

肺腎症候群の原因

肺腎症候群は様々な原因によって引き起こされる可能性があります。

肺腎症候群の最も一般的な原因は、以下のような自己免疫疾患です。

あまり一般的でない自己免疫性の原因としては以下のものがあります。

肺腎症候群の症状

具体的な症状としては以下のものがあります。

  • 血尿

  • 体の腫れ(浮腫)

  • せき(通常、血を伴います)

  • 呼吸困難

  • 発熱

ときに症状があまりにひどい場合は、肺が機能しなくなり(呼吸不全)、重度の呼吸困難をきたしたり、皮膚の色が青っぽく変化したりする(チアノーゼ)ことがあります。肺が機能しなくなると、体の組織が十分な酸素を受け取ることができず、死に至ることもあります。

腎臓が侵されると、尿に血液が混ざりますが、非常に少量であれば、肉眼で見えないこともあります。腎臓が侵されると血圧も上昇します。肺の症状と腎臓の症状が、同時に起こらないこともあります。

ときに、病気が突然増悪することもあります。

肺腎症候群の診断

  • 血液と尿の検査

  • 胸部画像検査

  • 内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を肺に挿入し(気管支鏡検査)、液で洗浄する(気管支肺胞洗浄)

  • ときに肺または腎臓から組織片を採取して分析する(生検)

肺腎症候群の診断を下すには、肺胞のびまん性の出血(びまん性肺胞出血でみられるような)と腎臓の損傷(糸球体腎炎)の両方がなければなりません。

医師は、しばしば患者の症状や胸部画像所見に基づいて、びまん性肺胞出血の診断を下します。胸部画像検査では通常、肺出血による異常な白い斑点が両方の肺にみられます。症状や胸部画像所見から診断が明らかにならない場合は(例えば、喀血がない患者)、出血がないかを確認するため、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を肺に挿入し(気管支鏡検査)、液で肺を洗浄(気管支肺胞洗浄)する必要があるかもしれません。

また、血液中の赤血球の量を測定し、貧血がないかを確認します。

糸球体腎炎の診断は、症状、尿検査、腎機能評価のための血液検査によって行います。

いったん肺腎症候群の診断が下されれば、次は原因の特定に努めます。血液検査を行い、患者自身の組織に対する抗体(自己抗体と呼ばれます)がないか確認します。検査を行っても原因が明らかにならない場合、肺または腎臓の組織片を採取して分析(生検)する必要があります。

肺腎症候群の治療

  • 経口コルチコステロイド(プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]など)

  • シクロホスファミド(化学療法の薬剤)

  • 血液中から有害な抗体を除去する(血漿交換と呼ばれる)処置

ほとんどの場合、肺腎症候群は自己免疫疾患によって引き起こされるため、治療には通常、高用量のコルチコステロイド(プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]など)を用いて免疫系を抑制します。非常に重症の患者であれば、免疫系をさらに抑制するため、シクロホスファミドが追加されることもよくあります。シクロホスファミドの代わりにリツキシマブを投与することもあります。

血漿交換と呼ばれる、血液中から有害な抗体を除去する処置が役に立つこともあります。

症状が軽快するまで、多くの患者が支持療法を必要とします。例えば酸素投与を行ったり、一定の期間、人工呼吸器が必要になる場合があります。輸血が必要になることもあります。腎不全に陥った場合、腎臓透析腎移植が必要になることもあります。

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