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肺腎症候群

執筆者:

Joyce Lee

, MD, MAS, University of Colorado School of Medicine

医学的にレビューされた 2020年 5月
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肺腎症候群とは、びまん性肺胞出血(繰り返すまたは持続する肺の中での出血)と糸球体腎炎(腎臓の微細な血管が損傷し、むくみや高血圧をきたし、尿中に赤血球が出る病気)が組み合わさったものです。

免疫系 免疫系の概要 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守るために、免疫系が備わっています。侵入物には以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕[ぜん]虫など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む の重要な機能に、感染に対する防御があります。免疫系は、感染から体を守るために、微生物を自己に対する異物と認識し、その微生物と結合するタンパク質(抗体 抗体 体の防御線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっており、白血球は血流に乗って体内を巡り、組織に入り込んで微生物などの異物を見つけ出し、攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防御は以下の2つの部分に分かれています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識したときに始まります。そして、獲... さらに読む 抗体 )を産生して、微生物を体内から除去できるようにします。 自己免疫疾患 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む では、自己の組織が異物であるかのように体が誤って反応してしまいます。肺の自己免疫疾患では、肺の組織が免疫系の攻撃を受けて損傷します。肺が侵される自己免疫疾患では、しばしば他の臓器、特に腎臓も侵されます。

肺腎症候群は、1つの病気ではなく、症候群です。症候群とは、同時に起こる一群の症状や異常のうち、その原因として複数の異なる病気が考えられるものです(あるいは別の症候群が原因となることさえあります)。肺腎症候群では びまん性肺胞出血 びまん性肺胞出血 びまん性肺胞出血は、繰り返し起こる、または持続性の肺への出血を特徴とする症候群であり、たいていの場合 自己免疫疾患が原因で起こります。 一般的な症状は呼吸困難とせきであり、しばしばせきに伴って血が出ます。 患者には通常、胸部X線検査、血液検査を行うほか、呼吸の通路を気管支鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を用いて調べる(気管支鏡検査)こともあ... さらに読む と呼ばれる肺の病気がみられますが、これは肺に血液を供給する細い血管が広範囲に損傷し、肺にある小さな空気の袋(肺胞)に血液がたまることです。また 糸球体腎炎 糸球体腎炎 糸球体腎炎は、糸球体(小さな穴が多数あいた微細な血管でできた球状の腎組織で、それらの穴を通して血液がろ過されます)が侵される病気です。糸球体腎炎は、むくみ(浮腫)、高血圧および尿中での赤血球の検出を特徴とします。 糸球体腎炎は、感染症、遺伝性疾患、自己免疫疾患など、様々な病気が原因で発生します。 診断は、血液検査と尿検査の結果に基づいて下され、場合によっては画像検査や腎臓の生検も行われます。... さらに読む と呼ばれる腎臓障害の一種もみられますが、これは糸球体(腎臓にある、血液をろ過するための小さな穴が空いた微細な血管のかたまり)の病気です。糸球体腎炎は、体のむくみ(浮腫)、高血圧、尿中への赤血球の出現を特徴とします。

原因

肺腎症候群は様々な原因によって引き起こされる可能性があります。

肺腎症候群の最も一般的な原因は、以下のような自己免疫疾患です。

あまり一般的でない自己免疫性の原因としては以下のものがあります。

症状

典型的な症状には以下のものがあります。

  • せき(通常、血を伴います)

  • 呼吸困難

  • 発熱

  • 体の腫れ(浮腫)

ときに症状があまりにひどい場合は、肺が機能しなくなり(呼吸不全 呼吸不全 呼吸不全は、血液中の酸素レベルが危険なほど低くなったり、血液中の二酸化炭素濃度が危険なほど高くなる病気です。 呼吸不全の原因としては、気道をふさぐ病気、肺組織を損傷する病気、呼吸を制御する筋肉を衰えさせる病気、呼吸を促す仕組みが抑制される病気などがあります。 激しい息切れ、皮膚の青みがかった変色、錯乱または眠気などの症状がみられることがあ... さらに読む )、重度の呼吸困難をきたしたり、皮膚の色が青っぽく変化したりする(チアノーゼ チアノーゼ チアノーゼは、血液中の酸素の不足が原因で、皮膚が青っぽく変色することです。 酸素が枯渇した血液(脱酸素化血液)は、赤色というより青みがかっており、これが皮膚を循環している場合にチアノーゼがみられます。肺または心臓の重い病気の多くは、血液中の酸素レベルを低下させるため、チアノーゼの原因となります。また、血管や心臓にある種の奇形があると、血液が空気中から酸素を取り込む場所である肺胞(肺にある小さな空気の袋)を通らず、直接心臓に流れるために、... さらに読む )ことがあります。肺が機能しなくなると、体の組織が十分な酸素を受け取ることができず、死に至ることもあります。

腎臓が侵されると、尿に血液が混ざりますが、非常に少量であれば、肉眼で見えないこともあります。腎臓が侵されると血圧も上昇します。肺の症状と腎臓の症状が、同時に起こらないこともあります。

ときに、病気が突然増悪することもあります。

診断

  • 血液と尿の検査

  • 胸部X線検査

  • 内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を肺に挿入し(気管支鏡検査)、液で洗浄する(気管支肺胞洗浄)

  • ときに肺または腎臓から組織片を採取して分析する(生検)

医師は、しばしば患者の症状や胸部X線検査に基づいて、びまん性肺胞出血の診断を下します。胸部X線検査では通常、肺出血による異常な白い斑点が両方の肺にみられます。症状や胸部X線所見から診断が明らかにならない場合は(例えば、喀血がない患者)、出血がないかを確認するため、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を肺に挿入し(気管支鏡検査 気管支鏡検査 気管支鏡検査とは、気管支鏡(観察用の管状の機器)を用いて発声器(喉頭)や気道を直接観察することです。 気管支鏡の先端にはカメラが付いていて、これによって太い気道(気管支)から肺の内部を観察できます。医師は、気管支鏡に小さな器具を通し、肺や気道組織のサンプルを採取して、肺疾患の診断や一部の肺疾患の治療に役立てることもできます。気管支鏡には、柔軟なもの(軟性気管支鏡)と硬いもの(硬性気管支鏡)があります。気管支鏡によるほとんどの処置(特に診... さらに読む 気管支鏡検査 )、液で肺を洗浄(気管支肺胞洗浄 気管支鏡による処置 気管支鏡検査とは、気管支鏡(観察用の管状の機器)を用いて発声器(喉頭)や気道を直接観察することです。 気管支鏡の先端にはカメラが付いていて、これによって太い気道(気管支)から肺の内部を観察できます。医師は、気管支鏡に小さな器具を通し、肺や気道組織のサンプルを採取して、肺疾患の診断や一部の肺疾患の治療に役立てることもできます。気管支鏡には、柔軟なもの(軟性気管支鏡)と硬いもの(硬性気管支鏡)があります。気管支鏡によるほとんどの処置(特に診... さらに読む 気管支鏡による処置 )する必要があるかもしれません。

また、血液中の赤血球の量を測定し、貧血がないかを確認します。

糸球体腎炎の診断は、症状、尿検査、腎機能評価のための血液検査によって行います。

いったん肺腎症候群の診断が下されれば、次は原因の特定に努めます。血液検査を行い、患者自身の組織に対する抗体(自己抗体と呼ばれます)がないか確認します。検査を行っても原因が明らかにならない場合、肺または腎臓の組織片を採取して分析(生検)する必要があります。

治療

  • 経口コルチコステロイド(プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]など)

  • シクロホスファミド(化学療法の薬剤)

  • 血液中から有害な抗体を除去する(血漿交換と呼ばれる)処置

ほとんどの場合、肺腎症候群は自己免疫疾患によって引き起こされるため、治療には通常、高用量のコルチコステロイド(プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]など)を用いて免疫系を抑制します。非常に重症の患者であれば、免疫系をさらに抑制するため、シクロホスファミドが追加されることもよくあります。シクロホスファミドの代わりにリツキシマブを投与することもあります。

症状が軽快するまで、多くの患者が支持療法を必要とします。例えば酸素投与を行ったり、一定の期間、 人工呼吸器 人工呼吸器 人工呼吸器は、肺への空気の出入りを補助するために用いる機械です。 呼吸不全の患者の一部は、人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)による呼吸の補助を必要とします。人工呼吸器によって命が助かることもあります。 人工呼吸器には、多くの使い方があります。通常は、合成樹脂製のチューブを鼻または口から気管に挿入します。人工呼吸器が数日以上必要な場合は、首の前側を小さく切開して(気管切開)、気管に直接チューブを通すこともあります。人工呼... さらに読む が必要になる場合があります。 輸血 輸血の概要 輸血とは、血液や血液成分を健康な供血者(ドナー)から病気の受血者(レシピエント)に移すことです。輸血を行うことで、血液が酸素を運ぶ能力を高め、体内の血液量を回復させるとともに、血液凝固の障害を正常にします。 米国では毎年約2100万件の輸血が行われています。典型的な輸血の受血者は以下のような人達です。... さらに読む 輸血の概要 が必要になることもあります。腎不全に陥った場合、 腎臓透析 透析 透析とは、体内の老廃物や過剰な水分を機械的に取り除く処置のことで、腎臓が十分な機能を果たさなくなったときに必要になります。 透析が必要になる理由はいくつかありますが、最も多いのは、腎臓が血液から老廃物を十分にろ過できなくなること(腎不全)です。腎臓の機能は急速に低下することもあれば(... さらに読む 透析 腎移植 腎移植 腎移植とは、生きている人または死亡した直後の人から健康な腎臓を摘出し、末期腎不全の患者に移植することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 不可逆的 腎不全(腎臓が機能せず、治療しても治らない)の患者にとって、年齢にかかわらず腎移植は透析に代わる救命法です。米国では2019年には23,401件の腎移植が行われました。最も多いタイプの臓器移植です。 腎移植は以下の病気がある場合に必要になります。... さらに読む 腎移植 が必要になることもあります。

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