職業性喘息では、息切れ、胸の圧迫感、喘鳴、せきなどの症状が現れることがあります。
患者には、喘息を引き起こすことが分かっている物質へのアレルギー検査を行います。
治療は誘因を避けることですが、それができない場合は、気道を広げ、炎症を鎮める薬を投与します。
(環境性肺疾患の概要 環境性肺疾患の概要 環境性肺疾患は、有害な粒子、霧、蒸気、ガスなどを吸い込むことによって発生する病気で、通常は作業中に起こります。肺疾患が粒子を吸い込んだことに起因する場合は、塵肺(じんぱい)症という病名がよく用いられます。 吸い込んだ物質が気道や肺の中に達する範囲と引き起こす肺疾患のタイプは、吸い込んだ粒子の大きさや種類によって異なります。粒子が大きければ... さらに読む も参照のこと。)
職場にある多くの物質が、気道の狭窄を引き起こし、呼吸困難の原因となる可能性があります。空気中に浮遊するアレルゲンに特に感受性が高くて発症する人もいれば、アレルギーがなくても空気中に浮遊する刺激物へ極めて多くさらされるために発症する人や、 ビル関連疾患 ビル関連疾患 ビル関連疾患は、現代の気密性の高いビル内の物質にさらされることが原因で、肺や体の他の部位が損傷される病気です。 ビル関連疾患は、換気が不十分な気密性が高いビル内の物質にさらされることが原因で発生します。 症状は原因物質によって様々ですが、発熱、呼吸困難、鼻水や鼻づまり、頭痛、皮膚の異常、集中力の低下などがみられます。 診断には、一般にビル内の空気質の評価や、ビル関連疾患の症状がみられる人の数の調査も含まれます。... さらに読む を発症する人もいます。アレルゲンにさらされているために職業性喘息のリスクが高い労働者の例としては、動物の飼育者やパン職人が挙げられます。イラクやアフガニスタンへの従軍者もリスクが高く、その原因としては、屋外で焼却するゴミから排出される物質、砂漠の塵埃(じんあい)、産業火災、自動車の排気ガスなどが考えられます。
喘息の病歴がある人が職場で 喘息発作 症状 喘息は、気道が何らかの刺激に反応して狭くなる(通常は可逆性)病態です。 症状としては、特定の誘因に反応して生じる、せき、喘鳴(ぜんめい)、息切れなどが最もよくみられます。 医師は、呼吸の検査(肺機能検査)を行って喘息の診断を確定します。 喘息発作を防ぐためには、誘因となる物質を吸い込まないようにするとともに、気道の開口を保つ薬を服用する必... さらに読む を誘発する物質にさられることで症状が悪化することは、その職場で喘息が悪化したものであり、職業性喘息とは異なります。
職場で刺激物を吸入することによって引き起こされる気道の病気は、ほかにもいくつかあります。こういった病気は職業性喘息に似ています。
職業性喘息の症状
職業性喘息では、息切れ、胸の圧迫感、喘鳴、せきなどの症状が現れることがあります。また、職場の粉塵に対するアレルギーのサインとして、くしゃみ、鼻水、涙目などの症状がみられる人もいます。これらのアレルギー症状が数カ月から数年続いた後、息切れやその他の呼吸の異常が発生します。場合によっては、唯一の症状が夜間の喘鳴だけのこともあります。
症状は就業時間中に現れることもありますが、多くの場合、仕事が終わって数時間経ってから初めて現れます。場合によっては、原因物質にさらされて24時間ほど経過してから症状が現れることもあります。また、原因物質にさらされてから1週間以上にわたって、症状が現れたり治まったりすることもあります。一般的には、昼間に原因物質にさらされて、夜間に症状が現れ始めます。このように、職場と症状との関連性がはっきりしないことがよくあります。週末や数日間の休暇中は、しばしば症状が軽くなったり、消失したりします。原因物質に繰り返しさらされると、症状が悪化します。
職業性喘息の診断
職場で喘息症状の既往
ときに皮膚アレルギー検査または肺機能検査
医師は職業性喘息の診断を下すために、症状や喘息を引き起こす物質にさらされたことがあるかを尋ねます。原因を特定するため、安全データシート(米国ではすべての職場に設置が義務づけられています)が用いられることもあります。
場合によっては、アレルギー反応を起こす疑いがある物質を少量だけ皮膚の上に置く 皮膚テスト 診断 アレルギー反応(過敏反応)とは、通常は無害な物質に対して免疫系が異常な反応をすることを指します。 アレルギー反応は通常、くしゃみ、涙目、眼のかゆみ、鼻水、皮膚のかゆみ、発疹を引き起こします。 アナフィラキシー反応と呼ばれる一部のアレルギー反応は生命を脅かします。 症状からアレルギーが疑われ、アレルギー反応の引き金になった物質の特定には皮膚... さらに読む によって、アレルギー反応を検出できることもあります。
それでも診断が難しい場合は、専門施設で吸入誘発試験を行います。この試験では、患者に疑わしい物質を少量だけ吸入させて、喘鳴や息切れがみられるかを観察するとともに、肺機能が低下するかを確認します。
症状が現れる前に気道が狭くなり始めると考えられるため、症状が遅れて現れる患者では、就業中に気道の状態をモニタリングする検査器を使用することがあります。この検査器は携帯型のピークフローメーターというもので、肺から一気に吐き出せる空気の速度を測定できます。気道が狭くなっている場合は、この速度が著しく低下することから、職業性喘息が疑われます。
職業性喘息の予防
喘息を引き起こす可能性がある物質を扱っている工場では、防塵対策や蒸気抑制措置を行う必要がありますが、場合によっては、粉塵や蒸気の除去が不可能な場合もあります。職業性喘息になった場合は、可能であれば職種を変えるべきです。原因物質にさらされ続けると、喘息がさらに重症化して、持続型喘息になります。
職業性喘息の治療
気道を広げる薬
治療は、他の種類の 喘息 治療 喘息は、気道が何らかの刺激に反応して狭くなる(通常は可逆性)病態です。 症状としては、特定の誘因に反応して生じる、せき、喘鳴(ぜんめい)、息切れなどが最もよくみられます。 医師は、呼吸の検査(肺機能検査)を行って喘息の診断を確定します。 喘息発作を防ぐためには、誘因となる物質を吸い込まないようにするとともに、気道の開口を保つ薬を服用する必... さらに読む と同じです。気道を広げる薬(気管支拡張薬)が投与されることがあり、できればサルブタモールのような吸入薬が望ましいとされています。また、炎症を鎮める抗炎症薬が投与されることもあり、コルチコステロイドであるトリアムシノロンのような吸入薬、またはモンテルカストのような錠剤が使用されます。喘息発作が激しい場合は、プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)のような経口のコルチコステロイドを短期間だけ使用することもあります。長期にわたる管理には、コルチコステロイドの経口薬よりも吸入薬の方が適しています。