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環境性肺疾患の概要

執筆者:

Abigail R. Lara

, MD, University of Colorado

最終査読/改訂年月 2018年 3月
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環境性肺疾患は、有害な粒子、霧、蒸気、ガスなどを吸い込むことによって発生する病気で、通常は作業中に起こります。肺疾患が粒子を吸い込んだことに起因する場合は、塵肺(じんぱい)症という病名がよく用いられます。

吸い込んだ物質が気道や肺の中に達する範囲と引き起こす肺疾患のタイプは、吸い込んだ粒子の大きさや種類によって異なります。粒子が大きければ鼻腔や太い気道にとどまる可能性がありますが、粒子が極めて小さい場合は肺まで達することがあります。肺で溶けて、血液中に吸収される粒子もあります。固形粒子のほとんどは、体の防御機構によって排除されます。

体には、吸い込んだ粒子を除去する機構がいくつか備わっています。気道は分泌物(粘液)で覆われているため、そこに粒子が取り込まれると、せきとともに吐き出すことができます。さらに、気道の内面を覆っている細胞から気道内腔へ向かって生えている線毛と呼ばれる微細な毛によって、吸い込まれた粒子は上方へ運ばれ、肺の外へ押し出されます。肺にある小さな空気の袋(肺胞)では、特殊な食細胞(マクロファージ)が、ほとんどの粒子を飲み込み、無害化します。

肺を傷つける可能性がある粒子には、様々な種類があります。一部は有機物といわれる物質で、炭素を含む物質から成り、穀物の粉塵、綿ぼこり、動物のフケなどの生物由来のものです。一部は無機物といわれる物質で、金属やミネラル(例えば、アスベスト)などの生物に由来しないものです。

環境性肺疾患のリスク

いろいろな種類の粒子が、体内で様々な反応を起こします。ある種の粒子(例えば、動物のフケ)は、花粉症に似た症状や一種の喘息症状などのアレルギー反応を起こします。別の粒子はアレルギー反応を誘発することによってではなく、気道や肺胞にある細胞に毒性を及ぼすことによって、損傷を与えます。シリカ(石英)の粉塵やアスベストなどの一部の粒子は、肺組織の瘢痕化(肺線維症)につながる慢性的な炎症を引き起こすことがあります。アスベストなどの特定の有害な粒子は、肺がんを引き起こしたり(特に喫煙者に多くみられます)、胸郭の内側と肺の表面を包んでいる胸膜にできる中皮腫と呼ばれるがんを(喫煙歴に関係なく)引き起こすことがあります。

どの環境性肺疾患になるかは、その人が置かれる環境によって変わります。

  • 一部の人は、大気汚染物質( 大気汚染関連疾患)や室内の汚染物質( ビル関連疾患)にさらされると、職業性肺疾患にかかるリスクが高く、すでに他の肺疾患のある人では特にリスクが高まります。

  • 職場での曝露により、職業性喘息にかかるリスクがある人はさらに多くいます。

  • アスベストへの曝露は、石綿肺、中皮腫アスベスト関連胸膜疾患の原因となります。

  • 航空宇宙産業に携わる人などで、ベリリウムを扱う人は、ベリリウム症にかかるリスクがあります。

  • 綿、亜麻、麻を扱う人は、綿肺症にかかるリスクがあります。

  • 炭鉱労働者やグラファイトを扱う労働者は、炭坑夫塵肺症にかかるリスクがあります。

  • シリカにさらされる労働者は、珪肺症にかかるリスクがあります。

  • ガスや化学物質への曝露は、職場(農業従事者など)でも家庭でも起こりえます( ガスや化学物質への曝露)。

慢性閉塞性肺疾患喘息など、すでに肺疾患のある人では、家庭や職場で何らかの物質にさらされると、その物質自体は肺疾患の原因とならないものでも、もともとの病気の症状が悪化することがあります。

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環境性肺疾患にかかるリスクのある人

疾患名

かかりやすい人

石綿肺

断熱材などのアスベストが含まれる資材の設置または解体を行う建設業者や改築業者

造船所の作業員

アスベストの採掘、精製、アスベスト含有製品の製造を行う労働者

塵肺症

バリウムを扱う労働者

鉄の採掘を行う労働者

スズを扱う労働者

溶接工

ベリリウム症

航空宇宙産業に携わる労働者

鋳造などの冶金労働者

閉塞性細気管支炎

香味料を扱う労働者(ポップコーン労働者肺)

イラクまたはアフガニスタンに派遣された軍人

綿肺症

綿、麻、ジュート(黄麻)、亜麻を扱う労働者

炭坑夫塵肺症

炭鉱労働者

グラファイト(黒鉛)を扱う労働者

空調設備が特定の真菌や細菌によって汚染されている場所で働く事務職員

水泳プールや入浴施設の労働者(汚染された水しぶきが原因)

農業従事者、キノコの栽培者、製粉や建築に携わる労働者、鳥類の飼育者、イソシアネート(ウレタン)を扱う労働者

職業性喘息

穀物、ベイスギ(ウェスタンレッドシダー)の材木、ヒマ(トウゴマ)の実、イソシアネート(ウレタン)、染料、抗菌薬、エポキシ樹脂、茶葉、洗剤の製造過程で使用する酵素、麦芽、革製品、ラテックス、宝石、自動車の車体修理で使用する研磨材や塗料、動物、貝類、刺激性のガス、蒸気、霧などを扱う労働者

イラクまたはアフガニスタンに派遣された軍人

珪肺症

特定の炭鉱労働者(例えば、岩に穴をあけたり、爆破したりする作業者)

鋳物工場の労働者

鉛、銅、銀、などの鉱山労働者

陶器職人

サンドブラスト作業者

砂岩や花こう岩の加工労働者

墓石製造者

トンネルを掘る労働者

研磨剤を製造する労働者

ケイ酸塩を原料に含む人工石(クオーツストーン)を用いたカウンタートップを製造または設置する労働者

サイロフィラー病

農業従事者

症状

環境性肺疾患の症状には、呼吸困難のほか、ときにせきや胸痛があり、ほかの多くの肺疾患に似た症状が現れます。刺激物やその他の物質を吸い込むときに肺や気道が狭くなる環境性肺疾患(気道過敏性と呼ばれます)は、突然の呼吸困難、喘鳴などを引き起こし、喘息またはCOPDがある患者ではその病気の発作(増悪)を誘発します。

繰り返す、慢性の症状を伴う環境性肺疾患があると、慢性肺疾患(COPD,または間質性肺疾患など)が生じるリスクが高まり、肺機能が恒久的に低下するおそれがあります。その他の症状や合併症を伴う環境性肺疾患もあります。

診断

  • 肺機能検査

  • 画像検査

環境性肺疾患を特定するには、特有の診断方法が用いられます。評価の最初のステップとして、肺を刺激する物質への曝露を伴いうる職業やその他の活動に従事しているかどうか尋ねられます。ほとんどの場合、肺機能検査と画像検査(胸部X線検査やCT検査など)が行われます。

予防

職業性および環境性肺疾患を予防するには、曝露を制限する以下のような措置を講じます。

  • 管理運営的コントロール(例えば、有害な環境にさらされる人数を制限する)

  • 工学的コントロール(例えば、換気システム、囲い込み、安全な浄化法)

  • 製品の変更(例えば、より安全な物質を使用する)

  • 保護具の使用(例えば、レスピレーターマスク、防塵マスクやその他の器具)

  • 教育によるコントロール(例えば、労働者に曝露のリスクと曝露を制限する方法を指導する)

レスピレーターの使用やその他の方法により、ある程度の防護はできますが、完全な防護というものは存在せず、またその方法は人によっても異なります。レスピレーターは、適切にフィットしていることを確認するために1年に1度はチェックする必要があります。また、すべての人が防護策を講じられるわけではありません。例えば、レスピレーターをつけると、心臓または肺の病気がある人は業務の遂行が難しくなります。

肺を傷害しうる物質へさらされる可能性がある人は、できるだけ早く病気を見つけるため、定期的にスクリーニング検査を受けることが勧められます。どのようなスクリーニング検査を受けるべきか、どの程度の頻度で受けるべきかは、さらされる物質によって異なります。スクリーニング検査には、身体診察のほか、スパイロメーターを用いた呼吸機能の測定や、血中の酸素レベルの測定などがあります。胸部X線検査またはCT(コンピュータ断層撮影)検査などの肺の画像検査も行われることがあります。

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