最もよくみられる症状は、持続する胸痛と息切れです。
診断を下すためには、胸部X線検査や肺組織の生検が必要です。
中皮腫は、手術、化学療法、放射線療法により治療します。
(環境性肺疾患の概要 環境性肺疾患の概要 環境性肺疾患は、有害な粒子、霧、蒸気、ガスなどを吸い込むことによって発生する病気で、通常は作業中に起こります。肺疾患が粒子を吸い込んだことに起因する場合は、塵肺(じんぱい)症という病名がよく用いられます。 吸い込んだ物質が気道や肺の中に達する範囲と引き起こす肺疾患のタイプは、吸い込んだ粒子の大きさや種類によって異なります。粒子が大きければ... さらに読む も参照のこと。)
アスベストは胸膜(肺の外側と胸壁の内側を覆っている薄くて透明な2層の膜)や腹部の膜に、中皮腫と呼ばれるがんを生じさせます。米国では、アスベストが中皮腫の唯一の原因として知られています。喫煙は中皮腫の原因ではありません。
アスベストは自然由来の化合物の一種で、その耐熱性と構造上の特性により、建設資材や造船資材、自動車のブレーキ、一部の繊維製品などで便利に使われていました。アスベストは、空気、水、土壌中に低濃度でみられますが、このレベルでの環境曝露は、人間の病気に大きく寄与するものではありません。アスベストは様々な化学的組成をもつ繊維状のケイ酸塩鉱物からできています。4種類のアスベストのうち、クロシドライト(青石綿)というアスベストを吸い込んだ場合に、最もよく中皮腫が発生します。アモサイト(茶石綿)という別のアスベストによっても、中皮腫が発生します。クリソタイル(温石綿、白石綿)というアスベストは、他の種類より中皮腫を引き起こす頻度は低いと考えられますが、クリソタイルには中皮腫を起こすトレモライトというアスベストが混入していることがよくあります。アスベストにさらされてから、通常は約30年後に中皮腫を発症します。たとえ吸い込んだ量が少なくても発症する可能性はあります。
アスベストの吸入によって発生する病気は、作業現場でアスベストの粉塵と繊維の量をできる限り減らすことで予防できます。アスベストを使用する産業での粉塵対策が改善されたため、現在では石綿肺になる人は少なくなっていますが、30~50年も前にアスベストを吸い込んだ人では、依然として中皮腫が発生しています。
中皮腫の症状
持続する胸痛や息切れは、中皮腫に最もよくみられる症状です。中皮腫は胸壁やその他の近くの構造物へと広がり、ひどい痛み、声がれ、嚥下困難、まぶたの垂れ下がり、腕や手の筋力低下と感覚消失、または腹部の腫れなどをもたらすことがあります。
中皮腫の診断
アスベストへの曝露歴
胸部X線検査
胸水細胞診
胸膜生検
中皮腫が疑われる場合、通常、胸部X線検査を行います。また、胸腔から液体を採取して分析(胸水細胞診)し、胸膜の組織を採取して中皮腫に特徴的な変化がないかを調べます(胸膜生検)。
中皮腫が胸膜の外に広がっていないかを判定するのに、追加の検査が必要になることもあります。
中皮腫の治療
手術、化学療法、または放射線療法
中皮腫は常に致死的で、患者は診断から1~4年以内に死に至ります。中皮腫と診断されてから、ほとんどの人は9~12カ月しか生きることができません。化学療法や放射線療法はあまり効果がなく、腫瘍を手術で切除しても治癒しません。
しかし、手術によって腫瘍をできるだけ除去したり、化学療法や放射線療法を行うことが、症状の緩和に役立つ可能性があります。異なる種類の治療を組み合わせることで、生存期間を延長できるかどうかははっきりしていません。
ほかの治療として、できるだけ良好な生活の質(QOL)を維持しつつ、痛みや息切れを抑制することに重点を置いた治療も行われます(致死的な病気で生じる症状 致死的な病気で生じる症状 多くの致死的な疾患により、 痛みや 息切れ、 胃腸の障害、 失禁、 皮膚の損傷、 疲労といった共通の症状が起こります。 抑うつや不安、 錯乱と意識不明、身体障害が生じることもあります。通常、症状は予測して治療することができます。 死に直面すると、大半の人は痛みを恐れます。しかし、ほぼすべての人が心地よく過ごすことができるようになり、多くの場合、意識もはっきりとしていて、現実世界との関わりを維持することができます。ただし、積極的な疼痛治療... さらに読む )。例えば、肺の周囲にたまった液体を抜くことで、呼吸が楽になり、鎮痛薬によって痛みが和らぎます。
中皮腫のその他の治療法についても研究が行われています。