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喘息の予防薬と治療薬

執筆者:

Victor E. Ortega

, MD, PhD, Center for Genomics and Personalized Medicine Research, Wake Forest School of Medicine;


Emily J. Pennington

, MD, Wake Forest School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 10月
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ほとんどの喘息患者は薬剤を服用することで、比較的普通の生活を送ることができます。喘息発作の治療に使用される薬剤のほとんどが、発作の予防にも使用できます(しばしば用量を減らして使用されます)。(喘息も参照のこと。)

治療は、次の2種類の薬剤を基本にして行われます。

  • 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)

  • 気管支拡張薬

抗炎症薬は、気道が狭くなる原因である炎症を和らげます。抗炎症薬には、コルチコステロイド(吸入、内服、静脈内投与が可能)、ロイコトリエン修飾薬(leukotriene modifier)、肥満細胞安定化薬などがあります。

気管支拡張薬は、気道の緊張を緩め、気道を広げる(拡張する)のに役立ちます。気管支拡張薬には、ベータ作動薬(速やかに症状を和らげる短時間作用型と長期にわたって抑制する長時間作用型の2種類)、抗コリン薬、メチルキサンチン類などがあります。

重度の喘息には、その他に免疫系に直接修飾を加えるタイプの薬剤(免疫調節薬と呼ばれます)が用いられることがありますが、ほとんどの人では免疫調節薬が必要になることはありません。

ベータ作動薬

短時間作用型ベータ作動薬

通常、喘息発作の緩和には、短時間作用型ベータ作動薬が最も優れています。この薬剤は運動誘発喘息の予防にも用いられます。ベータアドレナリン受容体を刺激して気道を広げる(拡張する)ため、気管支拡張薬とも呼ばれています。 アドレナリンなどの気管支拡張薬は、全身のすべてのベータアドレナリン受容体に作用するため、心拍数の増加、落ち着かない感覚、頭痛、筋肉のふるえなどの副作用を伴います。サルブタモールなどの気管支拡張薬は、主に肺の細胞表面にみられるベータ2アドレナリン受容体にまず作用し、他の器官にはほとんど影響を与えないため、副作用が少なくなります。ほとんどの短時間作用型ベータ作動薬(特に吸入薬)は、数分以内に作用が現れますが、その効果は2~6時間しか持続しません。

ベータ作動薬を指示された用量より多く使用する必要があると感じたときは、速やかに医師の診察を受ける必要があります。薬剤を増やす必要がある(特にその状況が長く続く)場合は、気管支の収縮が悪化していることが疑われ、これは危険で呼吸不全や命にかかわる可能性さえあります。

長時間作用型ベータ作動薬

長時間作用型ベータ作動薬もありますが、喘息発作の治療ではなく、予防に使用されます。長時間作用型ベータ作動薬の効果が持続するのは約12時間であるため、通常1日2回投与する必要があります。超長時間作用型ベータ作動薬は24時間効果が持続するため、1日1回の投与で十分です。

長時間作用型ベータ作動薬は、単独で使用すると死亡リスクがわずかに高まる可能性があるため、単独で使用されることはありません。そのため、この薬剤は、常にコルチコステロイド吸入薬と併用されます。

ベータ作動薬の吸入

定量噴霧式吸入器(圧縮されたガスが入った携帯式カートリッジ)は、ベータ作動薬の吸入に、最もよく用いられる器具です。圧力を加えることによって、一定量の薬剤を含んだ細かい霧が出ます。これを吸入すると、薬剤が直接気道内に付着して速やかに作用しますが、非常に狭くなった気道には薬剤が到達しないことがあります。定量噴霧式吸入器がうまく使えない場合は、スペーサーやチャンバー(定量噴霧式吸入器から噴霧したガスを一時的に貯めておく容器)が利用できます。これらの補助吸入器具を使用することで、より多くの量の薬剤を肺に届けることができます。どのような吸入器でも、正しく使うことが極めて重要です。正しく器具を使用しないと、薬剤が気道に達しません。

また、多くの気管支拡張薬にはドライパウダー製剤もあります。このドライパウダーの方が使いやすいという患者もいますが、その理由の1つとして定量噴霧式吸入器に比べて呼吸とタイミングを合わせやすいことが挙げられます。

定量噴霧式吸入器の使い方

  • 吸入器のキャップを外し、よく振ります。

  • 1~2秒間かけて完全に息を吐き出します。

  • 吸入器を口にくわえるか、約2.5~5センチメートル口から離すかして、熱いスープを飲むようにゆっくりと息を吸いはじめます。

  • 息を吸いはじめると同時に、吸入器の上部を押します。

  • 肺が一杯になるまで、ゆっくりと息を吸い込みます。(これを、5~6秒ほどかけて行います。)

  • 10秒間(またはできるだけ長く)息を止めます。

  • 息を吐き、もう一度吸入する必要がある場合は、1分おいてから手技を繰り返します。

  • この方法で呼吸に合わせて吸入するのが難しいと感じるようであれば、スペーサーを試してみてください。

定量噴霧式吸入器の使い方

ネブライザーという器具を用いて、ベータ作動薬を直接肺に送り込むこともできます。ネブライザーは、圧縮空気または超音波を用いて霧状にした薬剤を連続的に発生させるため、呼吸に合わせることなく、薬剤を吸入できます。ネブライザーは携帯型のものが多く、車内のコンセントに差すこともできます。ネブライザーと定量噴霧式吸入器とでは、1回に出る薬剤の量が多くの場合異なりますが、いずれを用いても十分な量の薬剤を肺に送り込むことができます。ネブライザー療法は、深い呼吸をせず楽に呼吸している人では遠くの気道に達しにくいため、定量噴霧式吸入器またはドライパウダー製剤を正しく使用した場合に比べて効果は低くなります。

急性の発作には、ベータ作動薬と組み合わせて、他の気管支拡張薬(抗コリン薬のイプラトロピウムをネブライザーで吸入するなど)が用いられることもあります。イプラトロピウムとサルブタモールを合わせた定量噴霧式吸入器用の配合薬もあります。

ベータ作動薬には他の剤形もあります。ベータ作動薬は液剤や錠剤として内服できるほか、注射することもできます。しかし、一般に内服薬は、吸入薬や注射薬より効果が現れるのが遅い上に、副作用が生じる可能性も高いため、あまり用いられません。副作用には不整脈などがあり、これがみられる場合は過剰投与が疑われます。

抗コリン薬

イプラトロピウムやチオトロピウムなどの抗コリン薬は、アセチルコリンの作用を阻害し、平滑筋の収縮や、気管支内への過剰な粘液の分泌を抑制します。これらの薬剤は吸入します。すでにベータ作動薬または吸入コルチコステロイドを使用している患者に、これらの抗コリン薬を投与すると、気道がさらに広がり(拡張し)ます。

ロイコトリエン修飾薬(leukotriene modifier)

ロイコトリエン修飾薬(leukotriene modifier)も喘息の抑制に有効であり、モンテルカスト、ザフィルルカスト、ザイリュートン(zileuton)などがあります。これらは抗炎症薬であり、ロイコトリエンの作用または合成を妨げます。ロイコトリエンは体内でつくられる化学物質であり、気管支を収縮させます。ロイコトリエン修飾薬は内服薬で、喘息発作の治療よりも、予防に多く使用されます。

肥満細胞安定化薬

肥満細胞安定化薬は吸入薬で、クロモグリク酸やネドクロミルなどがあります。これらの薬物は、肥満細胞から放出される炎症性化学物質を抑制することで、気道が狭くならないようにすると考えられています。したがって、これらも抗炎症薬に分類されます。喘息発作の予防には有用ですが、治療には効果がありません。肥満細胞安定化薬は、喘息の小児や運動誘発喘息の患者に有効なこともあります。非常に安全ですが、症状がないときでも定期的に服用しなくてはなりません。

コルチコステロイド

コルチコステロイドは体の炎症反応を抑えるため、喘息症状の軽減には非常に効果があります。抗炎症薬の中では最も強力であり、数十年にわたって喘息治療において重要な役割を果たしています。

コルチコステロイドにはいくつかの剤形があります。中でも吸入薬は、薬剤が直接気道に届き、全身にまわる薬剤の量が最小であるため、多くの場合、最も優れています。吸入薬は発作の予防と肺機能改善のために用いられます。吸入薬の強さには段階がありますが、1日2回の吸入が一般的です。鵞口瘡(がこうそう)という口腔内の真菌感染症が発生する可能性を下げるために、吸入後は口をゆすぎます。重度の喘息発作を緩和するため、経口薬または注射薬が高用量で使用されることがあり、一般的にはこれが1~2週間続けられます。経口薬は喘息の発作後数日間にわたり処方されることがあり、他の治療法では症状を抑制できなかった場合のみ、長期間にわたって処方されます。

コルチコステロイドを長期間使用した場合、喘息を誘発する様々な刺激に対して気道の感受性が低下するため、徐々に喘息発作の頻度が低下します。長期間、特に経口薬を高用量で服用する場合、肥満、骨粗しょう症、白内障、あざができやすくなる、皮膚が薄くなる、不眠症、血糖値の上昇などの副作用がみられることがあり、非常にまれですが精神病が現れることもあります。小児がコルチコステロイドを長期間使用すると、成長が遅れるという報告もあります。しかし、吸入コルチコステロイドを使用した小児のほとんどは、最終的に予測された成人身長に達します。

免疫調節薬

オマリズマブは抗体医薬品と呼ばれる種類の薬で、免疫グロブリンE(IgE)と呼ばれる別の抗体を標的としています。オマリズマブは、重度のアレルギーがあり、血液中のIgE濃度が高い喘息患者に使用されます。オマリズマブにより、肥満細胞へのIgEの結合が妨げられるため、気道を狭くする炎症性化学物質の放出が抑えられます。また、症状の緩和を助け、コルチコステロイドの経口薬を服用する必要が少なくなります。オマリズマブは、2~4週間おきに皮下注射されます。

メポリズマブとレスリズマブ(reslizumab)は、気道炎症を引き起こす分子(インターロイキン)を標的とする抗体です。これらはアレルゲンによって引き起こされる重度の喘息患者の治療に使用されます。メポリズマブには喘息の発作回数を減らし、症状を軽減し、コルチコステロイドの必要性を低下させる働きがあります。メポリズマブは、4週間おきに皮下注射されます。レスリズマブ(reslizumab)には喘息の発作回数を減らし、症状を軽減する働きがあります。この薬は4週間毎に静脈内投与されます。

これらの薬剤を投与した後には重度のアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こることがあります。 そのため、これらの薬剤の投与は外来や診療所などの医師の目の届く場所で行われます。

メチルキサンチン類

気管支を拡張させる別の薬として、メチルキサンチン類のテオフィリンがあります。現在では、以前ほど多くは使用されていません。テオフィリンは通常、内服して使用します。短時間作用型の錠剤やシロップから、長時間作用型の徐放カプセル剤や錠剤まで、様々な剤形があります。テオフィリンは主に喘息の予防に使用されます。

血液中のテオフィリン濃度は検査室で測定でき、医師による綿密なモニタリングが必要です。血液中の濃度が低すぎるとほとんど効果がなく、逆に高すぎると生命を脅かす不整脈やけいれん発作を起こす可能性があります。テオフィリンを初めて服用した喘息患者は、やや神経過敏になったり、頭痛を覚えたりする場合があります。こうした副作用は、体が薬剤に慣れてくると、通常はなくなります。多量に服用した場合は、心拍数の増加、吐き気、動悸が現れることがあります。また、不眠、興奮、嘔吐、けいれん発作などがみられる場合もあります。テオフィリンが他の薬剤に比べて用いられることが少ない理由の1つに、こうした副作用の出現があります。

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喘息の治療によく使用される薬剤

薬剤

主な副作用

備考

抗コリン薬(吸入薬)

イプラトロピウム

チオトロピウム

口腔乾燥

心拍数の増加

通常はベータ作動薬と併用

短時間作用型ベータ作動薬(吸入薬)

サルブタモール

レバルブテロール(levalbuterol

心拍数の増加

ふるえ

急性発作を速やかに緩和するために使用

サルブタモールには経口製剤もある

長時間作用型ベータ作動薬(吸入薬)

アルホルモテロール(Arformoterol

ホルモテロール

サルメテロール

心拍数の増加

ふるえ

急性発作時の緩和ではなく、継続的な治療に使用

単独(他の喘息薬なしでの)使用は推奨されない

超長時間作用型ベータ作動薬(吸入薬)

インダカテロール

オロダテロール

ビランテロール

鼻水とくしゃみ

高血圧

せき

頭痛

単独(他の喘息薬なしでの)使用は推奨されない

ビランテロールは、フルチカゾンとの配合剤のみが利用できる

コルチコステロイド(吸入薬)

ベクロメタゾン(beclomethasone

ブデソニド

シクレソニド

フルニソリド

フランカルボン酸フルチカゾン

プロピオン酸フルチカゾン

モメタゾン

トリアムシノロン

口の真菌感染症(鵞口瘡)

声の変化

喘息の予防(長期的な抑制)に吸入で使用

コルチコステロイド(経口薬または注射薬)

メチルプレドニゾロン

プレドニゾロン

プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)

体重増加

血糖値上昇

まれに精神病

骨粗しょう症

白内障

皮膚が薄くなり、あざができやすくなる

不眠

急性の喘息発作や、吸入薬ではコントロールできない喘息に使用

免疫調節薬(注射薬)

メポリズマブ

オマリズマブ

レスリズマブ(reslizumab

注射部位の不快感

まれに、アナフィラキシー反応

重度の喘息患者において、コルチコステロイド経口薬の使用を減らすために使用

ロイコトリエン修飾薬(leukotriene modifier)(経口薬)

モンテルカスト

ザフィルルカスト

ザイリュートン(zileuton

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

ザイリュートン(zileuton)では肝酵素上昇

治療より予防(長期的な抑制)に多く使用

肥満細胞安定化薬(吸入薬)

クロモグリク酸

ネドクロミル

せきまたは喘鳴

運動に伴うことの多い発作の予防に有用だが、急性発作の治療には向いていない

ネドクロミルは米国では入手できない

メチルキサンチン類(経口薬)

テオフィリン

心拍数の増加

ふるえ

胃の不調

けいれん発作(血中濃度が高い場合)

重篤な不整脈(血中濃度が高い場合)

予防と治療に使用可能

内服するが、病院では静脈内投与も可能

喘息の予防に使用される他の薬剤

喘息の治療には、ときに他の薬剤も使われます。これらの薬剤は、特定の状況で用いられます。マグネシウムは、しばしば救急外来で急性の発作に使われます。

慢性の喘息に使用される他の薬剤として、リドカインまたはヘパリン(ネブライザーで投与)、コルヒチンのほか、免疫グロブリンの静脈内投与などがあります。これらの治療についてはいずれも科学的根拠が限られているため、このような薬剤はあまり使用されません。

吸入コルチコステロイドを使用し、骨粗しょう症の危険因子(高齢である、家族に骨粗しょう症の人がいる、カルシウムとビタミンDの摂取が少ない、またはやせ型であるなど)がある人は、骨密度を維持するためにカルシウムとビタミンDのサプリメントやビスホスフォネート系薬剤を服用しなければならないことがあります。

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