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急性冠症候群の合併症

執筆者:

Jonathan G. Howlett

, MD, Libin Cardiovascular Institute of Alberta

最終査読/改訂年月 2016年 11月
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心筋は酸素を豊富に含んだ血液を絶えず必要とします。その血液を心臓に送る血管は、大動脈が心臓から出たところで枝分かれする冠動脈です。急性冠症候群は、冠動脈が突然ふさがり、心筋の一部への血液供給が大きく減少または遮断されることで起こります。組織への血液供給がなくなることを虚血といいます。血液供給が2~3分以上にわたって大きく減少するか遮断されると、心臓の組織が壊死してしまいます。心筋梗塞とも呼ばれる心臓発作は、虚血により心臓の組織が壊死する病気です。

急性冠症候群の合併症は、冠動脈の閉塞の程度、期間、位置によって異なります。閉塞が広範囲の心筋に影響を及ぼすと、心臓は効果的に動くことができなくなります。閉塞によって心臓の電気刺激伝導系への血流が遮断されると、心拍のリズムに影響が及ぶことがあります。

冠動脈疾患の概要も参照のこと。)

拍出機能の障害

心臓発作では心筋の一部が壊死します。壊死した組織は最終的に瘢痕(はんこん)組織に置き換わり、収縮しなくなります。瘢痕組織は、心臓の他の部分が収縮しているときに膨らんだり伸びたりすることもあります。その結果、血液を送り出す筋肉が少なくなります。心筋が広範囲に壊死すると、心臓のポンプ機能が低下し、全身が必要とする量の血液と酸素を送り出せなくなり、心不全、血圧の低下(低血圧)、ショックなどが生じます。心臓の組織の半分以上が損傷を受けるか壊死すると、心臓は機能を果たせなくなり、重度の障害や死に至る可能性が高くなります。

ベータ遮断薬や特にアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬などの薬には、心臓の仕事量を減らして心臓への負担を少なくする効果があるため、このような異常部位が広がるのを阻止できます。これらの薬は、心臓の形状と機能をより正常な状態に保つのに役立ちます。

損傷を受けた心臓は、低下したポンプ機能を補おうとして大きくなります(心臓は大きい方がより力強く拍動します)。心臓が大きくなると、さらに不整脈が起こりやすくなります。

心拍リズムの障害

心臓発作を起こした人の90%以上で不整脈が起こります。それらの不整脈は、心臓発作によって心臓の電気刺激伝導系が損傷することで発生する場合があります。ときに、心拍の引き金になる部分に問題が起きたために、心拍数が過度に遅くなることがあります。また、心拍が過度に速くなったり、不規則になったりすることもあります。ときには、拍動を起こすための信号が心臓の一部でうまく伝わらなくなり、拍動が遅くなったり止まったりします。

さらに、血流が減少しているものの壊死はしていない心筋の一部が極めて過敏になる可能性があります。この過敏な状態によって、心室頻拍心室細動などの不整脈が起きることがあります。これらの不整脈は心臓の拍出機能に大きな影響を及ぼし、心臓の拍動停止(心停止)の原因にもなります。それにより意識消失や死亡につながります。これらの不整脈は、カリウムの血中濃度が低下するなど、血液中の化学物質のバランスが乱れた場合に特に問題となります。

心膜炎

心臓発作後1~2日以内または10日~2カ月後に、心膜炎(心膜[心臓を包んでいる2層の袋状の膜]の炎症)を起こすことがあります。心膜炎は、閉塞した動脈が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)や冠動脈バイパス術(CABG)で開通されなかった人でより多くみられます。心臓発作の症状の方が顕著であるため、早い段階で発生した心膜炎の症状に気づくことはめったにありません。しかし心膜炎では、物をひっかくようなキーキーというリズミカルな心音が生じることから、心臓発作の2~3日後には聴診器で確認できることもあります。ときに、炎症により心膜の2つの層の間に少量の水分が貯留することがあります(心嚢液貯留)。

後から発症する心膜炎は、ドレスラー(心筋梗塞後)症候群と呼ばれます。ドレスラー症候群は、心臓発作の10日後から2カ月後に発生します。この症候群では、発熱、心嚢液貯留、胸膜炎(肺を覆う膜の炎症)、胸水(2層の胸膜の間に余分な水分がたまった状態)、関節痛などがみられます。診断は症状の内容と症状が発生するタイミングに基づいて下されます。

ドレスラー症候群を発症した人には、通常は非ステロイド系抗炎症薬が投与されます。多くの場合、コルヒチンで速やかに効果が得られます。この症候群は治療しても再発する可能性があります。重度のドレスラー症候群には、短期間ではありますが別の非ステロイド系抗炎症薬が必要になります。

心筋破裂

まれですが、損傷した心筋がもろくなり、心臓が血液を送り出すための圧力によって破裂することがあります。通常、破裂が起こるのは心臓発作の1~10日後で、女性でより多くみられます。心臓発作の最中や発作後に特に破裂しやすい部位は、心室中隔(2つの心室の間にある壁)、心臓の外壁、僧帽弁を開閉する筋肉です。

心室中隔が破裂すると、肺に送られる血流の量が増加する結果、肺水腫(肺に体液がたまった状態)をきたします。心室中隔の破裂は手術で修復できる場合があります。

外壁が破裂した場合は、ほぼ常に急死します。手術を開始できるだけの時間があることはまれで、たとえできたとしも、手術が成功することはほとんどありません。

僧帽弁の筋肉が破裂すると、僧帽弁が機能できなくなる結果、重症の心不全を突然発症します。手術で損傷を修復できる場合があります。

心室瘤

心筋が損傷を受けると、心室の壁に膨らみ(心室瘤)ができることがあります。心電図検査の結果から心室瘤が疑われる場合は、心エコー検査を行って診断を確定します。心室瘤は不整脈を引き起こして心臓のポンプ機能を低下させます。心室瘤の内部では血液の流れが遅くなるため、心室内に血栓ができる場合があります。心不全や不整脈が起きた場合は、手術を行って心室瘤を切除することがあります。

血栓

従来、心臓発作を起こした人の約20%で、心筋が壊死した部位の心臓内に血栓が形成されるとされてきました。しかし最近では、血栓が形成される人の割合が少なくなっています。これらのうち約10%の人では、崩れた血栓の一部が血流に乗って他の部位に移動し、より細い血管を詰まらせます。そのような血栓は、脳に向かう血管(脳卒中の発生につながります)や他の臓器に向かう血管を詰まらせます。

心臓に形成された血栓を検出するために、あるいは血栓形成のリスクを高める要因があるかどうかを判定するために、心エコー検査が行われることがあります。例えば、左心室の一部の拍動が弱まっていることがあります。

血栓ができた人には、ヘパリンやワルファリンなどの抗凝固薬(血液をサラサラにする薬と呼ばれることもあります)が処方されます。ヘパリンは入院中に最低でも2日間にわたって静脈内に投与します。その後は3~6カ月間にわたってワルファリンが経口で投与されます。アスピリンも生涯服用を続ける必要があります。

その他の問題

心臓発作後に生じるその他の合併症として、僧帽弁逆流症(僧帽弁で血液が逆流する病気)などがあります。心臓発作の後には、神経過敏や抑うつがよくみられます。心臓発作後の抑うつは、重くなる場合や長期間持続する場合もあります。

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