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腎動脈の閉塞

執筆者:

Zhiwei Zhang

, MD, Loma Linda University

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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本ページのリソース

左右の腎臓に血液を供給している動脈やその分枝は、徐々に狭くなったり(狭窄)、突然詰まったり(閉塞)することがあります。

  • 結果として腎不全や高血圧になる可能性があります。

  • 狭窄や閉塞は画像検査で確認することができます。

  • 閉塞を解除する処置や狭くなった動脈を拡張する処置が有効となる場合があります。

腎臓の血管の病気の概要も参照のこと。)

腎動脈は2本あり、それぞれ右左の腎臓に血液を供給しています。これら2本の腎動脈は多数の細い動脈に枝分かれしています。

片方または両方の腎動脈が徐々に狭くなると、高血圧になったり、それまでコントロールされていた高血圧が悪化したりすることがあり、複数の降圧薬で治療しても血圧が下がらない場合もあります。腎動脈の狭窄がある患者に、高血圧の治療としてアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、またはレニン阻害薬を投与すると、腎機能が急速に低下することがありますが、速やかに投与を中止すれば、腎機能は回復します。

原因

腎動脈や一定以上の太さの分枝が閉塞することはめったにありません。原因としては以下のものがあります。

  • 身体の他の部位から腎動脈に移動してきた血栓

  • 腎動脈内での血栓の形成

  • 大動脈または腎動脈の内膜の解離

  • 腎動脈壁の肥厚

このような閉塞の大半は、体内の別の部位で発生した血栓(血のかたまり)が血流に乗って移動し、腎動脈に詰まることによって発生します(この現象を塞栓と呼びます)。このような血栓の発生源は、心臓で発生した大きな血栓の断片であるか、大動脈で形成された脂肪の沈着物(アテローム)の断片であるのが一般的です( アテローム塞栓による腎疾患)。

一方、腎動脈の内部で血栓が作られたために閉塞が起きる場合もあり、通常は過去に損傷を受けた部位で起こります。外科手術や血管造影検査、血管形成術などの医療行為が損傷の原因になる場合もあれば、動脈硬化や動脈炎(動脈の炎症)、動脈瘤(動脈の壁に徐々に形成されるこぶ)などによって腎動脈に徐々に損傷が生じ、そこに血栓が作られる場合もあります。

大動脈や腎動脈の内側を覆う膜(内膜)が裂けることで、血流が突然妨げられることもあります。内膜が裂けることで動脈の破裂に至ることもあります。脂肪性物質の沈着(動脈硬化)や線維性物質の形成(線維筋性異形成)によって動脈の壁の肥厚と弾力性の低下が生じる病気では、血管が裂けやすくなります。そのため、そのような病気では、たとえ血栓ができなくても、腎動脈が著しく狭くなり、部分的な閉塞が生じることがあります。腎動脈が狭くなって閉塞が起きているものの、血栓が認められない場合、その状態は腎動脈狭窄と呼ばれます。

線維筋性異形成:腎動脈閉塞の原因

線維筋性異形成は、主に15~50歳の女性に多くみられる病気で、原因は不明です。この病気では、線維性の物質によって腎動脈(通常は数個所)が狭くなります(腎動脈狭窄)。

成人にみられる腎動脈狭窄の約10%は、この線維筋性異形成によるものです。線維筋性異形成による腎動脈狭窄は、しばしば高血圧を引き起こします。

ほとんどの場合、治療法は血管形成術となります。治療後は再発することなく経過する場合もあり、通常、高血圧は解消ないし改善されますが、まれに腎不全を起こすこともあります。

症状

腎動脈に部分的な閉塞が生じた場合には、通常は何の症状も現れません。一方、突然かつ完全な閉塞が発生した場合には、腰部やときに下腹部に持続的でうずくような痛みが生じるようになります。腎動脈が完全に閉塞すれば、発熱、吐き気、嘔吐、背部痛などの症状がみられます。まれに、閉塞によって出血が起こる結果、尿が赤色ないし暗褐色に変色することもあります。両方の腎動脈が完全に閉塞した場合(腎臓が片方しかない人の場合は残っている方の腎動脈が完全に閉塞した場合)には、尿がまったく作られなくなり、腎臓の機能が停止します(この状態を急性腎障害と呼びます)。

別の部位でできた血栓が腎動脈の分枝でつかえて閉塞を起こしたのであれば、腸や脳、手足の指の皮膚など、腎臓以外の部位に血栓が存在する可能性があります。このような血栓は各部位で痛みを引き起こすだけでなく、小さな潰瘍や壊疽(えそ)あるいは軽い脳卒中などを引き起こす可能性もあります。

閉塞が徐々に発生した場合は、症状もゆっくりと現れます。最適な治療にもかかわらず、コントロールが難しい高血圧が生じる場合があります。慢性腎臓病の様々な症状が出現し、最初は疲労、吐き気、食欲不振、かゆみ、集中力の低下などがみられます。これらの症状は、筋肉、脳、神経、心臓、消化管、皮膚などに障害が起きていることを意味します。

診断

  • 通常の臨床検査

  • 画像検査

医師は症状から閉塞の存在を疑います。血算、腎機能の血液検査、尿検査(尿のサンプルを顕微鏡で観察する検査)など通常の臨床検査によって、診断のさらなる手がかりを得ることができます。

症状と臨床検査の結果だけで閉塞があると確実に判断するのは不可能なため、腎臓の画像検査が必要になります。CT血管造影検査、磁気共鳴(MR)血管造影検査、ドプラ超音波検査、および血流シンチグラフィーでは、腎臓への血流の遮断や血流量の低下が起きているかどうかを確認することができます。どの検査方法にも利点と欠点があります。例えば、CT血管造影検査とMRアンギオグラフィー検査は正確性の面で非常に優れていますが、CT血管造影検査では造影剤を使用する必要があるため、腎機能が低下している人では腎臓に損傷を起こすリスクが高くなります。同様にMRアンギオグラフィー検査でも静注造影剤(ガドリニウム)を使用する必要がありますが、腎機能が低下している人にこの造影剤を使用すると、腎性全身性線維症のリスクが高まってしまいます。腎性全身性線維症とは、全身の組織が線維状に変化していく病気で、回復や治癒は難しい難病です。

動脈造影検査は、この病気の診断を確定させる上で最も正確な検査方法です。一方、動脈造影検査では動脈内にカテーテルが挿入されますが、ときにこの操作によって動脈が傷つけられることがあります。さらに、CT血管造影検査の場合と同様に、腎臓の損傷のリスクを高める造影剤を使用する必要があります。動脈造影検査は、閉塞を解除するための手術や血管形成の処置が検討されている場合にのみ行われます。腎機能の回復の経過は、腎機能を測定する血液検査を頻繁に繰り返してモニタリングします。

ときに、心エコー検査などの検査も追加して行い、血栓の原因を特定します。

治療

  • 血栓の予防または溶解

  • ときに手術またはカテーテルを用いて閉塞を解除する処置

治療の目的は、血流量のさらなる低下を防ぐことと、遮断された血流を回復させることです。血栓が原因である場合には、通常は抗凝固薬による治療が行われます( 薬と血液凝固)。抗凝固薬の投与は、まず静脈内注射で開始され、その後は長期間、ときには数カ月間以上にわたって経口投与が継続されます。抗凝固薬は、すでにある血栓の増大や新たな血栓の発生を予防します。抗凝固薬よりも、血栓を溶かす薬(血栓溶解薬— 薬と血液凝固)の方が効果的な場合もあります。ただし、血栓溶解薬によって腎機能の改善が得られるのは、動脈の閉塞が不完全な場合と血栓がすぐに溶ける場合だけに限られます。完全閉塞の状態が30~60分間経過すると、永続的な損傷が生じる可能性が高くなります。血栓溶解薬は、発生から3時間以内に投与された場合にのみ、効果が得られます。

ときに血栓でふさがった動脈を開通させる手術が行われますが、この治療法は合併症や死亡のリスクが比較的高く、また抗凝固薬や血栓溶解薬のみによる治療と比べて腎機能の改善効果が高いわけでもありません。そのため、手術よりも薬物治療が選択される場合がほとんどです。ただし外傷が原因の場合は、手術によって動脈を修復する必要があります。

腎動脈の動脈硬化や線維筋性異形成が原因で生じた閉塞を解消する治療法としては、先端にバルーンの付いたカテーテルを鼠径部(そけいぶ)にある大腿動脈から腎動脈まで挿入し、閉塞した部分でバルーンを膨らませて血管を拡張させる方法があります。この治療法は経皮的血管形成術と呼ばれます。この方法による治療では、閉塞の再発を予防するために、ステントと呼ばれる短い管状の機器が動脈内に留置される場合もあります。動脈硬化や線維筋性異形成によって生じた閉塞に対して血管形成術が不成功に終わった場合には、血管の閉塞部分を切除する手術や迂回路を作る手術(バイパス術)も検討されます。

治療によってある程度の腎機能の改善が得られる場合もありますが、通常は完全には回復しません。腎臓以外の部分(心臓など)から移動してきた血栓によって動脈が詰まった場合は、予後(経過の見通し)は悪くなります。このような血栓は、体内の別の部位(脳や腸など)にも運ばれ、それぞれの部位で問題を引き起こす可能性があります。

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