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腎臓がん

(腎腺がん;腎細胞がん)

執筆者:

J. Ryan Mark

, MD, Sidney Kimmel Cancer Center at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2018年 1月
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概要
  • 腎臓がんでは、血尿やわき腹(側腹部)の痛み、発熱などがみられます。

  • 最も多いケースとしては、別の理由で行われた画像検査の際にがんが偶然発見されます。

  • 診断はCT検査またはMRI検査の結果によって下されます。

  • 腎臓の摘出により生存率が高まり、がんが転移していなければ根治することもあります。

腎臓がんは成人のがんの約2~3%を占め、患者数は男性が女性の約1.5倍です。毎年、約64,000人が腎臓がんを新たに発症し、約14,000人が腎臓がんで死亡します。また喫煙者では、腎臓がんの発生率が非喫煙者の約2倍高くなっています。その他の危険因子としては、毒性化学物質(アスベスト、カドミウム、皮革なめし剤、石油製品など)への曝露と肥満などがあります。また、透析 透析 透析とは、体内の老廃物や過剰な水分を機械的に取り除く処置のことで、腎臓が十分な機能を果たさなくなったときに必要になります。 透析が必要になる理由はいくつかありますが、最も多いのは、腎臓が血液から老廃物を十分にろ過できなくなること(腎不全)です。腎臓の機能は急速に低下することもあれば(急性腎障害または急性腎不全と呼ばれます)、老廃物をろ過す... さらに読む 透析 を受けており嚢胞性腎疾患 嚢胞性腎疾患 さらに読む が生じている人や特定の遺伝性の病気がある人も、腎臓がんのリスクが高くなっています。通常は50~70歳で発症します。

腎臓に発生する腫瘍のうち、充実性の腫瘍(内部が組織で詰まっているもの)の大半ががんであるのに対して、内部に液体だけが詰まった腫瘍(嚢胞[のうほう])は多くが良性の(がんではない)腫瘍です。腎臓がんの大半は腎細胞がんと呼ばれるものです。ウィルムス腫瘍 ウィルムス腫瘍 ウィルムス腫瘍は、主に幼児に発生する特殊な種類の腎臓がんです。 ウィルムス腫瘍の原因は不明ですが、遺伝子異常があると考えられる小児もいます。 たいていの場合、小児の腹部にしこりがあり、腹痛、発熱、食欲不振、吐き気、嘔吐もみられます。 画像検査により、しこりの性質と大きさが調べられます。 治療では、手術、化学療法、ときには放射線療法が行われます。 さらに読む と呼ばれる別の種類の腎臓がんもあり、これは小児で多くみられます。

症状

がんが他の臓器に広がる(転移する)か、極めて大きくなるまで症状が現れないことがあります。最初に現れる症状としては血尿が最も一般的ですが、血液の量がごくわずかなために顕微鏡で調べないと発見できない場合もあります。一方で、肉眼で分かるほどに尿が赤くなる場合もあります。血尿に次いで多くみられる症状は、側腹部(肋骨と腰の間)の痛み、発熱、体重減少です。まれに、医師が腹部の触診中に、腫れや腫瘤(しゅりゅう)を見つけ、腎臓がんの発見につながることがあります。

赤血球の数が異常に増加して、赤血球増多症になることがあります。これは、腫瘍のある腎臓や腫瘍自体からエリスロポエチンと呼ばれるホルモンが分泌され、このホルモンの血中濃度が高まった結果、骨髄が刺激されて赤血球の生産量が増加するためです。赤血球数が増加しても症状が現れない場合もあれば、頭痛、疲労、めまい、視覚障害などがみられる場合もあります。一方、尿中への出血が徐々に生じることによって、腎臓がんから赤血球数の減少(貧血 貧血の概要 貧血とは、赤血球の数やヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球中のタンパク質)の量が少ない状態をいいます。 赤血球には、肺から酸素を運び、全身の組織に届けることを可能にしているヘモグロビンというタンパク質が含まれています。赤血球数が減少したり、赤血球中のヘモグロビンの量が少なくなったりすると、血液は酸素を十分に供給できなくなります。組織に酸素が十分... さらに読む )につながる場合もあります。貧血が起きると、疲労しやすくなったり、めまいを起こしたりします。血液中のカルシウム濃度が上昇する場合もあり(高カルシウム血症 高カルシウム血症(血液中のカルシウム濃度が高いこと) 高カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が非常に高い状態をいいます。 カルシウム濃度の上昇は、副甲状腺の問題や、食事、がん、骨に影響を及ぼす病気が原因で発生します。 最初に消化管の不調、のどの渇き、多尿がみられ、重症化すると錯乱、やがて昏睡に至ることがあります。発見と治療が遅れると、生命を脅かすことがあります。 高カルシウム血症は通常、定期的な血液検査で発見されます。 水分をたくさん摂取するだけで治療としては十分なこともありますが、... さらに読む 高カルシウム血症(血液中のカルシウム濃度が高いこと) )、筋力低下、疲労、反応の鈍化、便秘などがみられるようになります。血圧が上昇する場合もありますが、高血圧による症状がみられるとは限りません。

診断

  • CTまたはMRI検査

  • ときに手術

ほとんどの腎臓がんは、高血圧などの別の問題に対して実施された画像検査(CT検査や超音波検査など)の際に偶然発見されています。症状から腎臓がんが疑われる場合には、診断を確定させるためにCTまたはMRI検査が行われます。最初に超音波検査や排泄性尿路造影検査が行われることもありますが、診断の確定にはCTまたはMRI検査が必要です。

がんと診断された場合は、その他の画像検査(胸部X線検査、骨シンチグラフィー、頭部または胸部のCT検査など)と血液検査も行われ、転移の有無や転移した部位が調べられます。ただし、転移したばかりの病巣は発見できない場合があります。ときに、診断を確定するための手術が必要になることがあります。

予後(経過の見通し)

予後(経過の見通し)には多くの要因が関係していますが、小さながんが腎臓にとどまっている場合の5年生存率は90%を超えています。がんが広がると、予後は非常に悪くなります。このような状況では、多くの場合、痛みの緩和と快適さの向上が治療の目標になります( 致死的な病気で生じる症状 致死的な病気で生じる症状 多くの致死的な疾患により、痛みや息切れ、胃腸の障害、失禁、皮膚の損傷、疲労といった共通の症状が起こります。抑うつや不安、錯乱、意識不明、身体障害が生じることもあります。通常、症状は予測して治療することができます。 死に直面すると、大半の人は痛みを恐れます。しかし、ほぼすべての人が心地良く過ごすことができ、多くの場合、意識もはっきりとしていて、現実世界との関わりを維持することができます。ただし、積極的な疼痛治療によって、鎮静や錯乱が避けら... さらに読む )。その場合は、他の終末期の問題と同様に、事前指示書 事前指示書 医療に関する事前指示書は、ある人が医療に関する決断を下すことができなくなった場合に、医療についての本人の希望を伝達する法的文書です。事前指示書には、基本的にリビングウィルと医療判断代理委任状の2種類があります。(医療における法的問題と倫理的問題の概要も参照のこと。) リビングウィルは、終末期ケアに代表されるような、個人が医療に関する決定能力を喪失する事態に備え、将来の医学的治療に関する指示や要望を事前に表明するものです。... さらに読む の作成など、終末期への対応を計画すること( 終末期の法的または倫理的な課題 終末期の法的または倫理的な課題 事前指示書は、医療ケアに関する患者の決定事項を家族や医療従事者に指示する文書で、そうした決定が必要な場面で患者にその能力がない場合に使用されます。 死期にある人の中には、自殺を考える人もいますが、実際に自分の死につながるような行為に及ぶ人はごく少数です。 一部の地域では、特定の条件が満たされ、特定の手順に従う場合、医師による死の幇助が法律で認められています。 医療に関する事前指示書は、ある人が医療に関する決断を下すことができなくなった場... さらに読む )が不可欠です。

治療

  • 手術

がんが腎臓の外に広がっていなければ、手術で腎臓を摘出することによって、ある程度の割合で治癒が見込まれます。あるいは、腫瘍組織とその周辺部の正常組織だけを切除して、腎臓の残りの部分を温存する手術法もあります。手術以外にがん細胞を破壊する方法もいくつか研究されていますが、通常は手術が選択されます。

がんが腎静脈や大静脈(心臓につながる太い静脈)などの周辺部位に広がっていても、リンパ節や腎臓から離れた部位に転移していない場合には、手術による治癒の可能性が残されます。ただし、腎臓がんは早い段階で転移する傾向があり、特に肺への転移が多く、症状が現れる前にすでに転移している場合もあります。離れた部位に転移した腎臓がんの病巣は転移してすぐの時点では発見できない場合もあるため、発見できた腎臓がんの病巣を手術ですべて取り除いた後に、転移が明らかになることもあります。

手術で治癒が望めない場合は、他の治療法を用いることもできますが、それでも治癒が得られるのはまれです。一部の種類のがんでは、免疫系の機能を高めてがんを破壊させる治療法によって病変を縮小できる場合があり、それにより生存期間を延ばすことができます( がんの免疫療法 がんの免疫療法 免疫療法は、がんに対抗するために体の免疫系を活性化するために行われます。そのような治療では、腫瘍細胞の特定の遺伝学的特徴を標的にします。腫瘍の遺伝学的特徴は、がんが発生する器官に左右されません。そのため、このような薬は多くの種類のがんに対して効果的な可能性があります。(がん治療の原則も参照のこと。) 免疫系を刺激するために使用される治療にはいくつかの種類があります。また、がん治療のこの領域は精力的に研究されています。米国国立がん研究所(... さらに読む )。腎臓がんに対してときに使用されるこのような治療法には、インターロイキン2やインターフェロンアルファ2bなどがあります。そのほかにも、スニチニブ、ソラフェニブ、カボザンチニブ(cabozantinib)、アキシチニブ、ベバシズマブ、パゾパニブ、レンバチニブ、テムシロリムス、エベロリムスなどの薬が用いられることもあります。これらの薬を使用する治療法は、腫瘍に影響を及ぼす一連の分子の働きを変えることから、分子標的療法と呼ばれています。ニボルマブは、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる新しいタイプの抗がん剤で、がん細胞上にあるPD-1と呼ばれる分子の働きを阻害します。PD-1を阻害すると、免疫系ががん細胞を攻撃できるようになります。この薬は、分子標的療法が不成功に終わった転移性の腎臓がんで使用できます。現在は、免疫チェックポイント阻害薬を用いる多剤併用療法の研究が精力的に進められています。他のインターロイキンの様々な組合せ、サリドマイド、さらには腎臓がんの組織から分離した細胞を原料として作られるワクチンなども研究されています。これらの治療法は、遠隔転移を起こした腎臓がんの治療に役立つ可能性がありますが、小さな効果しか得られないのが通常です。まれに(1%未満)、がんが発生した腎臓を摘出することで、体内の別の部位に転移した腫瘍が縮小することがあります。しかし、すでに遠隔転移を起こしている場合に、腫瘍の縮小がわずかに期待されるというだけでは、腎臓の摘出手術を行う理由として十分ではありません。ただし、広がったがんに対する全体的治療計画の一環として、他の治療とともに摘出手術が行われることはあります。米国では2017年に、腎臓がんの手術後に行う治療に用いる薬剤としてスニチニブが承認されました。

腎臓に転移した腫瘍

ときに、別の部位にできたがんが腎臓に転移することもあります。そのようながんの例としては、黒色腫 黒色腫 黒色腫(メラノーマとも呼ばれます)は、色素を作り出す皮膚細胞(メラノサイト)から発生する皮膚がんです。 黒色腫は、正常な皮膚から発生する場合もあれば、すでにあったほくろから発生する場合があります。 皮膚に様々な色の斑点を伴う平坦または隆起した褐色の不規則な皮疹、あるいは黒または灰色の硬い隆起が現れます。 黒色腫の診断を下すには、生検を行います。 黒色腫を切除します。 さらに読む 黒色腫 肺がん 肺がん 肺がんの最も一般的な原因は喫煙です。 よくみられる症状は、持続性のせき、または、性状が変化する慢性的なせきです。 肺がんの大部分は胸部X線検査で発見できますが、他の画像検査や生検をさらに行う必要があります。 肺がんの治療には、手術、化学療法、分子標的療法、放射線療法のいずれも用いられます。 (肺の腫瘍の概要も参照のこと。) さらに読む 肺がん 乳がん 乳がん 乳がんは、乳房の細胞が異常をきたし制御不能に分裂することで発生します。通常は、乳汁を作る乳腺(小葉)または乳腺から乳頭(乳首)へ乳汁を運ぶ乳管にがんが発生します。 乳がんは、女性がかかるがんの中で発症数が最も多く、がんによる死亡の中では第2位を占めています。 通常、最初に現れる症状は痛みのないしこりで、自分で気づくことがほとんどです。 乳がんスクリーニングの推奨は様々で、定期的なマンモグラフィー、医師による乳房の診察、乳房自己検診などが... さらに読む 乳がん 胃がん 胃がん ヘリコバクター・ピロリの感染は胃がんの危険因子です。 漠然とした腹部の不快感、体重減少、筋力低下が典型的な症状の一部です。 診断としては内視鏡検査や生検などを行います。 胃がんは早期に他の部位に転移する傾向があるため、生存率は低くなっています。 がんを摘出したり、症状を緩和するために手術が行われます。 さらに読む 胃がん 女性生殖器のがん 女性生殖器のがんの概要 外陰部、腟、子宮頸部、子宮体部、卵管、卵巣など、がんは女性の生殖器系のどの部分にも起こりえます。これらのがんを婦人科がんといいます。 米国で最も多くみられる婦人科がんは子宮体がん(子宮内膜がん)であり、次に卵巣がん、そして子宮頸がんです。 婦人科がんは以下のように広がります。 近くの組織や臓器に直接広がる(浸潤)... さらに読む 腸のがん 消化器系の腫瘍 さらに読む 膵臓がん 膵臓がん 膵臓がんの危険因子としては、喫煙、慢性膵炎、男性であること、黒人であることがあるほか、長期の糖尿病も危険因子である可能性があります。 典型的な症状は、腹痛、体重減少、黄疸、嘔吐などです。 診断法はCT検査、超音波内視鏡検査、またはMRI検査です。 膵臓がんは通常、死に至ります。 がんが転移していなければ、手術で治癒する可能性があります。 さらに読む 白血病 白血病の概要 白血病は、白血球または成熟して白血球になる細胞のがんです。 白血球は骨髄の幹細胞から成長した細胞です。ときには成長がうまくいかずに、染色体の一部の並びが変化してしまうことがあります。こうして異常となった染色体により正常な細胞分裂の制御が失われ、この染色体異常がある細胞が無制限に増殖するようになったり、細胞がアポトーシス(不要になった細胞が... さらに読む リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、Bリンパ球やTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です。Bリンパ球は抗体を産生... さらに読む リンパ腫の概要 などが挙げられます。

通常、このような転移は症状を引き起こしません。転移は多くの場合、がんの原発巣がどの程度広がっているかを特定するために行われた検査で診断されます。通常は、原発巣のがんに対する治療を行います。原発巣のがんを治療しても腎臓の腫瘍が増殖している場合は、腎臓の腫瘍を切除することがあります。

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