1日当たりの排尿回数は大半の人で約4~6回(主に日中)です。健康な成人の1日当たりの排尿量は700ミリリットルから3リットル程度です。排尿が増加する症状としては以下のものがあります。
頻尿には強い尿意(尿意切迫感)を伴う場合があります。多くの人は、夜間に排尿のために起きなければならないことで(夜間頻尿)、多尿を特に認識するようになります。夜間頻尿は、就寝の直前に多量の水分を摂取した場合にも起こりやすく、全体としての水分摂取量が通常より多くなくても起こります。
(尿路症状の概要を参照のこと。)
原因
尿量が増加する原因の一部は、排尿回数が増加する原因とは異なります。しかし、体内で尿が大量に作られる人は、頻繁に排尿する必要もあるため、これらの2つの症状はしばしば一緒に検討されます。
頻尿の最も一般的な原因は以下のものです。
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膀胱の感染症(成人女性と小児で最も一般的な原因)
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前立腺肥大症(前立腺が大きくなる良性の病気—50歳以上の男性で最も一般的な原因)
成人と小児のいずれでも多尿の最も一般的な原因は以下のものです。
尿崩症は抗利尿ホルモン(または バソプレシン)と呼ばれるホルモンの問題により多尿を引き起こします。抗利尿ホルモンには腎臓での水分の再吸収を促進する働きがありますが、抗利尿ホルモンの分泌量が不足したり(中枢性尿崩症)、抗利尿ホルモンに対して腎臓が適切に反応できなくなったり(腎性尿崩症)すると、排尿量が異常に増加します。
評価
排尿の問題を主治医に相談することには、多くの人がためらいを覚えます。しかし、排尿の増加を引き起こす病気にはかなり重篤なものもあるため、過剰な排尿がみられる人は医師の診察を受ける必要があります。以下では、どのようなときに医師の診察を受けるべきか、また受けた場合に何が行われるかについて説明しています。
警戒すべき徴候
受診のタイミング
脚の筋力低下がみられる人は、脊髄の病気がある可能性が考えられますので、直ちに病院に行く必要があります。発熱および背部痛がある人は、腎臓の感染症の疑いがあるため、1日以内に医師の診察を受ける必要があります。他の警戒すべき徴候がみられる場合は、1~2日以内に医師の診察を受ける必要があります。警戒すべき徴候がない人は、都合に合わせて可能な限り速やかに(通常は数日から1週間以内)診察を予約する必要がありますが、症状が数週間以上にわたって徐々に生じ、軽症である場合は、それより長い期間にわたって待つことも通常は安全です。
医師が行うこと
医師はまず、症状と病歴について質問し、次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、排尿の増加の原因と必要になる検査を推測することができます({blank} 排尿の増加の主な原因と特徴)。
医師は以下のことについて質問します。
いくつかの明らかな所見から、頻尿の原因の手がかりが得られます。排尿時の痛みまたは灼熱感、発熱、および背部または側腹部の痛みがみられる場合は、感染症が疑われます。カフェインを含有する飲料を大量に飲む人や、利尿薬による治療を開始したばかりの人では、利尿作用のある物質が原因と考えられます。排尿の他の問題、例えば排尿開始困難、尿勢の低下、排尿後尿滴下などがある場合、前立腺の病気である可能性があります。
女性では通常、身体診察の一部として内診を行い、子宮頸部と腟から体液のサンプルを採取して性感染症がないかチェックします。男性では、陰茎に分泌物がないか調べるとともに、直腸指診で前立腺の状態を調べます。
排尿の増加の主な原因と特徴
原因 |
一般的な特徴* |
検査 |
主に頻尿を引き起こす病気 |
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膀胱炎(膀胱感染症) |
通常は成人女性および女児 頻尿と尿意切迫 排尿時の灼熱感または痛み ときに発熱と腰部または側腹部の痛み ときに血尿または尿の異臭 |
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妊娠 |
典型的には妊娠の最後の数カ月間 |
医師の診察 ときに尿検査(尿路感染症をチェックする) |
前立腺の腫大(良性または悪性) |
主に50歳以上の男性 排尿開始困難、尿勢低下、排尿後尿滴下、残尿感などの尿症状が徐々に増悪する しばしば直腸指診の際に検出される |
PSA値を測定する血液検査 PSA値が上昇している場合は前立腺の生検 ときに超音波検査 |
前立腺炎(前立腺の感染症) |
直腸指診での前立腺の圧痛の所見 しばしば発熱、排尿開始困難、排尿時の灼熱感または痛み ときに血尿 場合によっては、長期にわたる尿路の閉塞による症状(尿勢低下、排尿困難、排尿後尿滴下) |
尿検査と尿培養検査および直腸指診 |
放射線性膀胱炎(放射線療法により生じた膀胱の損傷) |
下腹部、前立腺、会陰部(性器と肛門の間の領域)にがんの治療として放射線療法を受けた人 |
医師の診察 ときに、膀胱鏡検査(観察用の柔軟な管状の機器を膀胱に挿入して内部を調べる検査)と生検 |
脚の筋力低下およびしびれ ときに明らかなけが |
脊椎のMRI検査 |
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尿路結石(尿流を遮断しないもの) |
ときに腰部、側腹部、鼠径部に締められるような痛みが出現しては消える 結石の場所に応じて、ときに頻尿または突然の強い尿意切迫感 |
尿検査 腎臓、尿管、膀胱の超音波検査またはCT検査 |
排尿を促進する物質(カフェイン、アルコール、利尿薬など) |
ほかの点では健康な人で、カフェインまたはアルコールの入った飲料を飲んだ直後の場合、または利尿薬の服用を最近開始した人 |
医師の診察のみ |
意図しない排尿のことで、最も一般的には屈曲、せき、くしゃみ、物を持ち上げた際(腹圧性尿失禁)にみられる |
膀胱に水を注入した後、膀胱内の圧力の変化と尿の量を測定する(膀胱内圧測定) |
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主に尿の量を増加させる病気 |
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コントロール不良の糖尿病 |
強いのどの渇き しばしば幼児にみられる ときに肥満の成人で、2型糖尿病であることが判明している人 |
血糖値(グルコース濃度)の測定 |
強いのどの渇きが突然起こるか、徐々に発生する ときに脳損傷があるか脳手術を受けた人 |
血液検査および尿検査を、水分摂取を制限する前と後、およびその後に抗利尿ホルモンを投与して行う(水制限試験) ときに抗利尿ホルモンの血中濃度を測定する血液検査 |
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強いのどの渇きが徐々に生じる |
血液と尿の検査 ときに水制限試験 |
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利尿薬の使用 |
ほかの点では健康な人が最近利尿薬の服用を開始した ときに利尿薬を不正に服用する人(運動選手、体重の減量を試みている人) |
通常は医師の診察のみ |
しばしば精神障害のために水分を過剰に摂取する(多飲症) |
しばしば精神障害があることが判明している人 |
中枢性尿崩症の場合と同様の検査 |
*この欄には症状や診察の結果などが示されています。ここに示されている特徴は典型的なものですが、常に当てはまるわけではありません。 |
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CT = コンピュータ断層撮影、MRI = 磁気共鳴画像、PSA = 前立腺特異抗原。 |
検査
ほとんどの場合、尿検査のほか、しばしば尿培養検査を行います。検査が必要かどうかは、病歴聴取と身体診察の結果によって決まります({blank} 排尿の増加の主な原因と特徴)。体内で尿が作られる量が正常と比較して多いかどうか不明の場合、24時間にわたって尿を収集して、その量を測定します。実際に多尿の場合は、血糖値を測定します。多尿の原因が糖尿病ではなく、静脈内のうっ血など明らかな原因が他にみられない場合は、さらなる検査が必要になります。電解質濃度および特定の塩分の濃度(浸透圧)を、しばしば一定期間の水分制限後および抗利尿ホルモンを投与後に、血液、尿、またはその両方で測定します。