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腎性尿崩症

執筆者:

L. Aimee Hechanova

, MD, Texas Tech University Health Sciences Center, El Paso

最終査読/改訂年月 2017年 8月
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腎性尿崩症では、尿細管がバソプレシン(抗利尿ホルモン)に反応しないために、ろ過された水分を体に再吸収することができず、薄い尿が大量に作られます。

  • 腎性尿崩症の多くは遺伝性ですが、腎臓に影響を及ぼす薬や病気によって引き起こされる場合もあります。

  • 症状としては、強いのどの渇きや大量の排尿などがあります。

  • 腎性尿崩症の診断は、血液検査と尿検査の結果に基づいて下されます。

  • 水分の摂取量を増やすことは、脱水の予防に有用です。

  • 腎性尿崩症の治療では、食事の塩分制限を行い、ときに尿の排泄量を減少させる薬を服用します。

尿崩症は英語で「diabetes insipidus」といいますが、より広く知られている糖尿病 糖尿病 糖尿病は体が必要とするインスリンを十分に産生しないため、血糖(ブドウ糖)値が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇き、減量しようとしていないのに体重が減少します。 神経を損傷し、知覚に問題が生じます。 血管を損傷し、心臓発作、脳卒中、慢性腎臓病、視力障害のリスクが高まります。... さらに読む は英語で「diabetes mellitus」といい、どちらの「diabetes」も大量の尿が排泄される病気という点が共通しています。しかし、これら2つの「diabetes」は、それ以外の点では大きく異なります。

尿崩症には2種類のものがあります。

知っていますか?

  • 腎性尿崩症と糖尿病は、どちらも大量の尿が排泄されるという点を除けば、互いに大きく異なる病気です。

原因

正常な状態では、腎臓は体の要求に応じて尿の濃度と量を調節していますが、この調節は血液中のバソプレシンの濃度変化を介して行われています。バソプレシンとは下垂体から分泌されるホルモンで、腎臓に対して水分の保持と尿の濃縮を指示するシグナルとして働きます。腎性尿崩症では、腎臓がこのシグナルに反応しなくなってしまいます。

腎性尿崩症は以下のように分類されます。

  • 遺伝性

  • 後天性

遺伝性腎性尿崩症

遺伝性腎性尿崩症を典型的に引き起こす遺伝子は劣性遺伝子であり、X染色体(2種類ある性染色体の一方)に存在するため、この病気を発症するのはほとんどが男性に限られます。しかし、女性がこの遺伝子を保有していると、この病気が息子に遺伝する可能性があります。まれに、別の異常な遺伝子によって、男性と女性のいずれにも腎性尿崩症が引き起こされる場合があります。

後天性腎性尿崩症

後天性腎性尿崩症は、リチウムのようにバソプレシンの作用を阻害する薬によって引き起こされる可能性があります。

また腎性尿崩症は、多発性嚢胞腎 多発性嚢胞腎(PKD) 多発性嚢胞腎は、両方の腎臓に液体で満たされた袋状の病変(嚢胞)が多数形成される遺伝性の病気です。そのため腎臓が大きくなりますが、機能している腎組織は減少します。 多発性嚢胞腎は遺伝によって受け継がれた遺伝子異常によって引き起こされます。 症状が軽いために病気の存在に気づかない場合もありますが、わき腹(側腹部)の痛み、血尿、高血圧、腎結石によるけいれん性の痛みなどがみられる場合もあります。... さらに読む 鎌状赤血球貧血 鎌状赤血球症 鎌状赤血球症は、鎌状(三日月形)の赤血球と、異常な赤血球の過剰破壊による慢性貧血を特徴とする、遺伝性のヘモグロビン(酸素を運搬する赤血球内のタンパク)の遺伝子異常です。 必ず貧血がみられ、ときとして黄疸がみられます。 貧血、発熱、息切れなどが悪化し、長管骨、腹部、胸部などに痛みを伴うと、鎌状赤血球症の疼痛発作(症状が急速に悪化する危険な状態)が疑われます。 電気泳動法と呼ばれる特別な血液検査を使用して、鎌状赤血球症かどうかを判定すること... さらに読む 鎌状赤血球症 髄質海綿腎 髄質海綿腎 髄質海綿腎は、腎臓の集合管(尿が流れる細い管)が拡張するまれな病気です。 髄質海綿腎は通常、胎児の発育中に生じる、遺伝によらない異常が原因で発生します。ただし、ごくまれに遺伝性の異常が原因になる場合もあります。髄質海綿腎はほとんどの場合、何の症状も引き起こしませんが、この病気をもった人では、痛みを伴う腎結石、血尿、腎臓の感染症などが起きやすくなります。この病気のある人の半数以上では、腎臓の組織にカルシウムの沈着が認められ、カルシウムの沈... さらに読む 、重度の感染症(腎盂腎炎 腎臓の感染症 腎盂腎炎とは、片方または両方の腎臓に生じた細菌感染症です。 尿路の感染が腎臓に波及する場合と、まれに血流中の細菌が腎臓に感染する場合があります。 症状としては、悪寒、発熱、背部痛、吐き気、嘔吐などがみられます。 腎盂腎炎が疑われる場合は、尿検査、ときに血液検査および画像検査を行います。 感染に対する治療としては抗菌薬が投与されます。 さらに読む )、アミロイドーシス アミロイドーシス アミロイドーシスは、異常に折りたたまれたタンパク質がアミロイド線維を形成し、様々な組織や器官に蓄積して臓器が正常に機能しなくなり、臓器不全や死に至ることもあるまれな病気です。 アミロイドーシスの症状と重症度は、どの重要臓器が影響を受けるかによって異なります。 組織サンプル(生検サンプル)を採取し、顕微鏡で検査することにより、診断を確定しま... さらに読む アミロイドーシス シェーグレン症候群 シェーグレン症候群 シェーグレン症候群はよくみられる自己免疫リウマチ疾患で、眼や口などの粘膜の異常な乾燥を特徴とします。 白血球が、体液を分泌する腺に侵入して損傷を与えることがあり、ときには他の臓器に損傷が及ぶ場合もあります。 診断を助けるために確立された基準が用いられることがあり、検査により涙と唾液の分泌量を測定するとともに、血液中に異常な抗体が存在しないかを評価できます。 通常は、眼や口などの表面を乾燥させないようにする対策を講じるだけで十分です。... さらに読む シェーグレン症候群 、特定のがん(肉腫または骨髄腫など)などの病気によって腎臓が侵された場合にも発生する可能性があります。

さらに、血液中のカルシウム濃度が高い場合やカリウム濃度が低い場合、特にこれらの状態が持続している場合に、バソプレシンの作用が部分的に遮断されることがあります。

ときに原因不明の場合もあります。

症状

腎性尿崩症の症状には以下のものがあります。

  • 強いのどの渇き(多飲)

  • 大量の薄い尿の排泄(多尿)

1日当たり3~20リットルの尿を排泄する場合があります。

腎性尿崩症が遺伝性の場合は、生後すぐに症状が現れます。乳児はのどの渇きを伝えることができないため、重度の脱水に陥りやすい傾向があります。発熱がみられることもあり、その場合は嘔吐やけいれん発作を伴います。

診断

予後(経過の見通し)

腎性尿崩症が重度の脱水に陥る前に診断された場合は、予後は良好です。

腎性尿崩症のある乳児は、治療を行えば、正常に発育する可能性が高くなります。一方、遺伝性腎性尿崩症は、速やかに診断して治療を開始しないと、脳に損傷が生じて恒久的な知的障害が生じる可能性があります。また、頻繁に脱水症状を起こしていると、体の発育にも遅れが生じます。

遺伝性でない場合は、背景にある異常を是正することが腎機能を正常化させる助けになるのが通常です。

治療

  • 十分な量の水分補給

  • 尿の量を減少させる食事および薬

脱水を予防するため、腎性尿崩症の人はのどの渇きを感じたら直ちに十分な量の水分を摂取する必要があります。乳児と幼児および病状の重い高齢者の場合は、頻繁に水分を与えなければなりません。十分な水分を摂取していれば脱水を起こすおそれはありませんが、水分を摂取しない時間が数時間ほど続くだけで重度の脱水に陥る可能性があります。

塩分とタンパク質を控えた食事が有効となる場合もあります。

この病気に対する治療として、ときに非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)とサイアザイド系利尿薬が使用されることがあります。非ステロイド系抗炎症薬とサイアザイド系利尿薬は、それぞれ異なるメカニズムで作用しますが、どちらも腎臓で再吸収されるナトリウムと水分の量を増加させます。それにより尿の排出量が少なくなります。

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