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薬による肝臓の損傷

執筆者:

Steven K. Herrine

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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本ページのリソース

多くの薬は、肝機能に影響を及ぼしたり、肝臓を損傷したりする可能性があります。(薬と肝臓も参照のこと。)

スタチン系薬剤(コレステロール値の上昇に対する治療に用いられる)などの一部の薬は、肝酵素の値を上昇させ、肝臓に損傷(通常は軽度)を与えることがありますが、症状は引き起こしません。

ごくわずかですが、肝臓をひどく損傷して、黄疸、腹痛、かゆみ、皮下出血や出血が起きやすくなるなどの症状を引き起こす薬もあります。

医師は、薬によって生じた肝傷害に対して、症状の有無にかかわらず、薬剤性肝傷害という用語を使用します。この用語には、薬用ハーブ、植物、栄養補助食品などによる肝障害も含まれます。

薬用ハーブと肝臓

一部の薬用ハーブ(健康増進のために使用される植物の一部分)には、肝臓に損傷を与える可能性のある物質が含まれています。口から摂取された物質はすべて肝臓で処理されるため、肝臓は主な標的になります。

ピロリジジンアルカロイド:数百種類のハーブに含まれるピロリジジンアルカロイドは、肝臓に損傷を与えることがあります。そのようなハーブとしては、ルリジサやコンフリーのほか、特定の漢方薬、例えば紫根(ムラサキ)、款冬花(フキタンポポ)、千里光(キク科セネキオ属の植物)、フジバカマ(ヒヨドリバナ Eupatorium属の植物)などがあります。紅茶に使われる一部のハーブは、ピロリジジンアルカロイドを含んでいます。牛乳やハチミツ、シリアルにピロリジジンアルカロイドが混入していて、知らないうちに摂取することもあります。

ピロリジジンアルカロイドは、少量を長期にわたって摂取すると、徐々に肝臓に損傷を与えることがあります。大量に摂取すると、より速やかに損傷が起こる可能性があります。肝静脈が詰まって、肝臓からの血流が妨げられることがあります。

その場合、腹痛や嘔吐がみられることがあります。腹部や脚には体液の貯留がみられます。最終的には、肝臓の組織が瘢痕化し(肝硬変)、肝不全を起こし、死に至ることもあります。

その他のハーブ:アトラクチリス・グミフェラ Atractylis gummifera、チャノキ Camellia sinensis(緑茶や紅茶に使用される)、クサノオウ(ケシの仲間)、チャパラル、ニガクサ、金不換、カヴァ、マオウ(エフェドラ Ephedra)、ヤドリギ、ペニーロイヤルオイル(紅茶用)、小柴胡湯(数種類のハーブを混合したもの)などのハーブによって肝傷害が起こることもあります。

一部の薬では、肝傷害の程度を予測できます。その場合、肝障害は薬を服用した直後に起こり、薬の用量と関連します。米国では、このような肝障害(アセトアミノフェン中毒によることが多い)は、突然の黄疸肝不全、またはその両方の原因として最もよくみられます。肝障害を予測できない薬もあります。その場合は、薬を服用した後、しばらく経ってから肝障害が現れ、用量との関連はみられません。まれに、そのような肝障害から重度の肝疾患が発生します。

危険因子

一般に、薬による肝傷害のリスクは、以下の条件によって高まると考えられます。

  • 18歳以上

  • 肥満

  • 妊娠

  • 飲酒

  • 薬の影響を受けやすい遺伝的素因

アルコールは肝臓に損傷を与えて薬の代謝に影響を及ぼすため、飲酒は肝傷害のリスクを高めます。それに加えて、体内に存在し肝臓を保護するのに役立っている抗酸化物質も、アルコールによって減少します。

分類

薬剤性の肝傷害には様々な分類があり、例えば薬によって肝臓に損傷が起きる仕組み、肝臓の細胞が受ける影響、血液検査で異常値を示す肝酵素の種類などによって分類されます。例えば、薬は肝細胞を直接傷つけることもあれば、肝臓からの胆汁の流れを遮断することで損傷を与えることもあり(胆汁うっ滞)、あるいはその両方の作用を及ぼすこともあります。

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肝障害を引き起こす可能性がある薬

薬の種類

抗菌薬

アモキシシリン/クラブラン酸

クリンダマイシン

エリスロマイシン

ニトロフラントイン

リファンピシン

スルホンアミド系

テトラサイクリン系

トリメトプリム/スルファメトキサゾール

結核治療薬(イソニアジドおよびピラジナミド)

抗てんかん薬

カルバマゼピン

フェノバルビタール

フェニトイン

バルプロ酸

抗うつ薬

ブプロピオン(bupropion

フルオキセチン

ミルタザピン

パロキセチン

セルトラリン

トラゾドン

アミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬

抗真菌薬

ケトコナゾール

テルビナフィン

降圧薬(高血圧のほか、ときに腎臓または心臓の病気の治療に使用される)

カプトプリル

エナラプリル

イルベサルタン

リシノプリル

ロサルタン

ベラパミル

抗精神病薬

クロルプロマジンなどのフェノチアジン系薬剤

リスペリドン

心臓の薬

アミオダロン

クロピドグレル

ホルモン製剤とその関連薬

タンパク同化ステロイド

経口避妊薬(ピル)

エストロゲン

鎮痛薬

アセトアミノフェン

非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)

その他の薬

アカルボース(糖尿病の治療薬)

アロプリノール(痛風の治療薬)

抗レトロウイルス薬(HIV感染症の治療薬)

バクロフェン(筋弛緩薬)

シプロヘプタジン(抗ヒスタミン薬)

アザチオプリン(臓器移植の拒絶反応を予防するための薬剤)

メトトレキサート(がんの治療薬)

オメプラゾール(胃食道逆流症の治療薬)

スタチン系(高コレステロール血症の治療薬)

薬用ハーブ

ニガクサ

緑茶エキス

カヴァ

ART = 抗レトロウイルス療法。

症状

肝疾患の症状は、全身的な症状(疲労、全身の不快感、吐き気、かゆみ、食欲不振など)から、より重症の症状(黄疸、肝臓の腫大、右上腹部の痛み、錯乱、見当識障害、覚醒レベルの低下など)まで様々です。

診断

  • 医師による評価

  • 肝機能検査

原因として疑われている薬の使用を中止した後、肝機能検査を繰り返します。そこで肝酵素の測定値が大きく低下していれば、薬剤性肝傷害の診断がさらに裏付けられます。

薬による肝傷害

薬による肝傷害が速やかに特定されれば、その予後は良好です。

医師は、患者に服用中の薬を尋ね、肝傷害を引き起こす薬がないか調べます。さらに、血液検査で特定の肝酵素の値を測定し、肝臓がどの程度機能しているか、肝臓に損傷がないかを評価します(肝機能検査)。肝機能検査で患者が服用している薬による肝傷害に典型的な結果がみられた場合は、薬剤性の肝傷害である可能性が高くなります。薬の使用をやめた後に損傷が現れることもあり、たとえ用量が多くなくても損傷は生じます。したがって、薬が原因であると判定するのは、ときには困難または不可能です。

肝傷害の他の原因

検査では診断を確定できないため、医師は肝傷害の他の原因についても調べます。肝炎、自己免疫疾患、その他の原因を調べるために、血液検査を行います。上腹部を押して肝臓の大きさを判定し、超音波検査やCT検査などの画像検査により、肝傷害のその他の原因を特定します。

予防

肝臓に損傷を与える一部の薬(スタチン系薬剤など)を使用する場合は、定期的に血液検査を行って肝酵素の測定値をモニタリングすることがあります。このようなモニタリングは、早期に異常を検出し、肝傷害を予防するのに役立ちます。たいていの薬では、肝酵素の値のモニタリングは行われません。

治療

  • 薬の使用の中止

  • 解毒剤の投与(入手できる場合)

  • ときに肝移植

通常は、問題の薬の使用を中止すると回復します。かゆみなどの症状を緩和する薬を使用することもあります。

ごく一部の薬には解毒剤があります。例えば、アセトアミノフェンの過量摂取にはアセチルシステインを使用することができます。

損傷が重度の場合は、専門医に紹介されることがあります。肝移植が必要になることもあります。

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