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肝細胞がん

執筆者:

Danielle Tholey

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

レビュー/改訂 2021年 8月
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肝細胞がんは、肝臓の細胞から発生するがんの一種であり、原発性の肝臓がんの中で最も多くみられるものです。

アフリカや東アジアの特定の地域では、肝細胞がんは米国よりも多くみられ、一般的な死因の1つとなっています。それらの地域では、多くの人に B型肝炎ウイルス 慢性肝炎の概要 慢性肝炎は、肝臓の炎症が最低6カ月以上持続する病気です。 一般的な原因としては、B型およびC型肝炎ウイルス、特定の薬などがあります。 ほとんどの場合は無症状ですが、全身のけん怠感、食欲不振、疲労などの漠然とした症状がみられることもあります。 慢性肝炎は、肝硬変のほか、最終的には肝臓がんや肝不全に進行することがあります。 診断を確定するために生検が行われることもありますが、慢性肝炎は通常、血液検査の結果に基づいて診断が下されます。 さらに読む の慢性感染症がみられます。体内にこのウイルスが存在すると、肝細胞がんのリスクが100倍以上に増大します。B型肝炎は肝硬変を引き起こすことがありますが、肝硬変が生じるかどうかにかかわらず、肝細胞がんにつながる可能性があります。 C型慢性肝炎 C型肝炎(慢性) C型慢性肝炎は、C型肝炎ウイルスを原因とし、6カ月以上持続している肝臓の炎症です。 C型肝炎は、肝臓にひどい損傷を与えるまでは症状を引き起こさないことがよくあります。 C型慢性肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。 C型慢性肝炎によって肝硬変が生じた場合、6カ月毎に肝臓がんのスクリーニングを行います。 C型慢性肝炎の治療は抗ウイルス薬によって行います。 さらに読む 脂肪性肝疾患 脂肪肝 脂肪肝は、肝細胞の内部に中性脂肪(トリグリセリド)が過剰に蓄積した状態です。 脂肪肝の患者には、疲労や腹部の軽い不快感が生じることがありますが、それ以外の症状はみられません。 脂肪肝は、線維化や肝硬変などの進行した肝疾患を引き起こすことがあります。 診断を確定するため、また損傷の原因と範囲を特定するために肝生検が必要になることがあります。 医師は、メタボリックシンドロームや過度の飲酒など、脂肪肝の原因をコントロールするか取り除くことに重... さらに読む 、または 過度の飲酒 アルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患は、長期にわたる大量の飲酒によって肝臓に損傷が起きる病気です。 一般に、飲酒の量、頻度、期間によって肝傷害のリスクと重症度が決まります。 最初は無症状ですが、次第に発熱、黄疸、疲労がみられるようになり、肝臓は圧痛や痛みが生じて大きくなり、やがて消化管出血や脳機能低下などの、より深刻な問題が現れます。... さらに読む アルコール性肝疾患 に起因した肝硬変も、このがんのリスクを増大させます。

肝細胞がんはがんの原因物質(発がん物質)にさらされることにより発生することもあります。肝細胞がんがよくみられる亜熱帯地域では、ある種のカビが作るアフラトキシンと呼ばれる発がん物質によって食べものが汚染されていることがよくあります。

肝細胞がんが一般的ではない北米や欧州、および他の地域で最も一般的な原因はC型慢性肝炎です。肝硬変、特にC型慢性肝炎、慢性C型肝炎に関連する肝硬変、 脂肪性肝疾患 脂肪肝 脂肪肝は、肝細胞の内部に中性脂肪(トリグリセリド)が過剰に蓄積した状態です。 脂肪肝の患者には、疲労や腹部の軽い不快感が生じることがありますが、それ以外の症状はみられません。 脂肪肝は、線維化や肝硬変などの進行した肝疾患を引き起こすことがあります。 診断を確定するため、また損傷の原因と範囲を特定するために肝生検が必要になることがあります。 医師は、メタボリックシンドロームや過度の飲酒など、脂肪肝の原因をコントロールするか取り除くことに重... さらに読む 、または 慢性的な飲酒 アルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患は、長期にわたる大量の飲酒によって肝臓に損傷が起きる病気です。 一般に、飲酒の量、頻度、期間によって肝傷害のリスクと重症度が決まります。 最初は無症状ですが、次第に発熱、黄疸、疲労がみられるようになり、肝臓は圧痛や痛みが生じて大きくなり、やがて消化管出血や脳機能低下などの、より深刻な問題が現れます。... さらに読む アルコール性肝疾患 に関連した長年にわたる肝硬変も、肝細胞がんに至る可能性があります。 原発性胆汁性胆管炎 原発性胆汁性胆管炎(PBC) 原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、肝臓内の胆管が炎症を起こし、進行性の瘢痕化が起こる病気です。最終的には胆管がふさがり(閉塞)、肝臓が瘢痕化して、肝硬変や肝不全を発症します。 原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、おそらく自己免疫反応に起因して発生すると考えられています。 通常、この病気は、かゆみ、疲労、口腔乾燥とドライアイ、 黄疸を引き起こしますが、症状がみられない患者もいます。 通常は、特定の抗体を測定する血液検査で診断を確定できます。... さらに読む から肝細胞がんが発生するリスクは、他の種類の肝硬変でのリスクと比べて低くなります。

肝細胞がんの症状

通常、最初に現れる症状は腹痛や体重減少で、右上腹部に大きなかたまりを触れることがあります。長年にわたって 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。肝硬変はかつては不可逆的と考えられていましたが、最近の科学的証拠から一部の症例では可逆的であることが示唆されています。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、... さらに読む 肝硬変 を患っている患者は、予期しない症状の悪化を経験することがあります。ときに発熱もみられます。腫瘍の破裂や腫瘍からの出血による突然の腹痛とショック(危険なレベルの低血圧)が最初の症状になる場合もあります。

肝細胞がんの診断

  • 身体診察

  • 血液検査と画像検査

肝細胞がんの初期には手がかりになる症状があまりみられないため、早期発見は困難です。他の目的で行われた診察で腫大した肝臓に触れたり、画像検査で右上腹部のかたまりが偶然発見されたりした場合(特に長年にわたる 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。肝硬変はかつては不可逆的と考えられていましたが、最近の科学的証拠から一部の症例では可逆的であることが示唆されています。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、... さらに読む 肝硬変 の患者で)、医師はこのがんを疑います。しかし、スクリーニング検査を行えば、多くの場合、症状が発現する前でもこのがんを発見できます。

肝細胞がんが疑われる場合、次のことが行われます。

以上のような検査を行っても診断がはっきりしない場合、 肝生検 肝生検 肝臓の組織サンプルは、試験開腹中に採取することもありますが、多くの場合、皮膚から肝臓に中空の針を刺す方法で採取します。このタイプの生検は、経皮的肝生検と呼ばれます。また、経静脈的肝生検と呼ばれる生検の方法もあります。 肝生検では、他の検査で得られない肝臓の情報を検出することができます。肝生検は、肝臓の過剰な脂肪( 脂肪肝)、慢性的な肝臓の炎症( 慢性肝炎)、 ウィルソン病(銅が過剰に蓄積する病気)や... さらに読む (針で肝臓から小さな組織サンプルを採取して顕微鏡で観察する検査)を行って診断を確定します。がん組織を採取できる可能性を高めるため、多くの場合、超音波画像またはCT画像を頼りに位置を確認しながら生検の針を挿入します。通常、肝生検中に出血や損傷が起きるリスクはわずかです。

病期診断

がんの診断がついたら、次にがんの大きさと周辺組織や他の部位への広がりの有無を判定します。診断過程で行われた画像検査の結果から、これらの情報の一部が得られる場合もあります。

がんの病期(ステージ)は、I期(腫瘍が1つだけで、周囲への広がりや離れた部位への転移が起きていない段階)からIV期(離れた部位に転移している段階)に分けられています。病期は、治療法の決定と生存期間の推定で参考にされます。

スクリーニング

B型肝炎ウイルス B型肝炎(慢性) B型慢性肝炎は、B型肝炎ウイルスを原因とし、6カ月以上持続している肝臓の炎症です。 ほとんどのB型慢性肝炎患者では症状がありませんが、全身のだるさを感じ、疲れを覚え、食欲を失う場合もあります。 B型慢性肝炎があると肝臓がんのリスクが増大します。 血液検査の結果に基づいてB型肝炎の診断が下され、ときとして肝傷害の程度を確認するために肝生検が行われます。 B型慢性肝炎のすべての患者に治療が必要となるわけではありませんが、B型慢性肝炎によって... さらに読む が多い地域では、超音波検査によってB型肝炎感染者の肝臓がんスクリーニングを行います。原因にかかわらず、 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。肝硬変はかつては不可逆的と考えられていましたが、最近の科学的証拠から一部の症例では可逆的であることが示唆されています。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、... さらに読む 肝硬変 の患者には定期的にスクリーニングが行われます。スクリーニングとしては通常、6~12カ月毎に超音波検査を行うほか、ときにAFPの測定も行います。

肝細胞がんの予後(経過の見通し)

肝細胞がんの予防

B型肝炎ウイルス B型肝炎ワクチン B型肝炎ワクチンは B型肝炎とその合併症( 慢性肝炎、 肝硬変、 肝臓がん)の予防に役立ちます。 一般に、B型肝炎は A型肝炎より重篤で、死に至ることもあります。症状は軽度のこともあれば、重度のこともあります。食欲減退、吐き気、疲労などがみられます。5~10%の患者ではB型肝炎が慢性化し、肝硬変や肝臓がんに進行することがあります。 詳細については、CDCによるB型肝炎ワクチン説明書(Hepatitis... さらに読む に対するワクチンを使用することで、最終的に肝細胞がんの発生率が低下しますが、このウイルスが流行している地域では特に有効です。原因にかかわらず 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。肝硬変はかつては不可逆的と考えられていましたが、最近の科学的証拠から一部の症例では可逆的であることが示唆されています。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、... さらに読む 肝硬変 の発生を予防することも、同じく有用です。例えば、 B型慢性肝炎 B型肝炎(慢性) B型慢性肝炎は、B型肝炎ウイルスを原因とし、6カ月以上持続している肝臓の炎症です。 ほとんどのB型慢性肝炎患者では症状がありませんが、全身のだるさを感じ、疲れを覚え、食欲を失う場合もあります。 B型慢性肝炎があると肝臓がんのリスクが増大します。 血液検査の結果に基づいてB型肝炎の診断が下され、ときとして肝傷害の程度を確認するために肝生検が行われます。 B型慢性肝炎のすべての患者に治療が必要となるわけではありませんが、B型慢性肝炎によって... さらに読む C型慢性肝炎 C型肝炎(慢性) C型慢性肝炎は、C型肝炎ウイルスを原因とし、6カ月以上持続している肝臓の炎症です。 C型肝炎は、肝臓にひどい損傷を与えるまでは症状を引き起こさないことがよくあります。 C型慢性肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。 C型慢性肝炎によって肝硬変が生じた場合、6カ月毎に肝臓がんのスクリーニングを行います。 C型慢性肝炎の治療は抗ウイルス薬によって行います。 さらに読む 脂肪性肝疾患 脂肪肝 脂肪肝は、肝細胞の内部に中性脂肪(トリグリセリド)が過剰に蓄積した状態です。 脂肪肝の患者には、疲労や腹部の軽い不快感が生じることがありますが、それ以外の症状はみられません。 脂肪肝は、線維化や肝硬変などの進行した肝疾患を引き起こすことがあります。 診断を確定するため、また損傷の原因と範囲を特定するために肝生検が必要になることがあります。 医師は、メタボリックシンドロームや過度の飲酒など、脂肪肝の原因をコントロールするか取り除くことに重... さらに読む 、または ヘモクロマトーシス ヘモクロマトーシス ヘモクロマトーシスは、鉄が過剰に吸収される遺伝性疾患で、体内に鉄が蓄積され、臓器に損傷を与えます。 米国には、100万人以上のヘモクロマトーシス患者がいます。男性の方が女性より多く罹患します。致死的となることもありますが、たいていは治療可能です。( 鉄過剰症の概要も参照のこと。) 鉄は摂取する食事から吸収されます。ほとんどの鉄は赤血球に収容されます。 この疾患では鉄が体のあらゆる場所に蓄積して損傷を与えます。... さらに読む ヘモクロマトーシス の治療や、 アルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患は、長期にわたる大量の飲酒によって肝臓に損傷が起きる病気です。 一般に、飲酒の量、頻度、期間によって肝傷害のリスクと重症度が決まります。 最初は無症状ですが、次第に発熱、黄疸、疲労がみられるようになり、肝臓は圧痛や痛みが生じて大きくなり、やがて消化管出血や脳機能低下などの、より深刻な問題が現れます。... さらに読む アルコール性肝疾患 の治療または予防は、がんの発生を予防するのに役立つ可能性があります。

肝細胞がんの治療

  • 手術または肝移植

  • ラジオ波焼灼術、化学塞栓療法、または内照射療法

  • 化学療法や免疫療法

移植や手術が不可能な場合や、肝移植を待っている場合は、腫瘍やその周辺に重点を置いた治療が行われます。これらの治療は、がんの増殖を遅らせ、症状を緩和するのに役立つことがあります。例えば、がんに栄養を供給する血管にがん細胞を破壊する化学物質を注入することがあります。あるいは、がん細胞にエネルギーを加えて破壊する治療法を用いることもあります。そのような治療法には以下のものがあります。

  • ラジオ波焼灼術(電気エネルギーを用いる)

  • 化学塞栓療法(化学療法を用いる)

  • 選択的内照射療法(放射線を用いる)

これらの治療法では、すべてのがん細胞を破壊できるわけではありません。

腫瘍に血液を供給している血管に化学療法薬を注入することも可能です(化学塞栓療法)。例えば、薬剤を静脈や肝動脈の中に注射することができます。化学療法薬を直接肝動脈に注入すると、大量の薬を肝臓のがん細胞に直接送達することができます。化学療法薬のソラフェニブは、肝細胞がんに対して有効です。このがんの一部の患者には、他の化学療法薬(レンバチニブ、レゴラフェニブなど)や免疫療法薬(ニボルマブなど)が現在使用されています。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  • 米国がん協会(American Cancer Society):症状、診断、病期分類、生存率を含めて肝臓がんに関する包括的な情報を提供しています。

  • 米国肝臓財団(American Liver Foundation):肝臓の病気と健康のあらゆる側面について概要を示す地域教育プログラムを主催しています。また、サポートグループへのアクセス、医師を見つけるための情報、および臨床試験に参加する機会も提供しています。

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