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肝性脳症

(門脈大循環性脳症、肝性昏睡)

執筆者:

Steven K. Herrine

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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肝性脳症は、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気です。

  • 肝性脳症は、長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生します。

  • 肝性脳症は、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発されます。

  • 錯乱、見当識障害、眠気が起こるとともに、性格、行動、気分の変化がみられます。

  • 医師は、症状、診察の結果、治療に対する反応に基づいて診断を下します。

  • 誘因を排除するとともに、肉類の摂取量を減らし、ラクツロース(緩下薬[下剤])とリファキシミン(抗菌薬)を服用すると、症状の解消に役立つ可能性があります。

腸から血流に吸収された物質は肝臓を通過しますが、正常な状態では、その際に毒素が除去されます。それらの毒素(アンモニアなど)の多くは、タンパクが消化されてできた正常な分解産物です。肝性脳症では、肝機能の障害のため、毒素が除去されません。さらに、一部の毒素は門脈系(血液を肝臓に供給する)と体循環との間に形成された異常な連絡路(側副血管)を通って、肝臓を完全に迂回することがあります。それらの血管は、肝疾患や門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症は、門脈(腸から肝臓に向かう太い静脈)とその分枝の血圧が異常に高くなる病気です。 欧米諸国で最も一般的な原因は、肝硬変(瘢痕化により肝臓の構造が歪み、機能が損なわれること)です。 門脈圧亢進症は、腹部の膨隆(腹水)、腹部の不快感、錯乱、消化管での出血につながります。 医師は、症状および身体診察の結果、ときには超音波検査、CT検査、MRI検査、または肝生検の結果に基づいて診断を下します。... さらに読む (門脈[血液を腸から肝臓に送る太い静脈]の血圧が異常に高くなった状態)の結果として形成されます。

門脈圧亢進症の治療に用いられる処置(門脈大循環短絡術 門脈大循環短絡術 門脈圧亢進症は、門脈(腸から肝臓に向かう太い静脈)とその分枝の血圧が異常に高くなる病気です。 欧米諸国で最も一般的な原因は、肝硬変(瘢痕化により肝臓の構造が歪み、機能が損なわれること)です。 門脈圧亢進症は、腹部の膨隆(腹水)、腹部の不快感、錯乱、消化管での出血につながります。 医師は、症状および身体診察の結果、ときには超音波検査、CT検査、MRI検査、または肝生検の結果に基づいて診断を下します。... さらに読む )によって、毒素が肝臓を迂回してしまう可能性もあります。原因が何であれ結果は同じで、毒素は脳に達し、脳の機能を損ないます。正確にどの物質が脳に有害であるかは不明です。しかしアンモニアなど、血液中に高濃度に存在するタンパクの分解産物が、脳に影響を与える上で、何らかの役割を果たしているとみられています。

長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者では、一般に、以下の事象が誘因となって肝性脳症が発生します。

症状

脳機能障害の症状、特に覚醒レベルの低下や錯乱などがみられます。発症初期には、論理的思考、人格や行動に微妙な変化が現れます。気分が変化したり、判断力が鈍ったりすることもあります。また正常な睡眠パターンが崩れます。抑うつ、不安、または怒りっぽくなったり、集中力の低下がみられたりすることもあります。

脳症のどの段階でも、息がカビ臭く甘ったるい匂いになることがあります。

病気が進むにつれ、腕を伸ばすときに手をしっかりと支えきれずに、バタバタと羽ばたくような動きをするようになります(羽ばたき振戦)。特に誘因もなく、あるいは突然の音、光、動きなどの刺激にさらされた後に、筋肉がびくつくことがあります。このびくつきは、ミオクローヌス ミオクローヌス ミオクローヌスは、筋肉や筋肉群に起こる素早い稲妻のような収縮を指します。 ミオクローヌスは片手にだけ、または上腕、脚、顔面の1つの筋肉群だけに起こることもあれば、多くの筋肉で同時に起こることもあります。 健康な人でも眠りかけたときなどに、正常なミオクローヌスがよくみられます。例えば、まどろみ始めたときに、(驚いたかのように)はっと目を覚ましたり、体の一部がビクッと跳ねたりします。... さらに読む と呼ばれます。さらに通常は、眠気や錯乱がみられるようになり、動作や発話が緩慢になります。また、見当識障害がよくみられます。比較的まれですが、脳症を起こした人は、激昂したり、興奮したりすることもあります。肝機能の低下が続くと、やがて意識を失い、昏睡状態に陥ります。昏睡に陥ると、治療を受けても、しばしば死に至ります。

診断

  • 医師による評価

  • 血液検査

  • ときに精神状態の検査

  • ときに脳波検査

診断は、主に症状、診察の結果、治療に対する反応に基づいて下されます。医師は、脳症の誘因となった可能性がある事象(感染症や薬など)について尋ね、考えられる原因を特定します。血液検査 肝機能検査 肝機能検査という名称から誤解されることもありますが、これは肝臓の代謝や胆汁分泌の機能を調べる検査ではなく、実際には肝臓の炎症や肝臓の損傷を検出する検査です( 肝臓の機能)。このような炎症や損傷は、肝臓の実際の機能に影響が現れる前から生じている可能性があります。肝機能検査は血液検査として行われますが、これは肝疾患の有無をスクリーニングし(例えば、献血された血液に肝炎があるかを調べる)、肝疾患の重症度や進行度と治療に対する反応を評価するため... さらに読む を行い、脳症の誘因、特に治療可能な病気(消化管の感染症や出血など)を特定し、診断を確定します。アンモニアの値も測定します。通常、アンモニアの値は異常に高くなっていますが(肝臓の機能不全を示します)、これが脳症を診断するのに常に信頼できる方法であるとは限りません。

治療

  • 誘因を除去する

  • 腸から有害物質を除去する

医師は、感染症や薬などの脳症の誘因を排除することを試みます。

腸内の有害物質が脳症の一因となるため、これらの毒素の除去も試みます。そのため、以下のうち1つまたは複数の対策がとられます。

  • 食事:通常、医師は肉や他の動物性タンパクの量を制限するよう指導します。毒素(アンモニアなど)は、動物性タンパク、特に赤身の肉、魚、チーズ、卵などを消化する際に作られます。十分なタンパクをとることができるよう、大豆タンパクなどの植物性タンパクを含む食品の摂取量を増やすことが勧められます。

  • ラクツロース:合成糖であるラクツロースは下剤として作用し、食物が腸を通過する速度を速めます。こういった作用により、体に吸収されるアンモニアの量が減少します。

  • 抗菌薬:医師は、口から投与しても腸から吸収されない抗菌薬(リファキシミンなど)を処方することがあります。このような抗菌薬は腸に残り、消化中に毒素を作り出す細菌の数を減らします。

肝性脳症は多くの場合、治療すれば治ります。実際、完全に回復することもあり、脳症の誘因が可逆的なものである場合は、特にこの傾向が高くなります。しかし、慢性肝疾患の患者は、将来脳症を発症しやすくなります。一部の患者は継続治療が必要です。

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