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肝不全

執筆者:

Steven K. Herrine

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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肝不全は、肝機能が大幅に低下した状態です。

  • 肝不全は、肝臓に損傷が起きる病気や物質により引き起こされます。

  • ほとんどの患者は黄疸(皮膚と眼が黄色くなる)になり、疲れて脱力を覚え、食欲を失います。

  • 他の症状には、腹部への体液の貯留(腹水)や、皮下出血や出血が起きやすい傾向などがあります。

  • 医師は通常、症状と身体診察、および血液検査の結果に基づいて、肝不全の診断を下すことができます。

  • 治療では通常、タンパクの摂取調整、食事に含まれるナトリウムの制限、禁酒、原因に対する治療が行われますが、肝移植が必要になることもあります。

肝疾患の概要も参照のこと。)

原因

肝不全は、ウイルス性肝炎(ほとんどがB型かC型肝炎)、肝硬変アルコールによる肝傷害アセトアミノフェンなどの薬による肝傷害など、あらゆる肝疾患が原因で起こりえます。

肝不全が起こるまでには、肝臓のかなりの部分が損傷を受けています。肝不全は、数日から数週間のうちに急速に進行すること(急性)もあれば、数カ月から数年かかって徐々に進行すること(慢性)もあります。

合併症

肝臓が機能しないため多くの影響が生じます。

  • 肝臓は、ビリルビン(古い赤血球が分解されてできる老廃物)を十分に処理して体内から排除することができなくなります。そうしてビリルビンが血液中に蓄積し、皮膚に沈着します。その結果が黄疸です。

  • 肝臓は、もはや血液凝固を助けるタンパクを十分に合成できなくなります。その結果、皮下出血や出血が起きやすくなります(血液凝固障害)。

  • 腸から肝臓につながる静脈(門脈)の血圧は、しばしば異常に高くなります(門脈圧亢進症と呼ばれる状態)。

  • 体液が腹部に貯留することがあります(腹水)。

  • 肝臓が有害物質を正常に除去できず、これらの物質が血液中に蓄積するため、脳の機能が低下することがあります。この病態を肝性脳症と呼びます。

  • 肝臓を迂回する新しい静脈(側副血管と呼ばれます)が形成されることがあります。これらの血管は、たいてい食道や胃に形成されます。このような場所では、静脈が拡張して蛇行します。食道静脈瘤や胃静脈瘤と呼ばれるこれらの静脈は、もろく容易に出血します( 消化管出血)。

  • 理由は分かりませんが、肝不全患者の半数で、腎臓は機能不全に陥ります。腎不全に至る肝不全は、肝腎症候群と呼ばれます。

  • 免疫系が機能不全に陥り、感染のリスクが高まります。

  • カリウムの血中濃度の低下(低カリウム血症)や血糖値の低下(低血糖)などの代謝異常がみられることもあります。

症状

肝不全患者では、黄疸、腹水、肝性脳症、全身の健康状態の悪化が通常みられます。黄疸になると、皮膚や白眼が黄色くなります。腹水があると腹部が膨れることがあります。肝性脳症は、錯乱や眠気を引き起こします。ほとんどの患者では、疲労、筋力低下、吐き気、食欲不振などの全身症状もみられます。

息はカビ臭く、甘ったるい匂いがすることがあります。

皮下出血や出血が起きやすくなることがあります。例えば、普通の人なら取るに足らない出血(例えば、小さな切傷や鼻血)も、自然に止まらず、医師でさえ出血を止めるのが難しいことがあります。失血のため、血圧低下(低血圧)やショックに至ることがあります。

急性肝不全では、健康だった人が数日以内に瀕死の状態に陥ることがあります。慢性肝不全では、吐血や血便がみられるなどの著明な事態が起こるまでは、健康状態の悪化は非常に緩やかです。嘔吐物または便に混じる血液は、通常、食道や胃の静脈瘤からの出血によるものです。

腎不全になると、尿の生産量や排泄量が減少するため、血液中に有害物質が蓄積します。

やがて、呼吸が困難になります。

肝不全を治療せずに放置した場合や、肝疾患が進行性のものである場合、最終的に死に至ります。たとえ治療しても、肝不全は元に戻らないことがあります。一部の患者は腎不全で死亡します。肝臓がんを発症する患者もいます。

診断

  • 医師による評価

  • 血液検査

医師は通常、症状と身体診察の結果に基づいて、肝不全の診断を下します。血液検査により肝臓の機能を評価しますが、たいていの場合、肝機能は著しく損なわれています。

考えられる原因を調べるために、医師は処方薬や市販薬、ハーブ製品、栄養補助食品など、患者が摂取したすべての物質について尋ねます。原因を特定するための血液検査も行われます。

尿検査、その他の血液検査などの検査のほか、しばしば胸部X線検査が行われます。これらの検査により、脳機能の低下、腎不全、感染症などの問題が発生していないかを調べます。症状によっては、頻繁に検査を繰り返すことがあります。

治療

  • 原因の治療

  • 動物性タンパクの少ない食事

  • 急性肝不全は、直ちに治療

  • ときに肝移植

治療法は原因と具体的な症状によって異なります。肝不全が急性か慢性かによって治療の緊急度は異なりますが、治療の原則は同じです。

食事制限

通常は食事制限を行い、動物性タンパク、特に赤身の肉、魚、チーズ、卵などの量を制限します。動物性タンパクの過剰摂取は、脳の機能不全の一因となる可能性があります。十分なタンパクをとることができるよう、大豆タンパクなどの植物性タンパクを含む食品の摂取量を増やすことが勧められます。さらにナトリウム(塩分や多くの食品に含まれる)の摂取量を制限する必要があります。そうすることで、腹部への体液の貯留を防ぐのに役立ちます。飲酒は、肝傷害を悪化させるため厳禁です。

急性肝不全

急性肝不全は、症状(出血など)が急速に進行して悪化するため、できるだけ速やかに治療します。急性肝不全患者は、できれば集中治療室(ICU)で治療します。以下の治療を行います。

  • 低血圧に対して、静脈からの水分補給(輸液)と血圧を上げる薬

  • 肝性脳症に対して、場合により、ラクツロース(下剤)、抗菌薬など

  • 感染症に対して、抗菌薬または抗真菌薬

  • 低血糖に対して、グルコース(糖の一種)の静脈内投与

  • 出血に対して、新鮮凍結血漿(血液凝固因子と呼ばれる、血液凝固を助けるタンパクを含む血液の成分)の輸血、および必要な場合は全血輸血

必要であれば、呼吸を補助するために合成樹脂製の呼吸用チューブを口から気管に挿入し、ときには人工呼吸器を使います。

肝移植

肝移植を早く行えば、肝機能を回復させることができ、肝疾患にかからなかった場合と同等の寿命を全うすることができます。しかし、すべての肝不全患者が肝移植に必要な条件を満たすわけではありません。

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