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アルコール性肝疾患

執筆者:

Nicholas T. Orfanidis

, MD, Thomas Jefferson University Hospital

最終査読/改訂年月 2017年 11月
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アルコール性肝疾患は、長期にわたる大量の飲酒によって肝臓に損傷が起きる病気です。

アルコールも参照のこと。)

  • 一般に、飲酒の量、頻度、期間によって肝傷害のリスクと重症度が決まります。

  • 最初は無症状ですが、次第に発熱、黄疸、疲労がみられるようになり、肝臓は圧痛や痛みが生じて大きくなり、やがて消化管出血や脳機能低下などの、より深刻な問題が現れます。

  • 飲酒が問題かどうかを確かめるため、医師は患者に質問票を渡して情報を集めたり、患者がどれくらい飲酒しているかを家族に尋ねたりします。

  • 過度の飲酒歴がある患者に肝疾患の症状がみられる場合、医師は血液検査により肝臓を評価し、ときに肝生検を行います。

  • 最善の治療法は禁酒ですが、これは非常に難しく何らかの支援を要し、しばしばリハビリテーションプログラムへの参加が必要になります。

米国では毎年、成人の約8.5%がアルコール使用障害を有していると推定されています。女性の約2倍の男性が、アルコールを乱用しています。

ほとんどのアルコールは、消化管で吸収された後、肝臓で処理(代謝)されますが、アルコールが処理される際には、肝臓に損傷を与える物質が生成されます。飲酒量が多いほど、肝臓への損傷は大きくなります。アルコールによって肝臓が損傷しても、軽いものであれば回復することがあるため、肝臓はしばらく機能し続けます。肝臓は全体の約80%が損傷しても、正常に機能することができます。しかし、飲酒を続けると、肝傷害が進行して最終的に死に至ることがあります。飲酒をやめれば、部分的に回復することがあり、そのような人は長く生存できる可能性があります。

アルコールの乱用により、次の3種類の肝傷害が発生します。発生する順序も、たいてい以下の通りです。

  • 脂肪の蓄積(脂肪肝または脂肪変性):最も症状が軽く、ときに消失することもあります。過度の飲酒をする人の90%以上にみられます。

  • 炎症(アルコール性肝炎):約10~35%の人に肝臓の炎症が起こります。

  • 肝硬変:約10~20%の人が肝硬変を発症します。肝硬変では、肝臓の正常組織の大部分が機能を果たさない瘢痕組織に恒久的に置き換えられます(線維化と呼ばれます)。その結果、肝臓の内部構造が破壊され、肝臓は正常に機能しなくなります。最終的には、肝臓が縮小するのが一般的です。いくつかの症状がみられ、また、アルコール性肝炎によるものと同じ症状がみられることがあります。肝硬変は回復しません。

肝硬変は、以下の重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

  • 腹水体液が腹部に貯留して、腹部が膨隆することがあります。

  • 肝性脳症損傷の結果、有害な老廃物を血液から除去する肝臓の能力が低下することで、脳の機能に異常が生じることがあります。患者には眠気や錯乱がみられます。

  • 門脈圧亢進症肝臓に向かう静脈(門脈)が狭窄または閉塞し、門脈の血圧が上昇することがあります。門脈圧亢進症は、腹水、消化管の出血、脾臓の腫大(脾腫)のほか、ときに肝性脳症の原因または一因になります。

  • 消化管の出血門脈圧亢進症のため、食道や胃の静脈が拡張し、そこから出血が起きることがあります。患者は血を吐いたり(吐血)、血の混じった便や黒いタール状の便がみられたり(血便)することがあります。

  • 肝不全肝臓の機能が次第に低下し、様々な合併症や全身の健康状態の悪化をきたします。肝不全は最終的に腎不全につながる可能性があります。

  • 凝固障害:損傷した肝臓では、血液を固める(凝固させる)物質が十分に作られないため、出血や皮下出血が起きやすくなります。またアルコールは、血液凝固を助ける血小板の数や活動性を減少させることがあります。門脈圧亢進症は脾臓の腫大につながり、その結果、血小板の数がさらに減少します。

  • 脾腫門脈圧亢進症により脾臓が腫大します(脾腫と呼ばれる病態)。腫大した脾臓は、普段より多くの白血球と血小板を取り込んで破壊します。その結果、感染および出血のリスクが増大します。

危険因子

以下に該当する人は、アルコール性肝疾患を発症する可能性が高くなります。

  • 大量に飲酒する

  • 長期間(通常は8年以上)飲酒している

  • 女性である

  • アルコール性肝疾患にかかりやすい遺伝的素因がある

  • 肥満である

飲酒

自分の飲酒量が分かれば、アルコール性肝疾患のリスクをより正確に理解できます。飲酒量を知るためには、アルコール飲料毎のアルコール含有率を把握しておく必要があります。以下のように、飲料の種類によってアルコール含有率は異なります。

  • ビール:約2~7%

  • ワイン:約10~15%

  • 蒸留酒:約40~45%

アルコール飲料が1回に提供されるときの標準的な量は、飲料の種類によって大きく異なりますが、それぞれの1回分に含まれるアルコールの量はおおむね同じです。

  • 缶1本のビール360ミリリットル:約4~24ミリリットル

  • グラス1杯のワイン150ミリリットル:約20~30ミリリットル

  • ワンショットの蒸留酒45ミリリットル(または一般的な混合酒):約15ミリリットル

蒸留酒では、アルコール濃度をプルーフで表示することがよくあります。プルーフはアルコールの割合の約2倍です。例えば、80プルーフの蒸留酒には、40%のアルコールが入っています。

男性の場合、1日当たりアルコール約45ミリリットル以上の飲酒を10年以上続けると(約90ミリリットル以上飲む場合は特に)、リスクが高まります。1日当たりアルコール45ミリリットルの飲酒は、ビールなら約3缶、ワインならグラス3杯、蒸留酒なら3ショット飲むことを意味します。肝硬変が発生するには、男性では通常、10年以上にわたって1日当たりアルコール約90ミリリットル以上の飲酒を続ける必要があります。1日当たりアルコール90ミリリットルの飲酒は、ビールなら6缶、ワインならグラス5杯、蒸留酒なら6ショットを飲むことを意味します。20年以上にわたって1日当たりアルコール240ミリリットル以上の飲酒を続ける男性では、約半数が肝硬変を発症します。

一般に、飲酒量が多いほど、また飲酒期間が長いほど、アルコール性肝疾患のリスクは高くなります。しかし、長期間にわたり大量に飲酒する人のすべてが、肝疾患を発症するわけではありません。したがって、発症には他の要因も関与しています。

性別

女性では、男性よりアルコールによる肝傷害が生じやすく、この傾向は体格の差で補正した場合にも認められます。女性は、男性の約半分の飲酒量で肝傷害のリスクにさらされます。つまり、女性は1日当たりアルコール22.5~45ミリリットル以上の飲酒でリスクにさらされます。女性の消化器系は、アルコールを処理する能力が低く、肝臓に到達するアルコールの量が増えるため、リスクが高くなると考えられています。

遺伝的素因

アルコール性肝疾患は、家族内の複数の人が発症することが多いため、遺伝的素因が関与していると考えられます。同じ家族であれば、アルコールを処理する能力が低い遺伝子を共有している可能性があります。

肥満

肥満の人は、アルコールによる肝傷害を起こしやすい傾向にあります。

その他の要因

肝臓への鉄の蓄積やC型肝炎のある人でも、アルコールによる肝傷害が起こりやすくなります。

ヘモクロマトーシス(鉄が過剰に吸収される遺伝性疾患)の人や、鉄を含む酒精強化ワイン(フォーティファイド・ワイン)を飲む習慣がある人では、鉄が蓄積することがあります。しかし、鉄の蓄積量は鉄の摂取量とは必ずしも比例しません。

飲酒量が多い人の25%以上はC型肝炎にもかかっていますが、大量の飲酒とC型肝炎の組合せは肝硬変のリスクを大幅に高めます。

鉄が肝臓に蓄積している人、またはC型肝炎を6カ月以上患っている人では、肝臓がん(肝細胞がん)のリスクが高まります。

症状

飲酒量が多い人では、通常は30代または40代で最初の症状が現れ、それから約10年後に、より重い症状が現れる傾向があります。

脂肪肝は、多くの場合無症状です。3分の1の患者では、肝臓は腫大して滑らかになりますが、圧痛は通常ありません。

アルコール性肝疾患がアルコール性肝炎に進行するにつれて、症状は軽いものから始まり生命を脅かすまでに至ることがあります。発熱、黄疸、圧痛と痛みを伴う肝臓の腫大などがみられます。疲労を覚えることもあります。

大量に飲酒すると、手のひらの線維組織の束が緊張して指が曲がり(デュピュイトラン拘縮)、手のひらが赤くなる(手掌紅斑)ことがあります。上半身の皮膚に、くものような形に見える細い血管(くも状血管腫)が出現することがあります。頬にある唾液腺が肥大し、筋肉が萎縮することがあります。末梢神経(脳と脊髄以外の神経)が損傷し、感覚や筋力が失われることもあります。こういった症状は、太ももや上腕よりも手足に強く現れます。

男性が大量に飲酒すると、肌が滑らかになる、乳房が大きくなる、陰毛の生え方が変化するなど、女性のような特徴が現れることがあります。精巣が萎縮することもあります。

膵臓は炎症を起こし(膵炎)、激しい腹痛や嘔吐が生じることがあります。

アルコールは、カロリーはあるものの栄養価が低く、食欲を減退させるため、過度の飲酒は栄養不良を招く可能性があります。また、アルコールによって生じた損傷は、栄養素の吸収と代謝を妨げる可能性があります。患者には、葉酸、チアミン、その他のビタミン、またはミネラルの欠乏がみられることがあります。特定のミネラルの欠乏は、筋力低下やふるえを引き起こします。また栄養不良は、末梢神経の損傷の原因、またはその一因となると考えられています。

大量に飲酒する人では、チアミンの欠乏からウェルニッケ脳症に至り、錯乱、歩行困難、眼の症状が現れることがあります。迅速に治療しなければ、ウェルニッケ脳症からコルサコフ症候群、昏睡、ときに死に至ることさえあります。コルサコフ症候群では記憶障害および錯乱がみられます。

出血が消化管で生じ、また赤血球を作るのに必要な栄養素(特定のビタミンや鉄)が不足するために、貧血になることもあります。

肝硬変の合併症(上記の序論を参照)に起因する症状がみられることもあります。

肝硬変が起きると、肝臓は萎縮するのが通常です。

アルコール乱用によって肝硬変を起こした人では、10~15%が肝臓がんを発症します。

診断

  • 医師による症状の評価

  • 大量飲酒歴

かなりの量の飲酒をする患者に肝疾患の症状がみられる場合、アルコール性肝疾患が疑われます。

医師は、飲酒の問題かどうかを確かめるために、患者に質問票を渡して情報を収集したり、家族にも患者の飲酒量を尋ねることがあります( アルコール乱用のスクリーニング)。

アルコール性肝疾患を確実に診断できる検査はありませんが、この病気が疑われる場合は、血液検査を行って肝臓を評価します(肝機能検査)。血算により、血小板数の低下や貧血もチェックします。

肝臓の画像検査は、日常的に行う検査ではありませんが、別の理由で超音波検査やCT検査が行われた際に、脂肪肝や門脈圧亢進症の徴候、脾臓の腫大、または腹部への体液の貯留が認められることがあります。

肝臓の硬さを測定するために、超音波エラストグラフィーと呼ばれる方法が用いられることがあります。肝臓が硬ければ、線維化が示唆されます。この検査では、肝臓に圧力または振動を加えながら、超音波検査を行います。この検査により、しばしば生検が不要になります。

診察と検査結果から、アルコール性肝疾患が示唆されたとしても、医師は治療しうるその他の肝疾患、特にウイルス性肝炎について、定期的にチェックします。肝傷害の他の原因が併存することもあり、その場合は治療が必要です。

肝生検は、診断が不確実である場合や、肝疾患に複数の原因があると考えられる場合に行われることがあります。肝生検を行うことで、肝疾患の存在を確認し、アルコールが原因である可能性が高いという証拠を示し、肝傷害の種類を決定できます。鉄が肝臓に蓄積しているかどうかを判定することもできます。鉄の蓄積がみられれば、ヘモクロマトーシスの可能性があります。

肝硬変があれば、肝臓がんの検査を行います。具体的には、超音波検査やアルファ-フェトプロテインを測定する血液検査などが行われますが、アルファ-フェトプロテインの測定値は、肝臓がん患者の約半数で高くなります。

予後(経過の見通し)

予後は線維化と炎症の程度によって決まります。

線維化が起きていない患者が飲酒をやめれば、脂肪肝や炎症は回復する可能性があります。脂肪肝は6週間以内に完全に解消することがあります。線維化や肝硬変があると、多くの場合、回復は望めません。

特定の生検および血液検査の結果は、予後をより正確に予測するのに役立ちます。公式やモデル(様々な検査結果を組み合わせる)を用いて、予後の予測に役立てることもあります。

肝硬変やその合併症(腹部への体液の貯留や消化管の出血など)を発症すると、予後は悪くなります。このような合併症がある場合、発症から5年後に生存している人は、わずか半数です。飲酒をやめた患者は、飲酒をやめなかった患者より、余命が長くなる傾向があります。

治療

  • 飲酒をやめること(禁酒)とその支援

  • 症状を改善する治療と合併症の治療

  • 肝傷害の治療

禁酒

通常、禁酒が最善の治療法になります。肝移植を除くと、禁酒はアルコール性肝疾患の進行を遅らせたり回復させたりする唯一の治療法です。さらに、禁酒はすべての患者が行える治療法であり、副作用がありません。

禁酒には困難が伴うため、患者に意欲を起こさせ、行動を変える手助けをするための対策が講じられます。例えば、正式なリハビリテーションプログラムの一環として行われる行動療法や精神療法(対話療法)、自助グループ(アルコホーリクス・アノニマスなど)、かかりつけ医によるカウンセリングなどがあります。飲酒を控えたいと思う理由を探求し、それを患者が自ら明らかにするのを支援する治療法(動機づけ強化療法と呼ばれます)も用いられることがあります。

薬剤

薬剤が用いられることもありますが、行動療法や心理社会療法を補完する目的での使用に限られます( 解毒とリハビリテーション)。一部の薬剤(ナルトレキソン、ナルメフェン、バクロフェン、アカンプロサートなど)は、離脱症状(禁断症状ともいいます)やアルコールへの渇望を軽減するのに役立ちます。ジスルフィラムは、服用後にアルコールを飲むと不快な症状(紅潮など)が現れるため、禁酒に役立ちます。しかし、ジスルフィラムにより断酒が促進されるかどうかは証明されていないため、特定の患者にしか推奨されていません。

症状を改善する治療と合併症の治療

アルコール性肝疾患に起因する症状と、飲酒をやめると生じる離脱症状に対する治療を行います。

禁酒を始めてから最初の数日間は栄養価の高い食事とビタミンサプリメント(特ビタミンB群)が重要です。これらの治療は栄養不良を是正することで、脱力、ふるえ、感覚の消失や筋力の低下、貧血、ウェルニッケ脳症などの合併症を予防するのに役立ちます。サプリメントはまた、全般的な健康状態の改善にも役立ちます。炎症がひどい場合は、患者を入院させて、チューブを通して十分な栄養を補給しなければならないことがよくあります。

離脱症状(禁断症状ともいいます)の治療には、ベンゾジアゼピン系薬剤(鎮静薬)が使用されます( 緊急の治療)。しかし、アルコール性肝疾患が進行すると、鎮静薬は肝性脳症を誘発する可能性があるため、使用しないか、低用量での投与にします。

肝傷害の治療

まず禁酒を試みます。一部の抗酸化剤(S-アデノシル-L-メチオニン、ホスファチジルコリン、メタドキシンなど)や炎症を抑える薬など、いくつかの薬が有用なことがありますが、さらなる研究が必要です。マリアアザミ(ミルクシスル)やビタミンA、Eなど、抗酸化作用のある栄養補助食品がいろいろ試されていますが、効果はありません。

コルチコステロイドは、肝臓の重度の炎症を緩和するのに役立つことがあり、患者に感染症、消化管の出血、腎不全、または膵炎がない場合は、安全に使えます。

損傷がひどければ、肝移植を行うことがあります。移植をすると患者は、より長く生きられます。しかし、およそ半数の患者は移植後に再び飲酒を始めるため、ほとんどの移植プログラムでは、禁酒を6カ月間続けることが条件とされています。

さらなる情報

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