食道静脈瘤

執筆者:Parswa Ansari, MD, Hofstra Northwell-Lenox Hill Hospital, New York
レビュー/改訂 2021年 4月
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食道静脈瘤は、食道にある静脈が拡張したもので、大出血を引き起こす可能性があります。

  • 食道静脈瘤は、肝臓内とその周囲の血管の血圧が高い状態(門脈圧亢進症)によって引き起こされます。

  • 食道静脈瘤は、通常は症状を引き起こしませんが、自然に出血することがあります。

  • 出血は非常に重度となることがあり、ショックを引き起こしたり、まれですが死に至ることがあります。

  • 食道静脈瘤の診断と治療は内視鏡検査で行います。

静脈瘤は、胃の上部で食道がつながっている場所の近くにできることもあります。これは胃静脈瘤と呼ばれ、同様の症状を引き起こします。

食道静脈瘤の原因

食道静脈瘤の原因は以下の通りです。

門脈は、腸や脾臓、膵臓、胆嚢などその他の腹部臓器から肝臓に血液を送る太い静脈です。門脈の血圧が高い状態を、門脈圧亢進症といいます。門脈圧亢進症の最も一般的な原因は、肝硬変による肝臓の瘢痕(はんこん)化です。

肝臓かんぞう胆嚢たんのうのようす

門脈圧亢進症があると、肝臓を迂回する新しい静脈(側副血管と呼ばれます)が形成されます。これらの静脈は、門脈の血管と肝臓から血液を体循環に運ぶ静脈とを直接つなぎます。側副血管は、特定の部位に形成されます。最も重要な部位は食道の下端と胃の上部です。これらの部位では、血管が拡張して蛇行して、食道静脈瘤や胃静脈瘤を形成します。拡張した血管はもろく、出血が起きやすくなっています。通常、出血の明らかなきっかけはありません。

食道静脈瘤の症状

食道静脈瘤の患者では通常、静脈瘤の出血が始まるまで症状はみられません。出血が始まると、鮮紅色の吐血がみられ、ときに大量に吐血します。この出血には痛みが伴いません。大量に失血した人では、ふらつき、脱力感、発汗などのショックの徴候がみられることがあります。そうした人では、心拍が速くなったり血圧が低下したりすることがあります。

食道静脈瘤の診断

  • 内視鏡検査

慢性肝疾患、特に肝硬変であることが分かっている人で吐血が始まった場合、食道静脈瘤からの出血が疑われます。その場合、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を口から挿入して、食道を観察します。静脈瘤がみられた場合は、内視鏡を介して出血を止めるための治療を行うこともあります。

食道静脈瘤(食道にある静脈の拡張)
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この写真には、食道静脈瘤(食道にある静脈の拡張)が写っています(矢印)。
Image provided by David M.Martin, MD.

食道静脈瘤の治療

  • 輸液およびときに輸血

  • 出血を止めるための内視鏡治療

  • オクトレオチドの静脈内投与

  • ときに門脈大循環短絡術

静脈瘤からの出血がある場合、通常は失血を補うために輸液が必要です。失血量が多いときには、輸血が必要な場合があります。

内視鏡検査では、出血を止めるための治療を行うことができます。ほとんどの場合、静脈瘤をゴムバンドでしばってふさぎます(内視鏡的結紮術と呼ばれる処置)。ときに静脈瘤をふさぐ物質を静脈瘤に注入します(硬化療法と呼ばれる処置)。それと同時に、オクトレオチドまたはバソプレシンという薬剤を静脈から投与して止血の助けとすることがあります。

これらの治療を行っても出血が続く場合は、門脈大循環短絡術と呼ばれる処置を行うことがあります。この処置では、門脈またはその分枝を全身(体循環)の静脈につなぎ合わせ、通常は肝臓に向かう血液のほとんどが別のルートをたどって肝臓を迂回するようにします。こうして血液が迂回すること(シャント)により門脈の血圧が低下し、出血を抑えやすくなります。門脈大循環短絡術には、様々な方法があります。経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)と呼ばれる方法では、X線で位置を確認しながら針のついたカテーテルを首の静脈に挿入し、それを肝臓の静脈まで通します。カテーテルを用いて、門脈(またはその分枝の1つ)を肝静脈の1つに直接つなぐ道(シャント)を作ります。あまり一般的ではありませんが、外科手術として、門脈大循環短絡術を行う場合もあります。

短絡術を待っている間に、重度の出血によって生命が脅かされている場合は、バルーンがついたチューブを食道に挿入する場合があります。バルーンを膨らませて静脈瘤を圧迫し、出血を抑えます。このチューブは一時的な対策にしかなりせん。

治療が成功した後でも、特に肝疾患がまだ活動性の場合には、食道静脈瘤が再び出血する可能性があります。門脈圧亢進症のコントロールに役立てるためにベータ遮断薬などの薬が投与されることがありますが、問題が続く人では肝移植が必要となることもあります。

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