原因は不明ですが、感染が疑われています。
熱帯スプルーの典型的な症状としては、貧血、色の薄い便、慢性の下痢、体重減少などがあります。
診断は、この疾患が起こりやすい地域の住民やその地域に最近旅行した人にみられる症状に基づいて下されます。
抗菌薬のテトラサイクリンによる治療が行われます。
熱帯性スプルーは、主にカリブ海地方、南インド、東南アジアでみられます。現地住民も旅行者(その地域に1カ月以上滞在)も発症しますが、小児はまれにしかかかりません。米国でも、この病気がまれに報告されています。世界では、この数十年間で発生率が減少しています。原因は不明ですが、感染性の原因が示唆される科学的根拠があります。
熱帯性スプルーの症状
明るい色で柔らかく、異常な悪臭を放つ脂ぎった大量の便(脂肪便)、慢性下痢、発熱、全身のだるさ(けん怠感)、体重減少が熱帯性スプルーに典型的な症状です。その他、特定の栄養素の吸収不良による症状も起こることがあります。ビタミンB2が欠乏すると、舌がただれます。 貧血 貧血の概要 貧血とは、赤血球の数が少ない状態をいいます。 赤血球には、肺から酸素を運び、全身の組織に届けることを可能にしているヘモグロビンというタンパク質が含まれています。赤血球数が減少すると、血液は酸素を十分に供給できなくなります。組織に酸素が十分に供給されないと、貧血の症状が現れます。... さらに読む は通常、 鉄の欠乏 鉄欠乏症 鉄欠乏症は、 貧血、赤血球の数が少ない状態です。 鉄欠乏症は通常、成人では失血(月経による出血を含む)によって起こりますが、小児と妊婦では食事に含まれる鉄分の不足から起こることもあります。 貧血が生じ、肌が青白くなって筋力低下や疲労を感じるようになります。 診断は、症状と血液検査の結果に基づいて下されます。 医師は出血源を探し、見つけたら治療します。 さらに読む 、 ビタミンB12の欠乏 ビタミンB12欠乏症 ビタミンB12欠乏症は、サプリメントを摂取しない完全な菜食主義者に発生したり、吸収障害の結果として発生することがあります。 貧血が起こり、蒼白、筋力低下、疲労が生じ、重度の場合には息切れやめまいも起こります。 重度のビタミンB12欠乏症によって神経の損傷が起きることがあり、手足のチクチク感や感覚消失、筋力低下、反射消失、歩行困難、錯乱、認知症が起こります。 ビタミンB12欠乏症の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む 、または 葉酸の欠乏 葉酸欠乏症 葉酸欠乏症はよくみられます。体は少量の葉酸しか蓄えていないため、葉酸が少ない食事を続けていると、数カ月以内に葉酸欠乏症になります。 生の葉野菜や柑橘類を十分に摂取しないと、葉酸欠乏症になることがあります。 貧血が生じて、疲労、蒼白、易怒性、息切れ、めまいが現れることがあります。 重度の欠乏症の場合、舌が赤くなって痛み、下痢となり、味覚が低下し、抑うつ、錯乱、認知症が生じることがあります。... さらに読む が原因で起こり、疲労および筋力低下を引き起こします。
熱帯性スプルーの診断
生検
血液検査
熱帯性スプルーが多く発生する地域の住民やその地域に最近旅行した人に貧血や吸収不良の症状がみられる場合に、医師は熱帯性スプルーの診断を考慮します。
内視鏡(ライトとカメラを搭載した観察用の柔軟な管状の機器で先端まで小さなハサミを挿入できる)を用いて小腸から組織を採取し、その組織を顕微鏡で調べる検査(生検)を行うことで、診断が確定されます。医師は患者の小腸から特徴的な変化をいくつか特定することができます。通常は、寄生虫や細菌が原因ではないことを確認するために便のサンプルが分析されます。
低栄養かどうかの判定を助けるために、血液検査が行われます。
熱帯性スプルーの治療
テトラサイクリン
葉酸とビタミンB12
熱帯性スプルーは通常、治療により完全に回復します。
熱帯性スプルーが疑われる人には、抗菌薬のテトラサイクリンによる治療が行われます。この薬は最長6カ月間投与されます。
栄養素の補助(特に葉酸のサプリメント投与とビタミンB12の注射)が数週間にわたり行われます。必要に応じて他の栄養素の補充も行われます。