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アカラシア

(噴門けいれん、巨大食道症)

執筆者:

Kristle Lee Lynch

, MD, Perelman School of Medicine at The University of Pennsylvania

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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アカラシアとは、食道のリズミカルな収縮(ぜん動)がみられないか弱くなり、下部食道括約筋が正常に弛緩(しかん)しなくなり、下部食道括約筋の静止圧が上昇する病気です。

  • この病気の原因は通常は不明ですが、ウイルスにさらされた後に発生することがあります。

  • アカラシアの主な症状は嚥下困難です。

  • 診断は内圧検査と食道造影検査の結果に基づいて下されます。

  • 治療の目標は症状の緩和であり、具体的には、下部食道括約筋をバルーンで拡張する、括約筋の筋線維を切断する、ときにボツリヌス毒素を注射するなどの方法があります。

食道 のどと食道 のど(咽頭[いんとう]、 のどを参照)は口の下後方に位置しています。口から飲み込まれた飲食物はのどを通過します。飲食物を飲み込む運動(嚥下[えんげ])は、特に意識しなくても始まり自動的に継続します。嚥下時には、小さな筋皮弁(喉頭蓋[こうとうがい])が閉じて、飲食物が肺に向かう気管に入らないように防いでいます。口の天井の後方部分(軟口蓋[なんこうがい])は上にもち上がって、飲食物が鼻に入らないように防いでいます。口蓋垂(こうがいすい)は、... さらに読む は、のど(咽頭)から胃までをつなぐ中空の管です。(食道の概要 食道の概要 食道は、のど(咽頭)から胃までをつなぐ中空の管です。食べものは単純に食道を落ちて胃に入るわけではありません。食道の壁は、波のように進む筋肉のリズミカルな収縮(ぜん動)によって、食べものを胃まで進めます。 のどと食道の境界のすぐ下には、上部食道括約筋と呼ばれるリング状の筋肉があります。食道と胃の境界の少し上にも、下部食道括約筋と呼ばれるリン... さらに読む も参照のこと。)下部食道括約筋は輪状の筋肉で、食べものや胃酸が食道を逆流して上がって行かないように、食道の下部を閉じた状態に保っています。何かを飲み込むと、正常であればこの括約筋が弛緩(しかん)して、食べものが胃に入れるようになります。

食道の働き

飲み込んだ食べものは、口からのど(咽頭)へと移動します(1)。食べものが食道に入るように上部食道括約筋が開き(2)、食道ではぜん動という波のような筋肉の収縮によって食べものが先へと送られます(3)。続いて食べものは下部食道括約筋を通り(4)、胃に入ります(5)。

食道の働き

アカラシアはどの年齢層でも起こりますが、通常は20~60歳の間にほとんど気づかないうちに始まり、その後何カ月も、または何年もかけて徐々に進行します。

アカラシアの原因

アカラシアは、食道のリズミカルな収縮を調節している神経の機能不全(除神経といいます)の結果生じます。除神経の原因は通常は不明ですが、ウイルス性および自己免疫性の原因が疑われています。ある種の腫瘍が、下部食道括約筋を直接狭くしたり(狭窄[きょうさく])、食道の神経に浸潤することで、アカラシアのような障害を引き起こすことがあります。自律神経節(神経細胞の集まり)を破壊する感染症であるシャーガス病 シャーガス病 シャーガス病は、クルーズトリパノソーマ Trypanosoma cruziという原虫による感染症で、サシガメ(アサシンバグ;サシガメ類の昆虫)に刺咬されることで感染します。 原虫は刺された傷や眼の周囲の組織から体内に侵入します。 侵入部位(刺された傷または眼)の周りが腫れたり、発熱がみられたりすることがあります。 その後、無症状の期間が長く続いた後に、何年も経過してから重篤な合併症、特に心臓や消化器の障害が発生することがあります。... さらに読む シャーガス病 でも、アカラシアが起きることがあります。

症状

下部食道括約筋がきつく締まった状態になり、結果としてその上の食道が大きく拡張します。この拡張は、様々な症状に関与します。主な症状は嚥下困難 嚥下困難 飲み込みに障害が生じること(嚥下[えんげ]困難)があります。嚥下困難では、食べものや飲みものがのど(咽頭)から胃へと正常に移動しません。のどと胃をつなぐ管(食道)の途中で食べものや飲みものが動かなくなったように感じます。嚥下困難をのどのしこり(球感覚)と混同してはならず、球感覚ではのどにしこりがある感じがしますが、飲み込みに支障はありません。 嚥下困難によって、口腔分泌物や飲食物を肺に吸い込む誤嚥(ごえん)が生じる可能性があります。誤嚥... さらに読む で、液体も固形物も飲み込みにくくなります。まれですが、嚥下(えんげ)時に、あるいは明らかな理由なしに、胸痛 胸痛と背部痛 胸の中央部や背中の上部の痛みは、食道の病気または心臓や大動脈の病気( 胸痛)に起因することがあります。症状は類似していることがあります。胃酸が食道内に湧き上がって起こる胃食道逆流症(GERD)は、胸骨の下に灼熱感や圧迫感を起こすことがあり、これらは心疾患による痛みと似ています。食道のけいれんやその他の食道の筋肉障害は重度の絞扼(こうやく)感を起こすことがあり、やはり心疾患による痛みと似ています。... さらに読む が起こることもあります。アカラシアの患者の約3分の1では、未消化の食べものの吐き戻し(逆流 逆流と反芻 逆流とは、吐き気がなく、腹部の筋肉も強く収縮させていないのに、食道や胃から食べものを吐き戻すことです。反芻(はんすう)とは、明らかな身体的原因がない逆流のことです。 正常であれば、胃と食道の間にある輪状の筋肉(括約筋)が逆流の防止を助けています。胃から酸が湧き上がってくることにより、酸っぱい味や苦い味がする物質の逆流が起こることがあります。食道の狭窄部や閉塞部から、あるいはツェンカー憩室と呼ばれる食道内にできる異常な袋状の構造物から、粘... さらに読む )がみられます。就寝中に逆流が起こると、逆流した食べものを肺に吸い込んでしまうことがあり、それによってせき、気道の感染症、気管支拡張症 気管支拡張症 気管支拡張症は、気道の壁が損傷を受けて、呼吸の管や気道の一部(気管支)が広がったまま元に戻らない状態(拡張症)です。 最も一般的な原因は、重度の呼吸器感染症や繰り返す呼吸器感染症で、これは肺または免疫系にすでに異常がある人によくみられます。 ほとんどの患者に慢性的なせきがみられ、せきとともに血が出たり、胸痛が現れたり、肺炎を繰り返したりす... さらに読む 誤嚥性肺炎 誤嚥性肺炎と化学性肺炎 誤嚥性肺炎は、口腔内の分泌物、胃の内容物、またはその両方を肺に吸い込んだ場合に発生する肺の感染症です。化学性肺炎は、肺に有毒な物質を吸い込んだ場合に起こる肺の炎症です。 症状には、せきや息切れなどがあります。 医師は、患者の症状や胸部X線検査に基づいて診断を下します。 治療法や予後は、吸い込んだ物質の種類によって異なります。 誤嚥性肺炎と化学性肺炎は、どちらも肺を刺激する物質を吸入して起こる肺の炎症であるため、しばしばまとめて扱われます... さらに読む が起こることがあります。

軽度から中等度の体重減少もみられます。顕著な体重減少がみられる場合、特に高齢者で嚥下困難の症状が急に現れた場合は、医師は通常、食道胃接合部(食道と胃がつながる部分)の腫瘍を疑って探します。

診断

  • 内圧検査(マノメトリー)

  • 食道造影検査

通常、細いチューブを食道に挿入して、食道と下部食道括約筋の圧力を測定します(食道内圧検査 内圧検査(マノメトリー) 内圧検査は、表面に沿って圧力計を複数備えたチューブを消化管に入れて圧力を測定する検査法です。この器具(マノメーター)は、食道、胃、小腸の最初の部分、直腸に入れることができます。マノメーターを用いることで、消化管の収縮が正常かどうか、または肛門括約筋の圧力が正常かどうかを判断できます。軽い不快感を除いて、合併症は非常にまれです。 さらに読む )。多くの場合、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)で食道を調べます(食道鏡検査 内視鏡検査 内視鏡検査とは、柔軟な管状の機器(内視鏡)を用いて体内の構造物を観察する検査です。チューブを介して器具を通すことができるため、内視鏡は多くの病気の治療にも使うことができます。口から挿入する内視鏡検査では、食道(食道鏡検査)、胃(胃鏡検査)、小腸の一部(上部消化管内視鏡検査)が観察できます。肛門から挿入する内視鏡検査では、直腸(肛門鏡検査)、大腸下部と直腸と肛門(S状結腸内視鏡検査)、大腸全体と直腸と肛門(大腸内視鏡検査)が観察できます。... さらに読む )。食道鏡検査の際、症状が食道下端のがんによるものでないことを確認するために、生検(切除した組織のサンプルを顕微鏡で調べる)を行うことがあります。

食道胃接合部のがんなど、一部の病気がアカラシアに類似した症状を引き起こすことがあることから、そのような別の病気の可能性を否定するために追加の検査を行うことがあります。食道胃接合部のがんは、胸部と腹部のCT CT検査とMRI検査 CT検査( CT(コンピュータ断層撮影)検査)とMRI検査( MRI(磁気共鳴画像)検査)は、腹部臓器の大きさや位置を調べるのに適しています。さらに、これらの検査では悪性腫瘍(がん)や良性腫瘍(がんではない腫瘍)もしばしば検出されます。血管の変化も検出できます。虫垂や憩室などの炎症も通常は明確に分かります。ときに、X線照射や手術のガイド役としてこれらの検査を用いることもあります。... さらに読む 検査や超音波 超音波検査 超音波検査では、超音波を用いて内臓の画像を描き出します( 超音波検査)。超音波検査により、肝臓や膵臓(すいぞう)など多くの内臓の形や大きさが確認でき、嚢胞(のうほう)や腫瘍などの内臓の中の異常部位も発見できます。また、腹腔内の液体(腹水)も確認できます。腹壁にプローブを当てる超音波検査は、消化管の粘膜や壁を調べる方法としては不適切です。しかし、超音波内視鏡検査の場合は、内視鏡の先端にプローブがあるため、消化管壁や一部の腹部臓器がより明確... さらに読む 超音波検査 内視鏡検査(先端に小さな超音波プローブを装備した内視鏡を口から胃に挿入)によって診断することができます。

治療

  • バルーン拡張術または筋層切開術

  • ときにボツリヌス毒素注射

食道のぜん動を復活させる治療法はありません。治療では、下部食道括約筋の圧力を下げることにより症状の緩和を目指します。

アカラシアの症状を緩和するための治療選択肢は主に2つあり、どちらも効果的で、同様の結果が得られます。

1つ目の選択肢はバルーン拡張術です。この選択肢では、大きなバルーンを食道内で膨らませることで括約筋を機械的に拡張させます。この手技は85%以上の確率で効果が得られますが、再び拡張が必要になることがあります。アカラシア患者の2%未満で、拡張術中に食道破裂が起こります。食道が破裂すると外側の胸部に重度の炎症(縦隔炎 縦隔炎 縦隔炎は、縦隔(心臓、胸腺、一部のリンパ節のほか、食道、大動脈、甲状腺、副甲状腺の一部が入っている胸部の空間)に起きる炎症です。 縦隔炎は通常、食道の裂傷または胸部の手術が原因で起こります。 強い胸痛、息切れ、発熱などの症状がみられます。 診断には、胸部X線検査またはCT(コンピュータ断層撮影)検査が必要です。 治療には抗菌薬を用い、ときに手術が必要になります。 さらに読む )を起こし、適切に治療しなければ死亡することもまれにあります。破裂した食道壁を閉鎖する緊急手術が必要になります。

2つ目の治療選択肢は筋層切開術です。この選択肢では、下部食道括約筋の筋線維を切断する手術を行います。この手術は、通常は腹腔鏡 腹腔鏡検査 腹腔鏡検査とは内視鏡( 内視鏡検査)による腹腔内の検査のことで、通常は全身麻酔( 全身麻酔)をかけて行われます。適切な部分の皮膚を消毒薬で洗浄した後、小さく切開します(通常はへそ)。次に、内視鏡を腹腔に挿入します。腹腔鏡検査では、腹腔内のほぼすべての臓器を観察でき、腫瘍やその他の異常を調べたり、組織のサンプルを採取したり、手術を行うことさえ可能です。この検査の合併症としては、出血、感染症、穿孔(せんこう)などがあります。 さらに読む または(頻度は少ないものの)胸腔鏡 胸腔鏡検査 胸腔鏡検査では、胸腔鏡を介して肺の表面や胸腔を観察します。胸腔鏡は特定の外科手術のために用いられることもあります。胸腔鏡を用いた手術は胸腔鏡下手術(VATS)と呼ばれます。肺の組織サンプルを採取する最も一般的な生検の方法は、胸腔鏡によるものです。胸腔鏡は、胸水(胸腔内に液体がたまった状態)の治療にも使用されます。 胸腔鏡下手術は一般に全身麻酔下で行われますが、胸腔鏡検査であれば、目が覚めた状態で鎮静薬だけを投与して行われることもあります... さらに読む を用いて行います。内視鏡 内視鏡検査 内視鏡検査とは、柔軟な管状の機器(内視鏡)を用いて体内の構造物を観察する検査です。チューブを介して器具を通すことができるため、内視鏡は多くの病気の治療にも使うことができます。口から挿入する内視鏡検査では、食道(食道鏡検査)、胃(胃鏡検査)、小腸の一部(上部消化管内視鏡検査)が観察できます。肛門から挿入する内視鏡検査では、直腸(肛門鏡検査)、大腸下部と直腸と肛門(S状結腸内視鏡検査)、大腸全体と直腸と肛門(大腸内視鏡検査)が観察できます。... さらに読む を用いて行うこともあります。筋層切開術の成功率も85%以上です。

バルーン拡張術や筋層切開術の代わりに、ボツリヌス毒素を下部食道括約筋に注射する方法もあります。この治療法は、バルーン拡張術とほぼ同程度の効果がありますが、緩和効果が6カ月から1年しか続かない場合があります。

特定の薬が括約筋の弛緩に役立つことがあります。そうした薬の有効性には限界がありますが、再度バルーン拡張術やボツリヌス毒素注射を行うまでの期間を延ばせることがあります。最も一般的な薬は、硝酸薬(食事前に舌の下に置く硝酸イソソルビドなど)またはカルシウム拮抗薬(ニフェジピンなど)です。

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