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過敏性腸症候群(IBS)

執筆者:

Stephanie M. Moleski

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2017年 3月
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過敏性腸症候群(IBS)は消化管の病気で、腹痛と便秘または下痢を繰り返し引き起こします。

  • 症状は様々ですが、下腹部痛、腹部膨満、ガス、便秘、下痢がよくみられます。

  • 様々な物質や感情的要素が引き金となって過敏性腸症候群の症状が起こります。

  • 通常は症状に基づいて診断が下されますが、他の病気ではないことを確認する検査が行われます。

  • 通常は、食事の変更と薬によって具体的な症状を緩和することができます。

過敏性腸症候群は一般の人の約10~15にみられます。過敏性腸症候群の患者では、女性の方が受診することが多いと示唆する研究もあります。過敏性腸症候群は、消化器専門医(消化管の病気を専門とする医師)が最も診断することの多い病気であり、多くの人が、かかりつけ医を受診する一般的な理由です。

過敏性腸症候群は一般に機能障害に分類されます。というのも、腸の運動、腸の神経の感受性、脳がこれらの機能の一部をコントロールする方法など、体の正常な活動の機能が損なわれるためです。しかし、正常な機能が損なわれても、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)検査、X線検査、生検、血液検査で分かるような構造的異常はみられません。このため、過敏性腸症候群は症状の特徴により特定され、検査を行った場合はその結果が正常なことから確認されます。

過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群の原因ははっきりしません。過敏性腸症候群の多くの患者で、消化管が様々な刺激に対して非常に敏感になります。他の人なら不快に感じない腸内ガスや腸の収縮により不快感を覚えることがあります。過敏性腸症候群で生じる排便の変化は腸の異常な収縮と関連していると考えられる場合もありますが、過敏性腸症候群のすべての人で異常な収縮が起こるわけではなく、また起こっている人の多くでは、そのような異常な収縮が必ずしも症状と同時に発生するわけではありません。一部の患者では、胃腸炎が発生してから過敏性腸症候群の症状が現れることがあります。

感情的要素(ストレス、不安、抑うつ、恐怖など)、食事、薬(下剤など)、ホルモン、ささいな刺激がきっかけになって過敏性腸症候群の発作が起きたり、悪化することがあります。

一部の患者では、高カロリー食や高脂肪食がきっかけとなっている場合があります。

小麦、乳製品、豆類、チョコレート、コーヒー、茶、一部の人工甘味料、ある種の野菜(アスパラガスやブロッコリーなど)、核果(アンズなど)などが症状を悪化させると考えられる患者もいます。これらの食べものは、小腸で吸収されにくい炭水化物を含んでいます。炭水化物は腸内細菌により発酵され、ガスが発生して、腹部膨満やけいれん痛が生じます。多くの食品は複数の成分を含んでいるため、特定の原因を突きとめることは困難なことがありです。

急いで食べたり、長い間何も食べなかった後に食事をすると、発作が起こる場合もあります。しかしその関連性は一貫していません。

いつもはきっかけになる刺激があっても必ずしも症状が出るわけではなく、明らかなきっかけがなくても症状が出ることがよくあります。すべてのきっかけが過敏性腸症候群の原因とどのように関連しているかは不明です。

過敏性腸症候群の症状

過敏性腸症候群は10代から20代で発症する傾向があり、症状の発作が現れては納まるというサイクルが不定期に繰り返されます。成人後期に発症することは少なくなりますが、まれというわけでもありません。発作はほぼ必ず目覚めているときに起こり、寝ている人が症状で目覚めることはまれです。

過敏性腸症候群の症状としては、排便に伴う腹痛や排便することで緩和する腹痛、排便の頻度(便秘下痢など)や便の硬さ(軟便またはかたまりが多く硬い)の変化、腹部膨隆、便に粘液が混じる状態、排便後の残便感などがみられます。痛みは持続する鈍痛あるいはけいれん痛の発作として現れることがあり、通常は下腹部に起こります。

その他の起きることがある症状としては、腹部膨満、ガス吐き気、頭痛、疲労、抑うつ、不安、筋肉痛、集中力できないことがあります。

一般に、痛みの特徴と位置、きっかけ、排便パターンは、時間が経過しても比較的一貫しています。しかし、時間の経過とともに症状が重くなったり、軽くなったり、また症状が変化することもあります。

過敏性腸症候群の診断

  • ローマ基準に基づく医師による評価

  • ほかの病気がないか調べるための臨床検査と画像検査

過敏性腸症候群の人のほとんどは健康に見えます。過敏性腸症候群の診断は、認められる症状の特徴に基づいて下されます。また、ローマ基準と呼ばれる過敏性腸症候群を診断するための症状に基づく標準化された基準も使用されます。同様の症状を引き起こすことがある一般的な病気を診断するために検査が行われることもあり、特に年齢が40歳以上の場合や、発熱、体重減少、下血、嘔吐などの警戒すべき徴候がみられる場合に行われます。

過敏性腸症候群の診断は、ローマ基準に従って、過去3カ月間に少なくとも週1回の頻度で腹痛がみられ、かつ以下の基準の2つ以上に該当する場合に下されます。

  • 排便に関連した痛みがある。

  • 痛みが排便回数の変化(便秘または下痢)に連動している。

  • 痛みが便の硬さの変化に連動している。

ときに大腸の上に圧痛がみられることを除けば、身体診察では一般的に何の異常もみられません。手袋をした指を直腸に挿入して調べる直腸指診が行われます。女性の場合は内診を受けます。

医師は通常、血液検査、便検査などいくつかの検査を行って、クローン病潰瘍性大腸炎、がん(主に40歳以上の患者で)、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎、セリアック病、また腹痛や排便習慣の変化を起こす他の多くの病気や感染症と過敏性腸症候群を判別します。過敏性腸症候群では通常、これらの検査結果は正常となります。

高齢者や、発熱、血便、体重減少、嘔吐などの過敏性腸症候群ではあまりみられない症状がある人については通常、腹部超音波検査、腸のX線検査大腸内視鏡検査など、さらなる検査が行われます。乳糖不耐症腸内細菌異常増殖症ではないことを確認する検査が行われるとともに、下剤の乱用ではないことを確認する質問も行われることがあります。

過敏性腸症候群の人(特に40歳以上)では、虫垂炎胆嚢(たんのう)疾患、潰瘍、がんなど、消化管の他の病気が生じることがあります。このため、症状が大きく変化したり、新たな症状が発生したり、または過敏性腸症候群であまりみられない症状がある場合は、さらなる検査が必要になることがあります。

過敏性腸症候群の症状はストレスや情緒的葛藤により誘発されることがあるため、医師はストレス、不安、気分障害の特定に役立つ質問を行います。

過敏性腸症候群の治療

  • 通常の食事をとりつつ、ガスや下痢の原因になる食べものの摂取を控える

  • 繊維質を多くとる(便秘に対して)

  • ときに薬剤

過敏性腸症候群の治療は人によって異なります。特定の食べものや特定の種類が問題を引き起こしていると考えられる場合は、可能であればそれを避けるべきです。ほとんどの人(特に便秘になりがちな人)で、正常な消化管の機能を保つのに定期的な運動が役立ちます。

食事

多くの人は、量の多い食事を少ない回数食べるのではなく、1回の量を少なくして食事の回数を多くすると、状態がよくなります(例えば、1日3回量の多い食事をするのではなく1日5~6回少量の食事をする)。通常よりゆっくりと食事するようにします。腹部膨満やガスの増加(鼓腸)がある人は、豆類やキャベツなどの消化しにくい食べものを控えるべきです。

一部の人では、発酵性のオリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオールと呼ばれる特定の炭水化物を多く含む食品の摂取を制限することで、過敏性腸症候群の症状が軽減します。これらの成分は、それぞれの英語の頭文字をとってフォドマップ(FODMAP)と呼ばれています。FODMAPは、吸収されにくく、それでいて小腸内で細菌により速やかに発酵される炭水化物であり、これらの性質からガスの増加や不快感につながります。

一部の食品、薬剤、チューインガムに使われている人工甘味料のソルビトールを大量に摂取しないようにします。果物やベリー類、一部の植物に含まれるフルクトース(果糖)は少量にとどめておくようにします。低脂肪食が助けになることもあり、特になかなか胃が空にならない人や、すぐに空になる人で効果的です。過敏性症候群の人と乳糖不耐症(ミルクやその他の乳製品に含まれる乳糖を消化できない病気)の人は、乳製品の摂取量を適度に抑える必要があります。

食物繊維の摂取量を増やすことで、しばしば便秘が緩和します。便秘の人では、毎回食事の際に、調理していないふすま大さじ1杯を十分な水や飲みものと一緒に摂取したり、オオバコ繊維のサプリメントをコップ2杯の水とともにとる方法もあります。しかし、食物繊維の摂取量を増やすと、鼓腸や腹部膨満が悪化することがあります。合成繊維の製剤(メチルセルロースなど)に切り替えるとそのような鼓腸が軽減することがあります。

便秘の人では、ある種の下剤がある程度安全で、しばしば効果的です。そのような下剤として、ソルビトール、ラクツロース、またはポリエチレングリコールを含むものや、ビサコジルやグリセリンを含む刺激性下剤などがあります。処方薬の下剤であるルビプロストンやリナクロチドでも、便秘が緩和されることがあります。

ヒヨスチアミンなどの抗コリン薬は、腸の筋肉のけいれんを止めることによって腹痛を緩和することができます。ただし、この種の薬は口腔乾燥、かすみ目、排尿困難といった抗コリン性の副作用をしばしば引き起こします( 抗コリン作用:どんな作用か?)。

下痢がみられる人では、ジフェノキシレート(diphenoxylate)やロペラミドなどの下痢止め薬が役立ちます。セロトニン(体内の化学伝達物質の1つ)の作用を低下させるアロセトロン(alosetron)は、過敏性腸症候群による下痢が他の薬で管理できない一部の女性患者に対して使用されます。しかし、虚血性大腸炎のリスクが高まると報告されていることから、その使用は制限されています。エルクサドリン(eluxadoline) は、過敏性腸症候群によって重度の下痢が起きている人に使用できるもう1つの薬です。

抗菌薬であるリファキシミンが、下痢、腹部膨満、腹痛の症状を軽減するために処方されることがあります。

抗うつ薬は、多くの人で腹痛と下痢および腹部膨満の症状を軽減するのに役立ちます。ノルトリプチリンやデシプラミンなど特定の抗うつ薬の長期使用が、しばしば助けになります。抗うつ薬は痛みなどの症状を緩和するだけでなく、睡眠障害や抑うつ、不安の緩和にも役立つ可能性があります。

体内に元から存在し、体によい細菌の増殖を促す細菌であるプロバイオティクスは、過敏性腸症候群の症状(特に腹部膨満)を和らげる可能性があります。ペパーミントオイルなどのアロマオイルは、一部の人で筋肉のけいれんによる痛みを軽減するのにしばしば役立ちます。

その他の治療

過敏性腸症候群の症状とうまく付き合っていく上で、多くの場合、認知行動療法などの行動変容法、精神療法催眠療法が効果的です。

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