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大腸がん

(結腸がん)

執筆者:

Elliot M. Livstone

, MD, Sarasota Memorial Hospital, Sarasota, FL

最終査読/改訂年月 2017年 9月
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本ページのリソース
  • 大腸がんのリスクは、家族歴や食事に関する一部の要因(低繊維、高脂肪)によって高まります。

  • 典型的な症状としては、排便時の出血、疲労、筋力低下などがあります。

  • 50歳以上の人ではスクリーニング検査が重要です。

  • 診断を下すために大腸内視鏡検査がよく行われます。

  • 早期に発見された場合に最も高い治癒の可能性があります。

  • 通常、手術を行ってがんを切除します。

大腸がんのほとんどは大腸(結腸)と直腸の粘膜から生じる腺がんです。大腸がんは通常、結腸や直腸の表面にできるボタンのような腫瘍として始まり、この腫瘍はポリープと呼ばれます。がんが増殖すると、大腸や直腸の壁に浸潤し始めます。周囲のリンパ節にも浸潤します。腸の壁と大部分の直腸の壁からの血液は肝臓に流れているため、大腸がんは近くのリンパ節に転移した後に、さらに肝臓に転移する可能性があります。

欧米諸国では大腸がんは最も多いがんの1つで、がんによる死亡原因の第2位を占めています。大腸がんの発生率は40~50歳頃から急激に上昇し始めます。米国では毎年約135,000人に大腸がんが発生し、約50,000人が死亡しています。

大腸がんは女性より男性でわずかに多くみられます。結腸がんまたは直腸がん患者の約5%では、結腸や直腸の複数の部位にがんがあり、単純に1つの部位から他の部位に転移したとは思えません。

危険因子

大腸がんの家族歴がある場合は、本人にもがんが発生するリスクが高くなります。腸の腺腫性ポリープの家族歴がある場合も大腸がんのリスクが高まります。

潰瘍性大腸炎や結腸のクローン病の人でも同様にリスクが高くなります。このリスクは、発症したときの年齢、患部の結腸や直腸の面積、罹病期間に関連しています。

最もリスクの高い人は、脂肪、動物性タンパク質、精製炭水化物を多く含み食物繊維の少ない食事をとっている傾向があります。大気汚染や水質汚染に比較的多くさらされることも一因となる可能性があり、特に産業活動で生じた発がん物質(がんを誘発する物質)にさらされる場合はその可能性が高まります。

リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん[HNPCC])

リンチ症候群は、遺伝子変異が遺伝することで起こり、その変異をもつ人の70~80%にがんが生じます。リンチ症候群の人では多くの場合、50歳になるまでに大腸がんが発生します。また他の種類のがん、特に子宮内膜がんや卵巣がんだけでなく、胃がん、小腸がん、腎臓がんのリスクも高まります。

症状

大腸がんはゆっくりと増殖し、長い間症状が出ません。症状はがんの種類やできた部位、広がりによって異なります。

潜血(肉眼では分からない程度の出血)からくる疲労や筋力低下しか症状がないこともあります。

腫瘍が左側の結腸(下行結腸)にある場合、早期に腸が閉塞する可能性があります。これは、下行結腸の内径が小さく、腸内の便が半固形状になっているためです。けいれん性の腹痛や重度の腹痛が生じ、便秘になるために、患者が受診することがあります。

腫瘍が右側の結腸(上行結腸)にある場合、がんの後期になるまで閉塞を起こすことはありません。これは、上行結腸の内径が大きく、その中を流れる内容物が液状であるためです。このため、腫瘍が発見された時点で、左側にできる腫瘍と比べて大きい傾向があります。

ほとんどの結腸がんは出血を起こしますが、通常はゆっくりです。便に血液のすじがついていたり血便になることもありますが、多くの場合、血液は見えません。直腸がんで最もよくみられる初期症状は排便時の下血です。たとえ痔核や憩室性疾患があると分かっていても、下血がある場合は診断にあたり、必ずがんの可能性を考慮する必要があります。このほかの直腸がんの症状として、排便時の痛みや残便感があります。座るときに痛むことがありますが、それ以外では通常、直腸以外の組織にがんが転移していないかぎり、がん自体から痛みを感じることはありません。

診断

  • 大腸内視鏡検査

結腸がんを疑わせる症状があるか、スクリーニング検査で陽性と判定された場合は、がんの有無を確認するための診断検査が必要になります。

結腸がんのスクリーニング検査は、がんの症状はないものの、がんのリスクが高い人でがんを検出するために行われる検査です。

診断検査

  • 大腸内視鏡検査

  • がんが発見された場合はCT検査

  • リンチ症候群の遺伝子検査

血便のある人では大腸内視鏡検査が必要で、S状結腸鏡検査や画像検査で異常が見つかった人でも同様です。大腸内視鏡検査で腫瘍や異常が発見された場合は、完全に取り除くべきです。

大腸下部の腫瘍を検出するために下部消化管造影検査を行うことがあります。しかし、大腸内視鏡検査では組織のサンプルを採取して腫瘍が悪性(がん)かどうか調べることができるため、大腸内視鏡検査の方が診断検査として好まれます。

がんと診断されると、通常は腹部CT検査、胸部X線検査、通常の臨床検査を行って、転移したがんを探したり、血球数低下(貧血)を検出したり、全身状態を評価します。

血液検査によって大腸がんと診断されることはありませんが、腫瘍を切除した後の治療の有効性をモニタリングするのに役立ちます。例えば、確認されたがんの切除前に腫瘍マーカーのCEA(がん胎児性抗原)が高値であったものが、切除後に下がれば、CEA値が再び上昇していないかモニタリングすることで、がん再発の早期発見に役立ちます。このほかにもCA19-9とCA125という腫瘍マーカーがあり、CEAと同様に大腸がんで上昇することがあります。

現在、手術で切除した結腸がんについて、リンチ症候群の原因となる遺伝子変異の有無を調べる検査が通常行われています。若い年齢で結腸がん、卵巣がん、子宮内膜がんになった血縁者がいる人やこれらのがんになった血縁者が複数いる人は、リンチ症候群の検査を受けるべきです。

スクリーニング検査

  • 大腸内視鏡検査

  • 便検査

  • S状結腸内視鏡検査

  • CTコロノグラフィー

早期の診断は一般的なスクリーニング検査にかかっていて、典型的には、大腸がんの発生リスクが平均的な人は、スクリーニングを50歳から受け始めて75歳まで継続するべきです。76~85歳の成人に対しては、医師がその人の全体的な健康状態と過去のスクリーニング結果を考慮に入れた上で、スクリーニングを続けるかどうかを判断します。一部の人ではスクリーニングを早期に開始します。例えば、60歳までに大腸がんを発症した第1度近親者(親、兄弟姉妹、子)がいる人は、スクリーニングを40歳の時点または近親者が診断を受けた年齢より10歳若い時点のうちより早い方から開始して、5年毎に受けていく必要があります。例えば、ある人の父親が45歳で大腸がんと診断された場合、その人は35歳からスクリーニングを開始する必要があります。また、黒人については、45歳からスクリーニングを開始するべきと推奨している専門家もいます。

大腸全体を観察する大腸内視鏡検査でスクリーニングを行うことがよくあります。大腸内視鏡検査を行う必要があるのはわずか10年毎に1回です。大腸内視鏡検査では、がん(悪性)とみられる腫瘍を内視鏡から通した器具で切除します。腫瘍を検査室に送り、がんの検査を行います。通常の手術で切除する必要のある大きな腫瘍もあります。

血便は、たとえ肉眼では見えない出血(潜血― 便潜血検査)でも、がんの徴候である可能性があります。通常は年に1回便検査を行います。確実に正確な検査結果が得られるようにするために、便のサンプルを採取する3日前から、赤身肉を除いた高繊維食をとることが役に立ちます。潜血を調べる新しい便検査(免疫化学的検査)は、古い便検査より正確で、食事制限もありません。しかし、がん以外にも多くの病気が血便の原因となり、すべてのがんが必ず出血を引き起こすわけではありません。新しい便検査としては、血液ではなく、がんに由来する遺伝物質を調べるものもあります。遺伝学的な便検査は3年毎に行います。

スクリーニングでは、別の診断法としてS状結腸鏡検査(観察用の管状の機器で大腸の下部を調べる検査― 内視鏡検査)も行われます。S状結腸鏡検査は、S状結腸や直腸の病変に対して優れていますが、それより結腸をさかのぼった場所にある腫瘍は発見できません。S状結腸鏡検査は5年毎に行うか、便潜血検査も行う場合は10年毎に行う必要があります。

CTコロノグラフィー(バーチャルコロノグラフィー)では、特殊なCT検査法により結腸の3次元画像を作りだします。この検査法では、造影剤を服用し、直腸に挿入したチューブからガスを注腸して結腸を膨らませます。高解像度の3次元画像は、通常の内視鏡による見え方をある程度再現しているように見えるため、この名があります。バーチャルコロノグラフィーは、通常の大腸内視鏡検査が行えなかったり、行いたくない人で選択肢となることがありますが、あまり正確でなく、放射線科医の技量や経験に強く依存しています。バーチャルコロノグラフィーでは鎮静の必要はありませんが、やはり徹底的な術前腸管処理が必要であり、ガスによる結腸の拡張が不快なことがあります。さらに、通常の大腸内視鏡検査とは異なり、検査中に顕微鏡で調べるための病変のサンプルを採取すること(生検)ができません。バーチャルコロノグラフィーでは、結腸外のリンパ節や肝臓にがんが転移しているかどうか確認できますが、結腸内の小さなポリープの検出には適していません。この検査を5年毎に繰り返します。

リンチ症候群の患者は、他のがんについてスクリーニングを続ける必要があります。このようなスクリーニングには、女性の臓器の超音波検査(腟経由で行われる)、吸引器具を用いて子宮内膜(子宮の内側を覆っている組織)から採取した細胞の検査、血液や尿の検査があります。遺伝性非ポリポーシス大腸がんの患者の近親者では、20歳台から大腸内視鏡検査を1~2年毎に受ける必要があり、女性では子宮内膜がんや卵巣がんについて毎年検査を受ける必要があります。

予後(経過の見通し)

結腸がんは、転移する前に早期に腫瘍を切除できれば治癒する可能性が非常に高くなります。結腸粘膜に深く入り込んだり、結腸壁を突き抜けているがんは、しばしば転移しており、ときに検出できないことがあります。10年生存率は、がんが大腸の壁の内層にとどまっている場合で約90%、大腸の壁を越えて広がっている場合で約70~80%、腹部のリンパ節まで広がっている場合でわずか約30~50%、他の臓器に転移している場合で20%未満です。

治療

  • 手術

  • ときに化学療法と放射線療法

ほとんどの結腸がんでは、がんに侵された部分とその周囲のリンパ節を手術で摘出して、残った腸の端をつなぎ合わせます。がんが大腸の壁を越して、周囲のリンパ節への転移がごく少数であれば、目に見えるがんをすべて外科的に切除した後に化学療法を行うことで、生存期間が長くなる可能性がありますが、多くの場合、そのような治療の効果はあまり高くありません。

直腸がんの治療では、手術の種類はがんの肛門からの距離と直腸壁への深達度に応じて異なります。直腸と肛門をすべて切除する場合は、永久的な人工肛門が必要になります。人工肛門は、手術で作った大腸と腹壁の間の開口部です。これによって大腸の内容物(便)は腹壁を通して排出され、人工肛門バッグへ入ります。直腸や肛門の一部をそのままの状態で残すことができる場合、人工肛門を一時的なものとすることがあります。これらの組織が(数カ月かけて)治癒した後に再手術を行って、直腸断端を大腸の末端とつなぎ合わせ、人工肛門造設部を閉じることができます。

人工肛門造設術について理解する

人工肛門造設術では、大腸(結腸)を切除します。結腸とつながっている部分の断端を皮膚に形成した開口部から皮膚の表面へ移動させます。その部分を皮膚に縫合します。便はこの開口部を通って使い捨てのバッグの中に入ります。

人工肛門造設術について理解する

直腸がんが直腸壁を通り越して、周囲のリンパ節への転移がごく少数であれば、手術で目に見えるがんをすべて摘出した後に化学療法と放射線療法( がんの併用療法)を行うと、生存期間を延ばせる可能性があります。手術の前に化学療法と放射線療法を行う医師もいます。

がんが結腸や直腸からかなり離れたリンパ節、腹腔内膜、または他の臓器へ転移している場合は、手術だけでは治癒しません。しかし、腸閉塞を改善し、症状を緩和させる目的で手術が行われることもあります。単一の薬または複数併用による化学療法でがんが小さくなることがあり、生存期間を数カ月延ばすことができます。医師は通常、患者本人や家族、他の医療従事者と終末期のケアについて話し合います(終末期の治療選択肢を参照)。

結腸がんの病期診断

  • 0期:がんがポリープを覆っている大腸(結腸)の内層(粘膜)にとどまっているもの。この病期で治療を行った場合の5年生存率は95%を超えています。

  • 1期:がんが大腸の内層と筋層の間の隙間に広がったもの。(この中には血管、神経、リンパ管があります)。この病期で治療を行った場合の5年生存率は90%を超えています。

  • 2期:がんが結腸の筋層と外層まで浸潤したもの。この病期で治療を行った場合の5年生存率は約55~85%です。

  • 3期:がんが結腸の外層を越えて周囲のリンパ節まで広がったもの。この病期で治療を行った場合の5年生存率は約20~55%です。

  • 4期(図には示していない):がんが肝臓、肺、卵巣、腹膜(腹腔の内側を覆う膜)など他の臓器まで広がったもの。この病気では治療を行っても5年生存率は1%未満です。

結腸がんの病期診断
結腸がんの病期診断

がんが肝臓のみに広がっており、腫瘍(転移)が3個以下であれば、これらの腫瘍を手術で切除することもあります。その他に、肝臓に血液を送る動脈に化学療法薬や放射性ビーズを直接注射する方法があります。治療中に動いても大丈夫なように、手術で皮膚の下に固定した小さなポンプか、ベルトで体外に装着したポンプから、化学療法薬を持続的に注入します。この治療法は従来の化学療法よりも有益な可能性がありますが、今後さらに研究が必要です。がんが肝臓以外の部位まで広がった場合はこの方法に利点はありません。

健康状態が悪いために手術に耐えられない人で、がんにより結腸が閉塞している場合、医師は他の方法で症状を緩和しようと努めます。1つの治療法として、電流を流すプローブ(電気焼灼術[しょうしゃくじゅつ])や、ときにレーザーを用いて腫瘍の大きさを小さくする方法があります。そのほかに、伸長性のある網目状のワイヤーでできた筒(ステント)を用いて閉塞部分の開通を保つこともあります。いずれの治療法も大腸内視鏡を通して行われます。これらの治療の多くで、しばらくの間は不快感がなくなることが多いですが、生存期間の延長は望めません。

手術後

手術後は1年以内に大腸内視鏡検査を行います。ポリープや腫瘍がみられない場合、その3年後に2回目の大腸内視鏡検査を行います。その後は5年毎に大腸内視鏡検査を行います。

手術後には身体診察と血算や肝機能検査などの血液検査も定期的に行います。CT検査やMRI検査などの画像検査も定期的に行います。

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