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乳糖不耐症

執筆者:

Atenodoro R. Ruiz, Jr.

, MD, The Medical City, Pasig City, Philippines

レビュー/改訂 2021年 2月
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やさしくわかる病気事典

乳糖不耐症とは、消化酵素のラクターゼの欠乏により乳糖が消化できない状態のことで、下痢や腹部のけいれん痛を起こします。

  • 乳糖不耐症は酵素のラクターゼが欠乏しているために起こります。

  • 小児における症状には、下痢と体重増加の遅れなどがあり、成人における症状には、腹部の膨満やけいれん痛、下痢、鼓腸、吐き気などがあります。

  • 診断は、乳製品を摂取した後に症状が現れることを確認することに基づいて下され、水素呼気試験で確定できます。

  • 治療としては、ラクターゼのサプリメントを服用し、乳糖、特に乳製品に含まれる乳糖を避けるようにします。

乳糖は、牛乳や乳製品で主に含まれている糖で、小腸の内層の細胞で生産されるラクターゼという酵素により分解されます。ラクターゼは糖の複合体である乳糖を、ブドウ糖とガラクトースという2つの成分に分解します。この2つの単糖は腸壁から血液中に吸収されます。ラクターゼが欠乏していると、乳糖を消化吸収できません。その結果、高濃度になった乳糖が小腸に水分を引き寄せ、水様性下痢を起こします。その後乳糖は小腸を通過して大腸に入り、細菌によって発酵されてガスが生じ、ガスによって鼓腸、腹部膨満、差し込むような腹痛が起こります。

知っていますか?

  • 北欧系の人を除いて、ほとんどの健康な成人は大量の乳糖を消化できないため、正常な状態でも「乳糖不耐症」です。

乳糖不耐症の原因

乳児ではラクターゼの量が豊富で、母乳や牛乳の消化を可能にしています。しかし、多くの民族では(黒人とヒスパニック系では80%、アジア系では90%以上)離乳後にラクターゼの量が減少します。量が減少するということは、これらの民族の年長児や成人は、大量の乳糖を消化できないということです。一方、欧州北西部に起源をもつ白人の80~85%は、生涯にわたってラクターゼが作られるため、成人になっても牛乳や乳製品を消化することができます。このため、米国民の民族構成から、米国では3000万~5000万人が乳糖不耐症であると考えられます。この「不耐症」が実は世界人口の75%以上では正常な状態であることは興味深い点です。

乳糖以外の糖に対する不耐症も起こりますが、その頻度は比較的まれです。例えば、スクラーゼという酵素が欠乏すると、ショ糖が分解されて血液中に吸収されるのが妨げられ、マルターゼやイソマルターゼという酵素が欠乏すると、麦芽糖(マルトース)が分解されて血液中に吸収されるのが妨げられます。

乳糖不耐症の症状

乳糖不耐症があると、通常は牛乳や乳製品(いずれも乳糖を含んでいる)に耐えられません。成人では通常、250~375ミリリットル以上の牛乳を飲んだときだけ症状が現れます。牛乳やその他の乳製品により胃腸の問題が現れることに若いうちに気づいた人は、意識してまたは無意識に乳製品の摂取を控えることがあります。

乳糖不耐症がある小児では下痢がみられ、牛乳が食事に含まれていると体重が増えないことがあります。

成人では、腹部の膨満やけいれん痛、水様性下痢、鼓腸、吐き気、腸のゴロゴロ音またはゴボゴボ音(腹鳴[ふくめい])がみられることがあり、乳糖を含む食事を食べた後、30分から2時間で切迫した便意が生じることがあります。一部では、重度の下痢のために、体内から栄養素があまりに急速に排泄され、栄養素が適切に吸収されない場合もあります。しかし、乳糖不耐症によって起こる症状は、通常は軽度です。対照的に、 セリアック病 セリアック病 セリアック病は、小麦や大麦、ライ麦に含まれるタンパク質のグルテンに対する遺伝性の不耐症であり、小腸の粘膜に特徴的な変化を起こし、 吸収不良が生じます。 タンパク質のグルテンの摂取後に、腸の粘膜に炎症が生じます。 症状としては、成人では下痢、低栄養、体重減少などがあります。 小児でみられる症状としては、腹部膨満、非常に強い悪臭がする大量の便、成長不良などがあります。 診断は、典型的な症状と小腸の粘膜から採取した組織サンプルの検査結果に基づ... さらに読む セリアック病 熱帯性スプルー 熱帯性スプルー 熱帯性スプルーは原因不明のまれな病気で、熱帯や亜熱帯地方に住む人にみられ、小腸の粘膜に異常が起こり、様々な栄養素の 吸収不良と欠乏に至ります。 原因は不明ですが、感染が疑われています。 熱帯スプルーの典型的な症状としては、貧血、色の薄い便、慢性の下痢、体重減少などがあります。 診断は、この疾患が起こりやすい地域の住民やその地域に最近旅行した人にみられる症状に基づいて下されます。... さらに読む 、腸の感染症のような病気でみられる 吸収不良 吸収不良の概要 吸収不良症候群とは、食べたものに含まれる栄養素が様々な理由により小腸で適切に吸収されない状態のことをいいます。 ある種の病気、感染症、手術でも吸収不良が起こることがあります。 吸収不良によって、下痢、体重減少、極度の悪臭がする大量の便がみられます。 診断は、典型的な症状と、便検査の結果、ときに小腸粘膜の生検結果に基づいて下されます。... さらに読む によって起こる症状はより重度のものです。

牛乳アレルギー

牛乳アレルギーの小児でも、牛乳や乳製品を摂取した後に症状が現れます。しかし、これらのかゆみ、発疹、喘鳴(ぜんめい)などの症状は、他のアレルギー反応と類似しています。ときに嘔吐、腹痛、まれに下痢などの消化管症状がみられる小児もいます。

成人では牛乳アレルギーはまれで、嘔吐や食道逆流の症状も起こることがあります。

乳糖不耐症の診断

  • 乳糖摂取後にみられる症状の医師による評価

  • ときに水素呼気試験

乳製品を摂取した後に症状が出る場合に、乳糖不耐症が疑われます。3~4週間、乳製品を除いた食事を試し続けて症状が消失し、その後乳製品を摂取すると症状が再び現れる場合に、診断が確定します。

特異的な検査が必要になるのはまれですが、場合によっては水素呼気試験を行って診断を確定することがあります。この4時間の検査では、量を測定した少量の乳糖を摂取します。乳糖の摂取前と摂取後で、吐く息に含まれる水素ガスの量を1時間毎に測定します。水素を測定するのは、吸収されなかった乳糖を腸内細菌が消化するときに水素が発生するためです。乳糖を摂取した後に吐いた息に含まれる水素の量が著しく増加した場合、その人は乳糖不耐症です。

この代わりとなるものに乳糖負荷試験がありますが、感度が低く、現在ではまれにしか行われません。量を測定した乳糖を摂取した後に、医師が症状をモニタリングし、数回にわたり血糖(グルコース)値を測定します。乳糖を消化できる場合は症状が現れず、血液中のグルコース濃度が上昇します。乳糖を消化できない場合は、20~30分以内に下痢、腹部膨満、腹部不快感が現れ、血液中のグルコース濃度は上昇しません。

乳糖不耐症の治療

  • 乳糖の回避

  • ラクターゼのサプリメントの服用

乳糖不耐症は、食事で乳糖を含む食品、主に乳製品の摂取を控えることでコントロールできます。ヨーグルトには乳酸桿菌(Lactobacilli)が生産するラクターゼが天然に含まれているため、多くの場合ヨーグルトは耐えられます。チーズに含まれる乳糖の量は牛乳より少なく、摂取量にもよりますが、多くの場合耐えられます。乳糖を減らした牛乳などの製品が多くのスーパーマーケットで入手できます。

乳製品の摂取を控えなければならない人は、カルシウムのサプリメントを摂取して、カルシウム欠乏を予防する必要があります。ラクターゼのサプリメントは処方せんなしで購入でき、乳糖を含む飲食物を摂取する際に服用できます。

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