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遺伝学の活用

執筆者:

David N. Finegold

, MD, University of Pittsburgh

最終査読/改訂年月 2017年 8月
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様々な病気の理解、診断、治療を改善する上で、遺伝学をいくつかの形式で活用することができます。

病気の解明

2003年にヒトゲノムプロジェクトの研究チームが人間の染色体上にあるすべての遺伝子の特定と遺伝子地図の作製に成功したことにより、ヒトの遺伝学に関する理解が進展する可能性が大幅に拡大しました。遺伝学的技術を個々の遺伝子の研究に用いて、特定の疾患についてさらに解明することができます。例えば、症状に基づいて分類されていたある種の疾患が、遺伝子異常に基づいて再分類されています。

病気の診断

遺伝子検査が特定の疾患の診断に用いられています(例えば、ヘモクロマトーシス ヘモクロマトーシス ヘモクロマトーシスは、鉄が過剰に吸収される遺伝性疾患で、体内に鉄が蓄積され、臓器に損傷を与えます。 (鉄過剰症の概要も参照のこと。) 米国には、100万人以上のヘモクロマトーシス患者がいます。男性の方が女性より多く罹患します。致死的となることもありますが、たいていは治療可能です。 鉄は摂取する食事から吸収されます。ほとんどの鉄は赤血球に収容されます。 この疾患では鉄が体のあらゆる場所に蓄積して損傷を与えます。 さらに読む ダウン症候群 ダウン症候群(21トリソミー) ダウン症候群は、余分な21番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、知的障害と様々な身体的異常がみられます。 ダウン症候群は、21番染色体が余分に複製されることで発生します。 ダウン症候群の小児では、発育の遅れ、精神発達の遅れ、特異的な頭部と顔貌、しばしば低身長がみられます。 出生前の段階では、ダウン症候群は超音波検査や母親の血液検査の結果から疑われ、絨毛採取や羊水穿刺という検査で確定されます。... さらに読む ダウン症候群(21トリソミー) ターナー症候群 ターナー症候群 ターナー症候群は、女児が2本のX染色体の片方が部分的または完全に欠失した状態で生まれてくる性染色体異常です。 ターナー症候群は、2本のX染色体のうち1本の一部または全体の欠失によって引き起こされます。 この症候群の女児は、典型的には身長が低く、首の後ろに皮膚のたるみがあり、学習障害がみられ、思春期が始まりません。 診断は染色体の分析によって確定されます。 ホルモン剤を用いた治療により、成長を刺激するとともに、思春期を発来させることができ... さらに読む ターナー症候群 などの染色体異常症)。

遺伝学により、どんな疾患を発症しやすいかを予測できる可能性が増しています。例えば、BRCA遺伝子に特定の異常がある女性は、乳がん 乳がん 乳がんは、乳房の細胞が異常をきたし制御不能に分裂することで発生します。通常は、乳汁を作る乳腺(小葉)または乳腺から乳頭(乳首)へ乳汁を運ぶ乳管にがんが発生します。 乳がんは、女性がかかるがんの中で発症数が最も多く、がんによる死亡の中では第2位を占めています。 通常、最初に現れる症状は痛みのないしこりで、自分で気づくことがほとんどです。 乳がんスクリーニングの推奨は様々で、定期的なマンモグラフィー、医師による乳房の診察、乳房自己検診などが... さらに読む 乳がん 卵巣がん 卵巣がん 卵巣がんでは、病巣が大きくなるか、範囲が広がるまで、症状がみられないことがあります。 卵巣がんの疑いがある場合は、血液検査、超音波検査、MRI検査、CT検査などを行います。 通常は、左右の卵巣および卵管と子宮を切除します。 多くの場合、手術後に化学療法が必要になります。 (女性生殖器のがんの概要を参照のこと。) さらに読む になりやすい傾向があります。これらの予測により、各人に適した疾患の予防やスクリーニング検査が可能になります。

遺伝性疾患の出生前診断

遺伝学的特徴を評価する技術の進歩や、ヒト遺伝学についての理解の深まりによって、出生前に遺伝性疾患を診断する技術が向上してきました。一部のケースでは、出生前に診断された遺伝性疾患に対して、将来の合併症を予防する治療を行うことができます。例えば、出産前の母親に対してコルチコステロイドを投与すると、その子どもにおいて、ある種の遺伝性のホルモン欠乏症を軽減できる可能性があります。

遺伝子スクリーニング検査 遺伝子スクリーニング スクリーニングではカップルの家族歴を評価し、必要に応じて血液や組織のサンプルを分析します。 遺伝子スクリーニングは、遺伝性の遺伝子疾患をもつ子どもが生まれるリスクが高いかどうかを判断するために行う検査です。すべてのカップルが遺伝子スクリーニングを受けることができますが、特に推奨されるのは以下の場合です。 パートナーの一方または両方に遺伝子異常があることが分かっている。 家系内に遺伝子異常を有する人がいる。... さらに読む は、遺伝性疾患が子孫に受け継がれるリスクについて、両親と話し合う際に利用することができます。また、スクリーニングを胎児の異常の検出に利用することもできます( 出生前診断 出生前診断 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。 こうした遺伝子検査は侵襲的で、胎児への一定のリスクを伴います。 (遺伝性疾患の概要も参照のこと。) さらに読む )。

知っていますか?

  • ある人がどのような疾患を発症しやすいか、特定の治療がどの程度効くかといったことを予測する際に、遺伝学が役立つかもしれません。

薬に対する反応の予測

ヒト遺伝学に対する理解が進むことで、患者の正確な遺伝学的特徴に基づいて、特定の薬がその患者にどの程度効くか予測できる可能性があります( 遺伝子の構成と薬への反応 遺伝子の構成と薬への反応 遺伝子の構成は人によって違い、体が薬に及ぼす作用や、薬が体に及ぼす作用に影響します。遺伝子の違いが、薬に対する反応にどう影響するかを研究する分野を薬理遺伝学といいます。 ある遺伝子構成をもつ人では、薬の変化のプロセス(代謝)がゆっくりと起こります。その結果、薬が体内に蓄積し、毒性が生じることがあります。別の遺伝子構成をもつ人は、薬の代謝が速すぎて、通常用いられる投与量を服用しても薬の血中濃度が十分に上がらないため、薬が効きません。... さらに読む )。例えば、特定の遺伝子を用いて、抗凝固薬(「血液をサラサラにする薬」)のワルファリンの必要量を予測することができます。ワルファリンを多く服用しすぎると重篤な出血が生じ、少なすぎると薬が効かず危険なので、この予測は重要です。

また、遺伝子解析により、抗がん剤のイリノテカンを服用すると現れる副作用が耐えられないものか軽微なものだけかを予測できます。耐えられない副作用が現れる可能性の高い人は、別の薬で治療することができます。

さらに遺伝子解析では、人がどのくらい速く鎮痛薬のコデインを代謝し反応を示すかを明らかにすることもできます。コデインの代謝が速い人では、コデイン代謝副産物が体内で高濃度に蓄積して、それが呼吸を促す無意識の仕組みを妨げることがあります。こうした迅速な代謝により、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療で扁桃摘出術とアデノイド切除術を受けた後、コデインを投与された小児が死亡しています。

疾患の治療

病気に侵された組織(がんなど)を対象とする遺伝学は、抗がん剤などの医薬品開発を行う製薬会社が治療目標をより正確に特定するのに役立ちます。例えば、抗がん剤のトラスツズマブは、乳がん遺伝子HER2/neuが関与する乳がんの、特定のがん細胞を標的とします。

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