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遺伝学における倫理的な論争

執筆者:

David N. Finegold

, MD, University of Pittsburgh

最終査読/改訂年月 2017年 8月
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新しい遺伝子診断技術遺伝子治療の可能性が出てきたことに伴い、それらをどのように利用すべきかについて、活発な議論が行われています。それに伴い、人間の遺伝情報が不正に使用される懸念も生じています。例えば、特定の疾患になりやすい遺伝学的特徴をもつ人が、雇用を拒否されたり、健康保険が適用されなくなったりする可能性があります。

重篤な病気を引き起こす遺伝子異常の出生前スクリーニング検査は広く支持されています。しかし、スクリーニング検査が望ましい形質(例えば、外見や知能など)の選択に利用されるのではないかという懸念があります。

遺伝子と染色体も参照のこと。)

クローニング

クローンとは、1つの細胞または1つの個体から作られた遺伝的に同一な細胞または生物の集団です。

クローニング(クローンの作製)は、農業の分野では何年も前から当たり前のように行われてきました。植物は、もとになる植物の一部を切り取り、それを育てるだけでクローンを作ることができます。植物の場合、この作業を繁殖といいます。こうしてできた新しい植物は、もとになった植物の正確な遺伝子コピーです。このような増殖は、扁形動物などの単純な動物においても可能です。ある扁形動物を2つに切ると、尻尾の方には新しい頭ができ、頭の方には新しい尻尾ができます。しかし、こうした単純な方法は、ヒツジや人間のような高等な動物には使えません。

有名なクローンヒツジ「ドリー」の実験では、1頭のヒツジから採取した細胞(ドナー細胞)と、別の1頭から採取し、もとの遺伝物質を顕微鏡手術で取り除いた未受精卵(レシピエント細胞)との融合が行われました。次に、ドナー細胞の遺伝物質が未受精卵に移されました。実験室で作製されたこの卵は、未受精卵と異なり、染色体と遺伝子の完全なセットをもっていました。また、自然に(精子と)受精した卵子とは異なり、遺伝物質を一方の細胞のみから受け継いでいました。その後、卵子は胚へと成長し始めました。成長しつつある胚は雌ヒツジ(代理母)に移植され、自然に成長を続けました。胚のうちの1つが生き残り、生まれた子ヒツジが「ドリー」と名づけられました。ドリーは予想通り、卵子を提供したヒツジではなく、ドナー細胞を採取したヒツジの正確な遺伝子コピー(クローン)でした。

クローン化した高等動物(人間も含まれます)では、通常の妊娠で生まれた子孫よりも深刻または致死的な遺伝的欠損を起こしやすいことが、研究で示唆されています。クローン技術によって人間を作り出す行為は、非倫理的であると広く認識されており、通常は違法であり、技術的に困難です。しかし、クローニングの目的は生物全体を作り出すことだけではありません。理論的には、クローニングで1つの臓器を作ることも可能です。そのため、自分の遺伝子を使って研究室で作られた、「スペアパーツ」を移植できる時代がいつか来るかもしれません。

クローンに使用した細胞から特定の組織、特定の臓器、生物全体を作れるかどうかは、細胞の潜在能力、すなわち細胞が特定の組織に成長する能力に依存します。例えば、幹細胞と呼ばれる特定の細胞には、様々な組織や生物個体さえも作り出す能力があります。幹細胞は、ほかの細胞とは異なり、まだ特定の種類の組織に変化していないという点で独特です。ほかの細胞はすでに変化を遂げ、特殊化しています。ほかの細胞は脳や肺の組織のように決まった組織にしかなれません。この特殊化のプロセスは分化と呼ばれます。それに対して幹細胞は、病気になった組織や損傷を受けた組織の代わりになる組織を作り出すことができるため、大きな関心が寄せられています。幹細胞はあまり分化していないため、広範な組織、またはすべての組織を置き換えることができる可能性をもっています。

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