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医療の経済的問題の概要

執筆者:

Roger I. Schreck

, MD, Merck Manual

最終査読/改訂年月 2018年 7月
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医療費を考慮に入れることは、医療計画において重要です。

  • 米国では、ほかの国に比べて医療費が高く、経済全体に対する負担になっています。

  • このような高い医療費は、持続不可能であると多くの人は考えています。

  • 医療費は、政府のプログラム(メディケアやメディケイドなど)、民間保険会社の保険プラン(通常は雇用主を介して加入)、患者自身の資金(自己負担費)でまかなわれます。

米国の医療は、技術的には高い水準にありますが、高額の費用がかかります。2016年の医療費は約3.3兆ドルでした(1)。ここ数十年の間、医療費は経済全体の伸びを上回る勢いで増加してきました。米国のGDPに占める医療費の割合は、ほかの国よりかなり高くなっています。(GDPは国内で生産された商品とサービスの市場価値の総額です。政府機関が短期的な経済動向を観測する際に主要な指標として用いられます。)経済協力開発機構(OECD)によると、2016年に米国ではGDPの17.9%が医療費として支出されたのに対して、次に割合が高い国であったスイスではGDPの12.4%、スウェーデン、ドイツ、フランスおよび日本ではそれぞれ約11%でした(2)。

さらに、米国では1人当たりの医療費も他の国と比較して高くなっています。2016年、米国における1人当たりの医療支出は9900ドルでしたが、これは次に支出額が多かったスイス(1人当たり7920ドル)より25%高い額でした(2)。

医療費が増大すると、以下のような悪影響が出るおそれがあります。

  • 政府の医療支出が増えると、国債が増加したり、ほかのプログラムに充てる財源が減少したりします。

  • 人々の支払う医療費が増えると、ほかのことに費やすお金が減り、雇用主が医療保険料を負担する職場では、その分だけ手取りが少なくなります。

  • 雇用主が支出する医療費が増えると、自社の製品やサービスのコストが増大し、医療に関するコストが低い国に仕事が移る可能性があります。

  • 医療保険に加入する余裕のない人が増加します。医療保険に入っていない人が医療を受けても、普通はその費用を自分で払うことができません。結果として、その医療費は医療システムの費用を払っているほかの人が負担することになります。あるいは、医療保険に入っていない人が必要なケアを受けられず、本来なら防げたはずの重篤な病気を発症するかもしれません。

  • 医療保険でカバーされない医療費により、破産につながることがあります。

米国の1人当たりの医療費はほかの国より高額ですが、米国では医療保険に加入していない人が数多くいます。2014年に施行された医療費負担適正化法(Affordable Care Act:ACA)により保険に加入していない人の数は減りましたが、最近ACAに加えられた変更により、2019年に保険加入の義務づけ(individual mandate)(米国居住者の医療保険加入の義務づけ)が廃止されるため、この傾向は逆転するかもしれません。対照的に、ほかの先進国では医療費が米国より少ないにもかかわらず、すべての国民に対する医療が保障されています。

このため、現在、米国の医療支出は流動的であり、政府は医療保険の加入者数の増加とコスト削減の方法を探っています。

参考文献

医療の財源

米国の医療提供者(医師や病院など)は、次の財源から資金を得ています。

  • 民間保険

  • 政府の保険プログラム

  • 個人の資金(自己負担費)

このほかにも、政府が直接、職員を雇って政府の病院や診療所で医療を提供しています。例えば、退役軍人保健局(Veteran’s Health Administration)やインディアンヘルスサービス(Indian Health Service)などがあります。

民間保険

民間保険は営利または非営利の保険会社から購入できます。米国には多数の医療保険会社が存在しますが、それぞれの州で利用できる会社は限られています。

ほとんどの民間保険は、企業が従業員に提供する福利厚生の一環として購入されています。その費用は通常、雇用主と従業員の双方が負担します。雇用主が従業員の医療保険料として支払う金額は、従業員の課税収入にはなりません。そのため実質的には、政府が保険料をある程度補助していることになります。また、個人で民間医療保険に加入することもできます。

患者保護および医療費負担適正化法(Patient Protection and Affordable Care Act)(PPACA、または医療費負担適正化法[Affordable Care Act:ACA])は2014年に施行され、他の施策とともに、医療保険の利用性を高め、より手ごろな価格にし、利用を増やすことを目的とした米国の医療改革法です(米国保健福祉省[U.S. Department of Health & Human Services]ACA公式サイトも参照)。ACAの規定の多くは民間保険市場を拡大することと関係しています。この法は雇用主の医療保険提供にインセンティブを与えており、また雇用主を通じた保険または政府の保険プログラム(例えば、メディケアまたはメディケイド)に加入していない人のほぼすべてに民間医療保険に加入することを義務づけています(保険加入の義務づけ[individual mandate])。

ACAは医療保険取引所(health insurance exchange)を創設することを義務づけています。これらの取引所は、政府によって規制されており、標準化された保険プランを、民間保険会社が管理し、販売しています。取引所は、各州で設立したり、複数の州が協力して運営したりすることができます。州が設立しない場合は、連邦政府がその州に取引所を設立することもできます。個人および中小企業には、別個の取引所があります。民間保険プランには、ACAによって以下が求められています。

  • 年間または生涯の保険適用額の上限を設けない

  • 持病を理由に拒否しない(持病の有無にかかわらず加入できる[guaranteed issue])

  • 子どもは26歳まで、親の医療保険に加入できる

  • 保険料の差別化は限定的なものとする(保険料の差別化は、年齢、地域、喫煙、および家族の人数によってのみ図ることができる)

  • 自己負担費を制限する(現在、個人は5950ドル、家族は11,900ドル)

  • 詐欺でない限り、保険適用を打ち切らない(解約[rescission]と呼ばれる)

  • 一定の予防サービスを、コストシェアリングなしで保険適用とする

  • 保険料の少なくとも80~85%を医療費の支払いに用いる

ACAに影響を与える最近の差し迫った変更には以下のものがあります。

  • 保険料の税額控除およびコストシェアリング削減に対する政府の補助金をやめる

  • ACAマーケットプレイスのプランと比べて安価で限定的な、団体保険プラン(association health plan:AHP)や医療費払戻口座(health reimbursement arrangements:HRA)を拡大する

  • 給付および支払パラメータの通知(Notice of Benefit and Payment Parameters:NBPP)により課される規制の負担を軽減する。これにより、州はより自由に基本的医療給付(essential health benefits)を規定できる

  • 保険加入の義務づけ(individual mandate)を廃止する

これらの変更は、政府や個人の医療保険プランへの支出を削減することを目的としていますが、全体の医療費は削減されないこと、また保険に加入していない人や保険の補償が十分でない人の数が増加することを警告する著者もいます。

政府の保険プログラム

政府の保険で特に規模の大きいプログラムには、次のものがあります。

その他の政府のプログラムには、次のものがあります。

  • 州小児医療保険プログラム(State Children's Health Insurance Program):収入が平均以下であるもののメディケイドが適用される水準よりは多い家庭の子どもに保険を提供するプログラムです。連邦政府がこうした家庭向けの医療保険を運営する資金を州に提供しています(InsuredKidsNow.govも参照)。

  • 特別な医療ニーズをもつ子どもと若年者(Children and Youth with Special Health Care Needs):特別な医療ニーズをもつ人に医療を提供するために、資金と資源を調整するプログラムです(Children with Special Health Care Needs―保健資源局[Health Resources & Services Administration]の母子保健局[Maternal and Child Health Bureau]も参照)。

  • トライケア:このプログラムは、約900万人の現役および退役軍人とその家族を保険の対象としています(TRICARE—軍医療システム[Military Health System]の一部である国防保健局[Defense Health Agency:DHA]も参照)。

  • 退役軍人保健局(Veterans Health Administration):これは政府が運営する医療システムで、受給資格のある退役軍人に包括的な医療サービスを提供します。約900万人の退役軍人が登録しています(Veterans Health Administration—米国退役軍人省[U.S. Department of Veterans Affairs]も参照)。

  • インディアンヘルスサービス:このシステムに属する政府系の病院や診療所では、居留地に住むアメリカンインディアンとアラスカ先住民、約200万人に医療を提供しています(Indian Health Service—アメリカンインディアンとアラスカ先住民のための連邦医療プログラム[Federal Health Program for American Indians and Alaska Natives]も参照)。

  • 連邦公務員医療保険(Federal Employee Health Benefits:FEHB)プログラム:このプログラムにより、民間保険会社は、現役および退職した連邦公務員とその遺族を対象に、政府が定めるガイドラインに従った保険プランを提供することができます(The Federal Employees Health Benefits (FEHB) Program—米国人事管理局[Office of Personnel Management]も参照)。

  • 米国薬物乱用・精神衛生サービス局(Substance Abuse and Mental Health Services Administration:SAMHSA):米国保健福祉省(Department of Health & Human Services)の機関で、国民の行動面の健康を促進する公衆衛生活動を主導しています(SAMHSA.govも参照)。

  • 難民健康増進プログラム(Refugee Health Promotion Program):このプログラムは、新しく到着した難民に短期保険を提供しています(Refugee Health Promotion Program (RHP)—米国保健福祉省児童・家庭援護庁難民再定住室[Department of Health and Human Services Administration for Children & Families Office of Refugee Resettlement]も参照)。

全体的にみて、国民の約35%が政府の保険か政府が提供する医療の対象となっています。

自己負担

こうした保険制度の対象とならない医療を受ける場合は、個人で医療費をまかないます。少額の費用は貯蓄から支出されることが多く、高額になると資金を借り入れて(クレジットカードを使うなど)支払う必要があります。

フレキシブルスペンディング・アカウントは、一部の雇用主が提供しています。従業員は自己負担の医療費として一定の金額を設定し、給与からの天引きでこの口座に移すことができます。天引きされた金額には、連邦所得税がかかりません。ただし、この口座の残高に利息はつかず、年末までに使用されなかったお金は従業員に戻ってきません。

ヘルスセービングズ・アカウントも自己負担の医療支出に使用できます。この口座には利息がつき、使われなかった残高は繰り越されます。ただし、ヘルスセービングズ・アカウントの利用資格を得るには、従来の保険プランより保険料が安く、免責額(医療サービスを利用するたびに支払う料金)が高い医療保険プランに加入している必要があります。そうしたプランは高免責額の保険プランと呼ばれます。

米国では、約17%の医療費が自己負担で支払われています。米国では、自己負担の医療費が多くの自己破産の大きな要因になっています。

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