リハビリテーション専門の療法士は、痛みと炎症を治療します。このような治療によって患者は体を動かしやすくなり、全面的に リハビリテーション リハビリテーションの概要 リハビリテーションサービスは、外傷、脳卒中、感染症、腫瘍、手術、進行性の病気( 関節炎など)などによって正常に機能する能力を失った人に必要となります。 慢性的な閉塞性の肺疾患にかかっている人には、多くの場合、 呼吸リハビリテーションプログラム が適しています。重症の外傷や手術後などの理由で寝たきりの生活が長く続き、体力が落ちている人にもリ... さらに読む に取り組めるようになります。実際には以下のような技法が用いられます。
温熱療法
寒冷療法
電気刺激
牽引
マッサージ療法
鍼(はり)治療
温熱療法にするか寒冷療法にするかは患者の意思によりますが、急性の痛みには寒冷療法の方が効果的であるようです。温熱療法や寒冷療法を行う際には、 熱傷 熱傷 熱傷(やけど)とは、熱、電気、放射線、化学物質によって生じる組織の損傷のことです。 熱傷では痛み、水疱、腫れ、皮膚の剥離が様々な程度で起こります。 小さな浅い熱傷は、清潔を保ちつつ抗菌薬のクリームを塗るだけでよい場合もあります。 広範囲に及ぶ深い熱傷は、ショックや重度の感染症などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。... さらに読む や 低温による障害 寒冷障害の概要 皮膚と皮下組織は、循環している血液やその他のメカニズムによって、一定の温度(約37℃)に保たれています。 血液は主に、食物を燃焼(代謝)するときに細胞から放出されるエネルギーからその熱を得ています。このプロセスは食物と酸素の安定的な供給を必要とします。体の細胞や組織が適切に機能するには、体温を正常に保つことが必要です。体温が低くなると心臓... さらに読む を起こさないようにしなければなりません。
温熱療法
温熱は血流を増やし、結合組織を柔軟にします。また関節のこわばり、痛み、筋肉のけいれんを一時的に軽減します。温めることによって炎症も軽くなり、組織にできた体液の貯留(浮腫 むくみ むくみ(浮腫)は、組織内の体液の量が過剰になることによって起こります。その体液は主に水が占めています。 むくみは、広い範囲に及ぶこともあれば、腕や脚の全体または一部分でとどまることもあります。むくみは脚の膝より下の部分に起こることが多いですが、長期にわたってベッドで寝ていなければならない人(長期の床上安静)では、ときに殿部や性器、太ももの背面にむくみが起きることがあります。常に片側を下にして横向きに寝る女性では、下側にくる乳房にむくみが... さらに読む )も減少します。温熱療法は、様々な部位の関節炎などの炎症、筋肉のけいれん、挫傷やねんざなどの傷害の治療のために行われます。
体の表面を温める方法と、体の奥深くの組織を温める方法があります。ホットパック、赤外線加熱、パラフィン浴、水治療(温水マッサージ)では、体の表面に熱を与えます。超音波(周波数の高い音波)を利用する方法では、体の奥深くの組織で熱を発生させます。
寒冷療法(凍結療法)
冷却することによって組織の感覚を鈍らせ、筋肉のけいれん、外傷による痛み、最近発生した腰痛や炎症を和らげることができます。氷のう、アイスパック、気化するときに熱を奪う液体(塩化エチルなど)を使って冷却します。組織の損傷と体温低下(低体温症 低体温症 低体温症は、危険なほど体温が低くなった状態です。 低体温症は、寒冷な環境にさらされることによって発生したり悪化したりするため、 寒冷障害と呼ばれることが多くあります。 非常に寒い環境に身を置いたり、特定の病気があったり、動くことができない状況にある場合、低体温症による害が生じるリスクが高くなります。 最初はふるえが起こりますが、その後、錯乱状態となり、意識を失います。 体温が下がりきってしまう前に、体を温めて濡れた衣類を乾かすことができ... さらに読む を起こす)を避けるため、療法士は冷却剤の量や冷やす時間を限定します。血流が減少した組織(例えば、 末梢動脈疾患 末梢動脈疾患の概要 末梢動脈疾患とは、体幹、腕、脚の動脈の血流が減少する病気です。 末梢動脈疾患という用語は、たいていの場合、 動脈硬化による脚の動脈の血流不足を指して用いられます。しかし、脚以外の動脈、例えば腕でも起こることがあり、また、別の原因によることもあります。脳へ血液を供給する動脈の病気は、... さらに読む では動脈が狭くなる)は冷却しないようにします。
電気刺激
末梢神経損傷、 脊髄の病気 脊髄の病気の概要 脊髄の病気は、麻痺または 尿失禁や 便失禁(膀胱や腸の制御障害)などの永久的な重度の問題を引き起こすことがあります。場合によっては、評価と治療を迅速に行うことで、これらの問題を回避するか最小限に抑えることができます。 脊髄の病気の原因には、外傷、感染症、血流の遮断、骨折または腫瘍による圧迫などがあります。... さらに読む 、 脳卒中 脳卒中の概要 脳卒中は、脳に向かう動脈が詰まったり破裂したりして、血流の途絶により脳組織の一部が壊死し(脳梗塞)、突然症状が現れる病気です。 脳卒中のほとんどは虚血性(通常は動脈の閉塞によるもの)ですが、出血性(動脈の破裂によるもの)もあります。 一過性脳虚血発作は虚血性脳卒中と似ていますが、虚血性脳卒中と異なり、恒久的な脳損傷が起こらず、症状は1時間... さらに読む などで神経から筋肉に適切に信号が伝わらないと、筋肉はすぐにやせ衰え(筋萎縮)、硬くなり、収縮(けい縮)します。電気刺激は、皮膚に電極を取り付けることによって筋肉の収縮を誘発し、萎縮やけい縮の予防を助ける運動を行います。
経皮的電気神経刺激と呼ばれる電気刺激では、筋肉の収縮を誘発しない低電流を用います。TENSは慢性的な背部痛、関節リウマチ、足首のねんざ、帯状疱疹、局所的な痛みに対して有用です。TENSでは、電池で動く手持ち式の装置で電流を発生させ、皮膚に取り付けた電極を介してその電流を送ります。TENS装置はチクチクした感じを与えますが、痛みはありません。
TENSは1日に数回、20分から数時間行われますが、この回数や時間は痛みの程度によって決まります。多くの場合、患者は必要に応じてTENS装置の自宅での使い方を教えてもらえます。ほとんどの人がこの治療法に十分耐えられますが、すべての人の痛みが緩和されるわけではありません。TENSは 不整脈 不整脈の概要 不整脈とは、一連の心拍が不規則、速すぎる(頻脈)、遅すぎる(徐脈)、あるいは心臓内で電気刺激が異常な経路で伝わるなど、心拍リズムの異常のことをいいます。 不整脈の最も一般的な原因は心臓の病気(心疾患)です。 自分で心拍リズムの異常に気づくこともありますが、ほとんどの人は、脱力感や失神などの症状が起きるまで不整脈を自覚しません。... さらに読む を誘発することがあるため、重度の心疾患のある人やペースメーカーを使用している人は受けるべきではありません。TENSを眼の近くにあててはいけません。
牽引
首の骨の変性症(頸椎症 頸椎症 頸椎症は、首の骨(椎骨)とその間にある椎間板の変性により、頸部の脊髄が圧迫される病気です。 頸椎症の最も一般的な原因は変形性関節症です。 多くの場合は、最初の症状として、歩行がぎこちなく不安定になり、首に痛みが生じて首の柔軟性が失われます。 診断は、MRIまたはCT検査によって確定できます。 治療としては、柔らかいコルセットによる頸部の固定や非ステロイド系抗炎症薬のほか、ときに手術などが行われます。 さらに読む )、椎間板の断裂、むち打ち症、首の筋肉のけいれん(斜頸— 局所性ジストニアと分節性ジストニア 局所性ジストニアと分節性ジストニア を参照)などによる慢性的な首の痛みを治療するため、病院、リハビリテーションセンター、家庭などで首の牽引を行うことがあります。牽引は、ベッドで横になるよりも座って行う方が効果的です。通常は、モーターを使ったシステムが最も効果的です。
一般的に牽引は、運動やストレッチなどの他の 理学療法 頸椎症 頸椎症は、首の骨(椎骨)とその間にある椎間板の変性により、頸部の脊髄が圧迫される病気です。 頸椎症の最も一般的な原因は変形性関節症です。 多くの場合は、最初の症状として、歩行がぎこちなく不安定になり、首に痛みが生じて首の柔軟性が失われます。 診断は、MRIまたはCT検査によって確定できます。 治療としては、柔らかいコルセットによる頸部の固定や非ステロイド系抗炎症薬のほか、ときに手術などが行われます。 さらに読む と併用されます。頸部牽引装置は一般向けカタログで入手可能ですが、療法士が装置の種類を選択し、使用する重りの量を決める必要があります。患者が1人でこのような装置を使用してはいけません。けがのリスクを減らすため、重量を徐々に減らすことができるように家族が付き添う必要があります。
マッサージ療法
マッサージは、痛みや腫れを和らげ、硬くなった(収縮した)組織を緩めるのに役立ちます。けがの治療のためのマッサージを行うのは、資格をもつマッサージ療法士だけにすべきです。マッサージ療法は、血栓による炎症(血栓性静脈炎)や感染症の治療に用いるべきではありません。
鍼(はり)治療
鍼治療では、体の特定部位の皮膚の上から細い針を刺します。多くの場合、針を刺す場所は痛みを感じる場所からはるかに離れています。数分間、針を素早く、断続的に回転させますが、針に低電流を流す場合もあります。 鍼治療 鍼治療 中国伝統医学の1つである鍼(はり)治療は、欧米で最も広く受け入れられているCAM療法の1つです。痛みの専門医などの医師が鍼治療の技術を習得し、免許を取得することはありますが、認可を受けている鍼灸師が必ずしも医学部を卒業しているとは限りません。毎日、何百万人もの人が鍼治療を受けています。( 統合、補完、代替医療の概要も参照のこと。) 鍼治療では、皮膚と皮下組織に極細の鍼を刺し、体のツボに刺激を与えます。これら特定の部位を刺激することで、気... さらに読む により、脳が刺激され、エンドルフィンが分泌されます。脳内で自然に生成されるエンドルフィンは、痛みの感覚をブロックし、炎症を鎮めます。鍼治療は、最近生じたか、または 慢性的な痛み 慢性疼痛 慢性疼痛とは、数カ月間から数年間にわたって持続したり再発を繰り返したりする痛みです。 通常、以下のいずれかに当てはまる痛みは慢性疼痛とみなされます。 3カ月以上続く 痛みのもともとの原因になったけがや病気がなくなった後も、1カ月以上続く 数カ月から数年にわたって再発と消失を繰り返す さらに読む や 関節炎 関節の病気 に対して、他の治療法と一緒に用いられることがあります。鍼治療は、資格をもつ鍼灸師が滅菌した針を使って行わねばなりません。