健康な生活を送るために必要と考えるものは人によって異なります。例えば、チベットの草原に生えている希少な植物からつくられた秘薬や、山奥に住む賢人から得られる一般には知られていない秘密のアドバイスが必要と考える人もいれば、何年にもわたる懸命な研究と実践が必要と考える人もいます。しかし真実はかなり単純なものであり、実は、知ろうと思えば誰もが知ることができます(ただし、多くの場合、実践するのは容易ではありませんが)。実のところ、健康な生活を送るためのマニュアルを作るには、1枚の紙だけで事足りるのです。
食事と栄養
- 食べる量を減らしましょう(そうです、あなたのことですよ)。特に、糖分、単純炭水化物、トランス脂肪酸、飽和脂肪酸の量を減らすようにしましょう。
- 果物、野菜、全粒穀物の摂取量を増やしましょう。
- いろいろな種類のものを食べるようにしましょう。
- 病気などで特別な食事療法が必要な場合は、それを守りましょう。
ビタミンとサプリメント
- 母乳哺育の乳児にはビタミンDを与えましょう。人工乳を使用する場合は、鉄分が添加されたものを与えましょう。
- 50歳以上の人は、カルシウムとビタミンDを摂取しましょう。
- 妊娠中の女性や妊娠を考えている女性は、妊婦用の総合ビタミン剤を服用しましょう。
喫煙、飲酒、薬物
- 喫煙はやめましょう(最低でも寝タバコはやめましょう)。
- 飲酒はほどほどにしましょう(それが難しいようなら、一切飲むのをやめましょう)。
- 医学的に必要なもの以外で薬を使用するのはやめましょう。
運動と睡眠
- 年齢と体調に見合った体系化された運動(有酸素運動と筋力トレーニング)を、少なくとも週3回の頻度で、30~60分ずつ行いましょう。
- 歩く量を増やし、階段を使いましょう。
- できるだけ規則正しい睡眠習慣を維持しましょう。
感染症
- 食事や調理の前には手を洗いましょう。
- 食品の保管、下準備、調理(特に肉類)は適切な方法で行いましょう。
- きれいな水か飲めるよう処理された水を飲みましょう。
- 性行為は安全に行いましょう。
- 軽微な傷は石けんと水で洗い、ガーゼなどで覆っておきましょう。
- 蚊に刺されたりダニに咬まれたりする可能性が高いところでは、服装に気をつけ、防虫スプレーを使用しましょう。
- 薬物の静脈注射はやめましょう。特に、針の共用は絶対にやめましょう。
けがと一般的な安全対策
- シートベルトをしましょう。子どもの場合はチャイルドシートを使いましょう。
- 自転車やバイクに乗るときはヘルメットをかぶり、危険を伴うレジャー活動や仕事をするときは防護具を着用しましょう。
- 銃器は安全に保管し、取り扱いには十分注意しましょう。
- 仕事やレジャー活動では、定められた安全手順を守りましょう。
- 酔っているとき、眠たいとき、集中力が低下しているときには、車などの運転や電動器具の使用はやめましょう。
- 道路を横切るとき、車線を変更するとき、車の流れに合流するときには、十分に周囲を確認しましょう。
- ボートに乗るときはライフジャケット(救命胴衣)を着用しましょう。底の浅いプールや海などには飛び込まないようにしましょう。泳げるようになりましょう。
- 煙と一酸化炭素の探知機を自宅に設置しましょう。
精神衛生
- 他者には自分がそうされたいように接しましょう。
- 自分の行動に責任をもつのはもちろん、ほかの人やほかのことにも責任をもちましょう。
- 友人をつくり、長く付き合いましょう。
- 物ごとを悪く言ったり、人の悪口を言ったりせず、よい振る舞いを心がけましょう。
- 瞑想や祈りなどを行って、心の平安を保つようにしましょう。
- 小さなことで悩まないようにし、何が小さなことなのかを分別をもって判断するようにしましょう。
- 逆境では、できることは変化させ、どうしようもないことは受け入れ、それらの違いを理解するよう努めましょう。
- なにごとにもベストを尽くしましょう(ただし、自分のベストをよく知り、それ以上を自分に求めないようにします)。
- 家族や社会に役立つことをしましょう。
- いつか自分も死を迎えること、また、心の痛みや喪失感を経験する日が来るということを理解しましょう。
ヘルスケア
- 少なくとも1日2回は歯を磨きましょう。
- 定期的に歯医者に通い、歯の清掃とチェックをしてもらいましょう。
- 定期的に病院に行くようにし、年齢と性別に見合ったスクリーニング検査(血圧、血糖値、脂質値の検査、子宮頸部細胞診、マンモグラフィー、大腸がん検診、妊婦検診など)を受け、予防接種を受けましょう。
- 日焼けに注意し、日焼け止めを塗りましょう。
- 心や体の不調を感じたら、医師の診察を受けるようにしましょう。医師を信頼できたら、そのアドバイスに従いましょう。もし医師が信頼できない場合や、医師の話が納得できない場合、本当のことを話してくれていないように感じた場合は、そのような状況を無視せずに、セカンドオピニオンを求めましょう。
ここに書かれているすべてのことを実践し、それでもまだ何かが足りないと感じた場合は、さらに健康によい食事、サプリメント、運動法などを探し求めるのではなく、子どもに本を読み聞かせたり、周囲の困っている人を助けたりすることに時間、労力、お金をかけましょう。
皆様の健康を願って
Robert S. Porter, MD
MSDマニュアル編集長