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COVID-19厳選ニュース

COVID-19情報ポータルページ 

 

COVID-19に関する最新情報の収集を支援するため,MSDマニュアルでは特に重要なニュースを厳選して紹介している。

News items compiled by Fred R. Himmelstein MD FACEP.

      


 2021年3月9日

ニューヨークで変異株が急発生

新たな変異株B.1.526がニューヨークで同定されている。この変異株は急速に出現し,すでに米国北東部で広く拡大している可能性がある。Columbia Universityから報告されたゲノムサーベイランスでは,この変異株の検出率が12月下旬から2月半ばにかけて着実に上昇したことが観察され,過去2週間では12.3%増という警戒すべき上昇が認められた。変異株B.1.526は,現在あるモノクローナル抗体療法やワクチンの有効性を弱める可能性がある変異を複数有している。なかでも重要なものとして,南アフリカやブラジルで発生した厄介な変異株にみられるものと同じ,E484k変異がある。この新たな変異株について調査するため,Columbia Universityの研究チームは,E484k変異をもつウイルスを同定するために設計されたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査を行った。ニューヨーク市の四次医療機関でSARS-CoV-2検査が行われた計60,539の鼻咽頭拭い液検体のうち,4,358検体がSARS-CoV-2陽性と判定された。この研究では,感染者4,358名から無作為抽出されたSARS-CoV-2鼻咽頭拭い液検体(n = 1,142)がさらに検討された。83名(9.0%)がE484K陽性であったことが判明した。この新たな変異株に感染した患者は,米国首都圏のさまざまな地域で認められた。このデータは,2021年2月25日にMedRxivのサーバー上にプレプリントとして公開された。E484K変異は,SARS-CoV-2に対するほとんどの回復期およびワクチン血清のほか,一部のモノクローナル抗体における中和活性の喪失に極めて重要な役割を果たしている。著者らは,最近急増しているこのニューヨーク変異株とその厄介な変異は,SARS-CoV-2の新規変異株の拡大を追跡して封じ込めるための全国的なサーベイランスプログラムの実施が必要であることを強調するものであることが,今回の発見によって示されたと結論した。

リンク:https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.02.23.21252259v1.full-text


 2021年3月3日

ワクチンの「有効性」とは何を意味するのか?

現時点でFDAの承認を得ているワクチンは,いずれもCOVID-19に対して強い予防効果をもたらすが,その有効性の数値はワクチンごとにさまざまである。New York Times紙は3月3日付の記事において,ワクチンの有効性が実際にどのようなことを意味するのか,どのようにして決定されるのか,そして有効性の数値に差があるように見えることがある理由について,臨床試験が行われた場所やその地域でどの変異株が流行していたかを絡めつつ,詳しく考察している。

リンク:https://www.nytimes.com/interactive/2021/03/03/science/vaccine-efficacy-coronavirus.html?smid=em-share

 


 2021年2月22日

米国はいつになれば集団免疫を達成できるのか,その複雑さについて

2月20日付のNew York Times紙の記事において,米国で集団免疫が達成されるまでの道筋が分かりやすく図説されている。この記事では,集団免疫の達成にかかる時間は,いくつかの変数や未知の因子に依存している可能性があると指摘している。該当する変数や因子としては以下のようなものがある:

  • COVID-19の検査を受けたことも発症したこともない人を含めて,これまでにCOVID-19に感染した人はどれくらいいるのか? 最近の感染者数の急増により,これはかなり大きな数になる可能性がある。
  • COVID-19に感染した後に免疫が持続する期間はどれくらいか?
  • ワクチン接種はどれくらい迅速に進むか?
  • COVID-19の新しい変異株が急速に拡大しているが,このことが集団免疫達成の目標にどのような影響を及ぼすか?
  • 人々がマスク着用やソーシャルディスタンシングの対策を緩めたらどうなるか? マスク着用やソーシャルディスタンシングなどの対策は,ウイルスの感染拡大を遅らせる効果があると証明されている。しかし,ワクチン接種を受けた人が増えてくると,こうした予防対策は緩んでいく傾向がある。

リンク:https://www.nytimes.com/interactive/2021/02/20/us/us-herd-immunity-covid.html?smid=em-share


 2021年2月19日

空気中のCO2を測定してウイルス吸引のリスクを評価する

COVID-19は,感染者の呼気から発生する飛沫を介して伝播する。咳をしたり,大声で話したり,歌ったりすると,空気中の飛沫量が増加する。バーやレストラン,スポーツジムなどの閉鎖空間では,空気中のCO2濃度を測定することで換気を評価することができる。CO2は呼吸のたびに呼出される。換気が悪いと,CO2濃度が高くなる。

携帯型のCO2測定器を使用して換気を評価した報告もある。2021年2月10日付のWashington Post紙の記事では,このアイデアが考察され,オーブンでの調理といったヒト以外のCO2発生源など,考慮すべき因子が数多くあることが指摘されている。

リンク:The Washington Post

 


 2021年2月17日

隔離が必要になる条件とは?

米国CDCは2021年2月11日,COVID-19の発症者または陽性判定者に濃厚接触した人に対する隔離の必要性を判断するためのガイドラインを更新した。更新されたガイドラインでは,濃厚接触者が過去3カ月以内にワクチン接種を完了しており,かつ症状が何もみられない場合,濃厚接触後の隔離は必要ないとされている。過去3カ月以内にCOVID-19の検査で陽性と判定され,その後回復した人には,新たな症状が現れない限り,隔離や再検査は必要とならない。COVID-19の初回発症から3カ月以内に再び症状が現れた人は,症状の原因が他に特定されていない場合,再度の検査が必要である可能性がある。上記以外のケースでは,COVID-19患者と濃厚接触した人には隔離が必要である。濃厚接触とは,COVID-19患者と約2m以内の距離で合計15分以上一緒にいた場合,COVID-19発症者の世話を自宅で行った場合,COVID-19感染者と直接の身体接触(ハグやキス)をもった場合,感染者とコップや食器類を共用した場合,または感染者のくしゃみや咳を浴びた場合と定義されている。CDCのサイトでは,隔離期間を短縮する選択肢についても考察されている。

リンク:https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/if-you-are-sick/quarantine.html

                                                                     

 2021年2月16日

SARS-CoV-2の伝播を最も促進する因子はウイルス量

当初はSARS-CoV-2の感染拡大を抑える上でのヒドロキシクロロキンの有効性を評価することを目的に計画されたスペインの研究について,そこで得られたデータの解析により,初発患者のウイルス量が106コピー/mL未満であった場合の二次発病率(secondary attack rate)が12%であったのに対し,初発患者のウイルス量が1010コピー/mL以上であった場合は24%であったことが示された。2021年2月2日にLancet誌で公表されたこの研究により,ウイルス量が伝播を最も促進する因子であることが明らかになった。このほかに伝播リスクの増大と関連が認められた因子は,家庭内接触と接触者の高齢であった。接触者のマスク着用の有無や初発患者の呼吸器症状(例,咳嗽,呼吸困難,鼻炎)は,伝播の予測因子ではなかった。さらに,無症状の接触者から採取された拭い液検体のウイルス量に発症リスクとの関連が認められ,また,ウイルス量が多い接触者ではウイルス量が少ない接触者と比べて潜伏期間が短かったことも判明した。

リンク:https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(20)30985-3/fulltext

                                                                    

 2021年2月9日

コロナウイルスの変異株と変異

New York Times紙は,コロナウイルスがどのように進化するかを非常にわかりやすく説明した記事を掲載している。ウイルスが増殖するにつれて,ウイルス遺伝子のコードが複製される過程で生じるエラーとして新たな変異が発生する。それらの変異によって新たな変異株が生じ,それが増殖して拡散していく。この記事では,現時点で判明している重要な変異株が詳細に要約されている。

リンク:https://www.nytimes.com/interactive/2021/health/coronavirus-variant-tracker.html?smid=em-share

                                                                      

 2021年2月4日

抗体陽性患者におけるSARS-COV-2の再感染

SARS-COV-2の再感染リスクを評価したこの前向き研究は,2021年1月29日にMedRxivのサーバー上でプレプリントとして公表された。3,249人の海兵隊候補生のコホートが6週間にわたり追跡された。2週間の隔離・検査期間の後,週1回の頻度で計3回行われたSARS-COV-2のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査で3,076人が陰性と判定された。このうち,225人は同ウイルスに対する2回の抗体検査で血清反応陽性と判定され,残りは血清反応陰性であった。対象者はさらに6週間にわたり臨床的に追跡され,複数回のPCR検査を受けた。本研究では,血清反応陽性の参加者は189人中19人(10.1%)が少なくとも1回のPCR検査で陽性となった一方,血清反応陰性の参加者は2,246人中1,079人(48%)が陽性となった。以前に血清反応陰性と判定された参加者の感染リスクが高かったのは,密な生活条件や,個人同士が接触する必要性,基礎訓練中の厳しい課題が理由である可能性が高いと筆者らは指摘している。

注目すべきことに,PCR検査陽性となった血清反応陽性者の大半は,初回検査でこのウイルスに対するIgG抗体価が低かった。この集団はまた,ウイルス量が10倍少なく,PCR陽性期間が短く,無症候性感染の割合が高かった(84%対68%)。このように,初回感染で誘導される抗体は,その大半が感染防御につながるが,SARS-CoV-2に対する効果的な中和活性や以降の感染に対する免疫を確実にもたらすわけではない。これらの知見は,集団予防接種の戦略を最適化する上で重要である。

リンク:https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.01.26.21250535v1

                                                                    

 2021年2月3日

ロシア製COVID-19ワクチンは確認症例数を91.6%減少させるとの有効性報告

ロシア製ワクチンGam-COVID-Vac(スプートニクVと呼ばれている)の第III相試験の予備的結果が2021年2月2日にThe Lancet誌で公開された。このワクチンは,増殖欠損型組換えアデノウイルス(rAd)をベースとするワクチンである。このワクチンは,rAd26とrAd5を含有する複合ベクターワクチンであり,どちらもSARS-CoV-2糖タンパク質Sの遺伝子を保有する。本研究は,ロシアで実施されたランダム化二重盲検プラセボ対照試験であり,被験者は3:1の比率でワクチン群とプラセボ群にランダム化された。2020年秋に,21,977人の成人がワクチン群(16,501人)とプラセボ群(5476人)にランダムに割り付けられた。被験者は21日の間隔を空けて2回のワクチン接種を受けた。本研究の主要評価項目は,最初の接種から21日後(2回目の接種日)のPCR検査でCOVID-19と確定診断された被験者の割合とされた。解析の結果,ワクチンの有効性が91.6%であったことが示された。観察された有効性は,年齢層と性別で分けたすべてサブグループで87%を超えていた。なかでも,60歳以上の被験者におけるワクチンの有効性は91.8%であった。1回目のワクチン接種から21日後以降に確認された中等症または重症COVID-19の例数は,ワクチン群では0例であったのに対し,プラセボ群では20例あった。このことから,中等症または重症COVID-19に対するワクチンの有効性は100%となった。認められた有害事象はほとんどが軽度であった。重篤な有害事象でワクチンに関連すると判定されたものはなかった。今回の中間解析により,Gam-COVID-Vacがロシアの18歳以上の被験者に対して極めて有効で,免疫原性を示し,忍容性が良好であったことが示されたと著者は結論付けている。

リンク:https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)00234-8/fulltext

                                                                    

 2021年2月2日

COVID-19患者の一部では出血リスクが上昇する

COVID-19患者では動脈血栓と静脈閉塞のリスクが高くなることがよく知られている。しかしながら,一部のCOVID-19患者で重篤な出血も報告されており,COVID-19の入院患者400例を対象とした最近の観察研究では,全体の出血率が4.8%,重度の出血事象の発生率が2.3%という結果が示された。本研究では,プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)とプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(PAI-1)の血漿中濃度の測定によって示される凝固線溶バランスが検討された。COVID-19で入院した患者では,これら両因子の測定値に著明な上昇が認められた。TPAおよびPAI-1の高値には呼吸状態悪化との関連が認められ,特にTPA値の上昇は死亡率および自然出血の増加と強く相関していた。本研究の著者らは,COVID-19患者の線溶系のホメオスタシスは複雑であると結論している。血栓性合併症については多くの懸念が示されているが,一部の患者では因子間のバランスが線溶ないし出血に傾く可能性があり,著者らは,強力な抗凝固療法を行う際にはすべての患者で注意が必要と強く訴えている。

リンク:https://www.researchgate.net/publication/348518936_Plasma_tissue_plasminogen_activator_and_plasminogen_activator_inhibitor-1_in_hospitalized_COVID-19_patients

 

 2021年1月29日

新たな変異株に対する戦略をModernaが発表

2021年1月26日,British Medical Journal誌のオンライン版は,COVID-19の新しい変異株に対抗するべく新たなアプローチを2つ開発していることをModerna社が発表したと伝えた。南アフリカ変異株では中和抗体量が6分の1に減少することが複数の研究によって示され,免疫が減弱する可能性が懸念されている。現行のワクチンは南アフリカと英国の両変異株に効果を示したが,Moderna社は「念には念を入れて」この懸念に対処する2つのアプローチを検討していた。1つは,現行のワクチンで3回目の接種を追加することで,新たな変異株に対する中和抗体価がさらに増加するかどうかを調べるというアプローチである。もう1つは,南アフリカ変異株に対して同社が特異的に開発したmRNAワクチンの候補を追加接種するというアプローチである。Moderna社は,変異株に特異的なタンパク質に合わせて改変したワクチンによって南アフリカ変異株に対する免疫学的効果が高まるかどうかを調べる第1相臨床試験を米国で開始していると発表した。これらの新たなアプローチを検討する臨床試験では,数千人の被験者が2群に割り付けられる。一方の群では,従来の2回接種のワクチンで3回目の追加接種が行われ,もう一方の群では,追加免疫用の新規ワクチンであるmRNA-1273.351が接種される。新しいアプローチは,今秋までに準備が整う可能性があり,新たなワクチンを開発する場合に必要となる第1相,第II相,第3相を実施する長いプロセスと比べて,より迅速に米国食品医薬品局(FDA)の認可を取得できる可能性がある。

リンク:https://www.bmj.com/content/372/bmj.n232

                                                                 

 2021年1月27日

英国のCOVID-19変異株,致死性が従来より高い可能性

英国のScientific Advisory Group for Emergencies(SAGE)は,緊急時に政府の意思決定者に対して科学的根拠に基づく助言を与える団体であり,現在は昨今のパンデミック(世界的大流行)に対処するべく頻回に会合を重ねている。2021年1月21日の会合では,COVID-19変異株B.1.1.7について協議された。この変異株は,2020年12月に英国で最初に同定されたが,従来のものより伝播しやすいとみられ,現在では早くも英国の大部分で最も優勢なウイルス株となっている。新たなデータから,この変異株で致死率が30~40%高まることが示唆されている。すべての年齢層で致死率の上昇が認められた。その解析に採用された研究の内容とデータが,2021年1月21日の会合の議事録に記録されている。予備的なデータではあるが,他の変異株と比べて実際に死亡リスクが高い可能性があると同グループは結論づけている。

リンク:https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/955239/NERVTAG_paper_on_variant_of_concern__VOC__B.1.1.7.pdf

                                                                   

 2021年1月15日

抗体価の高い回復期血漿療法で高齢者のCOVID-19重症化を予防可能

2021年1月6日にNew England Journal of Medicine誌で発表された論文において,SARS-CoV-2 RNAが検出可能な発症後72時間以内の高齢の軽症COVID-19患者160人を抗体価の高い回復期血漿(SARS-CoV-2スパイク[S]に対するIgG抗体価 > 1:1000)とプラセボに割り付けたランダム化比較試験について報告された。登録されたのは,併存症の有無を問わず75歳以上の患者と,少なくとも1つの併存症がみられた65~74歳の患者であった。この試験は2020年6月4日から2020年10月25日までの期間,アルゼンチンの医療施設および高齢者施設で実施された。主要エンドポイントは重症呼吸器疾患の発症とされ,これは呼吸数 ≥ 30回/分,室内気下の酸素飽和度 < 93%,またはこの両方を満たす場合と定義された。重症呼吸器疾患は,回復期血漿投与群では80例中13例(16%)に,プラセボ投与群では80例中25例(31%)に発生した(相対リスク,0.52;95%信頼区間,0.29~0.94;P = 0.03)。回復期血漿に重篤な有害事象との関連は認められなかった。著者らは,軽度のCOVID-19症状がみられた高齢者に対し,SARS-CoV-2に対する抗体価の高い回復期血漿で早期治療を行うことで,重症呼吸器疾患への進行リスクが低下したと結論した。

リンク:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2033700

                                                                 

 2020年12月21日

COVID-19の入院患者では,抗炎症薬バリシチニブとレムデシビルの併用がレムデシビル単剤より優れていた

2020年12月11日付けのNew England Journal of Medicine誌のオンライン版で公表されたランダム化二重盲検プラセボ対照試験において,COVID-19で入院した成人患者1,030例を対象として,抗ウイルス薬のレムデシビルがレムデシビルと抗炎症薬バリシチニブ(ヤヌスキナーゼ阻害薬)の併用と比較された。主要評価項目とされた回復までの期間の中央値は,レムデシビル単剤の8日に対して,併用療法では7日であった(P = 0.03)。サブグループ解析では,登録時点で高流量酸素または非侵襲的換気を受けていた患者における回復までの期間は,併用治療で10日間であったのに対し,レムデシビル単剤では18日間であった。28日時点での死亡率は併用群で5.1%,対照群で7.8%であったが,この差は統計学的に有意ではなかった(死亡のハザード比,0.65;95%CI,0.39~1.09)。

リンク:https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2031994

                                                                 

 2020年12月18日

イタリアの教育機関でみられた生徒・職員間でのCOVID-19の感染伝播

イタリア北部のレッジョ・エミリア県において,学校が再開された2020年9月1日から10月15日までの期間中に36校の計41クラスの生徒・職員間で発生したCOVID-19感染例を対象として,二次発症率(secondary attack rate)を算出するために詳細な疫学調査が実施された。約1,000人の生徒と200人の職員の間で,48例の初発症例(生徒43人,職員5人)が認められた。この疫学調査の期間中,初発症例の接触者1,200人に対して調査が行われ,38例(3.8%)の二次感染例が特定されたが,それらはすべて生徒からの感染であった。しかしながら,二次発症率には年齢層間で大きなばらつきがみられ,保育施設と小学校での二次発症率が0.38%であったのに対し,中学校と高校での二次発症率は6.46%であった。保育施設と小学校で二次発症率が低かったことは,それまでに発表されていた他の研究結果と一致していた。しかしながら,中学校における二次感染率は,過去の研究の(全てではないが)多くで報告されていた値と比べて大幅に高い水準となった。

リンク:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7730487/

                                                                

 2020年12月10日

Pfizer-BioNTechのCOVID-19ワクチンに関するFDAのブリーフィング資料

FDAは,緊急使用許可(Emergency Use Authorization:EUA)について現在検討されているPfizer-BiONTechの新規COVID-19ワクチンに関するブリーフィング資料の全文を公開した。

リンク:https://www.fda.gov/media/144245/download

                                                               

 2020年12月8日

COVID-19ワクチン,第1段階では医療従事者と長期療養施設入所者が対象に

Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)によるCOVID-19ワクチンの分配に関する暫定勧告が12月3日,米疾病予防管理センター(CDC)の週次報告書Morbidity and Mortality Weekly Reportで公開された。この報告書では,全米のCOVID-19ワクチン接種プログラムの第1段階のガイダンスについて考察されている。同委員会は, 第1段階では医療従事者と長期療養施設の入所者にワクチン接種を勧めるよう勧告している。同報告書では,たとえ1つないし複数のワクチン候補が緊急使用許可を受けたとしても,全米ワクチン接種プログラムの開始後数カ月の間は,ワクチンに対する需要が供給を上回ると予想している。医療施設全般に加えて,特に長期療養施設が,SARS-CoV-2への感染や感染拡大が起きるリスクが高い場所となる可能性があると委員会は指摘している。COVID-19や他の疾患の患者に対応できる医療体制を維持するためには,医療従事者の保護が重要であると委員会は考えている。長期療養施設の入所者は,その年齢や基礎疾患保有率の高さ,そして集団生活を送っていることから,COVID-19に感染して重篤な状態になるリスクが高い。このことは,11月15日の報告書において,高度介護施設の入所者でCOVID-19の感染が約500,000例,それに伴う死亡が70,000例報告されたことで浮き彫りにされた。

COVID-19作業部会は,ワクチンおよび倫理学の専門家で構成された。作業部会では,ワクチン候補やCOVID-19のサーベイランスおよびモデル化に関するデータや,ワクチン配分に関する公表文献や外部専門家の報告についても検証するために,25回以上の会合がもたれた。さらに,COVID-19ワクチンを議題とするACIPの公開ミーティングが7回開催された。同委員会は,ベネフィットの最大化,害の最小化,公正さの促進,医療上の不平等の低減を原則とする指針に沿って運営されている。今回の暫定提言は,第III相臨床試験で新たに得られる安全性および有効性データやFDAによる緊急使用許可(Emergency Use Authorization)の条件に基づいて更新される可能性がある。

リンク:https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6949e1.htm

                                                             

 2020年12月7日

 SARS-CoV-2の型に転帰の差との関連

SARs-CoV-2感染症の感染致死率に大きな差がみられることが複数の研究によって明らかにされている。それらの差については,年齢および危険因子プロファイルの差,様々な集団におけるCOVID-19の年齢特異的有病率,ならびにパンデミック初期からの治療法の改善によるものと,大半の研究者が考えている。medRxivのプレプリントサーバーで公開された研究では,SARS-CoV-2の株間で感染致死率に差があるかどうかが検討され,その結果は複数の研究間でみられる感染致死率の不均一性の説明に役立つ可能性がある。著者らは,GISAID(Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data)データベースに登録された3637人の患者についてウイルスゲノムおよび臨床転帰に関するデータを解析し,ロジスティック回帰分析を用いて特定の型に重症度との関連がみられるかどうかを検討した。この研究ではウイルスに多数の型が存在していたことが判明した。12の型の頻度が高いと考えられ,研究対象集団の5%以上で認められた。これらの頻度の高い型のうち,軽症または重症のオッズと2倍以上の関連が認められたのは2つのみであった。まれな型が157あり,そのうち84の型に軽症または重症のオッズと2倍以上の関連が認められた(17の型は重症[オッズ比 > 2],67の型は軽症[オッズ比 < 0.5])。年齢,性別,地域のみを用いた予測モデルにウイルスのゲノムバリアントに関する情報を追加したところ,モデルの精度が有意に向上した。

リンク:https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.12.01.20242149v1

                                                               

 2020年12月3日

 COVID-19の高齢患者ではせん妄が主症状となることが多い

せん妄は,注意力,意識,認知機能の障害を特徴とする混乱状態が突然みられる症状である。せん妄は,重症疾患を有する高齢者の主症状としてよくみられることが知られており,長期入院や死亡などの好ましくない転帰との関連が報告されている。11月19日にJAMA Network Onlineで公表された研究では,米国全土の7医療機関の救急外来を受診してCOVID-19と診断された65歳以上の患者847人が対象とされた。注目すべきことに,847人のうち28%でせん妄が認められ,それらの患者の16%ではせん妄が主症状であった。全体で見ると,認められたすべての症状・徴候の中で,せん妄の頻度は6番目に高かった。さらに,せん妄で受診した患者の37%では,咳嗽や発熱などのCOVID-19の他の典型症状がみられなかった。受診時のせん妄には,集中治療室への収容や死亡など,病院内での好ましくない転帰のリスク増加との有意な関連が認められた。せん妄が主症状になることに寄与する因子として,年齢75歳以上,居住型介護施設または高度看護施設(skilled nursing facility)での生活,向精神薬の使用歴,視覚または聴覚障害,脳卒中,パーキンソン病などが同定された。>この研究により,高齢患者におけるCOVID-19の主症状としてのせん妄の重要性が強調された。

リンク:https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2773106

                                                             

 2020年12月2日

 COVID-19入院患者において入院時の高血糖は糖尿病と独立した死亡の強力な予測因子である

糖尿病は,COVID-19患者における重症化および死亡の危険因子であることが知られている。興味深いことに,Annals of Medicineに掲載された研究では,血清血糖値の高値が単独で,すなわち糖尿病の診断とは独立して,COVID-19の重症度および死亡率と相関することが示された。スペインの研究チームが実施したこの研究では,全国的な症例登録を利用して,2020年3月1日から5月31日までにスペインの109の病院から報告されたCOVID-19陽性患者11312例のデータが後ろ向きに解析された。著者らは,患者の記録から糖尿病の診断または入院時の糖尿病治療薬の使用を示す証拠が確認できた場合に,患者を糖尿病であるとみなした。

患者は入院時の血糖値に応じて3群に分類された:血糖値normal(< 140 mg/dL), high (140–180 mg/dL), and very high blood glucose (> 180mg/dL),high(140~180mg/dL),very high(> 180mg/dL)。多変量Cox回帰モデルで他の危険因子(糖尿病の既往を含む)を統制した場合にも,血糖値は依然として死亡の有意な予測因子となり,very high群ではハザード比(HR)= 1.50(95%CI:1.31-1.73,p < 0.001),high群ではHR = 1.48(95%CI:1.29-1.70,p < 0.001)という結果であった。

リンク:https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/07853890.2020.1836566

                                                            

 2020年11月30日

 COVID toes:Viral-induced interferonopathyの一臨床像

COVID-19のパンデミック(世界的大流行)において,そう痒や疼痛を伴う赤い斑,腫脹,水疱が足趾や,まれに踵部,手指にも現れる症状が報告されている。これは凍瘡(しもやけ)と呼ばれる病態であるが,今回のパンデミックの中で「CVIOD toes」と呼ばれるようになっている。JAMA Dermatologyに掲載された症例集積研究では,2週間弱の対象期間中にフランス,ニースのあるCOVIDクリニックを凍瘡様病変を理由に受診した患者40例について考察された。ニースは温暖な地域にあるため,このような臨床像は極めてまれであった。凍瘡様病変が報告された地域は,現地におけるSARS-CoV-2の感染拡大地域と一致していた。大半の患者がほかに医学的な問題のない若年者で,年齢の中央値は22歳(範囲は12~67歳)であった。検討の結果,それらの患者全員に過剰な免疫反応の徴候がみられたことが明らかにされた。注目すべきことに,本研究の全例がCOVID-19のPCR検査で陰性と判定され,同ウイルスに対する抗体陽性率も約30%に過ぎなかった。ほかに多くみられた所見としては,Dダイマー高値,リンパ球優位の炎症,皮膚生検で検出される血管損傷,PCR陽性の急性COVID-19感染症患者と比較して有意に強いインターフェロンαによる免疫応答などがあった。24人(60%)がCOVID-19疑い例との接触を報告し,11人(27.5%)が凍瘡様病変の出現前6週間以内にCOVID-19疑い例の定義を満たしていた。

 

著者らは,認められた皮膚病変とSARS-COV-2感染との潜在的な関連性について検討した。その結果,凍瘡様病変がみられた患者では,中等症または重症のCOVID-19患者と比べて,インターフェロンα反応が有意に強かったことが明らかにされた。インターフェロンαの産生は乳児期と若年成人期に増加し,その後は年齢とともに減少していく。著者らは,自らが知る限りにおいて,中等症または重症のCOVID-19に関する文献上の記載では凍瘡様病変は一切報告されていないと指摘している。凍瘡様病変がみられた患者では液性免疫が成立する前にSARS-COV-2を排除できたと考えられることから,それらの患者で抗体陽性率が比較的低かったことも,過剰に活性化されたI型インターフェロン応答によって説明できる可能性があると考えている。著者らは,認められた病変はviral-induced interferonopathyの症状であると結論づけ,SARS-COV-2の感染により引き起こされた可能性を示唆しているが,COVID-19と凍瘡様病変の因果関係について決定的な証拠は示されていないと述べている。

リンク:https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/fullarticle/2773121

                                                           

 2020年11月24日

 FDAがCOVID-19用在宅検査キットに初めての緊急使用許可を発行

Lucira Healthは,COVID-19用の自己検査キットについてFDAの緊急使用許可を取得した。この一体型検査キットは,COVID-19の原因ウイルスであるSAR-CoV-2の検出を目的とするものである。この検査には,LAMP(loop-mediated isothermal amplification reaction)法と呼ばれる技術が用いられている。LAMP法では核酸の増幅にsingle-tube techniqueが用いている。追加で逆転写の操作が必要になるRNAにも使用することができる。試料中にSARS-CoV-2の特徴的なRNAが存在する場合,LAMP法の操作により核酸が繰り返し増幅されることで試料の濁度が変化し,その変化を検査装置で読み取ることができる。Lucira社のCOVID-19 All-In-One Test Kitによる検査は,医療従事者によってCOVID-19の感染が疑われた14歳以上の個人を対象として,処方に基づく在宅使用が許可されている。この検査はまた,ポイントオブケア(例,診療所,病院,救急医療センター,救急治療室)での使用も許可されているほか,医療提供者が検体採取を行うことを条件として13歳以下の個人への使用も許可されている。このLucira社のキットを用いる検査では,他の高感度PCR検査を対照として94.1%の感染を正確に検出することができた。ウイルス量が少ない場合には,検査の感度が低下する。活動性感染をもはや反映していない可能性があるウイルス量がごく少量の検体を除外すると,Lucira社の検査は他のPCR検査との比較で100%の陽性一致率を達成した。この検査は無症状者では評価されていない。

 

検査の方法は以下のとおりである:付属のバイアルを電池式の検査装置に入れてから,鼻腔をスワブで拭い(他の鼻腔COVID-19検査と同様),そのスワブでバイアル内の溶液をかき混ぜた後,バイアルにキャップをし,カチッという音がして「ready」ランプが点滅し始めるまで押し込む。検査が完了すると,約30分後に陽性または陰性のランプが点灯することで結果が表示される。

報道発表へのリンク:https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/coronavirus-covid-19-update-fda-authorizes-first-covid-19-test-self-testing-home

リンク:https://www.fda.gov/media/143810/download

                                                          

 2020年11月23日

 ワクチンの配備が決定的に重要

この A. David PaltielJason L. SchwartzAmy ZhengRochelle P. Walenskyによる"Clinical Outcomes Of A COVID-19 Vaccine: Implementation Over Efficacy"と題した研究では,様々な有効性のワクチンについて,感染への感受性,重症化,重症度を軽減するという点での理論的な集団レベルのアウトカムがモデル化された。具体的な集団レベルのアウトカムとしては,感染,入院,死亡などが検討された。著者らはまた,スケールアップのペースや社会的受容性の程度,疾患の疫学指標(例,実行再生産数Rt)の変化など,最初の仮定を変更することでアウトカムがどのように変化するかにも注目した。

そして,ワクチンが集団内でどのように配備されるか(すなわち,製造,配送,接種のペースと対象範囲の広さ) が,アウトカムに対してワクチン自体の生物学的な有効性と同程度の影響を及ぼしたことを明らかにした。どのワクチン変数を高めても,それだけで他の変数の低さを補うことはできず,Rtが低い状態を初期だけでなくワクチン配備過程の全体を通して(公衆衛生対策により)達成し維持することが重要であった。

リンク:https://www.healthaffairs.org/doi/10.1377/hlthaff.2020.02054

                                                       

 2020年11月10日

 抗体を介した免疫を回避できる変異型SARS-CoV-2

University of Glasgow Center for Viral Researchの研究チームから,病原性を維持しながら抗体による免疫応答を回避できるようにする受容体結合モチーフの変異N439Kを有する変異型のSARS-CoV-2が報告された。N439K変異はスコットランドで最初に同定された後,米国を含む12カ国で出現し,世界で2番目に多く観察される変異体となっている。

受容体結合ドメイン(RBD)は,スパイクタンパク質にあってウイルスの細胞内への侵入を可能にしている部分である。RBD内で中和抗体応答の主要な標的となっている部分は,受容体結合モチーフRBM)と呼ばれる領域である。受容体結合モチーフは,RBDまたはスパイクタンパク質全体と比べて可塑性が高く,保存性が低いことが観察されている。N439K変異を有する受容体結合部位の変異型ウイルスは,この変異をもたない野生型ウイルスと比べて,類似の臨床スペクトラムを呈する一方,in vivoでわずかに高いウイルス量を示すことが報告されている。また,この変異型ウイルスはヒト細胞に対する結合能が高く,わずかに速く増殖することが細胞培養で認められた。研究チームは,パンデミック初期のSARS-CoV-2感染症回復者から単離したモノクローナル抗体を評価し,さらにモノクローナル抗体REGN10933,REGN10987,LY-CoV555およびS309についても同様に評価を行った。15.5%のモノクローナル抗体について,N439K変異体の受容体結合ドメインに対する結合能の2倍を超える低下が認められた。この報告は,SARS-CoV-2の進化をモニタリングしていくことの重要性を示唆している。SARS-CoV-2はゆっくりと進化しており,現時点では単一のワクチンで制御可能であるとしても,RBMに蓄積した変異が感染制御上のリスクをもたらす恐れがあり,特にワクチン接種や感染に対する抗体反応が中等度の個人には大きな影響をもたらす可能性がある。

リンク:https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.11.04.355842v1.full.pdf

                                                        

 2020年11月4日

 トロポニン高値はCOVID-19患者の30日死亡率の予測因子である

2020年10月30日にJournal of the American Heart Association誌で公表された観察コホート研究において,血清バイオマーカーとしてトロポニンI(TnI),脳性ナトリウム利尿ペプチド,CRP,フェリチン,Dダイマーが測定されたCOVID-19患者446人が同定された。この研究の主要評価項目は30日院内死亡率であった。重症COVID-19患者ではこれらのバイオマーカーの上昇がよくみられたが,トロポニンI値の上昇だけが30日死亡率の独立した予測因子であることが明らかにされた。研究チームは,この集団の患者について収集したデータを用いて,30日死亡のリスクスコアを策定した。スコアは患者ごとに算出され,重度のトロポニン上昇(トロポニン値 ≥ 0.34ng/mL)が2点,年齢65~74歳が1点,75歳以上が2点,受診時の低酸素症が1点とされた。スコアが0の患者では30日死亡率が0%であったのに対し,スコアが5の患者では30日死亡率が65.5%であった。全体として,スコアが3未満であった患者の30日院内死亡率は5.9%であったが,スコアが3以上であった患者の30日死亡率は43.7%であった。リスクスコアの妥当性確認が,より大規模なコホートにおいて血清トロポニン値は測定されたが他のすべてのバイオマーカーが測定されなかった患者で構成される独立した患者コホート(n = 440)を用いて実施された。

リンク:https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.120.018477

                                               

 2020年11月2日

 実施中の臨床試験でCOVID-19に対するモノクローナル抗体に有望な結果

Regeneron社は10月28日の報道発表で,同社のモノクローナル抗体カクテルREGN-COV2(2つのモノクローナル抗体の配合剤)を外来患者を対象として評価する実施中の臨床試験に関する結果を更新した。今回の更新では,先の報道発表で当初報告された275例に,さらに524例が追加された。この試験はランダム化二重盲検試験で,通常の標準治療に追加するときのREGN-COV2とプラセボの効果を比較して評価するものである。Regeneron社の発表によると,同社のモノクローナル抗体カクテルについて実施中の第2/3相試験で良好な結果が示され,主要評価項目と重要な副次評価項目について有意差が認められた。注目すべきことに,REGN-COV2は,軽症から中等症のCOVID-19患者のコホートにおいて,ウイルス量および医療訪問回数の大幅な減少をもたらした。Regeneron社はこれらの結果を米食品医薬品局(FDA)と共有し,FDAは予後不良な軽症から中等症COVID-19の成人患者に対する治療として,REGN-COV2の低用量投与について緊急使用許可を与えることを検討している。

報道発表へのリンク:https://newsroom.regeneron.com/news-releases/news-release-details/regenerons-covid-19-outpatient-trial-prospectively-demonstrates

                                                   

 2020年10月30日

 重症COVID-19患者では自己抗体産生がよくみられる

査読待ちの最近の研究により,重症COVID-19患者の約半数で血清中に自己抗体(主に抗核抗体[ANA]とリウマトイド因子[RF])が認められたことが明らかにされた。この後ろ向き研究には,自己免疫疾患の既往がない患者52人が登録された。NIH COVID-19 Severity Scaleに従うと,50人が最重症(critical)と判定された一方,2人が重症(severe)と判定された。抗核抗体は44%の患者で陽性(抗体価 ≥ 1:80),リウマトイド因子は24%で陽性であった。これらの自己抗体は急性期COVID-19の重症度に関連している可能性があり,体内に長期間存在する場合,「lingering COVID-19」の原因となる可能性もあると推測されている。この研究は因果関係を示すことを意図したものではなく,著者らは,これらの自己抗体が原因ではなく,単なるCOVID-19(あるいは他の重症ウイルス性疾患)の結果である可能性があることも認識している。しかしながら,この知見からは,介入の適応を判断する方法とともに,重症COVID-19に対する免疫調節薬の使用を裏付けるエビデンスが得られる可能性がある。著者の1人であるMatthew Woodruffは,2020年10月23日のThe Conversation誌のオンライン版で,本研究とその知見に関する比較的平易な考察も発表している。

研究へのリンク:https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.10.21.20216192v2

                                                  

 2020年10月27日

 COVID-19ワクチンの緊急使用許可についての考察

2020年10月16日にNew England Journal of Medicine誌に掲載されたperspectiveにおいて,COVID-19に対するワクチンを緊急使用許可の下で使用可能にすることに関連したいくつかの問題が考察された。筆者らは,重大な公衆衛生上の緊急事態への対応としてのワクチン開発の緊急性と,安全性および有効性に関する十分なデータ収集の必要性との間で,バランスをとる必要があると指摘している。さらに,緊急使用許可を裏付ける十分なデータを集めるには,臨床試験の被験者をワクチン接種後2カ月にわたりモニタリングすべきという自らの提言の背景にある理由について考察している。大半の有害事象はワクチンの受理から6週間以内に開始されたワクチン接種に関連していたが,安全性と有効性を十分に評価するには,より長期の追跡が必要であると指摘している。大半の有害事象はワクチンの受理から6週間以内に開始されたワクチン接種に関連していたが,安全性と有効性を十分に評価するには,より長期の追跡が必要であると指摘している。

リンク:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp2031373

                                                 

 2020年10月26日

 SARS-CoV-2の感染性を高める新たな補因子

著者らは,SARS-CoV-2の感染性が高い理由と,SARS-CoVと異なり非常に多くの器官系に影響を及ぼす理由を解明するため,それぞれのスパイクタンパク質の構造をゲノム配列決定法を用いて比較した。そして,ニューロピリン1(NRP1)と相互作用するヒトタンパク質にみられる配列と酷似するように見えるアミノ酸配列を,SARS-CoV-2が獲得していたことを発見した。この配列は,エボラウイルス,HIV-1,鳥インフルエンザウイルスの高病原性株など,多くの破壊的なヒトウイルスのSタンパク質にも認められる。NRP1は細胞内へのウイルス侵入に関与する補因子であり,受容体アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の発現が低い細胞に対する本ウイルスの感染能を高めていると著者らは考えている。NRP1は気道上皮と嗅上皮に局在する。SARS-CoV-2がSARS-CoVと比べて伝播率が高い理由の1つは,このCOVID-19を引き起こすウイルスが上気道と下気道の両方に感染することにある。結果として,SARS-CoV-2は鼻粘膜内にも存在し,咳嗽,くしゃみ,呼吸により容易に排出され,拡散することになる。研究チームは,SARS-CoV-2ウイルスに発現しているこの余分なスパイクタンパク質がヒト細胞表面上のレセプターであるNRP1に結合し,その結合がACE2を介したウイルスの細胞内侵入を有意に増強することを実証してみせた。現時点ではSARS-CoV-2の細胞侵入におけるACE2の役割にばかり焦点が当てられているが,今回の新しい知見から,ウイルスが細胞内への侵入にNRP1をどのように利用しているかを解明できると著者らは説明している。このことから,ACE2の発現パターンがSARS-CoV-2の組織指向性と一致しない理由を説明できる可能性がある。2020年10月20日にScience誌で公表されたこの発見は,ドイツとフィンランドの研究チームによってなされたものであり,重要な点として,これまで認識されていなかった手法による抗ウイルス療法を可能にする。

リンク:https://science.sciencemag.org/content/early/2020/10/19/science.abd2985

                                                

 2020年10月21日

 COVID-19の入院患者では神経症状がよくみられる

3月5日から4月6日までにシカゴ地域のNorthwestern Medicine Healthcare Systemに加盟する10の病院に入院したCOVID-19患者連続509例を対象とした後ろ向き研究において,入院時および入院中に神経症状の有無が検索された。Annals of Clinical and Translational Neurology誌で公表された本研究では,神経症状として,筋肉痛(44.8%),頭痛(37.7%),脳症(31.8%),浮動性めまい(29.7%),味覚異常(15.9%),および嗅覚脱失(11.4%)が認められた。脳卒中,運動障害,運動および感覚障害,運動失調,ならびに痙攣発作はまれであった(それぞれ全患者の0.2~1.4%)。脳症がみられた患者では,入院期間が3倍長く,退院後の臨床転帰が不良であった。頭痛,筋肉痛,脳症,めまい,味覚異常,嗅覚消失などの一連の神経症状をみると,82%の患者が何らかの神経症状で発症するか,経過中に何らかの神経症状が認められた。この研究では,COVID-19による入院患者の大半で神経症状がみられ,脳症には病的状態や死亡の増加との関連が独立して認められた。

リンク:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/acn3.51210

                                        

 2020年10月20日

 新型コロナウイルスに感染した妊婦から新生児にウイルスが伝播する可能性は低い

10月12日にJAMA Pediatrics誌のオンライン版で公表された研究により,COVID-19陽性と判定された母親を出生後の新生児から引き離すのは妥当な措置ではないかもしれず,直接授乳しても安全とみられることが明らかになった。2020年の3月13日から4月24日にかけて,Columbia University Irving Medical Centerと提携する2つの大規模病院において,周産期にSARS-COV-2に感染した母親100人から出生した新生児101人を対象として後ろ向きコホート研究が実施された結果,新生児の感染例は全体の2%(95%信頼区間:0.2%~7.0%,2例)で,この乳児コホートにおいて臨床的な感染の証拠は一切認められなかった。さらに,新たに設置されたCOVID-19 Newborn Follow-up Clinicで55人の乳児に対して出生後2週間にわたるフォローアップが行われたが,全員が健康な状態を維持していた。著者の知る限りでは,今回の研究はSARS-COV-2の感染が判明しているか疑われる母親から出生した新生児を対象とする研究として,過去最大のものであった。全体として,新生児にCOVID-19の臨床的な証拠は認められなかった。今回の研究結果は,母子同室,母乳栄養の確立,沐浴の開始延期など,エビデンスに基づく新生児ケアを引き続き実践していく方針を支持するものであり,SARS-COV-2陽性の母親を新生児から引き離すことや直接の授乳を避けることが妥当ではない可能性を示している。

リンク:https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2771636

                                              

 2020年10月19日

 WHOの研究によりレムデシビルなどの転用薬剤はCOVID-19に無効と判明 

世界保健機関(World Health Organization:WHO)は最近,COVID-19の治療に転用されている4つの抗ウイルス薬の有効性を評価するため,大規模なランダム化試験を実施した(ただし,盲検試験でもプラセボ対照試験でもない)。対象とされた抗ウイルス薬は,レムデシビル,ヒドロキシクロロキン,ロピナビル(リトナビルとの配合剤),インターフェロンであった。この試験には,30カ国の405の病院にCOVID-19で入院した成人患者11,266人が登録された。被験者はそれぞれ異なる薬剤を使用する投与群にランダムに割り付けられ,現地で入手できるか管理制限のない試験薬のいずれかが投与された。この研究では,2,750人がレムデシビル,954人がヒドロキシクロロキン,1,411人がロピナビル,651人がインターフェロンとロピナビル,1,412人がインターフェロン単剤の投与を受け,対照群の4,088人には,いずれの試験薬も投与されなかった。この研究では,これらの薬剤のいずれでも,対照群との比較で人工呼吸器使用率や死亡率の低下,入院期間の短縮は認められなかった。なお,このデータは査読を受けておらず,SOLIDARITY試験の研究グループによってプレプリントサーバーmedRxivに投稿されたものである。

リンク:https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.10.15.20209817v1

                                              

 2020年10月15日

 COVID-19パンデミックによる超過死亡と種々の影響 

Journal of the American Medical Association誌の2020年10月12日号に掲載されたEditorialにおいて,同号に掲載された米国におけるCOVID-19パンデミックによる死亡者数や経済的および心理的負担を報告したいくつかの研究について,要約とコメントが示された。2020年の3月1日から8月1日にかけて,米国では合計1,336,561人が死亡したが,これは通常時に予想されていた死亡数を20%上回る数字であり,225,530人の超過死亡が起きたことを意味しており,その67%はCOVID-19が直接の死因と判定されていた。それ以外の超過死亡にも,今回のパンデミックに関連した他の因子が寄与と考えるのが妥当である。この5カ月間のデータから2020年全体の数字を予想すると,2020年の超過死亡数は40万人を超えることになり,その数は第2次世界大戦での米国人の死者数に迫る。パンデミックによる他の影響に目を向けた別の記事では,1人の死亡につき9人の家族が長期間の悲嘆や心的外傷後ストレス障害の症状に苛まれると推定されている。また別の記事では,今回のパンデミックによる財政的負担が推定された。

リンク:https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2771758

                                            

 2020年10月13日

 SARS-CoV-2は免疫系のブレーキを解除することで,第二経路の補体カスケードによる正常組織の損傷をもたらす

SARS-CoV-2は免疫系の攻撃を正常細胞に向かわせる能力を有している。John Hopkins University School of Medicineの研究チームは,このウイルスが補体第二経路(alternative pathway complement:APC)と呼ばれる一連の生物学的反応のカスケードを誘導して,正常な臓器を攻撃させて損傷を与える機序を同定した。COVID-19では補体活性化の役割と重症度への寄与に対する認識が高まっているが,補体活性化の機序は不明であった。過去の研究から,SARS-CoV-2は細胞表面の複合炭水化物であるヘパラン硫酸と結合し,それからレセプターであるACE2に結合することで,細胞内への侵入が可能になることが明らかにされた。ウイルスの相互作用以外にも,細胞表面のヘパラン硫酸はAPCの負の調節因子であるH因子の結合にも重要である。SARS-CoV-2が細胞表面のヘパラン硫酸に結合すると,ウイルスはH因子の結合を遮断し,補体第二経路の調節を妨害する。この抑制性制御の喪失によってAPCが解放されることが,免疫系が正常な組織や臓器に損傷を与える。研究チームは,同経路のH因子より上流にあるD因子という別のタンパク質を遮断することによって,SARS-CoV-2により誘発される一連の破壊的事象を阻止できることを発見した。SARS-CoV-2スパイクタンパク質がAPCを活性化するという知見には,COVID-19に特徴的な多臓器障害,凝固障害,内皮損傷を理解する上で大きな意味がある。得られた知見は,COVID-19に対する治療に関して意義のあるものであり,H因子の上流に結合する補体阻害薬を用いた分子標的療法への展望を示しており,これはSARS-CoV-2による補体カスケードの活性化を阻止するのに有効となる可能性がある。

リンク:https://ashpublications.org/blood/article/doi/10.1182/blood.2020008248/463611/Direct-activation-of-the-alternative-complement

                                           

 2020年10月9日

 COVID-19に対する回復期血漿の抗体価は3~4カ月で低下

カナダのケベック州で実施され,Healio Newsにより報道され,10月1日にBlood誌にレターという形態で公表された縦断研究について,複数回にわたり回復期血漿を提供したドナー15人に関する結果が報告された。最初の提供時期は発症から33~77日後で,最後の提供時期は66~114日後であった。  最初の提供時にはすべてのドナーで抗受容体結合ドメイン(RBD)抗体が認められたが,その全員で最初の提供から最後の提供までの間に抗体価の低下がみられた。提供時期が四分位範囲(33~53日後,54~69日後,70~84日後,85~114日後)に分割された。1番目と2番目と3番目の四分位期間の間では,統計学的に有意でない小幅な低下がみられたものの,抗体価は安定していた。対照的に,3番目と4番目の四分位期間の間では,抗体価に著しい低下(36.8%,p = 0.0052)がみられた。今回の知見により,COVID-19から回復した血漿提供の希望者は,提供可能になってからあまり長く待つべきではなく,医師は提供された血漿を投与する前に抗体の存在を確認すべきであることが明らかにされた。

リンク:https://www.healio.com/news/hematology-oncology/20201001/covid19-antibodies-in-convalescent-plasma-donations-wane-by-3-to-4-months?ecp%20=%207e47bd7b-fe8e-4fe6-aa89-4526a98357d5&M_BT=3679670404669

     https://ashpublications.org/blood/article/doi/10.1182/blood.2020008367/463996/Waning-of-SARS-CoV-2-RBD-antibodies-in

                                          

 2020年10月8日

 インドでのCOVID-19の伝播には高リスク接触者が大きく関与

COVID-19の伝播に関する過去最大級の研究において,インドの2つの州におけるコロナウイルス陽性患者84,965人に対する接触者追跡調査の対象者が3,084,885人に達した。臨床検査の結果に加えて,疫学データも入手できた575,071人の接触者について検討が行われた。本研究は2020年9月30日にScience誌で公表された。Princeton Environmental Institute,John Hopkins University,University California Berkeleyから集結した研究チームが,インド東南部のタミルナードゥ州とアーンドラプラデーシュ州の公衆衛生当局と協力して研究を実施した。得られたデータによると,感染した患者は1人当たり平均で約7人と接触していたが,陽性患者の71%は接触者の誰にも感染させていなかった。高リスクの接触者(発端患者に安全対策なしで直接身体的接触をした濃厚接触者)の感染率(発端患者から感染した接触者の割合)は,約10.7%であった。低リスクの接触者(発端患者と接近したものの,高リスク曝露の条件を満たさなかった接触者)の感染率は,およそ4.7%であった。この研究では,人口構成として小児と若年成人がウイルスを拡散している重要な集団となっており,ほとんどの場合,同年代の他者にウイルスを伝播させていた。この人口構成は過去の研究で示されてきた結果よりも重要である可能性がある。この研究により,高リスク接触者による感染伝播の役割が浮き彫りにされた。

リンク:https://science.sciencemag.org/content/early/2020/06/15/science.abd0831

 

 2020年10月2日

 他の点で健康なCIVOD-19患者が重症化する理由を免疫学的異常で説明できるか

Science誌で最近発表された2つの研究により,COVID-19が重症化することがある理由に光が当てられた。それらの研究により,インターフェロンに対する抗体を有している患者や,インターフェロンの産生および機能を妨げる先天異常や遺伝子変異を有する患者もいることが明らかにされた。重度のCOVID-19肺炎を発症した患者について抗インターフェロン抗体の保有を調査した結果,検査対象とされた重症COVID-19患者987例中101例が1型インターフェロンに対する中和自己抗体を有していたことが判明した。これに対し,無症候性または軽症COVID-19感染者663例では,1例も抗インターフェロン抗体を有していなかった。65歳以上では,抗インターフェロン抗体を有する患者がより多かったことも判明した。インターフェロンとは,ウイルスから体内の細胞を保護している17種類の重要なタンパク質の総称である。1型インターフェロンが不足している個人では,効果的な免疫反応が起こらない。この研究チームは以前,重症COVID-19患者では,インフルエンザに対する免疫防御にとって重要な13の遺伝子の変異が有意な頻度でみられることを示していたが,今回の研究では,重度のCOVID-19肺炎患者では659例中23例(3.5%)で同様の変異が認められた。この知見は,一部の人々が重症化する一方で他の人々はそうならない理由について,理解を深めることにつながる可能性がある。重度のCOVID-19肺炎を発症した患者は,機能的な遺伝子が完全に欠失しており,SARS-CoV-2の感染に対する反応として検出可能な1型インターフェロンが全く産生されていなかった。全体では,COVID-19の最重症例の最大14%において,1型インターフェロンの欠如につながる先天異常や免疫学的異常が何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。今回の2つの発表により,SARS-CoV-2に対する防御免疫において1型インターフェロンが重要な役割を果たしていることが浮き彫りにされた。

リンク:https://science.sciencemag.org/content/early/2020/09/23/science.abd4585

         https://science.sciencemag.org/content/early/2020/09/28/science.abd4570

                                       

 2020年9月28日

 COVID-19患者に対する体外式膜型人工肺

2020年9月25日にLancet誌でオンライン公開された研究において,COVID-19による急性低酸素性呼吸不全を認める患者1,035例を対象として体外式膜型人工肺(ECMO)の使用が検討され,死亡率が40%未満であったことが明らかにされた。データは36カ国の230の病院が参加する国際症例登録から収集された。COVID-19と診断され,2020年の1月16日から5月1日までにELSOレジストリーにECMOの使用開始が記録された16歳以上の患者が解析対象とされた。この研究では,90日院内死亡率が解析の主要評価項目とされた。ECMOは,人工呼吸器とその他のケアで肺機能を維持できない場合に極めて高い死亡リスクに曝される患者において,生命を脅かす呼吸不全を管理するための診療アルゴリズムの最終段階で用いられている。得られた結果は,過去に報告された急性低酸素性呼吸不全におけるECMOでの生存率と一致しており,ECMOの使用経験が豊富な施設ではCOVID-19に関連した治療抵抗性の呼吸不全に対しその使用を考慮すべきとする現在の推奨を裏付けている。

リンク:https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)32008-0/fulltext

                        

 2020年9月23日

 SARS-CoV-2に感染した入院患者では小児と成人で免疫反応に差がみられる

Albert Einstein College of Medicine Children's Hospital MontefioreとYale Universityは,小児患者での典型的な経過が成人患者より軽症となる理由を明らかにするため,COVID-19の成人患者と若年患者で免疫応答を比較する研究を実施した。この研究では,COVID-19の若年(24歳未満)患者65例と成人患者60例の間で,サイトカイン,液性免疫,細胞性免疫の反応が比較された。予想されたとおり,小児の方が成人より臨床的な状態がはるかに良好であることが判明した。

また,若年患者は成人患者と比べて,自然免疫系に関連するサイトカインであるインターロイキン17(IL-17)の血中濃度が高く,このことから自然免疫がより強固であることが実証された。一方,成人患者では若年患者と比べて,ウイルスのスパイクタンパク質に対するT細胞応答がより強固で,血清の中和抗体価がより高く,抗体依存性細胞貪食作用についても強い活性が認められた。さらに,COVID-19の成人患者では,回復患者よりも死亡した患者や人工呼吸器を必要とした患者の方が中和抗体の抗体価が高く,総じて若年患者での抗体価より有意に高かったことも判明した。

以上の知見から,若年の感染者が重症化して死に至ることが少ないのは,おそらくは自然免疫応答が強固であるためであり,したがって,T細胞応答や抗体応答を促進しても(特に疾患経過の後期には)助けにならない可能性があることが示唆される。

リンク:https://stm.sciencemag.org/content/early/2020/09/21/scitranslmed.abd5487

                           

 2020年9月22日

 University of Connecticutの研究チームがCOVID-19に対するCRISPRベースのポイントオブケア検査について報告

PCR/RT–PCR法に基づく最新の検査法は,SARS-CoV-2感染症に対する最も正確な診断法と考えられているが,手順が複雑であり,ポイントオブケア診断への応用には至っていない。University of Connecticut Health Centerの研究チームは,SARS-CoV-2から抽出したウイルスRNAを検出する方法としてCRISPRベースの核酸検出検査を開発した。そのCRISPRベースの新たな検査法は,PCRベースの検査法とは異なり,1つのポット内ですべての要素をインキュベートできるため,個別に行う複雑な操作が不要になっている。また,AIOD-CRISPRアッセイの結果は,直接目視できる試料の蛍光によって示されるが,マイクロ流体チップなどで行う器具操作も最終的には自動化が可能になり,半定量的な結果が得られる可能性もある。

このCRISPRベースのアッセイは,8個のCOVID-19陽性検体を含む,臨床で採取された28個のCOVID-19スワブ検体で検証された。各検体が新たなアッセイと標準的なRT-PCR法により評価された。COVID-19陽性の8検体すべてが40分以内に陽性と判定された。新しいアッセイはSARS-CoV陽性検体ともMERS-CoV陽性検体とも反応しなかった。この概念実証には,当然ながら,臨床的または商業的に適用可能となるまでにかなりの開発努力が必要である。

リンク:https://www.nature.com/articles/s41467-020-17436-6

                       

 2020年9月18日

 細胞由来のヘパラン硫酸がSARS-CoV-2の細胞侵入を可能にする

あるチームの研究により,細胞由来のヘパラン硫酸がSARS-CoV-2のコレセプターとして働き,ウイルスをレセプターであるアンジオテンシン変換酵素(ACE)に結合させて細胞内に侵入させていることが明らかにされた。細胞由来のヘパラン硫酸は細胞表面に認められるが,この事実はCOVID-19の予防および治療における新たなアプローチにつながる可能性がある。2020年9月14日にCell誌で公開されたこの報告には,SARS-CoV-2の細胞侵入がどのように促進されるかが記載されており,それによると,細胞由来のヘパラン硫酸がSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合することで高次構造の変化が生じ,それによりウイルスのACE2への付着とその後のヒト細胞への結合が促進される。このウイルスがヒトの肺細胞に侵入するには,細胞表面上のヘパラン硫酸とACE2タンパク質の両方に結合する必要があることが明らかにされた。同チームによるさらなる検討の結果,細胞表面からヘパラン硫酸を除去する酵素を使用することでSARS-CoV-2の侵入が阻止されたことも明らかにされた。同様に,ヘパリンや抗凝固作用のない誘導体による治療でも,ヒト細胞に結合していないコロナウイルスに競合的に結合することにより感染を阻止できる。

リンク:https://www.cell.com/action/showPdf?pii=S0092-8674%2820%2931230-7

                           

 2020年9月17日

 新たに合成されたナノボディはSARS-CoV-2を中和し,エアロゾル化による吸入投与が可能

University of California San Franciscoの研究チームは,ラクダ,アルパカ,ラマで認められるナノボディと呼ばれる微小な抗体様免疫メディエーターから着想を得て,SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に強く結合する分子を遺伝子工学的に作製した。ナノボディとは,軽鎖を欠くものの,完全な抗原結合能を備えた単一のN末端ドメインを有する機能的抗体である。このような単一ドメインの抗体断片(VHHまたはNanobodies®)には,バイオテクノロジーの応用という面でいくつかの利点がある。これらの「ナノボディ」は,ヒトでみられる抗体と比べて,構造が単純でサイズが小さい。これらの特徴により,ナノボディは安定性が高く,実験室で容易に修飾すること可能である。ナノボディの大規模なライブラリーをスクリーニングした結果,SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合するナノボディが同定された。最も力価が高かった3つのナノボディで実験が行われた結果,それらにSARS-CoV-2のヒト細胞への感染を阻止する効果があることが示された。非常に低い用量でも有効性が認められた。研究チームは,スパイクタンパク質への結合に関与するすべてのアミノ酸を連続的に変異させることにより,選択した1つのナノボディの力価を改善することができた。それらのうち2つの変異を導入することで,スパイクタンパク質に対する結合親和性が500倍に改善された。研究チームは次に,これらの抗体3つを互いに結合させて1つの分子鎖を作出した。このトリプレットは,スパイクタンパク質に対する結合親和性が単一の抗体と比べて200,000倍高いという結果が得られた。研究チームは,トリプレットナノボディの乾燥粉末を作製することに成功し,その場合も抗ウイルス活性が維持されることを実証した。これらの抗体は生産および送達可能性の点で大きな利点を備えている。すなわち,細菌や酵母を用いて安価に大量生産することができ,非常に安定性が高く,エアロゾル投与用の粉末にすることが可能である。目標はエアロゾル製剤をCOVID-19に対する治療薬または予防薬として使用することである。全身に循環する抗体は,そのごく一部しか気道表面の上皮細胞に到達しないが,エアロゾル化されたナノボディは,自己吸入によって鼻腔および肺上皮に直接送達することが可能である。

 

リンク:https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.08.08.238469v2

                        

 2020年9月16日

 パンデミック中のイベント参加に伴うリスクを評価する

このパンデミックの最中,イベントに参加した場合にCOVID-19感染者に遭遇するリスクを知っておくことは,そのイベントに参加するかどうかを決定する上で重要な情報となるであろう。国内の多くの場所が開放されるようになり,不要不急な活動の再開に伴うリスクを推定できるということが極めて重要になっている。そのための手段の1つであるCOVID-19 Event Risk Assessment Planning Toolというプログラムは,ジョージア工科大学(Georgia Tech)が開発したもので,New York Times誌が集計する感染者数とCovidtracking.comのダッシュボードからのデータに基づいて毎日更新されている。このインタラクティブマップには,特定の規模のイベントでCOVID-19感染者に遭遇する可能性がどの程度あるかが郡単位で表示される。このツールでは,ある郡で開催される1つのイベントにCOVID-19感染者が少なくとも1人いるリスクの高さが,その参加人数に基づき,百分率で表示される。その計算では,イベントの参加者全員がその地域にいる他の人々と同じ確率で感染していると仮定する。このツールでは,実際の感染者数が報告値より何倍多いかを勘案することで,確認バイアスに対する調整が可能である。これらの仮定に基づき,得られる計算結果は1つの近似値とみなすことができる。例えば,ロサンゼルス群で開催され100人が出席する結婚式に参加する場合,確認バイアスを10とすると,出席者の中にCOVID-19の感染者が少なくとも1人いる可能性は74%となる。同様のリスクはフィラデルフィアでは61%になるが,ウエストバージニア州ウェッツェル郡では1%未満となる。

 

リンク:https://covid19risk.biosci.gatech.edu/

                     

 2020年9月15日

 COVID-19重症化の原因としての「サイトカインストーム」に疑い

COVID-19の重症化にサイトカインストームが関与していない可能性が新たな研究により示唆されている。JAMA誌で発表された研究において,オランダのRadboud University Medical Centerの研究チームは,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を伴うCOVID-19で集中治療室に収容された患者,細菌感染による敗血症性ショック(ARDSの有無は問わない)の患者,ならびに心不全の発症後または重度外傷の受傷後に集中治療を受けるために入院した患者を対象として,3つの炎症性サイトカイン(腫瘍壊死因子[TNF],インターロイキン6[IL-6],インターロイキン8[IL-8]) の血中濃度を測定した。免疫抑制薬の使用や悪性腫瘍などの免疫不全がある患者は除外された。COVID-19の患者では,3つのサイトカインすべての血中濃度が,細菌感染による敗血症性ショックとARDSを合併した患者よりも有意に低かったことが明らかにされた。COVID-19患者における血中サイトカイン濃度は,外傷または心停止のあるICU患者のそれと同程度であった。この研究結果から,サイトカインストームがCOVID-19を特徴付けるものではないことが示され,COVID-19患者が重症化する際にサイトカインストームが大きな役割を果たすというこれまでの報告や仮説に疑問が投げかけられた。抗サイトカイン療法がCOVID-19の患者に有効かどうかは依然として定かではない。

リンク:https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2770484?guestAccessKey=ca659b2f-6a60-4204-8ef6-f89f746f0693&utm_source=twitter&utm_medium=social_jama&utm_term=3649792285&utm_campaign=article_alert&linkId=98774464

                      

 2020年9月10日

 COVID-19は胆嚢炎に似ることがある

SARS-CoV-2は複数の器官系を侵すことが知られており,最初に呼吸器系が関係しない臨床像を呈することがある。他の器官系に関連する非呼吸器症状がある患者を評価する際には,臨床医はCOVID-19が他の疾患に類似する可能性があることを認識し,COVID-19感染の可能性を見逃さないようにする必要がある。2020年9月2日付けのJournal of Palliative Medicine誌のletter to the editorにおいて,急性無石胆嚢炎で発症したCOVID-19症例2例が報告された。1例目は84歳の女性患者で,尿路感染症の症候と24時間にわたる発熱を訴えて救急外来を受診した。腎盂腎炎による敗血症に対する治療が行われた。3日目,新たに右上腹部痛がみられ,その後,胆嚢壁の肥厚と胆嚢周囲への液体貯留が明らかとなった。胸部および腹部CTにより胆嚢穿孔は除外され,肺実質は正常であった。メトロニダゾールが追加され,腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行された。抜管後,新たに呼吸器症状と急性呼吸窮迫症候群がみられた。鼻咽頭拭い液の検査でSARS-CoV-2 RNAの存在が確認された。患者は術後5日目に多臓器不全で死亡した。胆嚢の組織学的評価では炎症は示されなかったが,胆嚢壁から採取された組織は,採取された3つの領域すべてでSARS-CoV-2 RNA陽性であった。2例目は,末期腎不全で透析を受けていた83歳の男性であった。発熱を訴えて入院した。初診時には腹部および呼吸器症状は同定されず,胸部X線も正常であった。5日目,新たに右上腹部痛がみられ,マーフィー徴候陽性となった。腹部超音波検査で胆嚢壁の肥厚と堪能周囲への液体貯留が判明し,胆石はみられなかった。セフトリアキソンとメトロニダゾールによる保存的治療で管理され,緩やかに回復していった。6日目,呼吸器症状が現れ,COVID-19の感染が確認された。これらの症例は,SARS-CoV-2感染症が急性無石胆嚢炎に類似する可能性があることを示している。

研究へのリンク:https://www.journal-of-hepatology.eu/article/S0168-8278(20)30550-X/fulltext

                      

 2020年9月8日

 COVID-19重症患者におけるステロイドの全身投与と死亡率

ステロイドはCOVID-19重症患者の死亡率を低下させることが明確に示されている。1,703人の患者を含む7つのランダム化臨床試験のメタアナリシスの結果が2020年9月2日にJAMA誌で公表されている。そのメタアナリシスは,地理的に多様な施設から報告された比較的多数のCOVID-19重症患者のデータに基づいて行われた。1,703人のうち647人は割付けから28日目までに死亡した。標準のケアを受けた患者の死亡率は40%であったが,ステロイドによる治療を受けた患者では,この値が32%に低下した。これは統計学的に極めて有意な差(P < 0.001)であった。機械的人工換気を必要とする患者や,人工呼吸器は不要ながら酸素投与を必要とする患者にも,同様の結果が認められた。また,ステロイドを投与された患者と投与されなかった患者とでは,重篤な有害事象にほとんど違いがみられないことも,このメタアナリシスで明らかにされた。重症患者に対するステロイドの明らかなベネフィットが示されたことを受けて,世界保健機関(World Health Organization:WHO)は,COVID-19の重症患者に対する治療法としてステロイドの全身投与を推奨する更新版のガイダンスを公表した。

研究へのリンク:https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2770279

WHOへのリンク:https://www.who.int/news-room/feature-stories/detail/who-updates-clinical-care-guidance-with-corticosteroid-recommendations

                    

 2020年9月4日

 新たに発見された細胞経路はエボラウイルスおよびSARS-CoV-2による感染から細胞を保護する

細胞がウイルス感染から自らを守る機序を研究している研究チームが様々なウイルスに対する新たな治療法につながりうる新規の経路を発見した。その知見は2020年8月27日にScience誌で公開された。著者らは,革新的なスクリーニング法であるtransposon-mediated gene-activation screenを用いて,エボラウイルスのヒト細胞への感染を予防することができる遺伝子を検索した。その結果,CIITA(MHC class II transactivator)およびCD74遺伝子が抗ウイルス活性を有し,カテプシンを介したウイルス糖タンパク質の開裂を妨げることでエボラウイルスを阻害し,ウイルスの融合を阻止できることが判明した。コロナウイルスとフィロウイルス(エボラおよびマールブルグウイルス)を含む多くのウイルスは,細胞への感染にカテプシンプロテアーゼを利用する。著者らは,これらの遺伝子によってSARS-CoV-2を含むコロナウイルスのエンドソームを介した細胞侵入経路を遮断できることを示した。この新たに発見された細胞保護機構は,将来出現する可能性のあるウイルスを含め,複数のウイルスに対して有効となる可能性がある。

リンク:https://science.sciencemag.org/content/early/2020/08/26/science.abb3753

                       

 2020年8月28日

 COVID-19に対する鼻腔内接種の新規ワクチンがマウスで強力かつ広範な免疫反応と感染予防効果を示した

Washington University School of Medicineは,新規のCOVID-19ワクチンの開発を発表した。COVID-19向けに開発中の他のワクチンとは異なり,これは鼻腔内接種用のワクチンである。このワクチンを接種したマウスでは,特に鼻腔および上気道粘膜において,強い免疫反応が認められた。この論文の最終著者であるMichael S. Diamond, MD, PhDは,「これらのマウスは十分に疾患から守られ,一部のマウスではウイルスを接種した後も全く感染の徴候がみられない完全な免疫の証拠が認められた」と語っている。このワクチンには,無害化してコロナウイルスのスパイクタンパク質を組み込んだアデノウイルスがベクターとして使用されている。この新規ワクチンではまた,スパイクタンパク質に2つの変異が導入されている。それらの変異により,スパイクタンパク質が新型コロナウイルスに対する抗体の産生に最も有利な特異的形状に安定化される。鼻腔内接種を筋肉内注射と比べた実験では,鼻腔内接種では上気道と下気道の両方で感染が阻止された。筋肉内注射では肺炎を予防する免疫反応は誘導されたものの,鼻腔や肺への感染は予防されなかった。得られた有望な知見の一つは,1回の鼻腔内接種で,このように2回目の接種を必要としない頑健な免疫反応が得られたということである。研究チームは,この鼻腔内ワクチンについて非ヒト霊長類を用いる研究を間もなく開始する予定で,ヒトを対象とする臨床試験にできるだけ速やかに進める計画を立てている。この研究は2020年8月19日にCell誌でオンライン公開された。

報道発表へのリンク:https://medicine.wustl.edu/news/nasal-vaccine-against-covid-19-prevents-infection-in-mice/

研究へのリンク:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867420310680
                                        

 2020年8月20日

 COVID-19に対する治療法の候補をウイルス学者が特定

3C様プロテアーゼと呼ばれる重要なウイルス酵素の阻害薬を開発している研究チームが,このウイルス酵素を阻害する化合物を設計して研究を行っている。3C様プロテアーゼは,コロナウイルスの複製に必須で,その生存に極めて重要な酵素である。著者らは,培養ヒト気道細胞を用いてSARS-CoV-2に対する抗ウイルス化合物の作用を検討し,さらにMERSのマウスモデルを用いて検討した。この知見は,Science Translational Medicine誌の2020年8月3日号に掲載された。著者らは,検討対象とされた22の化合物のうち2つに注目した。3人のSARS-CoV-2感染者から採取した培養ヒト気道上皮細胞を2つの抗ウイルス化合物(6eと6jの)で処理したところ,溶媒対照で処理した細胞よりウイルス量が少なくなり,これらの化合物によってウイルス複製能が抑制されたことが示唆された。SARS-CoV-2のマウスモデルがまだ開発されていないことから,著者らはMERSのマウスモデルを用いて6jをさらに検討した。このモデルを用いた試験では,感染後1日目に治療を受けたマウスがすべて生存した一方,無治療群のマウスはすべて死亡した。現在もCOVID-19のパンデミックが続いており,利用可能な治療選択肢がほとんどないことから,効果的な治療法が緊急に必要とされている。この研究は,ウイルス複製を阻害する治療標的とそれに対して使用する化合物の両方を同定したことから重要である。 

リンク:https://stm.sciencemag.org/content/early/2020/08/03/scitranslmed.abc5332/tab-article-info

                    

 2020年8月19日

 症状の現れる順序がCOVID-19と他の呼吸器疾患の鑑別に役立つ可能性

USC Michelson Center for Convergent Bioscienceの研究チームは,多数のCOVID-19症例を解析して,COVID-19の諸症状が現れる順序について最も可能性の高いパターンを見出した。医学誌Frontier Public Healthに掲載された研究結果によると,最も可能性の高い症状発現の順序は,発熱,咳嗽,筋肉痛,悪心・嘔吐,下痢の順であった。研究チームは,世界保健機関(World Health Organization:WHO)が2020年2月半ばに収集した中国のCOVID-19症例55,000例以上のデータと,China Medical Treatment Expert Groupが12月11日から1月29日にかけて収集した1,100例近くの症例データを解析した。COVID-19患者における症状の進行をインフルエンザ,SARS(重症急性呼吸器症候群),MERS(中東呼吸器症候群)と比較したところ,症状の現れる順序がCOVID-19と他の呼吸器疾患を鑑別する上で役立つ可能性があることが明らかにされた。インフルエンザでは最初の咳嗽に続いて発熱がみられる場合が最も多いのに対し,COVID-19ではまず発熱が,次に咳嗽がみられる場合が最も多い。またCOVID-19では,悪心や嘔吐などの上部消化管症状が下痢に先行する場合が多く,下痢が悪心・嘔吐に先行することが多いSARSやMERSとは異なる。この解析ではまた,COVID-19の主症状が下痢である場合,その患者は重症化する可能性が高いことも示唆された。この情報は医療従事者がCOVID-19患者と他の患者を見分けるのに役立つ可能性がある。COVID-19の症状の進行について教育を受けた患者は,そうでない患者よりも早く医療機関を受診する可能性があり,より早期に隔離して感染拡大を回避することが可能になる。

リンク:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpubh.2020.00473/full#SM1

                   

 2020年8月18日

 ニューヨーク市におけるlarge vessel occlusion strokeとCOVID-19の関連

Stroke誌にオンライン公開された後ろ向き観察研究は,2020年3月21日から4月12日までのパンデミック期間中に発生したemergent large vessel occlusive stroke(ELVO)について,ニューヨーク市のMount Sinai Hhealth Systemの中で前年の過去データとの比較により実施された。著者らは,COVID-19感染者の増加がピークを迎えた3週間に入院した患者連続45例を調査した。そのうち24例(53%)がウイルス検査陽性であった。これはニューヨーク市の一般集団における感染率(19.9%)よりも有意に高かった。COVID-19の患者は,感染していなかった患者より年齢が低く(平均59歳 vs 74歳;P = 0.004),男性が多く(75% vs 43%;P = 0.032),白人が少なかった(8% vs 38%; P = 0.027)。また,心血管危険因子が認められない割合は,COVID-19陽性のELVO患者で46%,COVID-19陰性のELVO患者で24%であった。COVID-19コホートのうち,発症時に典型的なCOVID-19関連症状が認められた患者はわずか50%であったが,入院中には,それまで無症状であった患者の60%でCOVID-19の典型症状が現れ,一部の患者では脳卒中がCOVID-19の初発症状となる場合もあることが示された。過去データと比較すると,研究期間中に発生した大型血管由来の虚血性脳卒中の発症数が約2倍に増加していた。著者らは,大型血管由来の虚血性脳卒中とCOVID-19の間には関連があり,臨床医は急性虚血性脳卒中の精査において,特に典型的な心血管危険因子が認められない患者では,COVID-19を考慮すべきであると結論した。

リンク:https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/STROKEAHA.120.030397

                  

 2020年8月12日

 COVID-19からの回復後間もない患者では心臓MRIで残存する影響が示される

University Hospital Frankfurt Germanyの研究チームが2020年7月27日付のJAMA Cardiologyオンライン版で公表した研究において,感染が確定した患者100人を対象として,COVID-19が心血管系に及ぼす影響が検討された。

COVID-19から回復して間もない患者100人を対象とした前向きコホート研究において,78%の患者で心臓MRIと高感度トロポニン値により心障害の発生が明らかにされた。その結果が年齢および性別でマッチングした同等数の対照と比較された。臨床的に回復した患者に対し,初回診断から中央値で71日後に検査が実施された。本コホートでは,67%が自宅療養で回復した一方,33%が入院を必要とした。COVID-19患者の60%で持続性の心筋炎症を示す所見が認められ,それらは既存の病態,重篤度,全体的な疾患経過とは独立していた。  心臓MRIの施行時には,回復後間もない患者の71%で高感度トロポニン値が検出限界以上となり,5%で有意な上昇が認められた。心臓MRIで最も多くみられた異常は心筋炎症であった。対照と比較して,COVID-19患者では左室駆出率が低く,左室容積が大きかった。

これは,本疾患の重症度とは無関係に発生して急性期以降も持続する有意な心障害の発生を実証した最初の研究である。COVID-19の心血管系への長期的影響については,さらなる研究が必要である。

リンク:https://jamanetwork.com/journals/jamacardiology/fullarticle/2768916

                  

 2020年8月10日

 パンデミック中に癌の新規症例数が46.4%減少

2020年8月4日にJAMAネットワークで公表されたresearch letterによると,パンデミック期間中(2020年3月1日~4月18日)に診断された癌の新規症例数はベースラインの過去データと比べて46.4%減少していた。この研究では,何らかの原因でQuest Diagnostics社による検査を受けた米国全土の患者のうち,検査をオーダーした医師が一般的な6種類の癌(乳癌,大腸癌,肺癌,膵癌,胃癌,食道癌)のいずれかに関連するICD-10コードを割り当てた患者が対象とされた。新規症例数の減少は大部分が乳癌と大腸癌でみられ,その中でもスクリーニングで診断される癌が最も多くを占めていた。この結果は他の国々から報告されている知見と酷似しており,それらの国々でも,COVID-19による各種の制限が実施されて以降,週当たりの癌発生率は40%も低下し,癌の疑いで専門医に紹介された症例の数は75%減少したとみられている。寄稿者は,癌は待ってはくれないため,診断が遅れることで診断時の病期がより進行し,予後がさらに不良になる可能性があると指摘している。さらに,米国における癌による超過死亡数が33,890例増加する可能性を示唆した研究にも言及し,診断の遅れによる影響に対処するべく早急に対策を講じるよう求めている。

リンク:https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2768946

       

 2020年8月7日

 NIHがCOVID-19の外来患者を対象にモノクローナル抗体で有症状期間を短縮できるかを検討する新たな臨床試験を開始

NIHは2020年8月4日,モノクローナル抗体で外来患者におけるCOVID-19の有症状期間を短縮できるかどうかを検討する臨床試験(ACTIV-2)の実施を公表した。この第2相臨床試験では,本疾患の治療としてモノクローナル抗体をベースとする試験治療の有効性および安全性が評価される。その時点でSARS-CoV-2に感染している入院を必要としない軽症から中等症の患者が,試験治療またはプラセボ投与を受ける2群にランダムに割り付けられる。検討されている治療法は,Eli Lilly Companyが製造する治験段階のモノクローナル抗体であるLY-CoV555の点滴静注である。試験の最初の段階では,約220人のボランティアが登録される。被験者毎にCOVID-19の症状が追跡され,鼻腔および唾液検体でSARS-CoV-2由来RNAの有無が確認される。本試験の主な目標は,試験治療によって試験28日目までに症状の持続期間を安全に短縮できるかどうかを判断することである。さらに,試験治療によって特定の時点で鼻咽頭拭い液および唾液検体でウイルスが検出不能になる被験者の割合が増加するかどうかも検討される予定である。

リンク:https://www.niaid.nih.gov/news-events/nih-clinical-trial-test-antibodies-and-other-experimental-therapeutics-mild-and

              

 2020年8月4日

 感冒を引き起こすコロナウイルスへの曝露歴がCOVID-19の重症度に影響する可能性

Nature誌のプレプリントとして7月29日にScience Magazineでオンライン公開された記事において,健常者がSARS-CoV-2を認識できる免疫細胞を有していたことが示された。著者らは,この交差反応は「風邪」を引き起こすコロナウイルスへの過去の曝露によるもので,今回のパンデミック(世界的大流行)でみられている症状の重症度の幅に関係している可能性があると示唆した。COVID-19への曝露が確認されていない健常者のヘルパーT細胞がSARS-CoV-2のスパイクタンパクの断片に曝露された。その結果,健常者の35%において,メモリーヘルパーT細胞がSARS-CoV-2の断片を認識することができた。同記事では,免疫反応に関する一般情報,研究結果の意味,免疫学的因子がどの程度症状と相関するかを今後さらに研究していく計画などが考察されている。

Science Magazineへのリンク:https://scienmag.com/could-prior-exposure-to-common-cold-viruses-affect-the-severity-of-sars-cov-2-symptoms/

Natureへのリンク:https://www.nature.com/articles/s41586-020-2598-9

          

 2020年7月30日

 抗SARS-CoV-2抗体は急速に減衰する

The New England Journal of Medicine誌に掲載されたcorrespondenceにおいて,University of David Geffen School of Medicineの研究者らは,中等症のCOVID-19から回復してSARS CoV-2に対する抗体量を測定した31人の参加者を対象に実施された小規模研究について報告した。測定の結果,抗SARS-CoV-2抗体の急速な減衰が示された。同抗体の急速な減衰は最近の別の研究でも示唆されていたが,その減少率については詳細に記載されていなかったと,筆者らは指摘している。本研究では,発症から37日(範囲:18~65日)後に最初の抗体量の測定を,発症から86日(範囲:44~119日)後に最後の測定を行った。抗体量の平均低下率から,観察期間中の半減期が約36日であったことが示唆された。筆者らは,こうした急性ウイルス曝露後早期にみられる抗体の減衰から,SARS-CoV-2に対する液性免疫は中等症感染者では長く続かない可能性があるという懸念が浮上したと結論づけている。著者らの知見と一般的なヒトコロナウイルスについてすでに判明している事実を踏まえて,著者らは抗体に基づく免疫パスポートや集団免疫,さらにはワクチンの効果の持続性についても懸念を示した。

リンク:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2018688

        

 2020年7月29日

 FDAが特定のアルコール手指消毒剤を使用しないよう消費者と医療従事者に警告

米国食品医薬品局(FDA)は2020年7月27日の報道発表において,メタノールを含有する特定の手指消毒剤を使用しないよう繰り返し警告を発した。失明,心臓への影響,中枢神経系への影響,入院および死亡などの有害事象の報告数が増加している。また同報道発表では,特定の手指消毒剤の国内流入を防ぐためのFDAによる最新の取締り対策についても報告された。FDAは,使用する手指消毒剤について消費者は警戒する必要があると強調するとともに,FDAが作成した危険な手指消毒剤製品のリストに掲載されたすべての手指消毒剤について,直ちに使用を中止するよう促している。メタノールは危険な物質である。曝露すると,悪心,嘔吐,頭痛,霧視,永続的な失明,痙攣発作,昏睡,永続的な神経系損傷などを引き起こし,死に至ることもある。該当製品を手に使用していると,メタノール中毒のリスクがあるが,幼児が該当製品を摂取したり,青年や成人が該当製品を酒類の代替品として摂取したりすると,極めて大きなリスクに曝されることになる。

リンク:https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/fda-updates-hand-sanitizers-methanol#products

         

 2020年7月27日

 加齢に伴う炎症とCOVID-19

示唆に富む見解を示したScience誌の論文において,University College of Londonの免疫学教授らは,inflammagingと呼ばれる加齢に伴う基礎的な炎症反応の増加が,しばしばCOVID-19による死亡の原因となる圧倒的な炎症反応に関与している可能性があることを示唆した。高齢者でみられるinflammagingについては,少なくとも部分的には,炎症性分子を放出する組織における加齢に伴う細胞の劣化(老化)により生じると考えられている。著者らは,inflammaging現象による過剰な炎症は免疫系の老化と相まって,全体的な免疫機能を阻害する可能性があることが複数の研究で示されていると指摘している。著者らによれば,senolytic薬で老化細胞を減らすことや抗炎症薬で炎症を軽減することが,高齢患者におけるCOVID-19の治療成績を改善する上での有益な戦略となる可能性がある。

リンク:https://science.sciencemag.org/content/369/6501/256/tab-pdf

        

 2020年7月23日

 SARS-CoV-2のエアロゾル感染に関する検証

University of California San Diego,Scripps Institute of OceanographyのDr. Kimberly Prather(環境化学主任)らは,SARS-CoV-2がエアロゾルにより伝播する可能性があることを論証する論文をScience誌で発表し,その中でエアロゾル感染を巡る科学的背景とそれが起こりうる理由を説明している。感染性の呼吸器飛沫の発生と空気中での挙動についてはほとんど分かっていないため,ソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)での安全な距離を定義するのは難しいとPrather博士は指摘している。インフルエンザウイルスがそうであるように,SARS-CoV-2でも直径1μm未満のエアロゾル中にウイルス粒子が含まれると仮定した場合,同様に1μm未満の粒子を含む呼気中のタバコ煙がよい比較対象になり,どちらも似たような流れと希薄化のパターンをたどる可能性が高いと同教授は述べている。「喫煙者からタバコ煙の匂いを感じられる距離が,感染者から感染性エアロゾルを吸引する可能性がある距離に相当する。」 同教授は,マスクは有効であり,屋内ではたとえ6フィート(約2メートル)の距離をとっていても,よくフィットするマスクを着用することが重要であると考えている。 

リンク:https://science.sciencemag.org/content/368/6498/1422

      

 2020年7月22日

 COVID-19後のSARS-CoV-2再陽性

SARS-CoV-2 RNA再陽性例を報告した研究を対象とするメタアナリシスが2020年7月21日にプレプリントサーバーmedRxiv上で公表された。このメタアナリシスには14の研究が組み入れられ,うち13研究は中国で,1つはブルネイで実施されたものであった。14研究を合計した対象者数は2,568人で,そのうち318人がSARS-CoV-2再陽性を経験していた。SARS-CoV-2 RNA再陽性率のプール推定値は14.8%となり,回復して退院した患者における再陽性の頻度が比較的高いことが確認された。再発までの平均期間は,発症からの起算で35.44日間,最後の陰性判定からの起算で9.76日間であった。著者らは,この研究がCOVID-19回復者におけるSARS-CoV-2 RNA再陽性について検討した最初のシステマティックレビューであることを強調した。メタアナリシスにより,COVID-19の回復患者におけるSARS-CoV-2再陽性に関連する特徴および危険因子が明らかにされた。

リンク:https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.07.19.20157453v1.full.pdf+html

        

 2020年7月20日

 SARS-CoV-2の伝播について:世界保健機関によるブリーフレポート

世界保健機関は7月9日,COVID-19の伝播に関する最新の知見を更新したScientific Briefを公表した。このブリーフレポートは,査読誌やプレプリントサーバーに掲載されたレビューや論文等からの情報をまとめるために,世界保健機関とその提携機関が作成したものである。同文書では,SARS-CoV-2のさまざまな感染経路や,このウイルスがどのような状況で感染者から他者に伝播するかが考察されている。また,無症候性または発症前の伝播が起きるかどうかという疑問についても検討されている。今回の世界保健機関のレポートにより,感染がどのように拡大し,いつ,どのような状況でウイルスが伝播するかを理解することが,この感染症に対する予防戦略に重要な意味をもつことが浮き彫りにされた。

リンク:https://www.who.int/news-room/commentaries/detail/transmission-of-sars-cov-2-implications-for-infection-prevention-precautions

    

 2020年7月17日

 SARS-CoV-2の経胎盤感染

SARS-CoV-2の周産期感染が報告されているが,それらが胎盤または子宮頸部を介して起きたのか,環境曝露を介して起きたのかは明らかになっていない。Nature Communications誌の2020年7月14日号で公表された症例報告で,SARS-CoV-2の経胎盤感染の包括的な証拠が提示された。母体のウイルス血症が確認された。組織学的検査および免疫組織化学検査の所見とウイルス量の高値により,胎盤の感染および炎症が確認された。胎盤の感染に続いて新生児のウイルス血症が検出された。重要な点として,この症例では,COVID-19による脳血管炎と一致すると著者らが記載した神経症候を含む臨床像が新生児に認められた。

リンク:https://www.nature.com/articles/s41467-020-17436-6

     

 2020年7月15日

 20歳以下の若年者ではコロナウイルス感染後も81.9%が無症状で経過する:イタリアでの研究より

SARS-CoV-2の感染者に症状が現れる確率を年齢別に推定したデータは限られている。感染拡大を制御するための戦略は,感染者の濃厚接触者に検査を行い,陽性判定を受けた者を隔離することに頼っているが,サーベイランスチームの目を容易にすり抜ける無症候性感染の存在が,こうした戦略を難しくしている。小児では症状が現れる可能性が成人よりはるかに低いことを踏まえると,小児による感染伝播は特に重要である。イタリアのロンバルディ州で実施された研究において,SARS-CoV-2の感染が臨床検査で確認された濃厚接触者64,252人に対して臨床観察が行われた。この研究では感染者3,420人のクラスターが同定され,その濃厚接触者全員に対して鼻腔拭い液または血清学的検査によるCOVID-19の検査が行われ,全体での標本サイズは濃厚接触者5,484人となった。選択された濃厚接触者5,484人のうち,51.5%に当たる2,824人が検査で陽性と判定された。確認されたSARS-CoV-2感染例2,824例のうち,31%に当たる876例で症状がみられた。有症状の症例は,上気道または下気道症状(咳嗽,息切れなど)がみられるか,37.5℃以上の発熱がある場合と定義された。このデータを年齢で層別化したところ,症状が現れる確率は次のように年齢とともに高くなることが判明した:

  • 20歳未満:18.1%で症状がみられた
  • 20~39歳:22.4%で症状がみられた
  • 40~59歳:30.5%で症状がみられた
  • 60~79歳:35.5%で症状がみられた
  • 80歳以上:64.6%で症状がみられた

著者らは,SARS-CoV-2の伝播に対する無症候性感染の寄与は十分に定量化されておらず,どのような症状を定義に含め,どの段階で症状を確定するか次第で,推定される無症候性感染者の割合は17%から87%までの範囲をとると指摘した。この研究により,SARS-Cov-2に感染して症状が現れる可能性は年齢とともに高まることが示された。この研究結果は,COVID-19の疫学における小児および若年成人の役割について理解を深める上で有益な情報となる。  この予備的研究は,まだ査読誌には掲載されていないが,arXivのプラットフォームからオンラインで入手できるよう著者らにより公開されている。

リンク:https://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/2006/2006.08471.pdf

  

 2020年7月14日

 COVID-19患者の大半で急性期からの回復後も症状が残存する

イタリアの研究チームが実施してJournal of the American Medical Association誌で公表された研究により,COVID-19患者の多くで症状が長期間残存していたことが明らかにされた。この研究には,COVID-19からの回復後に退院した143人の患者が組み入れられた。全員が隔離の中止条件(3日連続で発熱を認めず,その他の症状が改善し,24時間の間隔を空けた2回の検査でともにCOVID-19陰性と判定される)を満たしていた。患者は退院の平均36日後に本研究に登録され,登録時に再度実施されたCOVID-19のPCR検査でも陰性と判定されていた。大半の患者が残存する症状として疲労と息切れを報告した。評価時点で,COVID-19に関連する症状が完全に消失していた患者は12.6%のみで,30%の患者には1つか2つの症状がみられ,55%の患者では3つ以上の症状が残っていた。発熱や急性疾患の徴候がみられる患者はいなかった。44.1%の患者で生活の質(QOL)の低下が認められた。多くの患者が報告した症状は,疲労(53.1%),呼吸困難(43.4%),関節痛(27.3%),胸痛(21.7%)であった。研究チームは,COVID-19については急性期に大きな注目が向けられているが,退院後も長期的影響を検出するためのモニタリングを継続していく必要があると指摘している。本研究については,単一施設の研究であるなどの限界があると著者らも指摘しているほか,各患者が感染前から有していた症状に関する情報が示されなかった。さらに,比較のために対照群が設定されなかった。

リンク:https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2768351


 2020年7月8日

 呼吸生理の理解が呼吸困難を伴わない低酸素血症(happy hypoxemia)の謎を解明する

American Journal of Respiratory and Clinical Care Medicine誌で公表された新しい論文では,COVID-19患者でみられる呼吸困難を伴わない低酸素血症(silent hypoxemia)という不可解な病態(happy hypoxemiaとも呼ばれる)について論じられている。Silent hypoxiaとは,呼吸困難がない状況で酸素レベル(PaO2)が低い状態を指す。著者らは,silent hypoxiaを呈したCOVID-19患者16例に関する情報を提示するとともに,いくつかの病態生理学的機序でこの現象の(すべてではないとしても)大部分を説明できると解説している。著者らはまた,この現象に影響を与える交絡因子にも注目している。

Silent hypoxiaを説明できる機序として以下のものがある:

  • 換気応答はPaO2よりもPaCO2の変化に対してより速く起こり,PaCO2は多くの場合,低値または正常範囲内である
  • 糖尿病患者や高齢者(重篤患者のうちかなりの割合を占める)は,低酸素症に対する換気応答が低下している。
  • 頸動脈小体にはウイルスレセプターであるアンジオテンシン変換酵素2(CE2)が発現しており,頸動脈小体は直接ウイルスの影響を受ける可能性がある。

交絡因子としては以下のものがある:

  • パルスオキシメトリーは,酸素化レベルが高い状況では正確であるが,酸素飽和度低下の重症度を過大評価する可能性がある
  • 発熱は酸素ヘモグロビン解離曲線を右側にシフトさせることで飽和度の低下を招くが,頸動脈小体の化学受容器は酸素飽和度ではなくPaO2のみに反応する
  • 高炭酸ガス血症や低酸素症に対する反応は患者間で劇的に異なる可能性がある

リンク:https://www.atsjournals.org/doi/abs/10.1164/rccm.202006-2157CP


 2020年7月6日

 COVID-19と消化器系に関するレビュー

2020年7月4日付のAmerican Journal of Gastroenterology(AJG)誌で公表されたCOVID-19と消化器系の関係に関するレビューでは,COVID-19の消化管病態について,臨床所見と潜在的な基礎機序の両方に焦点が置かれた。中国の武漢で発生したCOVID-19のアウトブレイク中に消化管症状の発生率を調べた過去の研究(AJG 2020年5月)では,COVID-19の最大の特徴は呼吸器症状であったが,18.6%の患者に受診時点で悪心,嘔吐,下痢の消化管症状がみられていたことが報告された。ときには,呼吸器症状を伴うことなく,これらの消化管症状が最初の主症状となる場合もあった。また,消化管症状の存在に重症化との密接な関連が認められた。最新のレビューでも,SARS-CoV-2の感染は肝損傷につながる可能性があり,肝酵素値異常にはCOVID-19の重症度と関連が認められると記載されている。

著者らは,SARS-CoV-2の機能的レセプターであるアンジオテンシン変換酵素2がさまざまなヒト臓器に広く分布していることを指摘しているが,このレセプターの発現量は呼吸器系よりも消化管の方が約100倍高いことに注目している。このレビューでは,COVID-19で消化器系が侵される場合の臨床的および病理学的所見と,間質損傷および肝損傷の発生機序について考察されている。著者らは,COVID-19の早期にみられる消化器症状は注意して治療すべきであり,診療中は肝機能とサイトカインのモニタリングが重要であると結論付けている。

リンク:https://journals.lww.com/ajg/FullText/2020/07000/COVID_19_and_the_Digestive_System.11.aspx


 2020年7月2日

 CDCの報告:妊婦はCOVID-19の重症化リスクが高い

米国疾病予防管理センター(CDC)が2020年6月26日付の週次報告書Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)の中でオンライン公開した新たな報告によると,妊娠中の女性はCOVID-19の重症化リスクが高い可能性がある。SARS-CoV-2(COVID-19の原因ウイルス)に感染した妊娠可能年齢(15~44歳)の女性において,妊娠に入院,ICU入室,機械的人工換気の必要性との関連が認められた。しかしながら,妊娠と死亡リスクとの間には関連が認められなかった。検査でCOVID-19陽性と判定されてCDCに報告された妊婦の数は,6月7日の時点で8,207例であった。それらの妊婦が,妊娠していないことが判明していて検査でCOVID-19陽性と判定された妊娠可能年齢の女性83,205人と比較された。妊婦における入院率(31.5%)は,非妊娠女性のそれ(5.8%)を大幅に上回っていた。ICU入室率は,非妊娠女性の0.9%に対して妊婦では1.5%,人工呼吸器が必要になった人の割合は,非妊娠女性の0.3%に対して妊婦では0.5%であった。ヒスパニックおよびアフリカ系米国人の女性は,妊娠中にSARS-CoV-2に感染する可能性が比較的高いとみられている。著者らは,妊娠中には生理的変化や免疫学的変化が起きることで,呼吸器感染症が重症化するリスクが高くなる可能性があると指摘している。この研究にはいくつかの限界があり,このCDCレポートの著者らは次のように述べている。「……妊婦はCOVID-19が重症化するリスクを認識しておくべきである。妊婦とその家族は,自身の健康を確保し,SARS-CoV-2の感染拡大を防ぐための対策を講じるべきである。妊娠中の女性が講じられる具体的な対策としては,妊婦健診の予約をキャンセルしないこと,他者との交流をできるだけ自粛すること,他者と交流する場合はCOVID-19に対する感染予防策を講じること,少なくとも30日分の薬剤を常備しておくこと,COVID-19のパンデミック(世界的大流行)中に健康を維持する方法についてかかりつけ医に相談することなどが挙げられる。妊婦におけるCOVID-19の重症化例を減らすために,SARS-CoV-2の感染予防策が重視されるべきであり,それらの対策の遵守を阻む潜在的要因に対処していく必要がある。

リンク:https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6925a1.htm?s_cid=mm6925a1_w

                                                                                                             

 2020年6月30日

 抑うつと不安を軽減する5つの方法

医療従事者,特に救急チームのメンバーは,COVID-19パンデミックの間に精神衛生上の問題を起こすリスクが高い。この問題に対応するべく,カナダUniversity of OttawaのDepartment of Emergency Medicineは,抑うつおよび不安の症状を軽減することが示されたエビデンスに基づく5つの手法に関する情報を職員らに提供した。それらの手法については,Canadian Journal of Emergency Medicineへの掲載が受理された論文に詳細に記載されている(以下のリンクを参照)。5つの手法を以下に示す:

  • マインドフルネス瞑想:意識を現在に向けさせるのに役立つ様々な瞑想法を総称する広義の用語。一例:ストレスの多い状況ではボックス呼吸法を用いる:4秒間息を吸い込み,4秒間息を止め,4秒間息を吐き出した後,4秒間息を止める。
  • 運動:中程度から強度の身体活動を,最長週150分まで徐々に時間を増やしながら行う。
  • ソーシャルメディアの使用に制限を設ける(1日30分まで):代わりに,ビデオチャットや電話で愛する人と会話をする。
  • 地中海料理などの健康的な食事をとる:料理に取り組む。
  • セラピーとカウンセリング:ピアサポートや精神衛生の専門家を介して精神保健関連の医療資源を活用する。

記事の最後には,上記の手法を分かりやすく説明した画像が掲載されている。

リンク:https://www.cambridge.org/core/services/aop-cambridge-core/content/view/E43093692F0A21B512AA4111A0365B24/S1481803520004339a.pdf/beyond_survival_practical_wellness_tips_during_the_covid19_pandemic.pdf

 

                                                                                                     

 2020年6月29日

 COVID-19の封じ込め中にCO2排出量が減少

5月17日にNature Climate Change誌で公表された研究結果によると,人間の活動により放出される二酸化炭素(CO2)の量がコロナウイルス禍最中の4月上旬に17%もの減少を記録した。COVID-19パンデミック(世界的大流行)中の感染伝播を抑制するべく各国政府が講じた封じ込め政策(検疫・隔離や外出制限)により,世界中でエネルギー需要のパターンが劇的に変化している。1日当たりの排出量は一時的に2006年の水準まで減少した。今回の分析は,地球上で人が排出する温室効果ガスの影響を追跡する取組みであるFuture EarthのGlobal Carbon Projectに参加する国際研究チームが実施した。CO2排出量の17%の減少は,世界中で封じ込め策が最も広く実施された4月初めに確認された。2020年の年間排出量に対する全体としての影響は封じ込め策の期間に依存し,低めの推計としては,6月までにパンデミック以前の状態に戻った場合に約4%の減少が見込まれる一方,2020年末まで世界中である程度の制限が続いた場合には,約7%という高い減少率が推計されている。著者らは,4.2~7.5%の年間CO2排出量の減少は気候変動を1.5℃に抑える上で今後10年間にわたり毎年迫られる削減量に相当すると指摘しているが,パリ協定に沿って気候変動を抑制していく上で直面する課題の大きさが強調される結果となった。

リンク:https://www.nature.com/articles/s41558-020-0797-x


 2020年6月25日

 COVID-19パンデミック中の小児リウマチ性疾患およびmultisystem inflammatory syndromeの患者を対象とするAmerican College of Rheumatologyの診療ガイダンス

American College of Rheumatologyは,エビデンスに基づく推奨事項を示した2つの診療ガイダンス文書を新たに発行した(具体的な推奨については下記のリンクを参照)。COVID-19のパンデミック中におけるリウマチ性疾患の小児患者の管理について示した1つ目のガイダンスでは,リウマチ性疾患の小児におけるCOVID-19の予防に関する推奨に加えて,COVID-19に関連した様々な状況(曝露なし,濃厚接触/家庭内曝露,無症状および有症状のCOVID-19感染など)における小児リウマチ性疾患の治療に関する推奨が示されている。

2つ目のガイダンスでは,COVID-19に合併したmultisystem inflammatory syndrome in children(MIS-C)の診断および治療に関する詳細な推奨が提示されている。ドラフト版の要約が2020年6月17日にACR Board of Directorsにより承認され,ウェブ上で公表された。

リンク:https://www.rheumatology.org/Portals/0/Files/COVID-19-Clinical-Guidance-Summary-for-Pediatric-Patients-with-Rheumatic-Disease.pdf

リンク:https://www.rheumatology.org/Portals/0/Files/ACR-COVID-19-Clinical-Guidance-Summary-MIS-C-Hyperinflammation.pdf

 

 

                                                                                                      

 2020年6月24日

 COVID-19により呼吸不全を来した非挿管患者における腹臥位療法

挿管患者に腹臥位をとらせると,中等度から重度の急性呼吸窮迫症候群で死亡率が低下することが示されている。COVID-19の非挿管患者における腹臥位療法の実施可能性とガス交換に対する効果を検討した研究の一環として,COVID-19肺炎と確定診断された入院患者56人を対象とする前向き研究が,2020年3月20日から4月9日にかけてイタリアのモンツァで実施された。患者は酸素投与または非侵襲的な持続陽圧呼吸療法を受けていた。ベースラインデータの収集後,患者は腹臥位をとり,最低3時間にわたり腹臥位が維持された。腹臥位療法が奏効した患者49例を対象として,ベースライン時(仰臥位),腹臥位への変換後10分時点,および仰臥位への再変換後1時間時点でデータが再収集された。解析の結果,仰臥位から腹臥位への変換によって酸素化が大幅に改善したことが明らかにされた(仰臥位でのPaO2/FiO2比180.5mmHg[SD = 76.6]に対して腹臥位では285.5mmHg[112.9];p<0.0001)。仰臥位への再変換後には,半数の患者で酸素化の改善が維持された。全体として,仰臥位に戻してから1時間後時点での改善は統計学的に有意ではなかった。この研究により,間質性肺炎による呼吸不全のある覚醒患者では腹臥位療法が有益であるとした以前の報告が裏付けられた。また,COVID-19患者におけるこの手技の実施可能性が実証された。呼吸パラメータと生存率を指標とした腹臥位療法の安全性および中長期の成績を評価するには,さらなる研究が必要である。

リンク:https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(20)30268-X/fulltext

                                                                                       

 2020年6月23日

 COVID-19の重症度に血液型が関連

6月17日にNew England Journal of Medicine誌で公表された研究論文において,スペインおよびイタリアの重症患者1900人以上の検体に対し実施された遺伝子解析の結果が報告された。患者は全員,RNA検査で確定診断されたCOVID-19のために呼吸不全を来していた。重症患者から採取された検体が2000人以上の健康対照から採取された検体と比較されたが,この健康対照には,COVID-19に感染したものの軽症または無症状で推移した患者が含まれていた可能性がある。解析の結果,遺伝子座3p21.31および9q34.2にCOVID-19による呼吸不全との有意な関連が認められることが判明した。遺伝子座9q34.2では,ABO血液型との関連が同時に認められた。さらなる研究の結果,血液型がA型の患者はA型以外の個人と比べて,COVID-19の結果として呼吸不全を起こすリスクが有意に高かったことが判明した。以上のように,本研究により,呼吸不全を来したCOVID-19患者における感受性遺伝子座として3p21.31遺伝子クラスターが同定され,ABO血液型が関与している可能性が確認された。これまでにも,遺伝学に基づかない研究から,COVID-19の感受性へのABO血液型の関与が示唆されてきた。今回の知見は血液型の関連を証明するものではないが,血液型は比較的リスクの高い集団を示唆する有意な因子であると考えられる。

リンク:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2020283?query=featured_coronavirus#article_references

                                                                                                      

 2020年6月22日

 SARS-CoV-2に対するおとりになるナノ粒子

University of California San Diegoの研究チームは,感染症との闘いにおける新規のアプローチとして,ウイルスを標的とする代わりに,肺上皮細胞とマクロファージから抽出した細胞膜でナノ粒子をコーティングしたものを利用した。この研究は2020年6月17日に査読誌Nano Lettersで公表された。そのナノ粒子(ナノスポンジ)は,生物学的に宿主細胞に酷似した挙動を示し,宿主細胞に代わってウイルスによる結合を引き受けるおとり(decoy)として振る舞う。このナノスポンジの大きさはヒト毛髪の径より1000倍小さく,実際の細胞と同じ受容体タンパクを発現した細胞膜で覆われているため,ウイルスにとって細胞と見分けることができない。研究では,ナノスポンジの存在下で培養したとき,細胞培養中でのSARS-CoV-2の感染性が用量依存的に90%低下した。この戦略の大きな長所の一つは,ウイルスの変異能力と無関係であるという点である。このプラットフォームは,1種類のおとりナノ粒子を提示することで,あらゆる変異に対応でき,同じ宿主細胞を標的とするあらゆるウイルスに効果を示すと考えられる。研究チームは今後数カ月かけて,このナノ粒子の有効性を動物のプラットフォームで評価していく計画を立てている。この斬新な治療法のヒトにおける有効性および安全性は,まだ実証されていない。

リンク:https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.nanolett.0c02278

                                                                                                    

 2020年6月19日

 SARS-CoV-2に対する抗体カクテルで急速なmutational escapeを防止する

COVID-19の治療を目的とするモノクローナル抗体の開発が進められている。しかしながら,このウイルスの変異能力の高さから,すぐに耐性化が起きる可能性が懸念されている。2020年6月15日のScience誌で公表された報告において,耐性化の問題が検討された。著者らは,生ウイルスを用いたモデルにおいて,単一の抗体では数世代で耐性が生じたことを示した。著者らはその後,いくつかの抗体ペアを同定したが,1つはレセプター結合ドメイン(RBD)内の互いに重複する領域に対するペアで,1つはRBD内の全く重複しない領域に結合するペアであった。そして,抗体の結合領域間に重複がある場合には耐性化が起きたことが明らかにされた。一方で,抗体の標的領域が全く重複しない場合には耐性化が起きなかったが,これはおそらく,この状況で耐性化が起きるには,ウイルス遺伝子の2つの異なる部位で同時に変異が起きるという,まれな現象が起きる必要があったためと考えられる。これらの結果から,ウイルス遺伝子のRBD内の互いに重複しない領域を標的とする抗体カクテルは単一の抗体より優れている可能性が示唆された。

リンク:https://science.sciencemag.org/content/early/2020/06/15/science.abd0831

                                                                                                 

 2020年6月18日

 COVID-19の致死率は基礎疾患があると12倍に上昇する

米国疾病予防管理センター(CDC)は,6月15日に早期公開したMorbidity and Mortality Weekly Reportにおいて,5月30日までに検査で確定診断されたCOVID-19症例1,320,488例の人口統計学的特徴,基礎疾患,症状,転帰について説明している。全体で184,673人(14%)が入院し,29,837人(2%)が集中治療室(ICU)に収容され,71,116人(5%)が死亡した。個別の基礎疾患に関するデータがあった287,320例(22%)で最も多くみられた基礎疾患は,心血管疾患(32%),糖尿病(30%),慢性肺疾患(18%)であった。基礎疾患の報告があった人では,基礎疾患がなかった人と比べて,入院率が6倍,致死率が12倍高かった。CDCは,以上の知見からcommunity mitigationの戦略を継続していく必要性が浮き彫りになり,脆弱な集団に対する対策が特に重要と考えている。

リンク:https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6924e2.htm?s_cid=mm6924e2_e&deliveryName=USCDC_921-DM30615

                                                                                 

 2020年6月17日

 デキサメタゾンによりCOVID-19重症患者の致死率が低下

Oxford Universityの6月16日付のニュースリリースにおいて,COVID-19の重症患者6,425人を対象とした臨床試験についての肯定的な結果が報告された。被験者はデキサメタゾン6mgを経口または静脈内注射で1日1回10日間投与する群(n = 2,104)と,通常のケアのみを行う群(n = 4,321)にランダムに割り付けられた。デキサメタゾンの投与により,人工呼吸器装着患者では致死率が1/3低下し,酸素吸入のみを受けた患者では致死率が1/5低下した。どちらの結果も統計学的に極めて有意であった。これらの結果に基づくと,人工呼吸器装着患者の8人に1人,酸素吸入のみを受けた患者のおよそ25人に1人の死亡を治療により予防できたことになる。一方,呼吸補助を必要としなかった患者ではベネフィットが認められなかった。この試験の試験責任医師の一人で,University of Oxford, Nuffield Department of Medicineの新興感染症学教授であるPeter Horbyは,ニュースリリースにおいて,「デキサメタゾンはCOVID-19に対して生存率の改善を示した最初の薬剤である」と述べている。この研究はフルデータがまだ公表されておらず,まだ査読も受けていないという点に注意する必要があるが,外部の専門家たちはこの結果をすぐに受け入れた。英国政府の首席科学顧問であるPatrick Vallanceは,この結果を「素晴らしいニュース」とし,「この疾患との闘いにおける画期的な進展」であると評価した。米国食品医薬品局(FDA)の元長官であるScott Gottliebも「非常に前向きな結果」と評している。

リンク:https://www.recoverytrial.net/files/recovery_dexamethasone_statement_160620_v2final.pdf

                                                                                     

 2020年6月16日

 新規発症糖尿病とCOVID-19

New England Journal of Medicine誌に掲載され,CoviDiab Registryプロジェクトに関与した著明な糖尿病専門家17名で構成される国際研究グループが署名したレターにおいて,COVID-19が新規発症糖尿病の誘因となりうることが警告された。このプロジェクトの目標は,COVID-19患者における新規発症糖尿病の程度および特徴を確認することである。これまでの臨床症例の観察により,COVID-19と糖尿病の間には双方向的な関係があることが示されている。COVID-19で死亡した患者のうち,20~30%が糖尿病を有していたと報告されている。一方で,COVID-19の感染者において,新規発症糖尿病と既存の糖尿病による非定型の代謝性合併症が観察されている。SARS-CoV-2が糖尿病にどのように影響を及ぼすのかは明らかでない。考えられる機序の1つは,SARS-CoV-2に結合するアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)タンパクがウイルスのヒト細胞への侵入を可能にしているというものである。ACE2は膵β細胞,小腸,脂肪組織,腎臓など,糖代謝に関与する多くの臓器に発現している。

リンク:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2018688

                                                                                      

 2020年6月15日

 FDAがCOVID-19に対する既存薬の新規使用を報告するためのCURE IDプログラムと専用アプリの使用を医師に奨励

医師が特定の患者に対し医学的に適切と判断した場合には,法律に基づき市販されている薬剤を未承認の用途で処方することが長らく許容されてきた。しかしながら,こうした処方が正式な臨床試験の枠内で行わるものでなければ,そのような使用の成否が医学界や科学界に知られることはまれである。そこで2013年,FDAとNational Institutes of Health(NIH:米国国立衛生研究所)の下部組織であるNational Center for Advancing Translational Sciences(NCATS)は,任意の制度としてCURE IDプログラムを導入し,臨床医が個々の患者に対する適応外使用の結果を報告するための分かりやすい方法を創出した。匿名化されたデータが疾患別に集積され,ユーザーが閲覧できるように整備されている。このプログラムは,研究候補となる薬剤の同定を効率化することを意図したもので,正式な医薬品承認プロセスの一部を構成するものではない。最近になって,COVID-19に関するデータ報告と望むらくは効果的な新規治療法の同定を容易にするべく,CURE IDプログラム(無料アプリを含む)が更新された。

リンク:https://www.fda.gov/drugs/science-and-research-drugs/cure-id-app-lets-clinicians-report-novel-uses-existing-drugs

                                                                                

 2020年6月12日

 パンデミック初期に救急外来の受診が急減

米国では,COVID-19のパンデミック(世界的大流行)が救急外来の受診者数に有意な影響を及ぼした。CDCが6月3日に公表した週次報告書Morbidity and Mortality Weekly Reportにより,COVID-19のパンデミック初期に救急外来の受診が42%減少していたことが示された。2020年の3月29日から4月25日にかけての1週間当たりの平均受診者数は120万人であった。一方,前年同時期(3月31日から4月27日まで)の1週間当たりの受診者数は220万人であった。しかしながら,この期間中,感染症に関連した受診者の割合が前年比で4倍に増加した。受診者数の減少は小児と女性で特に目立ち,また米北東部で顕著であった。腹痛やその他の消化器症状,非特異的胸痛や急性心筋梗塞(心臓発作),高血圧など,多くの病態を理由とする受診者数が今回のパンデミック中に減少したことから,無治療で放置すると致死率が高まりかねない病態の患者の一部が医療機関受診を先送りしている可能性が懸念された。

研究へのリンク:https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6923e1.htm?s_cid=mm6923e1_w

                                                                                             

 2020年6月10日

 大局的に見るCOVID-19の死亡率

New York Times紙は,世界の25の都市・地域を対象として,COVID-19のアウトブレイク(集団発生)が最も激しかった月の死者数をレビューし,平時の死者数に対する倍率を算出するとともに,それらの値を過去の他の自然災害時の値と比較した。

最高値を記録した月の死者数を平年と比較したときの倍率:

  • 1918年のスペイン風邪流行時のフィラデルフィア:7.3倍
  • COVID-19流行時のイタリア,ベルガモ:6.7倍
  • COVID-19流行時のニューヨーク市:5.8倍
  • COVID-19流行時のペルー,リマ:4.0倍
  • ハリケーン「カトリーナ」発生時のニューオーリンズ:2.4倍
  • インフルエンザ大流行時のニューヨーク市:1.05倍

記事へのリンク:https://www.nytimes.com/interactive/2020/06/10/world/coronavirus-history.html?smid=em-share

                                                                                    

 2020年6月5日

 ヒドロキシクロロキンの研究論文が撤回

最近The Lancetで公表された研究の著者数名が自らの論文を撤回した。COVID-19の治療にヒドロキシクロロキンとクロロキンは無効であると報告した同研究については,その公表後にデータソースに対する疑問が投げかけられていた。同論文の著者3名はその後,データおよび解析に関して独立した第三者に査読を依頼したが,その査読者らに完全なデータセットへのアクセス権が与えられなかったことを受け,著者らが論文を撤回するに至った。

リンク:https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31324-6/fulltext

                                                                                   

 2020年6月5日

 ウイルス排出が長期間続いたCOVID-19の1例

Journal of Microbiology, Immunology and Infection誌の5月23日付けのレターにおいて,過去最長のウイルス排出期間を記録したCOVID-19症例が報告された。COVID-19におけるウイルス排出期間の中央値は11~20日間と報告されていたが,それまでの最長期間は49日間であった。この症例報告は武漢でCOVID-19と診断された59歳女性のもので,患者はSARS-CoV-2 RNAのPCR検査で発症後72日間にわたり間欠的に陽性と判定されていた。入院期間の最初の週から無症状で経過し,発症後38日目からはSARS-CoV-2に対する抗体が認められていた。しかしながら,72日目まで複数回のRNA PCR検査で間欠的に陽性と判定された。この症例報告では,PCR検査での陽性判定が感染性のあるウイルスによるものであったのか,単にウイルスの断片が残存していただけかについて,参考になる証拠は示されなかった。 

研究へのリンク:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1684118220301225?via%3Dihub

                                                                                

 2020年6月4日

 COVID-19に対する抗体薬の初の第I相試験

Eli Lilly社は今週,SARS-CoV-2に対するモノクローナル抗体薬を評価する初の第I相試験を開始した。この抗体は,COVID-19回復患者の血液から新たなスクリーニング手法を用いて見出された550の抗体のうちの1つを複製したものである。 

発表へのリンク:https://www.biopharmadive.com/news/eli-lilly-abcellera-coronavirus-antibody-drug-first-trial/578980/

                                                                                

 2020年6月3日

 COVID-19に対する検査の実施時期と偽陰性率のばらつき

Johns Hopkins Universityの研究チームは,2020年5月13日のAnnals of Internal Medicine誌で公表された研究において,RT-PCR検査の性能に関する過去に公表された7研究の結果を解析し,偽陰性の確率が検査の実施時期によって有意に変動していたことを明らかにした。検査の実施日には,感染日(曝露があった日)から,発症日(典型的には5日目),さらには発症以降の日までの幅がみられた。解析の結果,偽陰性率は感染日である1日目の実施で100%, 4日目で67%,発症日で38%,8日目で20%(最低値)であった。8日目以降には,偽陰性の確率が上昇に転じた。したがって,偽陰性率は曝露後8日目に最低となり,それは典型的には発症後3日目であった。著者らは,偽陰性率を最小限に抑えることを目標とするのであれば,この時点が至適な検査実施時期となる可能性があると結論付けた。また,SARS-CoV-2の感染を調べるRT-PCR検査の結果を解釈する上では,特に感染経過の初期にある場合,注意が必要であることを強調している。臨床的に強く疑われる場合は,検査結果のみに基づいて感染を除外してはならない。著者らは医師に対し,陰性判定を解釈する際には検査の実施時期を考慮に入れるよう助言しており,曝露の可能性が高く,かつCOVID-19と一致する症状がみられる患者では,特に注意が必要である。そして,感染の検査前確率が高い場合には,たとえ結果が陰性でも,検査後確率は高いままであると結論付けている。さらに,曝露後直ちに検査を行っても,その検査結果は感染の可能性について何ら有益な情報をもたらさない。著者らは,より感度の高いアプローチを検討する研究が必須であると述べている。

研究へのリンクhttps://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M20-1495

                                                                              

  2020年6月2日

 下水から分かるCOVID-19の感染拡大

COVID-19の原因ウイルスの遺伝物質であるSARS-CoV-2 RNAは便中に大量に排泄されることが研究により明らかにされている。そして,下水に含まれるCOVID-19のウイルス学的痕跡を検出して分析することで,ウイルスの有無および量から感染の拡大や重症度を推定することが可能になっている。下水の分析は疾患サーベイランスの手段となる可能性があり,個人毎に検体を採取して検査することなく,より広い視点からパンデミック(世界的大流行)の状況を把握する簡便な方法となる。2020年5月14日にSmithonian Magazine誌で公表された論文では,ボストン在住の科学ジャーナリスト,Catherine J. Wu(Harvard Universityで微生物学と免疫学の博士号を取得)が,SARS-CoV-2の感染拡大を追跡する上で排水がどのように役立ち,便に排出され下水道に流入したウイルスが人々の健康に及ぼす潜在的影響について考察している。

記事へのリンク:https://www.smithsonianmag.com/science-nature/how-wastewater-could-help-track-spread-new-coronavirus-180974858/

                                                                                

  2020年6月1日

 ニューヨーク市ではCOVID-19の感染率を規定する因子として人口密度より世帯規模の方が重要である可能性がある

米国全体では,また同じ都市の中でも,人口当たりのCOVID-19感染確定者数には大きなばらつきがみられる。このことは流行を抑え込む上で政策上重要な意味をもつことから,このばらつきにつながる因子を把握しておくことが重要である。ニューヨーク市全域でみられるばらつきを統計学的に検討する研究 (2020年5月20日にmedRxivでプレプリントとして公開;査読前)が実施され,入手可能なデータを用いて,該当する因子が郵便番号単位で調査された。本研究により,人口密度,平均世帯規模,貧困ラインを下回る人口の割合,65歳以上の住民の割合などの重要な因子を考慮に入れると,確定感染率と相関する最も重要な因子は平均世帯規模であることが明らかにされた。65歳以上の人口の割合と貧困ラインを下回る人口の割合も感染者発生率に影響を及ぼす因子であった。興味深いことに,一般的な認識に反して,人口密度それ自体は郵便番号で規定される地域内の感染者発生率に有意な影響を及ぼしていなかった。実際,本研究では他の因子を考慮に入れた場合,人口密度と感染者発生率の間には負の相関が認められた。ただし,この研究では2018年の統計データは用いられており,今回のアウトブレイク中に起きた人口の変化は考慮されていない。また,この研究において介護施設とその入居者がどのように分類されたかも明記されておらず,これらの点が研究結果に影響を及ぼした可能性がある。

研究へのリンク:https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.05.25.20112797v1.full.pdf+html

                                                                             

  2020年5月29日

この論文は2020年6月4日に撤回された。

ヒドロキシクロロキンとクロロキンは単剤かマクロライド系薬剤との併用かを問わず有益ではなかったことが国際的な後ろ向きデータベース研究で示された

クロロキンまたはヒドロキシクロロキンの単剤投与またはマクロライド系薬剤との併用投与を受けたCOVID-19患者の治療成績を解析した大規模国際研究の結果が,2020年5月22日にLancet誌で公表された。6大陸の671病院から収集されたデータで構成される国際症例登録が解析された。データには2019年12月20日から2020年4月14日までに入院したSARS-CoV-2陽性患者が含まれていた。症例登録のうち96,032例のデータが本研究の対象とされ,そのうち14,888例は診断後48時間以内に対象の治療を受けた患者で,単剤かマクロライド系薬剤との併用かを問わずクロロキンおよびヒドロキシクロロキンの投与を受けなかった81,114例が対照群とされた。解析の結果,単剤投与時とマクロライド系薬剤との併用投与時ともに,COVID-19に対する入院成績の観点で,ヒドロキシクロロキンまたはクロロキンのベネフィットを確認するエビデンスは得られなかった。この研究では,これらのレジメンをそれぞれ対照群と比較したとき,院内生存率の低下と心室性不整脈の頻度増加が認められた。後ろ向きの観察研究であるため,測定されなかった交絡因子が存在する可能性が否定できない。その一つとして,これらの薬剤がより重症度の高い患者に使用された可能性が考えられる。著者らは「COVID-19患者におけるこれらの薬剤のベネフィットと害について何らかの結論を下すにはランダム化比較試験の実施が必要である」と結論付けている。著者らはまた「今回の知見から,これらのレジメンは臨床試験以外では使用すべきでないことが示唆される」とも述べている。

研究へのリンク:https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31042-4/fulltext

                                                                           

  2020年5月27日

 COVID-19により死亡した患者の肺の剖検研究

COVID-19患者の肺を対象とした剖検研究により,COVID-19を引き起こすコロナウイルスは血管の内皮に侵入して,血栓形成を促進することが明らかにされた。この研究は5月21日にThe New England Journal of Medicine誌のオンライン版で公開されたもので,COVID-19により死亡した患者の剖検中に摘出された肺の形態学的および分子生物学的特徴が検討されるとともに,それらの肺がインフルエンザにより死亡した患者の肺および年齢でマッチングした無感染対照の肺と比較された。COVID-19患者の肺の血管には,極めて明確な特徴と重度の内皮損傷が認められた。COVID-19患者の肺血管の組織学的分析では,微小血管障害を伴う広範な血栓症が認められた。COVID-19患者では,肺胞毛細血管の微小塞栓がインフルエンザ患者と比べて9倍以上高い頻度で認められた。また,COVID-19患者の肺ではintussusceptive angiogenesisの機序を介して有意な新生血管の増生が生じていたことも明らかにされた。この研究では,COVID-19およびA型インフルエンザ(H1N1)により死亡した患者の肺組織における炎症および血管新生に関連する遺伝子の発現量についても検討され,両疾患の間で有意な差が確認された。

研究へのリンク:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2015432

                                                                     

  2020年5月22日

 会話中の飛沫が空気中にとどまる時間と新型コロナウイルス感染におけるその重要性

2020年5月13日にProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)誌に発表された研究は,普通の会話中に出る飛沫は空気中にどとまる可能性があることを証明した。研究者らは高感度レーザー光線を照射することで,参加者が「stay healthy(健康にお気をつけて)」と発話したときの飛沫を視覚化した。この光線拡散法により,会話中に飛沫が放出されることが視覚的に示され,飛沫が空気中にとどまる時間が計測された。この方法は,直径30マイクロメートル以下の会話中の飛沫を特に高い感度で計測することができた。このサイズの飛沫は,これまでの研究の主な対象であったより大きな飛沫よりも空気中にとどまる時間が長い可能性がある。大声で喋った場合はウイルスを含む飛沫核が毎秒数千個以上放出され,8分間以上も空気中に漂い続けると推測される。無症候性のウイルス保有者が会話中に放出する飛沫は,新型コロナウイルスの可能な感染経路の1つと考えられるようになっている。この直接の視覚化は,普通の会話でも数十分以上漂うことのできる飛沫がいかに空気中に放出され,閉鎖された環境では明らかに新型コロナウイルスの感染経路となりうることを示している。ただし,この研究はCOVID-19感染の実例を取り上げたものではない。

研究へのリンク:https://www.pnas.org/content/early/2020/05/12/2006874117

                                                                                                                                         

 2020年5月21日

 新型コロナウイルス患者の在宅看護に関するCDC勧告

米国疾病予防管理センター(CDC)は,COVID-19患者の在宅看護または医療環境以外での看護に関するガイドラインを最近発表した。これは,COVID-19の症状がある患者や,無症候性だが検査で陽性結果が出た患者の看護に関する勧告である。勧告は広範囲にわたり詳細な情報を記載している。CDCは,新型コロナウイルス患者の基本的ニーズを満たす方法について役立つ対策を提供している。また,緊急医療を要する症状を特定している。CDCは,介護者がウイルス感染を防ぐためにできることを詳しく説明している。ガイドラインでは,新型コロナウイルス患者との接触を抑える方法,食事の与え方,新型コロナウイルス患者または介護者が布マスクまたは手袋を着用するべき場合を説明している。家の中での手洗い,トイレの使用,掃除や消毒,洗濯のしかたに関する勧告も記載されている。また,自宅隔離の解除のしかたに関する指針も提供している。

CDCガイダンスへのリンク:https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/if-you-are-sick/care-for-someone.html

                                                                    

 2020年5月20日

 SARS-CoV-2に対する免疫応答についての理解

SARS-CoV-2に対する体内の免疫応答をより良く理解するために,ラホヤ免疫アレルギー研究所の研究者らは,COVID-19から回復した成人20人の細胞性免疫応答を調べた。2020年5月14日にCell誌に発表された研究で,ウイルスに対して強い細胞性細胞応答が存在することが判明した。研究者らは入院の必要がなく疾患経過が軽度~中等度であった参加者を選び,通常の免疫応答のベンチマークを設定した。免疫系はさまざまな方法でウイルスを認識し,体液性(抗体)免疫と細胞性(T細胞)免疫の両方が認められた。この点は,ウイルスに対する効果的なワクチン開発が難しいという懸念を払拭するのに役立つものである。スパイクタンパク質だけでなく他のタンパク質に対する強いT細胞応答も認められ,ワクチン候補にスパイクタンパク質だけでなく複数のエピトープを含めることの利点が推測される。興味深いのは,未曝露者(現在のパンデミック以前に検査試料を採取)の~40-60%でもSARS-CoV-2−反応性CD4+ T細胞が検出されたことで,循環中の「風邪」コロナウイルスとSARS-CoV-2の間での交差反応性T細胞認識が示唆される。これらに保護作用があるのかどうか,またどの程度の保護作用があるのかどうかは不明である。

研究へのリンク:https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)30610-3

                                                      

  2020年5月19日

 COVID-19:感染伝播についての解説

University of Massachusetts DartmouthのErin S. Bromage生物学准教授は,最近のブログ記事「リスクを知って,リスクを回避しよう」において,感染力のある量,ウイルスが広がりやすい場所やその広がり方,そして最もリスクが高い環境について説明している。  同准教授はデータや研究結果をわかりやすい言葉で上手に解説しており,科学者ではない人でもよく理解できる。多くの人がCOVID-19ウイルスの広がり方をより理解することで,ウイルス感染を避ける上で適切な判断を下せるようになることが望まれる。

ブログ記事へのリンク:https://www.erinbromage.com/post/the-risks-know-them-avoid-them

                                                              

  2020年5月18日

 不活化ウイルスを用いた有望なCOVID-19ワクチン

ワクチン開発においては通常,精製された不活化ウイルスが使用され,ポリオウイルスやインフルエンザウイルスといったウイルスを原因とする疾患の予防のために安全かつ効果の高いワクチンを提供してきた。中国の研究者グループは,2020年5月6日にScience誌に発表された論文で,精製された不活化SARS-CoV-2ワクチン(PiCoVacc)について発表した。このワクチンは,マウス,ラット,非ヒト霊長類で中和抗体を産生した。抗体は10種の代表的なウイルス菌株を中和することが示された。アカゲザル(SARS-CoV-2感染によりCOVID-19に似た疾患を示す非ヒト霊長類)に6マイクログラムを投与すると,後にSARS-CoV-2に感染させた場合,完全な防御効果を示した。観察可能または生化学的な有害作用はワクチンから生じなかった。顕著な点は,抗体依存性感染増強と呼ばれる現象を示す証拠がなかったことである。過去の報告では,この点が懸念として提起されていた。

著者らは,「これらの結果はヒト向けSARS-CoV-2ワクチンの臨床開発に向けた前向きな一歩を示す」と述べた。PiCoVaccの臨床試験は今年後半に開始される予定である。

研究へのリンク:https://science.sciencemag.org/content/early/2020/05/06/science.abc1932

                                                          

  2020年5月15日

 男性はアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の濃度がより高い 

男性は女性よりもCOVID-19にかかりやすい。COVID-19検査で陽性反応を示した男性の数は女性に比べて多い。イタリアからの報告では,COVID-19により死亡した患者の70%は男性であった。

欧州諸国11カ国で心不全患者数千人を対象に行われた試験で,男性は女性に比べて血中アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)濃度が有意に高いことが明らかになった。ACE2は正常な細胞の表面に結合する受容体である。コロナウイルスはこの受容体に結合し,ウイルスが正常な細胞に感染できるようになる。ACE2濃度の上昇を示す最も強い予測因子は男性であることであった。この試験では,ACE阻害剤またはアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)を投与された患者はACE2の血漿濃度がより高くはならないことも明らかになった。ACE2濃度が高いという研究結果により,男性が女性よりもCOVID-19にかかりやすい理由を説明できる可能性がある。本研究は,2020年5月10日にEuropean Heart Journal誌(オンライン版)に発表された。

研究へのリンク:https://academic.oup.com/eurheartj/article/41/19/1810/5834647

                                                 

  2020年5月13日

 Pediatric multisystem inflammatory syndromeにCOVID-19との関連が示唆

Boston Children’s Hospitalは,COVID-19と関連する可能性がある最近の小児症候群の報告例について短い概要を発表した。Pediatric multisystem inflammatory syndrome(PIMS)と呼ばれる多系統の炎症性疾患を合併した小児の重篤例が,ここ数週間で少数ながら欧州と米国東部で報告されている。報告はまだ断片的で,同症候群についての内容は一定ではない。ただし,患者は発熱や様々な程度の臓器機能不全,重度炎症に対する複数の臨床マーカーを示している。同症候群は時として重大なショック状態に進むことがあり,血管作動薬や機械的人工換気が必要となる。

同症候群にかかった小児の多くはSARS CoV-2のPCR検査で陽性反応が出ており,またほぼ同数の小児は抗原陰性であったが抗体検査では陽性結果が出たことから,現在のCOVID-19パンデミックと関連性があるとみられる。しかし,多くの症例では抗原検査も抗体検査も陰性である。関連性はまだ不明である。

同症候群は川崎病と多少似ており,一部の小児は川崎病のすべてまたは一部の基準を満たしている。しかし,小児のPMISでは心筋炎が多くみられるものの,川崎病の顕著な特徴である冠動脈障害(冠動脈瘤を含む)は報告されていない。

例数は少ないながらも症例は極めて重症であり,抗凝固,免疫グロブリン静脈投与,IL-1またはIL-6の阻害およびコルチコステロイドなどの治療に反応を示すようである。臨床医はこうした症状に注意し,子供の感染が疑われる場合は専門病院に紹介するべきである。

概要へのリンク:https://discoveries.childrenshospital.org/covid-19-inflammatory-syndrome-children/

                                                     

  2020年5月12日

 遺伝的差異がCOVID-19に対する感受性に影響を与える可能性

SARS-CoV-2感染に反応する能力に影響を与えうる違いが存在することが,ヒト免疫系内の既知の遺伝的差異についての解析から示唆されている。症状が重い人もいれば症状が軽いか全く無症状の人もいる理由を,免疫の差異によって説明できる可能性がある。

HLAタンパクは身体にとって異物であるペプチドと結合し,この異物ペプチドを認識し,免疫系を活性化して感染細胞を死滅させる。HLA系によって検出できるウイルスのペプチドの数が多いほど,免疫反応も強い。一部のHLAタンパクはSARS-CoV-2により適合させることができるため,免疫系がウイルスに対していかに効果的に対応できるかを決める要因となりうる。

研究者らは,どのHLAアレルが最も効果的にコロナウイルスのペプチドに結合するかを決定するために,ヒト白血球抗原(HLA)系を解析した。論文は,著者最終原稿としてJournal of Virology誌(オンライン版)に投稿されている。著者らは,SARS-CoV-2を構成するタンパク質についての既知のデータベースを利用したコンピュータモデリングを用い,次にアルゴリズムを使って様々なHLAのこれらのコロナウイルスタンパク質への結合状態を予測した。HLAアレル145種のうち,ウイルス抗原提示の最も高い3種(A*02:02,B*15:03,C*12:03)と最も低い3種(A*25:01,B*46:01,C*01:02)を特定した。HLAアレルの1種「B*46:01」が特にSARS-CoV-2とSARS-CoVの抗原提示において劣ることが,モデルから予測された。この結果を次に,過去の研究と比較した。比較から,このアレル(B*46:01)を持つ人はSARS感染がより重症でウイルス量が高いことが明らかになった。この結果は,COVID-19の臨床症状に幅広い差がある理由を説明し,リスクの高い人々を特定し,ワクチン接種にあたりこうした人々を優先させる上で役立つ可能性がある。

研究へのリンク:https://jvi.asm.org/content/early/2020/04/16/JVI.00510-20

                                               

  2020年5月11日

 抗ウイルス薬の併用はCOVID-19患者の転帰を改善する

登録開始時に鼻咽頭スワブがSARS-CoV-2陽性であった香港の入院患者124例を登録した試験が,The Lancet誌(オンライン版)に2020年5月8日に発表された。この多施設共同ランダム化(2:1)非盲検試験では,ロピナビル・リトナビル+リバビリン+インターフェロンベータ-1b(800万国際単位)3回投与の併用投与群を,ロピナビル・リトナビルを単独投与する対照群と比較した。症状発現から試験登録までの期間の中央値は,5日であった。試験の主要評価項目は,逆転写PCR法により,鼻咽頭スワブがSARS-CoV-2ウイルス陰性になるまでの期間とした。併用投与群では,試験薬投与開始から鼻咽頭スワブ陰性になるまでの期間中央値(7日間)が対照群(12日間)より有意に短かった(p = 0.001)。症状の有意な改善と入院期間の短縮も認められた。有害事象は2群間で差はなく,概ね軽度で自然治癒した。ICUケアを必要とする患者は非常に少数であり,1例(対照群)のみが挿管および換気補助を必要とした。死亡例はなかった。この試験では,軽度から中等度のCOVID-19患者において,抗ウイルス療法の併用投与によるウイルス排出期間の短縮効果が認められた。著者らは,ウイルス量を陰性にまで減少させることで,患者の感染性を低下させるベネフィットについて説明した。また,この併用療法の有効性と安全性を確立するため,引き続きプラセボ対照試験を実施するよう推奨した。

研究へのリンク:https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31042-4/fulltext

                                               

  2020年5月8日

 SARS-CoV-2は,2019年12月下旬には既にフランスで広がっていた

フランスで,12月下旬に重度の急性呼吸器症候群を伴って入院した患者の保存していた喀痰サンプルに対し,逆転写PCR法を実施した。検査結果からコロナウイルス陽性であることが判明した。この結果から,フランスでの流行が当初考えられていたよりも早く始まっていたことが明らかとなった。この研究結果は,2020年5月3日にInternational Journal of Antimicrobial Agents誌(オンライン版)に発表されたものである。研究者らは,2019年12月2日から2020年1月16日までの間にインフルエンザ様症状を訴えてICUに入院した全患者(124例)の診療録を調べた。調査では,PCR検査で他の呼吸器ウイルスに対して陽性を示した患者を除外したほか,診療録でCOVIDの典型的所見を示さない患者も除外した。残った12例の鼻咽頭サンプルを検査した。このうち1例のサンプルがCOVID-19に陽性反応を示した。陽性となったサンプルは,42歳のアルジェリア人移民から採取したものであり,中国への旅行歴や中国との関連性はなかった。この患者は,喀血,咳嗽,胸痛,頭痛,発熱が4日間続いており,2019年12月27日に救急病棟を受診した。 注目すべきは,この患者の症状が発現する前に,患者の子供の1人にインフルエンザ様疾患が現れていたことである。この論文には,病歴,臨床所見,臨床検査所見,放射線学的所見,この疾患の臨床経過について記載されている。2019年12月末には既にフランス人集団でCOVID-19が蔓延していたと研究者らは結論付けた。

研究へのリンク:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0924857920301643

                                           

 2020年5月7日

 濃厚接触者を対象としたSARS-CoV-2の伝播に関する疫学研究

中国・深セン市のCOVID-19患者391例と濃厚接触者1286例を対象とした疫学研究がThe Lancet誌に発表され,SARS-CoV-2ウイルスの自然経過と伝播性に関する情報が示された。研究者らは大規模な一次データセットを用いることで,ウイルスの潜伏期間,回復までの期間,伝播性を明らかにすることができた。興味深いことに,濃厚接触者における二次発病率は平均して7%近くであることが判明した。一緒に暮らす人など非常に密な濃厚接触者間の伝播は,接触者6人に1人未満の割合であった(すなわち,二次発病率は11%~15%)。

この研究から,子供も成人と同程度に感染する可能性が高いという結果が強調された。子供が健康を害することはそれほど多くはないが,重大な伝播源として見逃してはならない。この研究では,コミュニティにおけるSARS-CoV-2ウイルスの拡散を抑えるために,接触者ベースのサーベイランスの有用性も示した。

研究へのリンク:https://www.thelancet.com/pdfs/journals/laninf/PIIS1473-3099(20)30287-5.pdf

                                           

  2020年5月6日

 ACE阻害薬やARBはCOVID-19の転帰を悪化させるか?

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)がCOVID-19患者の転帰を悪化させるかどうかについて懸念が高まっており,この問題について多くの研究が行われている。COVID-19の原因となるコロナウイルスは,アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の膜結合構造に結合することで,肺細胞に感染する。この知見から,COVID-19患者ではこれらの薬剤が有害である可能性が推測された。2020年5月1日にThe New England Journal of Medicineに発表された論説では,ACE阻害薬やARBが投与された患者に有害な転帰が認められなかった最近の3つのデータベース研究の結果について説明している。

論説へのリンク:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe2012924

                                             

  2020年5月5日

 若年・中年のCOVID-19感染患者における大血管性脳卒中

New England Journal of Medicine誌は2020年4月28日,50歳以下のCOVID-19感染患者における大血管脳卒中の5症例を報告した。最も若かったのは33歳の女性であった。報告された5例は,3月下旬から4月上旬までの2週間に,ニューヨーク市のMount Sinai Health Systemで脳卒中症状を呈した50歳未満の患者全員に相当する。2週間で5例という割合は,前年の平均2週間における同年齢群(50歳未満)の脳卒中患者数の約7倍であり,脳卒中とCOVID-19との間に非常に強い相関があることを示している。

記事へのリンク:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2009787

         


  2020年5月4日

 COVID-19はニコチンコリン作動系の疾患か? 

中国の喫煙率は31.3%と推定されているが,同国の症例集積解析データから,COVID-19の入院患者のうち喫煙者はわずか6.5%であったことが明らかになった。興味深いことに,この結果からニコチンに有益な効果がある可能性が示唆された。Toxicology Reportsに2020年4月30日に掲載された論説(オンラインで閲覧可能)では,コリン作動系と免疫系の関係や,ニコチンがどのように動態に影響し,COVID-19の治療候補薬となりうるかについて考察している。

                     

  2020年4月30日

 COVID-19患者の新たな現象として「呼吸困難を伴わない低酸素血症」が報告される

2020年4月28日のScienceニュースに掲載のオンライン記事で,著者のJennifer Couzin-Frankel氏は,予想していた呼吸困難症状を伴わない憂慮すべき低酸素血症について考察した。記事中では,この現象に関する現時点の研究やその原因と治療に関する見解が報告されている。著者は,Elnara Marcia Negri氏らがブラジルで実施した小規模ながらも示唆に富む研究に注目した(2020年4月20にmedRxivプレプリントに発表。下記リンクを参照)。この研究は,COVID-19によって呼吸不全を来した27例の連続患者にヘパリンを投与した症例集積研究であり,転帰良好率が高く,別報でも報告された。呼吸器科医のNegri氏は,肺の微小血管の播種性血管内凝固(DIC)や微小塞栓が血流不均衡や短絡路形成を引き起こし,低酸素血症をもたらすと唱えた。ただ,肺コンプライアンスは維持されると考えられ,患者は二酸化炭素を排出できる。呼吸刺激は,血流中の酸素濃度ではなく,二酸化炭素濃度の影響を受けるからである。このような理由で,患者は低酸素濃度だけでは息切れを感じないことがわかった。

 Science誌の記事へのリンク:https://www.sciencemag.org/news/2020/04/why-don-t-some-coronavirus-patients-sense-their-alarmingly-low-oxygen-levels

                      

  2020年4月29日

 イェール大学公衆衛生学部の研究から,鼻咽頭スワブの代わりに唾液検体が有望であることが判明 

イェール大学公衆衛生学部は,COVID-19の入院患者44例と,COVID-19患者への職業曝露のある医療従事者98例を対象に,唾液検体と鼻咽頭検体を比較する研究を実施した。この研究は,2020年4月24日にMichael Greenwood氏によりYale Newsで報告された。研究は小規模で限定的であったが,現在の標準法である鼻咽頭スワブを使用する代わりに,唾液検体を使用する方が極めて有望であることが示された。同一患者での感染経過を通して,唾液検体は鼻咽頭検体と比較して,検出感度が高く,一貫性が高いことが研究から確認された。また,自己検体採取のばらつきも少ないことから,唾液検査は,COVID-19の検査に変革をもたらす可能性がある。唾液検査は非侵襲的で,鼻咽頭スワブを使用せず簡単に自己採取できるため,患者との直接的な接触や現行の検査方法の使用によるリスクや障害がなくなり,スワブや個人保護具(PPE)などの医療資材の使用削減にもつながる。この研究は査読対象ではなく,研究結果は,プレプリントサーバーのmedRxivで現在公開されている。

 研究へのリンク:https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.16.20067835v1.full.pdf+html

 ニュースリリースへのリンク:https://news.yale.edu/2020/04/24/saliva-samples-preferable-deep-nasal-swabs-testing-covid-19

  2020年4月28日

 WHOが「免疫パスポート」に関するガイダンスを発出

世界保健機関(WHO)は2020年4月24日,SARS-CoV-2ウイルス(新型コロナウイルス)の抗体検査で陽性でも,COVID-19の再感染や発症を防げる証拠はないと警告を発出した。WHOは,行動規制緩和の目安として抗体検査を利用することや,2回目の感染から守られる保証として『免疫パスポート』や『リスクゼロ証明書』を発行することのないよう,政府に注意喚起している。COVID-19感染症から回復した人や抗体検査で陽性の人が,職場復帰できたり安全に旅行できる保証はない。WHOは「パンデミックの現時点では,抗体媒介性免疫の効果について十分な証拠が得られていないため,『免疫パスポート』や『リスクゼロ証明書』の正確性は保証できない。」と述べた。

WHOはさらに,迅速な免疫診断検査をはじめ,SARS-CoV-2の抗体を検出する臨床検査については,正確性と信頼性を確認する検証が引き続き必要であると指摘した。免疫診断検査では,患者を次の2パターンに誤って分類することがある。感染者を誤って陰性と診断するパターン(偽陰性)と,非感染者を誤って陽性と診断するパターン(偽陽性)である。どのような抗体検査でも,検査の正確性(偽陰性率,偽陽性率)を確認することが必要である。偽陰性または偽陽性が出ると,深刻な結果がもたらされ,感染制御の取り組みに影響を及ぼす。

 WHOの声明へのリンク:https://www.who.int/news-room/commentaries/detail/immunity-passports-in-the-context-of-covid-19
                 

  2020年4月27日

 COVID-19で入院した患者の特性

2020年3月1日から4月4日までの間にCOVID-19が確認され,ニューヨーク市地域の病院に次々に入院した5700名の患者の大規模症例シリーズが,2020年4月22日にJAMA Network誌(オンライン版)に発表された。この研究は,COVID-19患者の臨床的特徴,併存症,転帰について包括的に記述している。特筆すべきことは,多くの患者が高血圧(57%),肥満(42%),糖尿病(34%)などの他の医学的問題を有していたことである。トリアージの時点で発熱があったのは,わずか31%であった。この研究は,研究期間中に退院(2090名)または死亡(553名)した患者2643名に焦点を当てた。これらの転帰に至った患者群では,機械的人工換気を受けた320名のうち88%が死亡し,機械的人工換気を受けた65歳以上のうち97%が死亡した。注目すべきは,転帰のデータが収集された時点で,3066名の患者が依然として入院し,このなかには当然,機械的人工換気を必要とする65歳以上の患者が数多く含まれ,その時点まで生存していたことである。

 研究へのリンク:https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2765184

  2020年4月24日

 COVID-19に対する抗マラリア薬についての追加データ

ヒドロキシクロロキンに対する当初の期待と多大な支持は,有効性と潜在的副作用への懸念から,薄らいでいる。Science誌(4月21日付,オンライン版)のレビュー論文(1)にまとめられた最近のいくつかの研究と報告(以下に記載)が,この懸念の理由を説明している。

COVID-19で入院した退役軍人368名を対象に,ヒドロキシクロロキン単独投与群,ヒドロキシクロロキン+アジスロマイシン併用投与群,ヒドロキシクロロキン非投与群の転帰を後ろ向きに解析した論文(2)が4月21日に発表された。死亡率の減少や人工呼吸器の必要性に関して,ヒドロキシクロロキン単独投与群とヒドロキシクロロキン+アジスロマイシン併用投与群の有益性は示されなかった。死亡率は,ヒドロキシクロロキン単独投与群が27.8%,ヒドロキシクロロキン+アジスロマイシン併用投与群が22.1%,ヒドロキシクロロキン非投与群が11.4%であった。ヒドロキシクロロキン単独投与群では,全死因死亡率が上昇した。

4月7日に発行されたMayo Clinic Proceedings誌(3)では,クロロキンとヒドロキシクロロキンによるQTc延長機序について説明し,この致死的な合併症のモニタリングと回避のためのガイダンスを提示した。この論文では,クロロキンとヒドロキシクロロキンの薬理について説明し,両薬剤ともKCNH2がコードするHERG/Kv11.1カリウムチャネルを遮断することを指摘した。この機序により,QTc間隔が延長し,危険な不整脈(トルサード・ド・ポアンなど)や心臓突然死のリスクが上昇する。著者らはリスク因子をリスト化し,投与前のこれらの因子のスクリーニング,修正可能なリスク因子の修正,投与中のQTc延長のモニタリングを推奨した。

ニューヨーク大学医学部の研究(4)では,SARS-CoV-2に感染した成人患者84名にヒドロキシクロロキン+アジスロマイシンを併用投与し,QT間隔の変化を調べた。30%の患者では,補正QT間隔の増加が40 msを超えた。11%の患者では,補正QT間隔が500 msを超え,不整脈リスクが高いことが示された。

COVID-19の入院患者に高用量および低用量のクロロキンを(セフトリアキソンとアジスロマイシンを併用して)投与したブラジルの盲検ランダム化臨床試験(5)では,高用量群で死亡率が高いことを試験担当医師が発見し,わずか81名の患者が登録された後,試験が早期中止となった。

 

参考文献

 1. Servick K: Antimalarials widely used against COVID-19 heighten risk of cardiac arrest. How can doctors minimize the danger? Science April 21, 2020. https://www.sciencemag.org/news/2020/04/antimalarials-widely-used-against-covid-19-heighten-risk-cardiac-arrest-how-can-doctors

 2. Magagnoli J, Siddharth N, Pereira F, et al: Outcomes of hydroxychloroquine usage in United States veterans hospitalized with Covid-19. April 23, 2020. PREPRINT medRxiv available at https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.16.20065920v2. doi: https://doi.org/10.1101/2020.04.16.20065920

3. Giudicessi JR, Noseworthy PA, Friedman PA, et al: Urgent guidance for navigating and circumventing the QTc-prolonging and torsadogenic potential of possible pharmacotherapies for coronavirus disease 19 (COVID-19). Mayo Clin Proc 2020 Apr 7 doi: 10.1016/j.mayocp.2020.03.024 [Epub ahead of print]

 4. Chorin E, Dai M, Schulman E, et al: The QT interval in patients with SARS-CoV-2 infection treated with hydroxychloroquine/azithromycin. April 3, 2020. PREPRINT medRxiv available at https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.02.20047050v1. doi: https://doi.org/10.1101/2020.04.02.20047050

 5. Silva Borba MG, de Almeida Val F, Sampaio VS, et al: Chloroquine diphosphate in two different dosages as adjunctive therapy of hospitalized patients with severe respiratory syndrome in the context of coronavirus (SARS-CoV-2) infection: Preliminary safety results of a randomized, double-blinded, phase IIb clinical trial (CloroCovid-19 Study). April 16, 2020. PREPRINT medRxiv available at https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.07.20056424v2  doi: https://doi.org/10.1101/2020.04.07.20056424

       


  2020年4月23日

 全国的なCOVID-19検査のアクションプランが提言される

ロックフェラー財団は,COVID-19の検査と陽性結果の綿密な追跡調査に基づき,経済活動と社会活動を再開するための包括的プラン(2020年4月21日付,下記リンクを参照)を提言した。このプランの目標は,労働者のモニタリング,アウトブレイク再発の早期発見,診断検査・在宅検査という目標を通して,経済活動の再開を支える国家主導のCOVID-19検査プログラムを構築することである。このプランは主に次の3つで構成される。

  • 1つ目は,COVID-19の検査件数を現在の1週間あたり100万件から劇的に拡大し,今後8週間で1週間あたり300万件,次の6ヵ月間で1週間あたり3000万件の検査を行えるようにすることである。これを行うには,全米の国立研究機関,大学研究機関,何千もの地方の小規模検査機関に対し,検査能力の拡充に向けた投資と支援が必要となる。
  • 2つ目は,検査を管理し,陽性患者の接触者を追跡するためのトレーニングを受けた医療従事者チームを発足させることである。同財団は,州の公衆衛生部門を中心に編成することを提言している。同財団はまた,10万~30万名の人員を雇用し,コンピュータネットワークと多数の電子医療記録を紐づけてこれらの人員をサポートする必要があることを提言している。
  • 3つ目は,リアルタイム解析と感染の追跡を円滑化するため,連邦,州,民間のデータプラットフォームを統合し,拡大していくことである。これを行うことで,COVID-19のアウトブレイク再発を突き止め,検査量の急増に対応し,追跡調査を行えるようになる。

ロックフェラー財団が提案するこの白書は,優れたアイデアに富んでおり,必読である。この大規模プランには,数多く点在するコンピュータ化されたデータについて,プラットフォームを統合していくことが求められる。これらはいずれも,プライバシーと感染制御の必要性のバランスを取る必要がある。

プランのリンク:https://www.rockefellerfoundation.org/wp-content/uploads/2020/04/TheRockefellerFoundation_WhitePaper_Covid19_4_21_2020.pdf


  2020年4月22日

 COVID-19における凝固障害の重要性が浮き彫りに

COVID-19患者において,血栓性合併症は新たに浮上した問題の1つである。COVID-19に起因する合併症のほか,COVID-19の病的状態と死亡に寄与する重大な合併症を認識することが重要である。感染によってもたらされる凝固カスケードの調節異常は,血栓形成促進状態を誘導し,これにより播種性血管内凝固,血栓塞栓症,出血,または顕性血栓形成を引き起こす可能性がある。Journal of Clinical Virology誌(2020年6月号オンライン版,下記リンクを参照)に掲載された論文では,COVID-19患者における凝固障害の重要性に注目し,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス1(Sars-CoV-1)と中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の過去の経験をレビューしている。

研究へのリンク:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1386653220301049

   

  2020年4月21日

 データにない28,000件の死亡:コロナウイルス危機による本当の死亡者数を追跡

2020年4月21日のNew York Times誌でJin Wu氏およびAllison McCann氏は,11ヵ国の死亡者数データのレビューを行ったところ,これらの国では過去数年と比較して死亡者数が大きく増えていることが示されたことを報告した。著者らは今年の総死亡者数を過去の同期間の平均と比較し,各国の超過死亡数を推定した。その結果,先月のコロナウイルスパンデミック中の死亡者数は,COVID-19の死亡者数に関する公式の報告よりも少なくとも28,000件は多かった。ほとんどの国では,COVID-19の死亡者について医療機関で発生したものしか報告しないため,報告されないCOVID-19による死亡者が多く存在する。この研究で明らかになった28,000件の超過死亡には,COVID-19による死亡のほか,医療機関に人が殺到した影響で治療を受けられなかった他の疾患の患者など,他の原因による死亡も含まれる。この記事から,全世界のCOVID-19の死亡者数は,検査で確定されたCOVID-19の死亡報告数よりはるかに多いことが示唆される。この傾向を国ごとにわかりやすくグラフで表した記事が以下のリンクから閲覧できる。

ニュース記事へのリンク:https://www.nytimes.com/interactive/2020/04/21/world/coronavirus-missing-deaths.html?smid=em-share

 

  2020年4月20日

 検査陽性となった乗員の60%が無症候性だった

2020年4月16日にロイター社のIdress Ali氏およびPhil Stewart氏が報告した記事は,パンデミックの手がかりとなる。感染しても症状がない場合があり,その場合でも伝播リスクはあることは知られているが,無症候性感染の程度は不明であり,過少評価されている可能性がある。海軍の航空母艦セオドア・ルーズベルトの全乗員4,800名の検査が94%完了した。この検査で陽性となった600名超の乗員のうち,60%が無症状であった。この数字は,海軍のコロナウイルスの取り組みの中心を担う米海軍作戦副長の海軍中将Phillip Sawyer氏が記者に電話で答えたもので,国防長官のMark Esper氏がテレビインタビューでコメントした。記事では,4月5日にAnthony Fauci博士が提示した25~50%より高い数字が出たとコメントしている。この結果は非常に興味深く,無症候性感染の規模についてのより深い理解につながる。

ニュース記事へのリンク:https://taskandpurpose.com/news/uss-theodore-roosevelt-sailors-coronavirus-asymptomatic

 


   2020年4月17日

 スコアリングモデルによりCOVID-19の進行リスクを予測

中国の研究者らは,併存疾患,年齢,リンパ球数およびLDH(乳酸脱水素酵素)値に基づく4因子モデルを開発した。このモデルは,COVID-19の感染が確定した患者のうち,進行する患者と進行しない患者を予測するものである。このモデルは,個々の患者に対して最適な治療戦略を判断する臨床医を支援することを目的としている。このリスクモデルはEnqiang Qin博士らにより開発され,2020年4月9日にClinical Infectious Diseases誌オンライン版で発表された。

連続した208名の患者から得られたデータを後ろ向きに収集して,多変量COX回帰分析を行ったところ,併存疾患,年齢60歳超,リンパ球数低値,LDH高値の4つの因子がCOVID-19の進行と独立して関連した。これらの因子に基づき,次の3つのカテゴリーのいずれかに分類するスコアリングモデルを開発した。

  • 低リスク(進行確率 10%)
  • 中程度リスク(進行確率 10~40%)
  • 高リスク(進行確率 50%超)

今後,このモデルについて,COVID-19進行に対するリスク因子の予測能を前向き試験で検証する必要がある。

研究へのリンク:https://academic.oup.com/cid/article/doi/10.1093/cid/ciaa414/5818317


 

  2020年4月16日

 NIHによる血清抗体調査でボランティアを募集中

米国におけるCOVID-19パンデミックの規模を明らかにするため,NIHは10,000名のボランティアを登録している。COVID-19の感染確定歴がある人や現在COVID-19の症状がある人は,参加の対象外となる。「この調査では,(中略)様々なコミュニティで,自覚のないまま感染していた人の数がわかる。無自覚の理由には,症状が非常に軽かった,記録されていない病状だった,具合が悪かったときに検査を受けなかったことなどがある」とNIAID所長のAnthony S. Fauci氏(MD)は述べた。研究者らは,血液検体を採取して分析し,Sars-CoV-2タンパク質に対する抗体を調べる。検査結果は,その集団で検出されずに広がっていた感染の規模を解明する手がかりとなる。自宅用採血キットと微量血液検体の採血説明書を参加者に発送し,分析のために返送してもらう予定である。この調査への参加に関心のある人は,以下に連絡すること:clinicalstudiesunit@nih.gov

ニュースリリースへのリンク:https://www.nih.gov/news-events/news-releases/nih-begins-study-quantify-undetected-cases-coronavirus-infection

 


 

 

 2020年4月14日

 コロナウイルスの死亡率を1つの数値にまとめられない理由

Johnathan Fuller博士(MD,PHD)は,刻々と変わるCOVID-19の統計について幅広い視点で説明した明確な記事を執筆した。オンラインジャーナル The Conversation(2020年4月10日付)の記事で博士は,統計とモデルが異なる理由を説明した。博士の知見は,読者にCOVID-19パンデミックについて報告された大量の疫学情報を解釈する際に有用な枠組みと視点を与えてくれる。公衆衛生政策や個別の症例で最善の決定を下すには,数値だけではなく,モデルをより深く理解する必要がある。

記事へのリンク:コロナウイルスの死亡率を1つの数値にまとめられない理由

 


 

2020年4月10日

 スマートフォンアプリはパンデミック克服に役立つか?

 米国国立衛生研究所(NIH)所長のFrancis Collins博士が2020年4月9日,興味深い記事を投稿した。NIH所長は自身のブログで,COVID-19パンデミック克服に向けて,濃厚接触者の追跡と通知のためにスマートフォンの利用の協力要請について述べた。公衆衛生担当チームが一般市民と電話や対面で話す従来の方法は,非常に時間がかかる。時間にロスがあると,ウイルスに曝露した個人の発見や通知が遅れるため,感染拡大を許してしまうことになる。スマートフォンの無線Bluetooth技術を利用するデジタル追跡機能によって,COVID-19を制御する可能性を高めることができる。中国の研究では,濃厚接触追跡アプリの利用とCOVID-19感染の抑制持続との相関関係が示された。Collins博士は,主要な倫理的,法的,社会的問題についても触れている。

ブログ記事へのリンク:https://directorsblog.nih.gov/author/collinsfs/


2020年4月9日

COVID-19は心臓に影響を及ぼし,心血管症状を伴う可能性がある。非常に興味深い4症例

COVID-19患者は,肺炎に進行しうる呼吸器症状を呈することが多く,重症者では急性呼吸窮迫症候群(ARDS)やショックを呈する。COVID-19感染症は心臓に影響を及ぼす可能性が現在明らかになっている。呼吸困難は肺と心臓の両方に関与する一般的な症状であり,原因が心臓と呼吸器のどちらにあるのかを鑑別するのは困難である。心臓と肺の両方に影響が及んでいるタイミングや,COVID-19感染症は様々な心血管症状を呈することを認識することが重要である。4月3日,Circulation(オンライン版)に発表された論文では,この点を示す4症例について説明している。 

研究へのリンク:https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.047164

 


2020年4月9日

臨床試験に入った新たな抗ウイルス薬がCOVID-19の治療にもたらす希望

EIDD-2801という新薬が,新型コロナウイルスSars-CoV-2による肺損傷の治療に有望であることが示されている。 EIDD-2801は,RNA依存RNAポリメラーゼに対する抗ウイルス作用を持つリボヌクレオシド類似体であり,ノースカロライナ大学チャペルヒル校ギリングス・グローバル公衆衛生学部の研究者たちによって開発された。直近の研究結果は,2020年4月6日にScience Translational Medicine誌で公表された。公表された研究から,EIDD-2801はSARS-Cov-2に感染させた培養ヒト肺細胞を保護することができることが明らかになった。この薬剤は,その他の重篤なコロナウイルス感染症の治療にも有効であると考えられている。マウスを用いた実験では,COVID-19関連のウイルス感染症の発現から12~24時間後にEIDD-2801を投与すると,肺損傷と体重減少が有意に抑制されたことが明らかになった。もう1つのメリットは,他の治療は静脈内投与する必要があるのに対して,この薬剤は経口投与できる点である。投与が容易なため,軽症者の治療や感染予防に有望である。

研究へのリンク:https://stm.sciencemag.org/content/early/2020/04/03/scitranslmed.abb5883


2020年4月8日

COVID-19ワクチン候補が有望であることが研究から判明

ScienceDailyの掲載記事からの興味深いニュース

University of Pittsburgh School of Medicineの科学チームは,COVID-19に対するワクチン候補を発表した。このワクチンをマウスに接種したところ,ウイルス中和に十分な量のSars-CoV-2特異抗体が産生された。2020年4月2日,Lancetが発行するEBioMedicineに研究の詳細を記した論文が掲載された。初期のコロナウイルス流行中に築いた基礎を用いて,このワクチンはコロナウイルスのスパイクタンパク質を標的としている。免疫を構築するために,このワクチンは研究所で作ったウイルスタンパク質の断片を用いて製造されている。これは現在のインフルエンザワクチン作成と同じ方法である。研究者らは効力を高めるために,マイクロニードルアレイという新たな薬物送達方法を用いている。この研究の共同筆頭著者は「臨床試験には通常少なくとも1年,おそらくそれ以上の時間が必要となる」と述べている。

研究へのリンク:https://www.thelancet.com/journals/ebiom/article/PIIS2352-3964(20)30118-3/fulltext#coronavirus-linkback-headerr

ニュース記事へのリンク:https://www.sciencedaily.com/releases/2020/04/200402144508.htm


2020年4月6日

新たな報告で,COVID-19重症患者でヒドロキシクロロキンとアジスロマイシン併用のベネフィットは認められず

重症患者を対象にヒドロキシクロロキンとアジスロマイシン併用を検討する小規模試験では,これらの薬剤の併用による強力な抗ウイルス作用または臨床的ベネフィットを示すエビデンスは認められなかった。  この試験の対象患者はわずか11例であり,そのうち8例は高リスクの基礎疾患を有していた。この試験は,薬剤の有効性や安全性について意味のある統計解析を行ったり,結論を導いたりするには小規模すぎるといえる。しかし,この報告は以前にフランスの研究で示唆された,COVID-19重症患者における同併用療法の抗ウイルス効果に疑問を投げかけている。

研究へのリンク:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0399077X20300858?via%3Dihub


2020年4月6日

特に市中感染が著しい地域での布マスク着用をCDCが推奨

コロナウイルスの感染者はかなりの割合で症状がなく,最終的に症状が出る人でも,症状がない時期からウイルスを感染させる。  つまり,症状が現れていなくても,近距離で話をしたり,咳やくしゃみをすると,ウイルスが広がる可能性がある。 これを踏まえ,CDCは特に市中感染が著しい地域では,他者との社会的距離を保つのが困難な公共の場所(食料品店や薬局など)で布マスクを着用するよう推奨している。簡易的な布マスクを使用することで,ウイルス感染の拡大は遅くなり,ウイルスに感染していることに無自覚なまま他者に感染させている人々に役立つ。  自発的な公衆衛生対策として,家庭用品や自宅によくある材料を使って低コストの布マスクを手作りし,用いることもできる。

なお,感染拡大を遅らせるためには,6フィート(約1.8メートル)の社会的距離を保つことが引き続き重要であることを強調することが極めて重要である。 

推奨している布マスクは,サージカルマスクやN95マスクではない。  現行のCDCガイダンスで推奨されているように,これらは医療従事者やその他の医療救援隊員のために確保しておかなければならない重要な物資である。

CDCの推奨の全文については,以下を参照:https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/prevent-getting-sick/cloth-face-cover.html


COVID-19情報ポータルページ


2020年4月8日

COVID-19ワクチン候補が有望であることが研究から判明

ScienceDailyの掲載記事からの興味深いニュース

 

University of Pittsburgh School of Medicineの科学チームは,COVID-19に対するワクチン候補を発表した。このワクチンをマウスに接種したところ,ウイルス中和に十分な量のSars-CoV-2特異抗体が産生された。2020年4月2日,Lancetが発行するEBioMedicineに研究の詳細を記した論文が掲載された。初期のコロナウイルス流行中に築いた基礎を用いて,このワクチンはコロナウイルスのスパイクタンパク質を標的としている。免疫を構築するために,このワクチンは研究所で作ったウイルスタンパク質の断片を用いて製造されている。これは現在のインフルエンザワクチン作成と同じ方法である。研究者らは効力を高めるために,マイクロニードルアレイという新たな薬物送達方法を用いている。この研究の共同筆頭著者は「臨床試験は通常,少なくとも1年,おそらくそれ以上の時間が必要となる」と述べている。

研究へのリンク:https://www.thelancet.com/journals/ebiom/article/PIIS2352-3964(20)30118-3/fulltext#coronavirus-linkback-header

ニュース記事へのリンク:https://www.sciencedaily.com/releases/2020/04/200402144508.htm

                                                              

  2020年5月19日

 COVID-19:感染伝播についての解説

University of Massachusetts DartmouthのErin S. Bromage生物学准教授は,最近のブログ記事「リスクを知って,リスクを回避しよう」において,感染力のある量,ウイルスが広がりやすい場所やその広がり方,そして最もリスクが高い環境について説明している。  同准教授はデータや研究結果をわかりやすい言葉で上手に解説しており,科学者ではない人でもよく理解できる。多くの人がCOVID-19ウイルスの広がり方をより理解することで,ウイルス感染を避ける上で適切な判断を下せるようになることが望まれる。

ブログ記事へのリンク:https://www.erinbromage.com/post/the-risks-know-them-avoid-them


2020年4月8日

COVID-19ワクチン候補が有望であることが研究から判明

ScienceDailyの掲載記事からの興味深いニュース

 

University of Pittsburgh School of Medicineの科学チームは,COVID-19に対するワクチン候補を発表した。このワクチンをマウスに接種したところ,ウイルス中和に十分な量のSars-CoV-2特異抗体が産生された。2020年4月2日,Lancetが発行するEBioMedicineに研究の詳細を記した論文が掲載された。初期のコロナウイルス流行中に築いた基礎を用いて,このワクチンはコロナウイルスのスパイクタンパク質を標的としている。免疫を構築するために,このワクチンは研究所で作ったウイルスタンパク質の断片を用いて製造されている。これは現在のインフルエンザワクチン作成と同じ方法である。研究者らは効力を高めるために,マイクロニードルアレイという新たな薬物送達方法を用いている。この研究の共同筆頭著者は「臨床試験は通常,少なくとも1年,おそらくそれ以上の時間が必要となる」と述べている。

研究へのリンク:https://www.thelancet.com/journals/ebiom/article/PIIS2352-3964(20)30118-3/fulltext#coronavirus-linkback-header

ニュース記事へのリンク:https://www.sciencedaily.com/releases/2020/04/200402144508.htm



 

2020年4月10日

 スマートフォンアプリはパンデミック克服に役立つか?

 米国国立衛生研究所(NIH)所長のFrancis Collins博士が2020年4月9日,興味深い記事を投稿した。NIH所長は自身のブログで,COVID-19パンデミック克服に向けて,濃厚接触者の追跡と通知のためにスマートフォンの利用の協力要請について述べた。公衆衛生担当チームが一般市民と電話や対面で話す従来の方法は,非常に時間がかかる。時間にロスがあると,ウイルスに曝露した個人の発見や通知が遅れるため,感染拡大を許してしまうことになる。スマートフォンの無線Bluetooth技術を利用するデジタル追跡機能によって,COVID-19を制御する可能性を高めることができる。中国の研究では,濃厚接触追跡アプリの利用とCOVID-19感染の抑制持続との相関関係が示された。Collins博士は,主要な倫理的,法的,社会的問題についても触れている。

ブログ記事へのリンク:https://directorsblog.nih.gov/author/collinsfs/


 

  2020年5月29日

 ヒドロキシクロロキンとクロロキンは単剤かマクロライド系薬剤との併用かを問わず有益ではなかったことが国際的な後ろ向きデータベース研究で示された

クロロキンまたはヒドロキシクロロキンの単剤投与またはマクロライド系薬剤との併用投与を受けたCOVID-19患者の治療成績を解析した大規模国際研究の結果が,2020年5月22日にLancet誌で公表された。6大陸の671病院から収集されたデータで構成される国際症例登録が解析された。データには2019年12月20日から2020年4月14日までに入院したSARS-CoV-2陽性患者が含まれていた。症例登録のうち96,032例のデータが本研究の対象とされ,そのうち14,888例は診断後48時間以内に対象の治療を受けた患者で,単剤かマクロライド系薬剤との併用かを問わずクロロキンおよびヒドロキシクロロキンの投与を受けなかった81,114例が対照群とされた。解析の結果,単剤投与時とマクロライド系薬剤との併用投与時ともに,COVID-19に対する入院成績の観点で,ヒドロキシクロロキンまたはクロロキンのベネフィットを確認するエビデンスは得られなかった。この研究では,これらのレジメンをそれぞれ対照群と比較したとき,院内生存率の低下と心室性不整脈の頻度増加が認められた。後ろ向きの観察研究であるため,測定されなかった交絡因子が存在する可能性が否定できない。その一つとして,これらの薬剤がより重症度の高い患者に使用された可能性が考えられる。著者らは「COVID-19患者におけるこれらの薬剤のベネフィットと害について何らかの結論を下すにはランダム化比較試験の実施が必要である」と結論付けている。著者らはまた「今回の知見から,これらのレジメンは臨床試験以外では使用すべきでないことが示唆される」とも述べている。

研究へのリンク:https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31042-4/fulltext

  2020年4月23日

 全国的なCOVID-19検査のアクションプランが提言される

ロックフェラー財団は,COVID-19の検査と陽性結果の綿密な追跡調査に基づき,経済活動と社会活動を再開するための包括的プラン(2020年4月21日付,下記リンクを参照)を提言した。このプランの目標は,労働者のモニタリング,アウトブレイク再発の早期発見,診断検査・在宅検査という目標を通して,経済活動の再開を支える国家主導のCOVID-19検査プログラムを構築することである。このプランは主に次の3つで構成される。

  • 1つ目は,COVID-19の検査件数を現在の1週間あたり100万件から劇的に拡大し,今後8週間で1週間あたり300万件,次の6ヵ月間で1週間あたり3000万件の検査を行えるようにすることである。これを行うには,全米の国立研究機関,大学研究機関,何千もの地方の小規模検査機関に対し,検査能力の拡充に向けた投資と支援が必要となる。
  • 2つ目は,検査を管理し,陽性患者の接触者を追跡するためのトレーニングを受けた医療従事者チームを発足させることである。同財団は,州の公衆衛生部門を中心に編成することを提言している。同財団はまた,10万~30万名の人員を雇用し,コンピュータネットワークと多数の電子医療記録を紐づけてこれらの人員をサポートする必要があることを提言している。
  • 3つ目は,リアルタイム解析と感染の追跡を円滑化するため,連邦,州,民間のデータプラットフォームを統合し,拡大していくことである。これを行うことで,COVID-19のアウトブレイク再発を突き止め,検査量の急増に対応し,追跡調査を行えるようになる。

ロックフェラー財団が提案するこの白書は,優れたアイデアに富んでおり,必読である。この大規模プランには,数多く点在するコンピュータ化されたデータについて,プラットフォームを統合していくことが求められる。これらはいずれも,プライバシーと感染制御の必要性のバランスを取る必要がある。

プランへのリンク:https://www.rockefellerfoundation.org/wp-content/uploads/2020/04/TheRockefellerFoundation_WhitePaper_Covid19_4_21_2020.pdf


 

2020年4月10日

 スマートフォンアプリはパンデミック克服に役立つか?

 米国国立衛生研究所(NIH)所長のFrancis Collins博士が2020年4月9日,興味深い記事を投稿した。NIH所長は自身のブログで,COVID-19パンデミック克服に向けて,濃厚接触者の追跡と通知のためにスマートフォンの利用の協力要請について述べた。公衆衛生担当チームが一般市民と電話や対面で話す従来の方法は,非常に時間がかかる。時間にロスがあると,ウイルスに曝露した個人の発見や通知が遅れるため,感染拡大を許してしまうことになる。スマートフォンの無線Bluetooth技術を利用するデジタル追跡機能によって,COVID-19を制御する可能性を高めることができる。中国の研究では,濃厚接触追跡アプリの利用とCOVID-19感染の抑制持続との相関関係が示された。Collins博士は,主要な倫理的,法的,社会的問題についても触れている。

ブログ記事へのリンク:https://directorsblog.nih.gov/author/collinsfs/


 

2020年4月10日

 スマートフォンアプリはパンデミック克服に役立つか?

 米国国立衛生研究所(NIH)所長のFrancis Collins博士が2020年4月9日,興味深い記事を投稿した。NIH所長は自身のブログで,COVID-19パンデミック克服に向けて,濃厚接触者の追跡と通知のためにスマートフォンの利用の協力要請について述べた。公衆衛生担当チームが一般市民と電話や対面で話す従来の方法は,非常に時間がかかる。時間にロスがあると,ウイルスに曝露した個人の発見や通知が遅れるため,感染拡大を許してしまうことになる。スマートフォンの無線Bluetooth技術を利用するデジタル追跡機能によって,COVID-19を制御する可能性を高めることができる。中国の研究では,濃厚接触追跡アプリの利用とCOVID-19感染の抑制持続との相関関係が示された。Collins博士は,主要な倫理的,法的,社会的問題についても触れている。

ブログ記事へのリンク:https://directorsblog.nih.gov/author/collinsfs/


 

2020年4月10日

 スマートフォンアプリはパンデミック克服に役立つか?

 米国国立衛生研究所(NIH)所長のFrancis Collins博士が2020年4月9日,興味深い記事を投稿した。NIH所長は自身のブログで,COVID-19パンデミック克服に向けて,濃厚接触者の追跡と通知のためにスマートフォンの利用の協力要請について述べた。公衆衛生担当チームが一般市民と電話や対面で話す従来の方法は,非常に時間がかかる。時間にロスがあると,ウイルスに曝露した個人の発見や通知が遅れるため,感染拡大を許してしまうことになる。スマートフォンの無線Bluetooth技術を利用するデジタル追跡機能によって,COVID-19を制御する可能性を高めることができる。中国の研究では,濃厚接触追跡アプリの利用とCOVID-19感染の抑制持続との相関関係が示された。Collins博士は,主要な倫理的,法的,社会的問題についても触れている。

ブログ記事へのリンク:https://directorsblog.nih.gov/author/collinsfs/


 

2020年4月10日

 スマートフォンアプリはパンデミック克服に役立つか?

 米国国立衛生研究所(NIH)所長のFrancis Collins博士が2020年4月9日,興味深い記事を投稿した。NIH所長は自身のブログで,COVID-19パンデミック克服に向けて,濃厚接触者の追跡と通知のためにスマートフォンの利用の協力要請について述べた。公衆衛生担当チームが一般市民と電話や対面で話す従来の方法は,非常に時間がかかる。時間にロスがあると,ウイルスに曝露した個人の発見や通知が遅れるため,感染拡大を許してしまうことになる。スマートフォンの無線Bluetooth技術を利用するデジタル追跡機能によって,COVID-19を制御する可能性を高めることができる。中国の研究では,濃厚接触追跡アプリの利用とCOVID-19感染の抑制持続との相関関係が示された。Collins博士は,主要な倫理的,法的,社会的問題についても触れている。

ブログ記事へのリンク:https://directorsblog.nih.gov/author/collinsfs/



  2020年4月21日

 データにない28,000件の死亡:コロナウイルス危機による本当の死亡者数を追跡

2020年4月21日のNew York Times誌でJin Wu氏およびAllison McCann氏は,11ヵ国の死亡者数データのレビューを行ったところ,これらの国では過去数年と比較して死亡者数が大きく増えていることが示されたことを報告した。著者らは今年の総死亡者数を過去の同期間の平均と比較し,各国の超過死亡数を推定した。その結果,先月のコロナウイルスパンデミック中の死亡者数は,COVID-19の死亡者数に関する公式の報告よりも少なくとも28,000件は多かった。ほとんどの国では,COVID-19の死亡者について医療機関で発生したものしか報告しないため,報告されないCOVID-19による死亡者が多く存在する。この研究で明らかになった28,000件の超過死亡には,COVID-19による死亡のほか,医療機関に人が殺到した影響で治療を受けられなかった他の疾患の患者など,他の原因による死亡も含まれる。この記事から,全世界のCOVID-19の死亡者数は,検査で確定されたCOVID-19の死亡報告数よりはるかに多いことが示唆される。この傾向を国ごとにわかりやすくグラフで表した記事が以下のリンクから閲覧できる。

ニュース記事へのリンク:https://www.nytimes.com/interactive/2020/04/21/world/coronavirus-missing-deaths.html?smid=em-share

 


  2020年4月21日

 データにない28,000件の死亡:コロナウイルス危機による本当の死亡者数を追跡

2020年4月21日のNew York Times誌でJin Wu氏およびAllison McCann氏は,11ヵ国の死亡者数データのレビューを行ったところ,これらの国では過去数年と比較して死亡者数が大きく増えていることが示されたことを報告した。著者らは今年の総死亡者数を過去の同期間の平均と比較し,各国の超過死亡数を推定した。その結果,先月のコロナウイルスパンデミック中の死亡者数は,COVID-19の死亡者数に関する公式の報告よりも少なくとも28,000件は多かった。ほとんどの国では,COVID-19の死亡者について医療機関で発生したものしか報告しないため,報告されないCOVID-19による死亡者が多く存在する。この研究で明らかになった28,000件の超過死亡には,COVID-19による死亡のほか,医療機関に人が殺到した影響で治療を受けられなかった他の疾患の患者など,他の原因による死亡も含まれる。この記事から,全世界のCOVID-19の死亡者数は,検査で確定されたCOVID-19の死亡報告数よりはるかに多いことが示唆される。この傾向を国ごとにわかりやすくグラフで表した記事が以下のリンクから閲覧できる。

ニュース記事へのリンク:https://www.nytimes.com/interactive/2020/04/21/world/coronavirus-missing-deaths.html?smid=em-share

 


                                                                                                                                             

  2020年6月1日

 ニューヨーク市ではCOVID-19の感染率を規定する因子として人口密度より世帯規模の方が重要である可能性がある

米国全体では,また同じ都市の中でも,人口当たりのCOVID-19感染確定者数には大きなばらつきがみられる。このことは流行を抑え込む上で政策上重要な意味をもつことから,このばらつきにつながる因子を把握しておくことが重要である。ニューヨーク市全域でみられるばらつきを統計学的に検討する研究 (2020年5月20日にmedRxivでプレプリントとして公開;査読前)が実施され,入手可能なデータを用いて,該当する因子が郵便番号単位で調査された。本研究により,人口密度,平均世帯規模,貧困ラインを下回る人口の割合,65歳以上の住民の割合などの重要な因子を考慮に入れると,確定感染率と相関する最も重要な因子は平均世帯規模であることが明らかにされた。65歳以上の人口の割合と貧困ラインを下回る人口の割合も感染者発生率に影響を及ぼす因子であった。興味深いことに,一般的な認識に反して,人口密度それ自体は郵便番号で規定される地域内の感染者発生率に有意な影響を及ぼしていなかった。実際,本研究では他の因子を考慮に入れた場合,人口密度と感染者発生率の間には負の相関が認められた。ただし,この研究では2018年の統計データは用いられており,今回のアウトブレイク中に起きた人口の変化は考慮されていない。また,この研究において介護施設とその入居者がどのように分類されたかも明記されておらず,これらの点が研究結果に影響を及ぼした可能性がある。

研究のリンク:https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.05.25.20112797v1.full.pdf+html

 

  2020年5月18日

 不活化ウイルスを用いた有望なCOVID-19ワクチン

ワクチン開発においては通常,精製された不活化ウイルスが使用され,ポリオウイルスやインフルエンザウイルスといったウイルスを原因とする疾患の予防のために安全かつ効果の高いワクチンを提供してきた。中国の研究者グループは,2020年5月6日にScience誌に発表された論文で,精製された不活化SARS-CoV-2ワクチン(PiCoVacc)について発表した。このワクチンは,マウス,ラット,非ヒト霊長類で中和抗体を産生した。抗体は10種の代表的なウイルス菌株を中和することが示された。アカゲザル(SARS-CoV-2感染によりCOVID-19に似た疾患を示す非ヒト霊長類)に6マイクログラムを投与すると,後にSARS-CoV-2に感染させた場合,完全な防御効果を示した。観察可能または生化学的な有害作用はワクチンから生じなかった。顕著な点は,抗体依存性感染増強と呼ばれる現象を示す証拠がなかったことである。過去の報告では,この点が懸念として提起されていた。

著者らは,「これらの結果はヒト向けSARS-CoV-2ワクチンの臨床開発に向けた前向きな一歩を示す」と述べた。PiCoVaccの臨床試験は今年後半に開始される予定である。

試験のリンク:https://science.sciencemag.org/content/early/2020/05/06/science.abc1932


  2020年4月21日

 データにない28,000件の死亡:コロナウイルス危機による本当の死亡者数を追跡

2020年4月21日のNew York Times誌でJin Wu氏およびAllison McCann氏は,11ヵ国の死亡者数データのレビューを行ったところ,これらの国では過去数年と比較して死亡者数が大きく増えていることが示されたことを報告した。著者らは今年の総死亡者数を過去の同期間の平均と比較し,各国の超過死亡数を推定した。その結果,先月のコロナウイルスパンデミック中の死亡者数は,COVID-19の死亡者数に関する公式の報告よりも少なくとも28,000件は多かった。ほとんどの国では,COVID-19の死亡者について医療機関で発生したものしか報告しないため,報告されないCOVID-19による死亡者が多く存在する。この研究で明らかになった28,000件の超過死亡には,COVID-19による死亡のほか,医療機関に人が殺到した影響で治療を受けられなかった他の疾患の患者など,他の原因による死亡も含まれる。この記事から,全世界のCOVID-19の死亡者数は,検査で確定されたCOVID-19の死亡報告数よりはるかに多いことが示唆される。この傾向を国ごとにわかりやすくグラフで表した記事が以下のリンクから閲覧できる。

ニュース記事へのリンク:https://www.nytimes.com/interactive/2020/04/21/world/coronavirus-missing-deaths.html?smid=em-share