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臨死患者

執筆者:

Elizabeth L. Cobbs

, MD, George Washington University;


Karen Blackstone

, MD, George Washington University;


Joanne Lynn

, MD, MA, MS, Altarum Institute

最終査読/改訂年月 2017年 1月

臨死患者は,他の患者とは異なるニーズがある可能性がある。彼らのニーズを満たすために,臨死患者はまず特定されなければならない。死亡の前に,患者は3種類の一般的な機能低下の軌跡の1つを辿る傾向がある:

  • 着実な進行性機能低下の限定的期間(例,進行性癌において典型的)

  • 着実に進行性ではないことがある,重度の機能障害の長期的な不確定期間(例,重度の認知症,機能障害を引き起こす脳卒中,および重度のフレイルにおいて典型的)

  • 基礎疾患の周期的およびときに予測不可能な急性増悪により引き起こされる変則的な機能低下(例,心不全またはCOPDにおいて典型的)

1番目の軌跡(例,進行性癌)では,疾患の経過および死亡の時期は,他の軌跡に比べより予測可能である傾向がある。例えば,長期の機能障害(例,重度の認知症)では,肺炎などの感染症のため,突然死亡が起きる場合がある。変則的な進行性機能障害(例,心不全)では,死期が迫っているようには見えない人々が,急性増悪期に突然死亡する場合がある。このため,機能低下の軌跡を知ることは助力ではあるものの,いつ死亡するかを正確性をもって予測することは依然として困難なことが多い。したがって臨床医は,以下の基準が過度に包括的である可能性を把握しつつ,以下の両基準を満たす患者は臨死の可能性のある患者とみなすことが勧められる:

  • 重篤であり,悪化が予測される疾患の存在

  • 1年以内に死亡しても,臨床医が意外だと思わない

患者に死亡する可能性があると認識された場合,臨床医は以下のことを行うべきである:

  • 生存期間の予測など,その疾患に起こりうる経過を患者,および患者が望む場合は患者の家族,友人,またはその両方に伝える

  • ケアの目標を話し合い,明確にする(例,緩和ケア,治癒)

  • 希望する緩和ケアおよびホスピスケアの手配をする

  • 死が切迫したら,何をすべきかを計画する

  • 症状を治療する

  • 金銭的,法的,および倫理的な事項に取り組む手助けをする

  • 患者および介護者がストレスに対処する手助けをする

患者はできる限り多くの意思決定に加わるべきである。患者が医療にかかわる意思決定能力に欠け( 能力(資格)および無能力),医療判断代理委任状を有する場合,その書面により任命された人物が医療的決断を行う。患者が委任代理人をもたない場合,医療従事者は通常近親者,または場合によっては親しい友人を頼りとし,患者が何を望んでいるかを洞察する。しかしながら,権限の厳密な範囲および,許容されうる代理人の優先順位は州により異なる。代理の意思決定者が認められている州では,典型的な優先順位は以下の通りである:

  • 患者の配偶者(またはその管轄地域において地位が認められている場合は同棲パートナー)

  • 患者の成人した子供

  • 患者の両親

  • 患者の同胞

  • その他の親類または親しい友人(場合による)

もし同じ優先順位をもつ者が2人以上いるなら(例,数人の成人した子供),合意が好ましいが,一部の州では,医療従事者が多数決に頼ることを容認している。

目標の明確化と意思疎通

患者および介護者は疾患の過程を理解している,または死が切迫していることを認識していると思い込むことは,一般的な誤りである;彼らは具体的に告げられる必要がある。可能であれば,推定される生存期間の範囲を告げるべきであり,例えば,「最善の結果を期待しつつ,最悪の事態に備える」ようにアドバイスすることができる。早い時期に患者を教育することは,患者がスピリチュアルおよび心理社会的な懸案事項に取り組んだり,ケアの優先順位に関して熟考して合理的な決断を下したりするための時間を提供する。死に直面した際,優先順位は人によって異なる場合がある。例えば,一部の人々は,不快感が引き起こされたり,費用がかかったり,家族の負担となったりしたとしても,延命を重要視する。他の人々は,機能および自立性の維持,または疼痛などの症状の緩和といった具体的な目標を特定する。一部の人々は,許しを請うこと,和解すること,または愛する人のために備えることに最も関心を寄せる。

事前ケア計画は書面化され,他の医療提供者(例,救急診療部)に容易にアクセス可能とされるべきであり,患者の望むケアを達成する最善の機会が提供できるようにする。State-authorized Portable OrdersとPhysician Orders for Life-Sustaining Treatment(POLST:生命維持治療に関する医師指示書)は,広く利用されており,どの医療ケアを提供し,どの医療ケアを差し控えるかに関して救急医療従事者に指示するため,家庭および医療記録で容易にアクセス可能とされるべきである。具体的な治療に関する決定は,役立つことがある。例えば,CPRおよび病院への移送は,死が切迫している場合には通常好ましくない;これに対して,特定の積極的治療(例,輸血,化学療法)は,死が避けられない場合でも症状を緩和するために好ましい場合がある。

緩和ケアおよびホスピス

緩和ケア

緩和ケアは,煩わしい身体症状ならびに心理社会的および精神的苦痛の緩和を助けることで,生活の質を向上させることを目的とする。緩和ケアは,治癒を目指す治療の多くと相容れないわけではなく,実際,同時に行うことが可能である。例えば,ケアの緩和的側面は,肝移植のリストに載っている肝不全患者に対する疼痛またはせん妄の治療を重視する。しかしながら,患者のケアが根治的治療から支持療法へ,または,治療から苦痛緩和へと移行していると伝えるのは,複雑な決定過程を過度に簡略化するものである。ほとんどの患者は,様々な疾患および身体障害の影響を是正し,予防し,軽減させる,患者に合わせた治療の混合を必要とする。

臨床医は,患者が重篤で,特に死に至らしめるに足るほど重病であると識別された場合は,直ちに緩和ケアを開始すべきである。緩和ケアは,個人の医療従事者,集学的チーム,およびホスピスプログラムによって提供されうる。個人の緩和ケア提供者は,疼痛および他の煩わしい症状の認識および治療を専門とする。集学的緩和ケアチームは,身体的,心理社会的,精神的なストレスを軽減させるために,患者の主治医および専門医とともに働く多岐にわたる専門家(例,医師,看護師,ソーシャルワーカー,聖職者)で構成されている。

パール&ピットフォール

  • たとえ積極的な治療や治癒を目指した治療を続けている患者であっても,全ての臨死状態の患者に緩和ケアを考慮すること。

ホスピス

ホスピスは,数カ月の内に死亡する可能性が極めて高い人々のためのケアおよび支持プログラムである。ホスピスケアは,快適さおよび有意味性に焦点を置くのであって,治癒にではない。サービスには,身体的なケア,カウンセリング,薬剤,耐久医療機器および医療用品の提供などがある。米国などの一部の国では,ホスピスは主に在宅のサービスを提供する;イングランドなどの他の国々では,ホスピスサービスは主に入院施設内で提供される。

典型的なホスピスケアでは,しばしば訪問介護者およびボランティアによる付加的援助を受けながら,家族が主な介護者として務める。ホスピスのスタッフは,毎日1日24時間の対応が可能である。ホスピスのスタッフは特別な訓練を受けている。ホスピスチームは通常,患者の主治医,ホスピス医師,または医長;看護師;訪問介護者;ソーシャルワーカー;聖職者または他のカウンセラー;熟練したボランティア;ならびに必要に応じて,言語療法士,理学療法士,および作業療法士によって構成されている。

治療可能な病態が発生しうるため,医師はホスピスの利用に消極的である場合がある。しかしながら,多くの治療可能な病態はホスピスケアの対象であるため,この消極性は妥当ではない。Medicareはホスピス診断に関連する全ての医療をカバーし,患者はホスピス診断に関連しない医療保障にも資格がある。また,患者はいつでもホスピスを離れ,後に再登録することができる。

切迫する死のための事前計画

症状緩和の計画に加え,患者や家族支援を受けるための計画は,人々が死における最も困難な部分に対処するのに役立つ。自宅での死亡が予測される場合,ホスピスチームは 一般的に,疼痛や呼吸困難などの症状を迅速に抑制するための使用上の説明書とともに薬剤(コンフォートキット)を提供する。家族は,錯乱,傾眠,不規則なまたは喘鳴を伴う呼吸,四肢冷感,および紫色の皮膚など,臨終の過程に起こる可能性が高い変化について説明を受けるべきである。計画は,臨終における不要でつらい病院での受診を回避するのにも役立つ。家族は,誰に電話すべきか(例,医師,ホスピスの看護師,聖職者),また電話すべきでないか(例,救急車)を事前にリハーサルすべきである。

生涯の最期の瞬間を目撃することは,家族,友人および介護者に永続的な影響を及ぼしうる。患者は穏やかで,静かで,身体的に快適な場所にいるべきである。臨床医は家族に,患者の手を握るなど,患者との身体的接触を維持することを勧めるべきである。ホスピス提供者は,患者および家族が要望する精神的,文化的,民族的,または個人的な通過儀礼について尋ね,便宜を図るべきである。家族はしばしば埋葬または火葬儀式およびその支払いに関する助言をも必要とする;ソーシャルワーカーが情報およびアドバイスを提供することができる。療養環境(例,自宅,病院,介護施設,入院ホスピスまたは在宅ホスピス)にかかわらず,宗教的習慣が遺体の取扱い方に影響する場合があり,事前に患者,家族,またはその両者と話し合うべきである。臓器提供および剖検についての決断は,通常生前になされるのがベストであるが,それはこの時期が通常,死亡直後よりストレスが少ないからである。

経済的問題および身体障害

米国のある研究では,3分の1の家族が,臨死の身内のケアをする際にほとんどの貯金を使い果たすことが示されている。家族には,家族のメンバーの重篤な疾患に対するケアにかかる費用について調査することを勧めるべきである。保険の対象範囲および規制に関する情報を入手するには,かなり念入りな調査を要する可能性がある。臨床診療チームに相談することに加え,eldercare(老人福祉部)locatorで利用可能なサービスをを確認することから始めるのは良い方法である。

致死的疾患はしばしば,進行性の身体障害を伴う。患者は自宅またはアパートの掃除,調理,金銭上の問題処理,歩行,もしくは自身の世話が徐々にできなくなる可能性がある。ほとんどの臨死患者が,終末期の数週間において援助を必要とする。臨床診療チームは,身体障害を予測し適切な準備(例,車椅子の使用が可能で家族の介護者に近接した住宅を選ぶこと)をするべきである。作業療法または理学療法およびホスピスケアなどのサービスは,身体障害が進行したときでさえも患者が自宅にとどまれるよう助けうる。臨床診療チームは選択肢の経済的な影響を知り,患者および家族とその問題について話し合うべきである。一部の法律家は高齢者医療の分野を専門とし,患者および家族のこれらの問題への対処を助けることができる。

法的および倫理的懸念

医療従事者は,リビングウィル,永続的委任状,医師による自殺幇助,ならびに蘇生術および入院を見合わせるための手続きを定める州法および施設の方針を知っておくべきである。この知識は,患者にもはや意思決定をする能力がないときでも,確実に患者の意思に沿ってケアの方針を決定する助けとなる( 事前指示書)。

多くの医療従事者は,疼痛または他の重篤な症状の緩和を目的とした薬物治療(例,疼痛,呼吸困難,またはその両方のためのオピオイド)は死亡を早めるのではないかと憂慮するが,そのような効果は実際かなりまれである。巧みな医療ケアおよび薬剤の用量調節により,医療従事者は,オピオイドによる呼吸抑制などの最も懸念すべき薬物有害作用を回避する。進行した疾患の一般的な症状に対する一般的な治療により死亡が早まることはない。難治性疼痛または呼吸困難に対して,死を早める可能性もある高用量のオピオイドが必要となる場合でも,その結果としてもたらされた死は不当とみなされることはなく,それはこれらの薬剤が症状を緩和する目的で,適切に用量を調節して投与されたためである。症状を精力的に管理し,延命治療を控える医師は,これらの問題を率直に,配慮をもって話し合い,意思決定を注意深く文書化する必要がある。

医師は,殺人の手段であると従来から考えられている介入(例,致死注射)は,それが苦痛の緩和を目的としたものであったとしても,通常提供するべきではない。自殺幇助(例,臨死患者に直接致死薬ならびにその使用に関する指示を与えることによる)は,オレゴン州,ワシントン州,バーモント州,カリフォルニア州,コロラド州,およびモンタナ州では特定の条件下で承認されているが,米国のその他の全ての地域では,告発理由となりうる。医師による自殺幇助が合法的な州では,医療従事者ならびに患者は,患者の居住地,年齢,意思決定能力,末期疾患,予後,および幇助を要請する時期など,その州固有の要件に従わなければならない。その他の全ての州およびコロンビア特別区においては,州法または慣習法が,医師による自殺幇助を具体的に禁止しているか,もしくは不明瞭である。これらの場所においては,患者の利益が入念に主張されない場合,決定がなされるときに患者の能力が欠如しているまたは患者が機能的に重度に損なわれている場合,または決定およびその論拠が書面化されていない場合などは,殺人罪で告発されることが考えられる。

患者の死後の介護者に対する支援

医師,看護師またはその他の有資格者は,家族の苦悩や不安を軽減させるため,時宜を得た方法で患者の死亡を宣告すべきである。葬儀管理者が最終手配を行うためには完成した死亡診断書を必要とするため,医師はできる限り速やかに死亡診断書を完成させるべきである。死が予測されている場合でも,医師が検視官または警察に死亡の報告をする必要がある場合もある;現地法の知識が重要である。

家族に死亡(特に予期しない死亡)を報告することは,計画および冷静さを要する。家族に対し死亡を報告するとき,医師は明確な言語を使用すべきである(例,「死亡した」という言葉を使用する)。婉曲表現(例,「逝った」)は,容易に誤解を招くため使用されるべきではない。臨終を家族が看取れなかった場合,臨床医は,蘇生の努力および患者に痛みや苦しみがなかったこと(事実である場合)など,何が起きたかを報告すべきである。(蘇生が行われる場合,家族または介護者はそれに立ち会うことを希望する場合がある;彼らが立ち会うことで蘇生結果が悪化するというエビデンスは示されていない。)近親者が1人きりで死亡の報告を受けるようなことがないよう,慎重を期する努力が求められる。死亡について伝えられた場合,特に予期せぬ死亡の場合は,家族は圧倒されてしまい,与えられた情報を処理できない,または質問を考えることができない可能性がある。

医師,看護師およびその他の医療従事者は,家族の心理的なニーズに応え,適切なカウンセリング,家族がともに深く悲しむのに適切な環境,遺体に付き添うための十分な時間を提供すべきである。家族が遺体と対面する前に,汚れを取り除き,チューブを取り外し,できる限り臭気を消すべきである。可能ならば,家族が新しい遺体のある部屋へ入るとき,ほとんどの人々はその状況に慣れていないため,臨床医が付き添うことで支えとなる場合がある。ときに,しばらくの間は家族だけにさせ,その後戻ってから施した治療に関する説明を行い,家族に質問をする機会を与えることが最善である。友人,隣人および聖職者が,支援の提供に協力することもある。

臨床医は,死の時点での行動における文化的な相違について,よく配慮しなければならない。適切ならば,患者は生前に,臓器および組織提供について決定することができる,または家族および臨床診療チームが,生前もしくは死後直後に臓器および組織提供について話し合うことができる;そのような話し合いは通常法律によって義務づけられている。立ち合いの医師は,自宅や介護施設で死亡する患者であっても,臓器提供および剖検の手配の方法について知っておくべきである。剖検は,どこで死亡が起きたかにかかわらずすぐにできるべきであり,剖検に関する決断は,生前または死後直後に下すことができる。不明な点を払拭するために,極めて少数の家族が剖検を望んで受け入れ,臨床医は品質の評価と改善における剖検の役割を認識すべきである。

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