中国伝統医学の鍼治療は欧米で最も広く受け入れられている補完療法の1つであり,統合医療の一部であることが多い。通常は皮膚および皮下組織に細い針を刺すことで特定の部位を刺激する。これら特定の部位を刺激することで,エネルギーの経路に沿って気(普遍的な生命力)の流れに影響を与え,バランスが回復すると考えられている。
一般的に施術による痛みはないが,ピリピリとした感覚が生じることがある。ときには,針をねじったり針を暖めたり,またはその他の方法で操作したりして,刺激を高めることもある。
経穴は,以下のものによって刺激されることもある:
圧力(指圧と呼ばれる)
レーザー
超音波
針に通した微電流(電気鍼治療)
(統合,補完,代替医療も参照のこと。)
エビデンスと用法
鍼治療の研究を行うことは本質的に難しい。盲検化は困難であり,いわゆる「偽」鍼治療ではツボが押されることが多いが,それにより異なる治療経験が生まれ,それは真に不活性であるとは限らない。一部の地域,特に中国では,鍼治療に関して発表されている研究で,より好ましい効果が示される傾向がある。これはバイアスを反映していると考えられる一方で,このような施術者たちは中国伝統医学の一連の治療を施しており,鍼治療はその要素の1つに過ぎないという可能性もある。
この臨床的な課題に役立てるために,世界保健機関(World Health Organization:WHO)は,効力に関するエビデンスが強固または入手可能と考えられるが,さらなる研究が推奨される状態の一覧表を発表しており,それには以下のものが含まれている:
がん治療の症状
うつ病
月経困難症
疼痛
頭痛
高血圧
術後の症状
一部の妊娠合併症
脳卒中の合併症
生じうる有害作用と禁忌
鍼治療の有害作用は過小報告されている可能性があるが,施術は一般に安全である。鍼治療後に報告された有害作用に関する2012年のレビューでは,以下のことが指摘されている(1):
鍼が残っていた(31%)
めまい(30%)
意識消失または無反応状態(19%)
転倒(4%)
鍼を刺した部位の皮下出血または痛み(2%)
気胸(1%)
その他の有害作用(12%)
大部分(95%)は害をほとんどまたは全く引き起こさないと分類された。
鍼治療は適切に行えばかなり安全であるが,技術およびケアは施術者間で異なる。
参考文献
1.Wheway J, Agbabiaka TB, Ernst E: Patient safety incidents from acupuncture treatments: a review of reports to the National Patient Safety Agency.Int J Risk Saf Med 24(3):163–9, 2012.
より詳細な情報
Acupuncture: Review and Analysis of Reports on Controlled Clinical Trials, 2002―WHO's list of symptoms, diseases, and conditions that have been shown through controlled trials to be treated effectively by acupuncture(鍼治療で効果的に治療できることが比較試験で示された症状,疾患および状態のWHOによる一覧表),British Acupuncture Councilにより公開