キレート療法

執筆者:Denise Millstine, MD, Mayo Clinic
レビュー/改訂 2018年 9月
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生物学に基づく実践の1つであるキレート療法では,過剰または有毒な量とされる金属やミネラル(例,鉛,銅,鉄,カルシウム)を吸着し血流から除去するために薬物を使用する。通常医療では,キレート療法は鉛中毒やその他の重金属中毒の治療方法として広く受け入れられている(キレート療法に関する指針の表を参照)。(統合,補完,代替医療の概要も参照のこと。)

EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を用いたキレート療法は,カルシウムを除去してアテローム性動脈硬化を治療する方法としても提案されている。しかし,50年を超える研究にもかかわらず,キレート療法がどのように動脈硬化の治療または心臓発作もしくは脳卒中の予防を可能にするのかを説明する機序は何も同定されていない。

2012年に,キレート療法の大規模ランダム化プラセボ対照試験(Trial to Assess Chelation Therapy [TACT])では,集計されたアウトカムでキレート化にはプラセボよりも有意な便益があるが(プラセボで30%に対して26.5%),個別のアウトカム(例,死亡,心血管イベント,脳卒中,入院)では有意な便益がないことがないことが明らかにされた(1)。しかしながら,この研究には方法論的な問題があったため,キレート療法に関する論争を解決するものとはならなかった。38の研究をまとめたその後のシステマティックレビューでは,心イベント再発の二次予防に関して,キレート療法に便益がある可能性はあるものの,明確ではないことが示された(2)。

キレート療法のリスクには以下のものがある:

  • 低カルシウム血症(重篤になる可能性がある)

  • より効果的な治療の遅れ

  • 腎障害

  • 死亡

参考文献

  1. 1.Lamas GA, Goertz C, Boineau R, et al: Effect of disodium EDTA chelation regimen on cardiovascular events in patients with previous myocardial infarction: the TACT randomized trial.JAMA. 309(12):1241–50, 2013.doi: 10.1001/jama.2013.2107.

  2. 2.Ibad A, Khalid R, Thompson PD, et al: Chelation therapy in the treatment of cardiovascular diseases.J Clin Lipidol 10(1):58-62, 2016.doi: 10.1016/j.jacl.2015.09.005.

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