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コンパートメント症候群

執筆者:

Danielle Campagne

, MD, University of San Francisco - Fresno

最終査読/改訂年月 2019年 7月

コンパートメント症候群とは,閉鎖した筋膜の区域内における組織にかかる圧力の上昇であり,結果として組織虚血を来す。最も初期の症状は,損傷の重症度に釣り合わない疼痛である。診断は臨床的に行い,通常はコンパートメント内圧の測定により確定する。治療は筋膜切開による。

コンパートメント症候群では,永続的に障害が連鎖する。正常では受傷後に発生する組織浮腫(例,軟部組織腫脹または血腫による)で始まる。浮腫が閉じた筋膜の区域内(典型的には下肢の前区画または後区画)で発生すると,組織拡大の余地がほとんどないため,間質の圧力(コンパートメント内圧)が増大する。コンパートメント内圧が正常な毛細血管圧の約8mmHgを超えると,細胞の灌流が遅延し,最終的に停止することがある。(注:8mmHgは動脈圧よりもはるかに低い値であるため,脈が消失するかなり前から細胞の灌流が停止することがある。)結果として生じる組織虚血がさらに浮腫を悪化させ,悪循環に陥る。

虚血の進行につれ筋肉が壊死し,ときに横紋筋融解症,感染症,および高カリウム血症に至る;これらの合併症により四肢を喪失する可能性があり,治療しなければ死に至る可能性がある。低血圧または動脈不全によって,コンパートメント内圧上昇が軽度でもそれにより組織灌流が妨げられる可能性があり,コンパートメント症候群が生じるか,または悪化する。壊死組織の治癒後に拘縮が発生することもある。

コンパートメント症候群は主に四肢の障害であり,下腿および前腕で最もよくみられる。しかし,コンパートメント症候群は他の部位(例,上腕,腹部,殿部)でも発生することがある。

病因

コンパートメント症候群の一般的な原因としては以下のものがある:

  • 骨折

  • 重度の挫傷または挫滅損傷

  • 血管損傷および修復後の再灌流傷害

まれな原因として,ヘビ咬傷,熱傷,重労働,薬物過剰摂取(ヘロインまたはコカイン),ギプス,きつい包帯,その他腫脹を制限してコンパートメント内圧を上昇させる周囲を取り囲む装具などがある。昏睡時に長時間筋肉に圧力がかかると横紋筋融解症を引き起こす可能性がある。

症状と徴候

コンパートメント症候群の最も初期の症状は,以下の通りである:

  • 疼痛の悪化

疼痛は典型的に見た目上の損傷の重症度に釣り合わず,区画内の筋肉を他動的に伸展すると増悪する(例,下肢の前区画で,前区画の筋肉を伸展する他動的な足関節底屈および足趾の屈曲)。組織虚血の5つのPの1つである疼痛(pain)に続いて,残りの4つ,すなわち錯感覚(paresthesia),麻痺(paralysis),蒼白(pallor),および脈拍消失(pulselessness)が出現する。触診すると区画の緊張を感じることがある。

パール&ピットフォール

  • 疼痛が見た目上の損傷の重症度で予想されるより強い場合,コンパートメント症候群を考慮する;筋肉の他動的伸展による疼痛の増悪がないか確認し,区画が触知できる場合は,緊張がないか確認する。

診断

  • コンパートメント内圧の測定

壊死を示唆する蒼白または脈拍消失が出現する前に,コンパートメント症候群の診断を下して治療を開始する必要がある。以下に示すいくつかの理由により,臨床的評価は困難である:

  • 典型的な症状および徴候がないことがある。

  • ときに骨折そのものにより類似する所見が生じるため,所見が特異的ではない。

  • 他の損傷および/または鎮静薬により,多くの外傷患者で精神状態が変化する。

したがって,リスクのある損傷の患者では,通常市販の血圧計によるコンパートメント内圧(正常値は8mmHg以下)測定の閾値を低くする必要がある。コンパートメント内圧が約30mmHgを超える,または拡張期血圧との差が約30mmHg以内の場合,コンパートメント症候群が確定する。

治療

  • 筋膜切開

コンパートメント症候群の初期治療は,四肢周囲の締め付けている構造(例,ギプス,副子)の除去,低血圧の是正,鎮痛薬であり,必要に応じて酸素投与を行う。

コンパートメント内圧が急速に低下して症状が軽減しない限り,通常は緊急の筋膜切開が必要である。筋膜切開は,患肢の筋膜の全区画を開き減圧するために,皮膚を大きく切開して行うべきである。全ての筋肉の生存可能性を注意深く視診し,生存不能な組織を切除する。

壊死が広範囲にわたる場合,切断が適応となる。

要点

  • コンパートメント症候群を引き起こすプロセスが始まれば,コンパートメント症候群はその重症度が増大する傾向がある。

  • 疼痛が損傷の重症度に釣り合わないように思われ,区画内の筋肉の他動的な伸展により増悪する場合,または区画が緊張している場合は,コンパートメント症候群を考慮する。

  • 診断を確定するためにコンパートメント内圧を測定する;約30mmHgを超えるまたは拡張期血圧との差が約30mmHg以下であれば確定する。

  • 初期治療後に本症が急速に消失しない限り,できるだけ早く筋膜切開を行う必要がある。

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