熱傷

執筆者:Damien Wilson Carter, MD, Tufts University School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 11月
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熱傷とは,熱,放射線,化学物質,または電気の接触によって生じる,皮膚またはその他の組織の損傷である。熱傷は,深度(浅達性[superficial]および深達性[deep]部分層熱傷[partial-thickness]と全層熱傷[full-thickness])および総体表面積に占める割合に基づいて分類される。合併症および関連する問題には,循環血液量減少性ショック,気道熱傷,感染,瘢痕,拘縮などがある。広範な熱傷(体表面積の20%超)の患者では,急速輸液が必要となる。熱傷の治療には,局所抗菌薬の投与,定期的な洗浄,挙上,ときに皮膚移植などがある。関節可動域訓練および副子固定から成る集中的リハビリテーションがしばしば必要となる。

米国では,熱傷により年間約3000人が死亡しており,約200万件の受診がある。

眼の熱傷および腐食性物質の摂取も参照のこと。)

病因

熱傷は,あらゆる外部熱源(火炎,熱い液体,熱い固形物,またはときに蒸気)によって生じる可能性がある。火事が有毒な煙の吸入の原因となることもある( see also page 一酸化炭素中毒)。

パール&ピットフォール

  • 患者に呼吸器症状,煤の混じった喀痰,口周囲の熱傷,焼けた鼻毛が認められる場合,または患者が燃焼環境に閉じ込められていた場合は,気道を評価し挿管の準備をする。

放射線熱傷は,太陽の紫外線に長時間曝露して生じるもの(サンバーン)が最も一般的であるが,その他の紫外線源(例,日焼けマシーン),X線源,または太陽光以外の放射線への長時間もしくは高強度の曝露によって生じることもある( see page 放射線曝露および汚染)。

化学熱傷は,強酸,強アルカリ(例,アルカリ溶液,セメント),フェノール,クレゾール,マスタードガス,リン,一部の石油製品(例,ガソリン,塗料用シンナー)などによって生じる。こうした物質による皮膚および深部組織の壊死は,数時間にわたり進行する。

電撃傷は,大量の電流に伴う細胞膜の熱発生および電気穿孔により生じる。高電圧(1000V以上)の電撃傷は,皮膚損傷はごく軽微に見えるにもかかわらず,筋肉,神経,血管など導電性の組織に広範な深部組織損傷を引き起こすことが多い。

熱傷に付随する事象(例,炎上する建物からの飛び降り,がれきが体に当たる,自動車事故)によって,他の傷害が起きている場合もある。熱傷のある幼児および高齢患者では,虐待を考慮すべきである( see chapter 小児虐待の概要および see chapter 高齢者虐待)。

病態生理

熱傷による熱は,タンパク質を変性させ,凝固壊死を来す。凝固組織の周りでは,血小板が凝集し,血管が収縮し,血流がわずかである組織(鬱血帯[zone of stasis]として知られる)が損傷周辺に広がる可能性がある。鬱血帯では,組織が充血し炎症を起こす。

正常な表皮バリアが損傷すると,以下が生じることになる:

  • 細菌の侵入

  • 体外への体液喪失

  • 体温調節障害

損傷した組織はしばしば浮腫を起こし,血管内容量の減少をさらに進行させる。損傷した真皮では体温調節ができないため,熱放散が有意となることがあり,特に露出した創傷でその可能性が高い。

熱傷深度

I度熱傷(ときに浅達性熱傷とも呼ばれる)は,表皮に限局しているものである。

部分層熱傷(II度熱傷とも呼ばれる)は,真皮の一部まで及んでいるもので,浅達性のものと深達性のものがある。

浅達性部分層熱傷は,真皮乳頭(より表面に近い)に及んでいるものである。このような熱傷は1~2週間以内に治癒し,通常,瘢痕化の可能性は極めて低い。治癒は汗腺の管および毛包を裏打ちする表皮細胞から起こる;この細胞が表面に向かって成長し,表面を移動して隣接する腺および濾胞由来の細胞と出会う。

深達性部分層熱傷は,真皮のより深部に及び,治癒に2週間以上かかる。治癒は毛包からしか起こらず,瘢痕化がよくみられときに重度となる。

全層熱傷(III度熱傷)は,真皮全層を越えて,その下の脂肪層まで及んでいるものである。治癒は周辺からしか起こらず,この熱傷には,小さなものでない限り,切除および皮膚移植が必要である。

合併症

熱傷は全身性の合併症も局所の合併症も引き起こす。全身性の合併症の一因となる主な因子は皮膚の完全性の破綻および体液喪失である。局所の合併症は,焼痂,拘縮,瘢痕などである。

熱傷の全身性合併症

受傷した体表面積の割合が高いほど,全身性合併症が発生するリスクが大きい。重度の全身性合併症および死亡の危険因子には,以下の全てが含まれる:

  • 体表面積の40%以上のII度およびIII度熱傷

  • 60歳以上または2歳未満

  • 同時に重度外傷または煙の吸入がある

最も一般的な全身性合併症は,循環血液量減少および感染症である。

循環血液量減少は,熱傷組織の循環不全のほか,ときにショックを引き起こすが,循環血液量減少は熱傷の深度の深さや範囲の広さゆえに生じる体液の喪失によって生じるもので,血管内容量が間質と細胞内に移行することによる全身浮腫も起きる。また,不感蒸泄も重大となる可能性がある。熱傷組織の循環不全は,血管の直接的な損傷,または循環血液量減少に続発する血管収縮によっても生じる。

感染症は,たとえ熱傷の範囲が狭くても,敗血症および死亡の一般的な原因であり,局所合併症の原因としても一般的である。宿主の防御機能の障害および組織の壊死が,細菌の侵入および増殖を促進する。最も一般的な病原体は,最初の数日はレンサ球菌およびブドウ球菌,5~7日以降はグラム陰性細菌であるが,ほぼ常に混合菌叢を呈する。

代謝異常には,血液希釈(補液により二次的に発生)や損傷した毛細血管から血管外へのタンパク質喪失に起因する低アルブミン血症などがある。希釈性の電解質欠乏が発生することがあり,これには低マグネシウム血症低リン血症低カリウム血症などがある。ショックにより代謝性アシドーシスが起こることもある。筋肉に及ぶ深い熱傷もしくは電撃傷,または収縮する焼痂による筋虚血に起因して,横紋筋融解症または溶血が起こることがある。ミオグロビン尿を引き起こす横紋筋融解症,またはヘモグロビン尿を引き起こす溶血から,急性尿細管壊死および急性腎障害に至る可能性がある。

大量の冷たい輸液を受け,救急診療部の低温環境に体表を長時間曝露すると,低体温症を起こすことがある(特に広範囲熱傷の患者の場合)。

広範囲熱傷後には,イレウスがよくみられる。

熱傷の局所合併症

焼痂は深い熱傷によって生じる硬い壊死組織である。四肢(ときに頸部または体幹)を完全に取り囲む円周状の焼痂は収縮することがある。収縮する焼痂は,浮腫に反応した組織拡大を制限する;代わりに,組織の圧迫が強まり最終的に局所虚血が生じる。焼痂より遠位の四肢および指は虚血で温存できるかどうかが脅かされ,頸部または胸郭周囲の焼痂によって換気が障害されることがある。

深い熱傷の治癒により瘢痕および拘縮が生じる。瘢痕の範囲に応じて,関節に拘縮変形が現れることがある。熱傷が関節の近く(特に手),足,会陰部にある場合は,機能が重度に障害される可能性がある。感染症により瘢痕が増大することがある。一部の熱傷患者(特に皮膚の色が濃い人)ではケロイドが形成される。

症状と徴候

創傷の症状および徴候は熱傷深度に依存する:

  • I度熱傷赤く,軽く圧すると広範かつ著明に蒼白になり,疼痛および圧痛がある。小水疱または水疱は生じない。

  • 浅達性部分層熱傷:圧すると蒼白になり,疼痛および圧痛がある。小水疱または水疱が24時間以内に生じる。小水疱および水疱の基部はピンク色であり,続いて線維性滲出液を生じる。

  • 深達性部分層熱傷:白色,赤色,または赤と白のまだらの場合がある。蒼白になることはなく,浅達性の熱傷と比べて疼痛および圧痛は弱い。針刺し検査は,鋭いというよりむしろ圧力と解釈されることが多い。小水疱または水疱が生じることがある;この熱傷は通常,乾燥している。

  • 全層熱傷:白く柔軟か,黒く焦げているか,褐色で革様か,または皮下領域に固定されたヘモグロビンのために鮮紅色を呈する場合がある。蒼白の全層熱傷は,圧しても蒼白にならないこと以外は正常な皮膚に類似していることがある。全層熱傷では通常,感覚消失または知覚鈍麻がみられる。毛包から毛を容易に抜くことができる。通常,小水疱および水疱は生じない。全層熱傷と深達性部分層熱傷とを鑑別する特徴の発現に,24~48時間を要することがある。

診断

  • 熱傷の範囲および深度の臨床的評価

  • 入院患者で臨床検査および胸部X線検査

熱傷領域の部位および深度を熱傷の図に記録する。深達性部分層熱傷および全層熱傷の両方にあてはまる外観を有する熱傷は,全層熱傷と想定する。

受傷した体表面積の割合を算定する;部分層熱傷および全層熱傷のみを計算対象とする(1)。成人では,体表面積に占める割合を,体の部位別に9の法則( see figure 熱傷範囲を算定するための,(A)9の法則(成人用)および(B)Lund-Browderの表(小児用))に基づいて算定する;散在する小規模の熱傷に関しては,患者の開いた手全体(手掌のみではない)の大きさ(総体表面積の約1%)に基づいて算定してもよい。手の大きさによる方法は,部分的に熱傷を負った部位の熱傷面積を計算する上で特に役立つ。例えば,腕の一部(全体が侵された場合は9%に相当)に熱傷がある場合,患者の手の大きさを雛形として,散在する侵されていない(または侵されている)領域の面積を推定することができる。腕全体の面積を9%として,そこから侵されていない面積を差し引くことで,より正確に腕の熱傷面積を算出することができる。小児は頭部の比率が大きく下肢の比率が小さいため,体表面積に占める割合はLund-Browderの表を使用した方がより正確に算定される( see figure 熱傷範囲を算定するための,(A)9の法則(成人用)および(B)Lund-Browderの表(小児用))。

熱傷範囲を算定するための,(A)9の法則(成人用)および(B)Lund-Browderの表(小児用)

(Redrawn from Artz CP, JA Moncrief: The Treatment of Burns, ed. 2. Philadelphia, WB Saunders Company, 1969; used with permission.)

入院患者では,ヘモグロビンおよびヘマトクリット,血清電解質,血中尿素窒素,クレアチニン,アルブミン,タンパク質,リン,ならびにイオン化カルシウムを測定する。心電図,ミオグロビンについての尿検査,および胸部X線も必要である。肉眼的に暗い色の尿,または顕微鏡下で赤血球は存在しないが試験紙検査で潜血陽性の尿は,ミオグロビン尿(溶血または横紋筋融解症を示唆)を示唆する。必要に応じてこれら検査を繰り返す。ミオグロビン尿の患者では筋肉のコンパートメントを評価する。

創傷からの滲出液,創傷治癒の障害,または感染症を示す全身所見(例,摂食に耐えられない,血小板数減少,血清血糖値上昇)により,熱傷感染症が示唆される。発熱と白血球数増加は感染のない熱傷患者でもよくみられるため,敗血症が発生した徴候として信頼できるものではない。診断が不確かな場合は,生検により感染症が確定できる;創傷表面または滲出液からの培養は信頼性に欠ける。多くの施設では,入院時にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の定着を調べる検査が行われている。

診断に関する参考文献

  1. Kamolz LP, Parvizi D, Giretzlehner M, et al: Burn surface area calculation: What do we need in future.Burns 40(1):171-172, 2014. doi: 10.1016/j.burns.2013.07.021

治療

  • 体表面積の10%を超える熱傷に対して輸液

  • 創洗浄,ドレッシング,および連続的な評価

  • 支持療法

  • 選択された患者は,熱傷センターへ移送または紹介

  • 深達性部分層熱傷および全層熱傷に対して手術および理学療法

初期治療

治療は病院到着前の段階で開始する。第一に優先することは,全ての負傷患者と同様,ABC(気道,呼吸,循環)である。気道を確保し,換気を補助し,煙の吸入が疑われる場合は100%酸素で治療する。燃え続けている火を消し,くすぶって熱をもつ物は除去する。衣服を全て脱がせる。粉末以外の化学物質は水で洗い流す;粉末は濡らす前に払い落とすべきある。酸,アルカリ,または有機化合物(例,フェノール,クレゾール,石油化学物質)による熱傷は,大量の水で洗い流し,原因溶液が全く残留していないと思われた時点からも少なくとも20分間は継続する。

輸液

ショック状態にある患者,または体表面積の10%を超える熱傷の患者には,輸液を投与する。可能であれば,熱傷を負っていない皮膚から14~16ゲージの静脈カニューレを入れて1~2カ所の末梢静脈に留置する。静脈切開は感染リスクが高いため,避ける。

最初の輸液量は,臨床的に明らかなショックに対する治療法がガイドとなる(1)ショックがない場合は,予測される体液不足に対する補充と体液量の維持が輸液投与の目的となる。Parklandの公式(4mL/kg × 熱傷面積[%][II度およびIII度熱傷])を用いて,熱傷後(来院後ではない)最初の24時間に必要な輸液量を算定し,輸液の投与速度を決定する。算出された量の半分を最初の8時間にわたって投与する;次の16時間にわたって残りを投与する。大量の生理食塩水によって高クロール性アシドーシスが生じる可能性があるため,輸液としては,乳酸リンゲル液を投与する。

例えば,体表面積の50%の熱傷を負った体重100kgの人では,Parklandの公式による輸液量は次の通りである:

equation

輸液量の半分である10Lを受傷後最初の8時間で持続静注し,残りの10Lを続く16時間にわたって投与する。実際にはこの公式は出発点に過ぎず,臨床反応に基づき投与速度を調節する。一般的には留置カテーテルにより測定する尿量が,臨床反応の通常の指標である;目標は,尿量を成人では30~50mL/時に,小児では0.5~1.0mL/kg/時に維持することとする。こうした典型的な大量輸液を実施する場合には,同時に体液過剰ならびにその結果生じる心不全およびコンパートメント症候群を回避することも重要である。尿量およびショックまたは心不全の徴候などの臨床的パラメータを,フローチャート上に少なくとも1時間毎に記録する。

パール&ピットフォール

  • Parklandの公式およびその他の熱傷用の輸液の公式は出発点に過ぎず,臨床反応に基づき輸液量および投与速度を調節する。

大きな熱傷がある患者,非常に年少もしくは高齢の患者,または心疾患がある患者に対し,大量輸液が必要な場合は12時間後にコロイド輸液(通常はアルブミン)を投与する医師もいる。

大量の電解質輸液にもかかわらず尿量が不十分な場合は,腹部および四肢のコンパートメント症候群などの輸液合併症のリスクが高いことから,熱傷センターへのコンサルテーションが必要である。大量の電解質輸液にもかかわらず尿量が不十分な患者は,コロイド輸液や他の方法に反応する可能性がある。メタアナリシスにより,アルブミンの投与により損傷72時間後の総輸液量が約半分に減少することが示されている。他の研究では,輸液蘇生(fluid resuscitation)の総量を減らすことと患者の死亡率低下との間に関連が示されている。電解質輸液とコロイド輸液を比較する大規模多施設共同臨床試験が進行中である(2, 3)。

横紋筋融解症を起こした患者に対しては,輸液が治療の中心となり,尿量を0.5~1.0mL/kg/時以上に維持することを目標とすべきである。横紋筋融解症の治療として炭酸水素ナトリウムを含む輸液を投与して尿をアルカリ化することを推奨する専門家もいるが,これで患者の予後が改善するというエビデンスはほとんどなく,アルカリ化はもはや推奨されない。

初期の創傷ケア

十分な鎮痛の後,創傷を石鹸と水で洗浄し,洗い流せる残屑を全て除去する。低体温症の誘発を避けるため,水は室温以上の温度にすべきである。手掌,手指,および足底の小さなもの以外の破裂した水疱を除去する。破裂していない水疱は,ときにそのままにしておいてもよいが,外用抗菌薬の塗布により治療すべきである。熱傷センターに搬送する場合,乾燥した清潔なドレッシングを当ててもよく(熱傷用クリームは搬送先での熱傷評価を妨げる場合がある),患者の体を温かく保ち,オピオイドの静注により比較的快適な状態を保つ。

創傷を洗浄して最終的な治療担当者が評価した後は,熱傷に対し外用療法が可能である。浅い部分層熱傷に対しては,通常は外用療法のみで十分である。深達性部分層熱傷および全層熱傷は,最終的には切除および移植により治療すべきであるが,それまでは外用療法が適切である。

外用療法には以下のものが使用できる:

  • 抗菌薬の軟膏(例,1%スルファジアジン銀,酢酸マフェニド)

  • 銀を含有する市販のドレッシング材(例,徐放性の銀含有ナノ結晶ドレッシング材)

  • 生合成された創傷被覆材(biosynthetic wound dressings)(人工皮膚製品とも呼ばれる)

銀の活性化には創傷の湿潤が必要であるため,銀含有ドレッシング材は創傷に相当の湿気がある部分層熱傷でのみ考慮すべきである。スルファジアジン銀は一過性の白血球減少を引き起こす可能性がある。一部(全部ではない)の銀含浸ドレッシング材は湿潤した状態に保たなければならないが,7日毎の低頻度の交換でよい(繰り返しの創傷ケアに伴う疼痛を最小限にするため)。

外用軟膏は毎日適用し直す必要がある。人工皮膚製品および銀含有ドレッシング材は,ルーチンには交換しないが,下部で化膿が起きることで除去せざるを得なくなることがある(特に創傷が深い場合)。熱傷を負った四肢は拳上すべきである。浮腫を軽減し,創傷治癒を改善するため,弾性包帯などの圧迫ドレッシング材を使用すべきである。

軽微な熱傷を除く全ての熱傷患者で,過去に破傷風トキソイドの接種を完了している場合,および過去5年以内に追加接種を受けていない場合,破傷風トキソイドの追加接種(0.5mLを皮下投与または筋肉内投与)を行う。最後の追加接種がより以前であるかまたは一連の接種を完了していない患者に対しては,破傷風免疫グロブリン250単位を筋肉内投与し,活性ワクチン接種を併用する( see page 予防)。

胸郭が十分に広がるように,または四肢の血流が十分になるように,収縮する焼痂の焼痂切開が必要になる場合がある。しかしながら,収縮する焼痂によって最初の数時間で四肢の温存が脅かされることはまれであるため,その間に熱傷センターに搬送できる場合,一般的にはそれまで焼痂切開を延期する。時宜を得た搬送が不可能な場合は,コンサルテーションを受けている熱傷センターから助言を得た上で,焼痂切開を行うすべきである。

支持療法

低体温症を治療し,疼痛を緩和する。オピオイド(例,モルヒネ)は常に静注で投与すべきであり,十分な疼痛コントロールのために大量投与が必要になる可能性もある。電解質欠乏の治療には,カルシウム(Ca),マグネシウム(Mg),カリウム(K),またはリン酸塩(PO4)の補給が必要になることがある。

体表面積の20%を超える熱傷の患者と,受傷前から低栄養があった患者では栄養サポートが適応となる。経口栄養が不可能または不十分な場合は,栄養チューブによる補給を可及的速やかに開始する。静脈栄養が必要になることはまれである。

入院および紹介

初期治療および安定化の後,入院の要否を評価する。以下に対しては熱傷センターへのコンサルテーションが強く推奨される:

  • 体表面積の1%を超える全層熱傷

  • 体表面積の5%を超える部分層熱傷

  • 手,顔面,足,または会陰部の熱傷(部分層以上の深達性)

熱傷の転帰には多くの因子が関与するため,コンサルテーションなしで厳格な基準を適用するよりも,各症例の詳細について熱傷センターと早期に相談する方が,おそらく助けになる。

さらに,以下の場合に入院が必要になることがある:

  • 患者が2歳未満または60歳以上である。

  • 在宅ケアに対するアドヒアランスが不良または困難である可能性が高い(例,在宅では通常困難な手または足の継続的な挙上が必要な場合)。

体表面積の1%未満のI度熱傷を除き,熱傷は全て経験豊富な医師が治療すること,および体表面積の2%を超える熱傷に対しては全例で熱傷センターによる緊急のフォローアップを積極的に考慮することを,多くの専門医が推奨している。多くの患者および介護者にとって,十分な鎮痛と運動を継続するのは困難な可能性がある。入院治療をしない患者であっても,創傷ケア,個別化したドレッシング,および早期の関節可動域訓練を開始できるようにするため,熱傷センターへの搬送または早期紹介が有益となる可能性がある。

感染症

抗菌薬の予防的全身投与は行わない。

最初の5日間における明らかな感染症に対する初期の経験的な抗菌薬療法は,ブドウ球菌およびレンサ球菌を標的にすべきである(例,スワブによる検査でMRSA定着陽性と判定された入院患者に対してはバンコマイシン)。5日以降に発生した感染症は,グラム陽性およびグラム陰性細菌に効果的な広域抗菌薬で治療する。続いて,培養および感受性試験の結果に基づき抗菌薬の選択を調整する。比較的深部の感染を伴う熱傷組織を切除することで,感染が軽快する可能性を最大限高められる。皮膚移植は感染が軽快するまで延期すべきである。

手術

手術は,2週間以内に治癒すると予測されない熱傷に対して適応となり,ほとんどの深達性部分層熱傷および全ての全層熱傷が対象となる。敗血症を予防し早期の植皮を容易にするために,可及的速やかに(理想的には3日以内に)焼痂を切除し,それにより入院期間が短縮され,機能上の結果がより良好になる。熱傷が広範囲で生命を脅かす場合は,最初に最大の焼痂を切除し,できるだけ広範囲の熱傷創をできるだけ早期に閉鎖する。(熱傷の焼痂切開も参照のこと。)

切除後は,理想的には部分層の自家移植片(患者自身の皮膚)を用いて永久生着できる植皮を進める(4)。自家移植片は,シート(切り目を入れていない皮膚切片)またはメッシュ状移植片(一定間隔で細かい切り目を入れて,より広い範囲を覆うように伸展したドナー皮膚のシート)として移植できる。メッシュ状移植片は,熱傷が体表面積の20%を超え,ドナー皮膚が乏しい場合に,外見がそれほど問題とならない個所に用いる。メッシュ状移植片は治癒すると,不均等な格子状の外観を呈して,ときに過度の肥厚性瘢痕を伴うことがある。

熱傷が体表面積の40%を超え,自家移植片を十分に調達できないと考えられる場合には,人工真皮の再生テンプレートを一時的な被覆材として使用できる(4)。同種移植片(通常,死亡したドナーからの生着能のある皮膚)または異種移植片(例,ブタの皮膚)も一時的に使用できる;これらは,ときに10~14日以内に,拒絶される。いずれも一時的な被覆であり,最終的には自家移植片に置き換える必要がある。

筋肉のコンパートメント内の浮腫によりコンパートメント内圧が30mmHgを超えて上昇する場合は,筋膜切開を行う。コンパートメント症候群は,高電圧の電撃傷を除き,熱傷ではまれである(5)。

理学療法および作業療法

瘢痕化および拘縮(特に皮膚の緊張が強く頻繁に動かす体表部の拘縮[例,顔面,手])を最小限にとどめるのに役立てるため,ならびに機能を最適化するために,理学療法および作業療法を入院時に開始する。初期の浮腫が軽快するにつれ(適切な挙上と圧迫により促進される),自動的および他動的関節可動域訓練が容易になる;訓練は1日1回または1日2回行う。植皮術後は,運動を3日間中断して,その後再開することが多いが,植皮術後24時間以内に開始している施設もある。深達性部分層熱傷または全層熱傷を負った四肢は,可及的速やかに機能的肢位で副子固定し,植皮を行うか治癒が起こる,またはその両方が得られるまで,そのまま固定を継続する(運動中は除く)。

熱傷の外来治療

外来治療としては,熱傷を清潔に保ち,できる範囲で受傷部位を挙上すること,および四肢の場合は圧迫(例,ドレッシング材の上に弾性包帯を巻く)などがある。外用軟膏で治療する熱傷に対するドレッシングは,毎日交換すべきである。軟膏を塗布し,乾燥している非固着性のガーゼドレッシングと圧迫包帯で覆う。銀含有ドレッシング材は,個々の製品の推奨に応じて7~10日毎に交換すべきである。ドレッシングの交換は単に古いドレッシングを取り除き新しいものに置き換えるだけである。生合成された創傷ドレッシングは,化膿がない状況では交換すべきでない。生合成されたドレッシングは単に乾燥ガーゼで覆い,それを毎日交換する。(熱傷のデブリドマンおよびドレッシングも参照のこと。)

外来患者のフォローアップの来院は,熱傷の重症度に基づき必要に応じてスケジュールを決める(例,非常に軽微な熱傷では,24時間以内に初回の来院,その後7~10日毎に1回)。来院時は,適応があればデブリドマン,熱傷深度の再評価,ならびに理学療法および植皮の必要性の評価を行う。創縁から拡大した紅斑の増大,化膿および疼痛の増加,黒色または赤色斑を伴う創傷の外観の変化など,感染の徴候に気づいた患者は早期に再受診すべきである。このような徴候が生じた場合は,続けて医学的評価を緊急に行うべきである。2~60歳の健康な患者における軽微な熱傷創の蜂窩織炎には外来治療が許容可能であるが,その他の感染症には入院が適応となる。

治療に関する参考文献

  1. 1.Pham TN, Cancio CL, Gibran NS: American Burn Association practice guidelines burn shock resuscitation.J Burn Care Res J 29(1):257-266, 2008.doi: 10.1097/BCR.0b013e31815f3876

  2. 2.Eljaiek R, Heylbroeck C, Dubois MJ: Albumin administration for fluid resuscitation in burn patients: A systematic review and meta-analysis.Burns 43(1):17-24, 2017.doi: 10.1016/j.burns.2016.08.001

  3. 3.Navickis RJ, Greenhalgh DG, Wilkes MM: Albumin in burn shock resuscitation: A meta-analysis of controlled clinical studies.J Burn Care Res 37(3):e268-78, 2016.doi: 10.1097/BCR.0000000000000201

  4. 4.Kagan RJ, Peck MD, Ahrenholz DH, et al: Surgical management of the burn wound and use of skin substitutes: An expert panel white paper.J Burn Care Res 34:e60–79, 2013.doi: 10.1097/BCR.0b013e31827039a6

  5. 5.International Society for Burn Injury (ISBI) Practice Guidelines Committee: Steering Committee; Advisory Committee. ISBI Practice Guidelines for Burn Care.Burns 42(5):953-1021, 2016.doi: 10.1016/j.burns.2016.05.013

要点

  • 熱傷深度の手がかりには,小水疱または水疱の存在(部分層熱傷を示唆),感覚低下,乾燥した革様の焼痂,知覚鈍麻,容易に毛を抜けること(全層熱傷を示唆)などがある。

  • 熱傷が体表面積の10%を超える場合は,乳酸リンゲル液を静注するが,その初期の速度はParklandの公式(4mL/kg × 熱傷面積[%]を熱傷後最初の24時間に投与)を指針とし,1時間尿量に基づき調節する。

  • 周囲を取り囲むまたは収縮する焼痂に対しては,焼痂切開を考慮する。

  • 支持療法は十分な鎮痛,および熱傷が体表面積の20%を超える場合は早期の栄養サポートである。

  • 熱傷が手,足,もしくは会陰部に及ぶ場合(部分層以上の深度),体表面積の5%を超える場合(部分層以上の深度),体表面積の1%を超える場合(全層),または患者が60歳以上または2歳未満の場合や在宅療法を完全に遵守する可能性が低い場合は,熱傷センターへのコンサルテーションを積極的に考慮する。

  • 焼痂が存在してコンパートメント内圧が30mmHgを超えるか,または通常は全層熱傷もしくは深達性部分層熱傷の場合,外科的に治療する。

  • 感染症に対しては,外用抗菌薬を塗布し(予防のため);熱傷面をルーチンに視診し(合併症の早期診断のため);抗菌薬の全身投与,必要に応じた外用療法の変更,およびときに感染部位の切除を行う(治療のため)。

  • 瘢痕および拘縮を最小限にするため,理学療法および作業療法を早期に開始する。

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