放射線曝露および汚染

執筆者:Jerrold T. Bushberg, PhD, DABMP, DABSNM, The National Council on Radiation Protection and Measurements
Reviewed ByWilliam E. Brant, MD, University of Virginia
レビュー/改訂 修正済み 2025年 1月
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電離放射線は組織に損傷を引き起こし,損傷は放射線量,照射線量率,放射線の種類,曝露した体の部位に応じて異なる。症状は局所的(例,熱傷)であることも,全身的(例,急性放射線症)であることもある。診断は,曝露歴,症状と徴候により行い,ときに汚染場所の特定と放射性核種による汚染の同定に放射線検知器を使用する。管理は,関連する外傷,除染,支持療法,および医療専門職の曝露の最小化に重点を置く。重度の急性放射線症患者に対しては,逆隔離,抗菌薬および抗炎症薬,ならびに骨髄サポート(bone marrow support)を行う。特定の放射性核種で内部被曝した患者に対しては,吸収阻害薬またはキレート剤を投与することがある。

電離放射線は,放射性元素から放出される場合と,X線撮影や放射線療法などの装置から放出する場合がある。

放射線の種類

放射線の種類としては以下のものがある:

  • 粒子(α粒子,β粒子,中性子)

  • 高エネルギーの電磁波(X線,γ線)

α粒子は,原子番号の大きい一部の放射性核種(例,プルトニウム,ラジウム,ウラン)により放出される高エネルギーのヘリウム核であり,浅い深度(0.1mm未満)を越えて皮膚を透過できない。

β粒子は,不安定な原子(例,セシウム137,ヨウ素131)の核から放出される高エネルギーの電子である。この粒子はより深く皮膚を透過でき(1~2cm),上皮および上皮下の損傷を引き起こす。

中性子は,少数の放射性核種(例,カリホルニウム252)から放出される,また核分裂反応(例,原子炉)で生成される電気的に中性の粒子であり,組織透過の深さは,そのエネルギーに応じて数mmから数10cmまで様々である。安定原子の核と衝突して,高エネルギーの陽子,αおよびβ粒子,ならびにγ線を放出する。

γ線およびX線は,波長の極めて短い電磁放射線(すなわち,光子)で,組織を深く(何cmも)透過する。一部の光子は全エネルギーを体内に蓄積するが,同じエネルギーの光子でエネルギーの一部のみを蓄積するものもあれば,身体と相互作用することなく完全に通過するものもある。

こうした特徴により,αおよびβ粒子は,それらを放出する放射性原子が身体の内部(体内汚染)にあるか,またはβ放射体の場合は直接体表上にある場合に,最も大きな損傷を引き起こす;放射性核種に近接する組織のみが侵される。γ線とX線は,発生源から遠く離れた場所で障害を引き起こし,一般的に急性放射線症候群の原因となる。急性放射線症候群は,特定の内部沈着放射性核種が組織や臓器に広く分布し,高い放射活性を生ずることで引き起こされる。例えば,ポロニウム210(Po-210)の比放射能はg当たり166テラベクレル(TBq/g)であり,1μg(塩粒程度の大きさ)のPo-210は50Sv(致死量の中央値の約20倍)の全身線量を出す。

放射線の測定

従来の測定単位にはレントゲン,ラド,レムなどがある。

レントゲン(R)は,大気中のX線またはγ線のイオン化能力を測定する曝露の単位である。

放射線吸収線量(ラド)は,単位質量当たりの吸収された放射線エネルギーの量である。

1ラド当たりの生物学的損傷は放射線の種類によって変わるため(例,中性子はX線やγ線より高い),レム(rem:roentgen equivalent in man)が用いられる。ラドでの線量は放射線の種類毎の線質係数により補正される;これにより求められる等価線量の単位がレムである。

米国以外および科学文献ではSI(国際単位系)が使用されており,この系ではラドがグレイ(Gy)に,レムがシーベルト(Sv)に置き換えられている;1Gy = 100ラド,1Sv = 100レムである。ラドとレム(したがってGyおよびSv)は,X線,γ線,またはβ線を表す場合は本質的に等しい(すなわち,線質係数が1となる)。

放射活性の量は1秒当たりの原子核の崩壊(壊変)数で表す。ベクレル(Bq)は放射活性の国際単位で,1ベクレルは1秒当たり1崩壊(dps)に相当する。従来単位であるキュリー(Ci)は現在も米国でときに使用されており,1キュリーは370億ベクレルに相当する。これは37,000メガベクレル(MBq)または37ギガベクレル(GBq)に相当する。

曝露の種類

放射線曝露は以下の結果として起こることがある:

  • 汚染

  • 放射線照射

放射能汚染とは,放射性物質(通常は塵埃または液体として)との意図しない接触やその滞留が生じる状態である。汚染は以下に分けられる。

  • 体外汚染

  • 体内汚染

体外汚染は皮膚や衣服上のものであり,そこから一部が落下したり,こすり落とされたりして,他の人および物体を汚染することがある。

体内汚染は意図せずに放射性物質が体内に存在することであり,経口摂取,吸入,または皮膚の傷を介して侵入することがある。体内に入ると,放射性物質は様々な部位(例,骨髄)へ運ばれることがあり,そこで除去されるか崩壊するまで放射線を放出し続ける。体内汚染は除去がより困難である。

どのような核種の体内汚染もありうるが,歴史的には,患者に重大なリスクをもたらした汚染の大半では,リン32,コバルト60,ストロンチウム90,セシウム137,ヨウ素131,ヨウ素125,ラジウム226,ウラン235,ウラン238,プルトニウム238,プルトニウム239,ポロニウム210,アメリシウム241など比較的少数の放射性核種が関与した。

照射は放射線への曝露であるが,放射性物質への曝露ではない(すなわち,汚染は関連しない)。

放射線曝露は放射線源(例,放射性物質,X線装置)に直接人が接触しなくても起こる。放射線源を取り除くか停止させると曝露は終了する。

照射は全身に影響を及ぼすこともあれば,身体の一部分に影響することもある(例,放射線療法による)。線量が十分高い場合,全身照射は全身症状および放射線症候群を引き起こす可能性がある。身体の一部分への照射は,局所的な作用を引き起こしうる。放射線療法も,標的組織に近い正常組織を損傷する可能性がある。

照射後に人が放射線を放出する(すなわち,放射活性をもつようになる)ことはない。

放射線曝露源

放射線曝露源は自然に発生するものと人工的なものがある(の表を参照)。

人は常に低レベルの自然発生する放射線(バックグラウンド放射線と呼ばれる)に曝されている。バックグラウンド放射線は宇宙線ならびに空気中,水中,および地中の放射性元素に由来する。宇宙線は地球の磁場により極で濃縮され,大気により減弱される。したがって,高緯度であるか,標高が高い,またはその両方の環境の居住者は,および飛行機に搭乗中は,被曝量が多くなる。

地球上での外部被曝は主に,半減期が地球の年齢(約45億年)に匹敵する放射性元素が存在することによる。特に,ウラン238とトリウム232は,それらの数十の放射性生成物ならびにカリウムの放射性同位元素(K-40)とともに,多くの岩および鉱物の中に存在する。

これらの放射性核種が食物,水,空気中に少量存在するため,常に体内に取り込まれて内部被曝の一因となる。体内に取り込まれた放射性核種による線量の大半は炭素とカリウムの放射性同位元素(C14,K40)に由来し,これらおよび他の元素(安定および放射性)は経口摂取または吸入により常に体内で補充されるため,体内では毎秒約7000原子が放射性崩壊を起こしている。

米国では,貴ガスであるラドンの放射性同位元素(Rn-222およびRn-220)の吸入による内部被曝は,1人当たりの平均自然放射線被曝量の最大の割合を占める。宇宙線,体内の放射性元素,および地球からの放射線による曝露は比較的少ない(1, 2)。人は自然の放射線源から1年に平均約3ミリシーベルト(mSv)(範囲は約0.5~20mSv)の実効線量を受けている。しかし,世界の一部の地域では年間の被曝が50mSvを超える。自然のバックグラウンド放射線量は放射線障害を引き起こすには十分低い。

米国において,人は人工の放射線源から1年に平均約3mSvを受け,その大半は医療用の画像検査によるものである。1人当たりでは,医療用画像検査による曝露の寄与はCTおよび心臓核医学検査に対して最も大きい。しかし,診断手技において放射線障害を引き起こすのに十分な線量を照射することはまれである。例外としては特定のX線透視ガイド下での長時間の介入(例,血管内の再建術,血管塞栓術,心臓および腫瘍のラジオ波焼灼術)があり,これらは皮膚および下部組織の損傷を引き起こしている。医療用画像検査への十分な曝露により,理論的にはがんのリスクがわずかに増加する。

平均的な公衆被曝のごく一部が,放射線事故,および核兵器の実験による放射性降下物によって生じる。産業用の照射装置,産業用のX線源,原子炉の事故が起こることがある。そのような事故は安全手順を守らなかった結果として起こることが多い(例,インターロックの解除)。

放射線障害は,大量の放射性核種を含む医療用または産業用の放射線源の紛失または盗難によっても起こっている。放射線障害の治療を求める人は,放射線への曝露に気づいていない場合もある。

1979年のペンシルベニア州スリーマイル島発電所,1986年のウクライナのチェルノブイリ原子炉,2011年の日本の福島第1原子力発電所など,放射性物質の意図しない放出が起きている(3, 4, 5)。

スリーマイル島では,チェルノブイリで起きたような格納容器の破損や福島で起きたような水素爆発がなかったため,被曝は最小限であった。スリーマイル島から1.6km以内の住民の被曝量は最大でわずか約0.08mSv(自然放射線から1カ月間に受ける量未満)であった。

対照的に,チェルノブイリの周辺地域から最終的に避難した115,000人は平均実効線量約30mSv,平均甲状腺線量約490mGyを被曝した。事故当時チェルノブイリ発電所で働いていた人は有意に高い線量を被曝した。30人を超える労働者と緊急作業員が事故から数カ月以内に死亡し,それを上回る人に急性放射線症が生じた。事故による低レベルの汚染が欧州の他の地域,アジア,および(より少ないが)北米でも認められた。ベラルーシ,ロシア,およびウクライナの様々な被災地域の一般集団の事故後20年間の平均蓄積被曝量は,約9mSvと推定された。

2011年の日本における地震と津波により,福島第1原子力発電所のいくつかの原子炉から放射線物質が環境中に放出された。現場の労働者に放射線による重篤な傷害はみられなかった。福島県の住民約400,000人の推定実効線量(面接および線量再構築モデルに基づく)は,住民の95%で2mSv未満,99.8%で5mSv未満であった。世界保健機関(World Health Organization:WHO)の推定値は曝露に関する前提を意図的により控えめにしたため,いくぶん高めであった。福島に直接隣接しない県の実効線量は0.1~1mSvと推定され,日本以外の集団での線量は無視できる程度(0.01mSv未満)であった。

人類が経験した最も重大な放射線曝露は,1945年8月に日本で2つの原子爆弾が爆発した後に起こったもので,爆発では爆風と熱による直接的な外傷で約110,000人が死亡した。この数と比べればかなり少数(1000例未満)ではあるが,放射線誘発がんによる超過死亡がその後何年にもわたり起こっている。生存者の継続的な健康サーベイランスは,依然として放射線誘発がんのリスクを推定する上で最も重要な情報源の1つである。

個人の意図的な汚染の刑事事件がいくつか報告されているものの,テロリストの活動による集団の放射線被曝は起きていないが,懸念されている(放射能兵器も参照)。可能性のあるシナリオとして,放射性物質をまき散らして地域を汚染するための装置の使用がある(例,廃棄された放射線療法の線源または産業用線源に由来するセシウム137もしくはコバルト60)。従来の爆発物を使用する放射性物質拡散装置(RDD)は,ダーティボムと呼ばれる。別のテロリストのシナリオとして,無警戒の人を大量の放射線に被曝させるために隠した放射線源を使用すること,原子炉または放射性物質保管施設への攻撃,核兵器(例,簡易核爆弾[IND],盗まれた兵器)の爆発などがある。

表&コラム
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参考文献

  1. 1.United States Environmental Protection Agency (EPA).Radiation Sources and Doses.Accessed January 2, 2025.

  2. 2, Centers for Disease Control and Prevention (CDC).Radiation Emergencies: Radiation Thermometer.Accessed January 2, 2025.

  3. 3.United States Nuclear Regulatory Commission. Backgrounder on the Three Mile Island Accident.Accessed January 2, 2025.

  4. 4.International Atomic Energy Agency.The 1986 Chornobyl nuclear power plant accident.Accessed January 2, 2025.

  5. 5.World Nuclear Association.Fukushima Daiichi Accident.Accessed January 2, 2025.

放射線曝露および汚染の病態生理

電離放射線はDNA,RNA,およびタンパク質を直接損傷できる。しかしながら,これらの分子の損傷は,放射線が細胞内の水分子と相互作用を起こすことにより生成される反応性の高いフリーラジカルによって間接的に生じる場合が最も多い。

高線量の曝露では細胞死が起きる可能性があり,低線量では分子生物学的な内因性の修復機構,ホメオスタシス,および細胞増殖が妨げられることがある。これらや他の細胞成分の障害により,進行性の組織形成不全および萎縮が起き,最終的には線維化に至る可能性がある。しかしながら,多くの組織反応は炎症,慢性酸化ストレス,免疫反応のほか,脈管構造や細胞外基質の損傷などの複雑な事象にも依存していることから,細胞死だけでは多くの組織反応を説明できない。

一般に,皮膚や消化管などで生じる初期反応には,炎症反応のほかにも,組織中で機能する成熟細胞の供給源となる幹細胞/初期前駆細胞の死滅が関与している。

後期反応(例,肺,腎臓,および脳)には,組織および臓器内の複数の種類の細胞間での複雑かつ動的な相互作用が関与しており,具体的には免疫細胞の浸潤,サイトカインおよび成長因子の産生(しばしば長く持続する),環状カスケード,慢性酸化ストレスなどが関与している。

反応に影響を及ぼす因子

放射線に対する生物学的反応は,以下によって変動する:

細胞および組織はその放射線感受性が異なる。一般に,未分化の細胞および分裂速度の速い細胞(例,幹細胞,がん細胞)は,特に放射線に対する感受性が高い。放射線は抵抗性の高い成熟細胞よりも分裂中の幹細胞を優先して枯渇させるため,一般的に放射線曝露と明らかな放射線障害との間には潜伏期間がある。自然老化によりかなりの割合の成熟細胞が死滅し,幹細胞が失われるために置き換わらなくなるまで,傷害は発現しない。

細胞の感受性を,最も高いものから低いものへおよその降順で示す:

  • リンパ球

  • 生殖細胞

  • 増殖性の骨髄細胞

  • 腸上皮細胞

  • 上皮幹細胞

  • 肝細胞

  • 肺胞および胆管の上皮

  • 腎上皮細胞

  • 内皮細胞(胸膜および腹膜)

  • 結合組織細胞

  • 骨細胞

  • 筋細胞,脳細胞,および脊髄細胞

放射線障害の重症度は線量および曝露時間に依存する。高線量への単回の急速な曝露は,同じ線量を数週間または数カ月かけて曝露するよりも損傷が大きい。線量反応はまた,被曝した身体の割合にも依存する。4.5Gyを超える線量を短期間(数分から数時間)に全身に受けると,重篤な病態が確実であり,死亡する可能性があるが(1),数10Gyでも長期間かけて組織の小部分に照射される場合(例,がん治療のため)は,十分に耐えられることがある。

他の因子が放射線障害の感受性を増加させる可能性がある。小児は細胞増殖率が高いため,放射線障害をより受けやすい。小児では,脳,眼の水晶体,甲状腺などの一部の臓器および組織が,成人よりも放射線に対する感受性が高い。毛細血管拡張性運動失調症の遺伝子がホモ接合の人は,放射線障害に対する感受性が非常に高い。全身性リウマチ性疾患や糖尿病などの疾患が放射線障害に対する感受性を高める可能性がある。一部の薬剤および化学療法薬(例,アクチノマイシンD,ドキソルビシン,ブレオマイシン,フルオロウラシル,メトトレキサート)も放射線障害に対する感受性を高める可能性がある。一部の化学療法薬(例,ドキソルビシン,エトポシド,パクリタキセル,エピルビシン),抗菌薬(例,セフォテタン),スタチン系薬剤(例,シンバスタチン),およびハーブ製剤(例,セントジョーンズワート)は,過去に放射線照射を受けた部位において,曝露の数週間から数年後に炎症性皮膚反応を引き起こすことがある(放射線照射リコール反応[radiation recall])(2)。

発がん性,催奇形性,および遺伝性の影響

放射線誘発性の体細胞の遺伝子損傷は悪性化を引き起こすことがある。子宮内被曝は催奇形性につながることがあり,生殖細胞の損傷によって伝達可能な遺伝的欠陥の理論的な可能性が高まる。

長期間全身曝露すると成人のがん死亡の平均生涯リスクが増加すると考えられている(3)。

一般に受ける線量(すなわち,バックグラウンド放射線および一般的な画像検査[電離放射線のリスクを参照])によりがんが発生する可能性ははるかに低く,おそらくゼロである。

福島などの原子炉事故の近くにいた人の一般的な低線量被曝による放射線誘発がんのリスク増加の推定値は,はるかに高線量の被曝における既知の影響から小さな値へと外挿して求められている。得られた非常に小さな理論上の影響に大きな集団を乗じることにより,問題になると思われる追加のがん死亡数がどれ程かを得る。疫学研究で検出するには仮定されたリスク増加が小さすぎるため,このような外挿の妥当性は確認できず,また,この被曝によるがんリスクの増加がないという可能性は除外できない。

小児は将来の細胞分裂回数が多く,がんが発生する可能性のある期間が長いため,放射線誘発がんのリスクがより高くなる。1歳の小児に対する腹部CTでは,がんが発生する生涯絶対リスクが約0.1~0.2%増加すると推定される(4)。

一部の組織に吸収される放射性核種は,その部位で発がん性を示す可能性がある(例,チェルノブイリ原子炉事故によって,汚染されたミルクの摂取により大量の放射性ヨウ素が取り込まれ,その結果被曝した小児で超過の甲状腺癌が発生した)。

胎児は高線量による放射線障害に対する感受性が異常に高い。しかし,100mGy未満の線量では催奇形作用の可能性は低い。妊婦が受ける可能性が高い画像検査において一般的な線量の放射線による胎児のリスクは,先天異常の全リスク(出生時に2~6%観察される)および検査で考えられる診断上の便益と比較して非常に小さい。放射線への子宮内被曝によるがん発生リスクの増加は,小児の放射線被曝によるものと同程度であり,成人のリスクである5%/Svの約2~3倍である(5)。

受精後8~15週間の期間中に胎児が300mGy以上の放射線に曝露すると,知能低下につながる可能性がある(6)。

放射線曝露による潜在的なリスクから,放射線を用いる画像検査の必要性(または代替手段)を慎重に考慮すること,放射線曝露を体形および問われている臨床上の問題に合わせて最適化すること,ならびに適切な放射線防護手段の使用に注意を払うこと(特に小児および妊婦)が必須となる。

生殖細胞の損傷は,大量の放射線照射を受けた動物の子孫で先天異常を引き起こすことが示されている。しかし,日本人における原子爆弾生存者の子供や放射線療法を受けたがん生存者の子供など,放射線曝露したヒトの子供での遺伝的影響は認められていない。

病態生理に関する参考文献

  1. 1.Centers for Disease Control and Prevention (CDC).Acute Radiation Syndrome: Information for Clinicians.Accessed January 2, 2025.

  2. 2.Balter S, Hopewell JW, Miller DL, et al.Fluoroscopically guided interventional procedures: A review of radiation effects on patients' skin and hair. Radiology.254(2):326-341, 2010.doi:10.1148/radiol.2542082312

  3. 3.National Research Council of the National Academies, Committee to Assess Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation.Health risks from exposure to low levels of ionizing radiation: BEIR VII, Phase 2.Accessed January 2, 2025.

  4. 4.United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation.Sources, Effects and Risks of Ionizing Radiation.Scientific Annex B: Effects of radiation exposure of children.Accessed January 2, 2025.

  5. 5.National Council on Radiation Protection and Measurements (NCRP).Report No. 174 – Preconception and Prenatal Radiation Exposure: Health Effects and Protective Guidance (2013).Accessed January 2, 2025.

  6. 6.Moon EK, Wang W, Newman JS, Bayona-Molano Mdel P.Challenges in interventional radiology: the pregnant patient. Semin Intervent Radiol.2013;30(4):394-402.doi:10.1055/s-0033-1359734

放射線曝露および汚染の症状と徴候

臨床像は,被曝が全身(急性放射線症候群)に及ぶか,体のごく一部に限られるか(局所的な放射線障害)に依存する。

急性放射線症候群(ARS)

全身または体の大部分に高線量の透過性の放射線を受けた後に,いくつかの異なる症候群が発現する可能性がある:

  • 脳血管症候群

  • 消化管症候群

  • 造血器症候群

これらの症候群には3つの異なる段階がある:

  • 前駆期(被曝後数分~2日):嗜眠および消化管症状(悪心,食欲不振,嘔吐,下痢)の可能性がある。

  • 無症状の潜伏期(被曝後数時間~21日)

  • 顕性全身疾患期(被曝後数時間~60日以降):疾患は影響を受ける主な器官系により分類される。

どの症候群が生じるか,およびその重症度と進行速度は線量に依存する(の表を参照)。ある線量に対して,症状および時間経過はほぼ一致するため,被曝線量の推定に役立つ。

脳血管症候群は,全身被曝線量が極めて高い(30Gyを超える)場合によくみられる臨床像であり,常に死に至る。前駆症状は被曝後数分から1時間で出現する。潜伏期間はほとんどまたは全くない。振戦,痙攣発作,運動失調,および脳浮腫が発生し,数時間~1または2日以内に死亡する。

消化管症候群は,全身被曝線量約6~30Gyを受けた後の主要な臨床像である。前駆症状(しばしば顕著となる)が約1時間以内に出現し,2日以内に消失する。4~5日の潜伏期間中に,消化管粘膜細胞が死滅する。細胞死に続いて難治性の悪心,嘔吐,および下痢が現れ,これにより重症の脱水と電解質平衡異常,血漿量減少,および血管虚脱に至る。腸管の壊死も起こることがあり,腸穿孔,菌血症,および敗血症の素因となる。死亡することが多い。10Gyを超えて被曝した患者では脳血管症状がみられることがある(致死線量を示唆)。生存者には造血器症候群も生じる。

造血器症候群は,全身線量約1~6Gyを受けた後の主要な臨床像であり,全身性の汎血球減少がみられる。軽度の前駆症状が1~6時間後に始まり,24~48時間持続することがある。骨髄幹細胞が著しく減少するが,循環血中の成熟血液細胞はほとんど影響を受けない。循環リンパ球は例外であり,被曝後数時間から数日以内にリンパ球減少症が明らかになることがある。循環血中の細胞が老化により死滅し,十分な数が補充されなくなり汎血球減少に至る。したがって,1Gyの線量の被曝から最大4.5週までの潜伏期間中,造血障害が進行するが,患者は無症状である。好中球減少症(2~4週で最も顕著)および抗体産生の低下により様々な感染症のリスクが増加する。血小板減少症によって点状出血および粘膜出血が3~4週間以内に生じ,数カ月持続する場合がある。被曝前から存在していた赤血球の寿命は白血球および血小板より長いため,貧血は緩徐に発生する。生存者では,白血病を含む放射線誘発がんの発生率が高い。

表&コラム
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皮膚の放射線障害は,3Gyという低線量の急性曝露による皮膚および下部組織の損傷である(の表を参照)。皮膚の放射線障害は急性放射線症候群または局所被曝により起こることがあり,軽度で一過性の紅斑から壊死まで幅がある。遅発性の影響(被曝から6カ月以降)として,色素沈着および色素減少,進行性の線維化,びまん性の毛細血管拡張などがある。薄い萎縮した皮膚は軽度の機械的外傷により容易に損傷される。露出部の皮膚では有棘細胞癌のリスクが高い。特に,熱損傷の既往がなく,疼痛を伴う治癒しない皮膚熱傷を呈する患者では放射線曝露の可能性を考慮すべきである。

局所的放射線障害

ほぼ全ての臓器への照射で,急性と慢性の両方の有害作用がみられる可能性がある(の表を参照)。大半の患者において,そのような有害作用は放射線療法により生じる。その他の一般的な曝露源としては,安全対策がなされていない食品照射装置,放射線療法装置,X線回折装置,およびその他の高い線量率を発生する産業用または医療用の放射線源への意図しない接触などがある。また,特定のX線透視ガイド下で行われる介入手技における長時間のX線曝露でも皮膚の放射線障害が生じる可能性がある。放射線に誘発される疼痛または潰瘍は十分発生するのに数カ月または数年かかる場合がある。重度の皮膚の放射線障害がある患者には重度の疼痛があり,しばしば外科的介入が必要となる。

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放射線曝露および汚染の診断

  • 症状,重症度,および症状の潜伏期間

  • 連続的なリンパ球数および血清アミラーゼ値

診断は,被曝歴,症状および徴候,ならびに臨床検査による。症状の発現,経過,および重症度は,線量判定に役立つことがあるため,可能性の高い結果と関連させた患者のトリアージに役立つ。しかし,一部の前駆症状(例,悪心,嘔吐,下痢,振戦)は非特異的であり,放射線以外の原因を考慮すべきである。急性放射線症候群を引き起こすのに十分な線量を被曝していない多くの患者が同様の非特異的な症状を呈することがあり,特にテロリストの攻撃や原子炉事故の後で不安が大きい場合にその可能性が高い。

急性被曝後に白血球分画とリンパ球数の算出を含めた血算を行い,最初の放射線量および予後を推定するために,被曝から24,48,および72時間後に繰り返す(の表を参照)。身体的外傷(リンパ球を間質腔から血管に移行させリンパ球数を増加させることがある)によって線量とリンパ球数との関係が変化する可能性がある(1, 2)。このストレスに関連した増加は一過性であり,一般的には物理的な傷害後24~48時間以内に消失する。この一過性のリンパ球数増加によって,リンパ球数が減少するまで誤って楽観的な予後を示唆することがある。血算は,骨髄活性をモニタリングするために毎週,および臨床経過に基づき必要な場合に繰り返す。大量の放射線被曝では,24時間後から血清アミラーゼ値が線量に依存して上昇し始めるため,ベースライン時とその後の連日測定する。可能であれば,以下に挙げる他の臨床検査を行う:

  • C反応性タンパク(CRP)値:CRPは線量に応じて増加し,この値により最小限の被曝患者と大量被曝患者を識別できる可能性がある。

  • 血中シトルリン値:シトルリン値の低下は消化管損傷を示唆する。

  • 血中fms関連チロシンキナーゼ3(FLT-3)リガンド値:FLT-3は造血系損傷のマーカーである。

  • インターロイキン6(IL-6):この炎症性マーカーは高い放射線量で増加する。

  • 顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の定量検査:高い放射線量で値が増加する。

  • 過分散指数(over dispersion index)を用いる細胞遺伝学的検査:この検査は体の部分的な曝露の評価に用いる。

表&コラム
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放射能汚染

汚染が疑われる場合は,体外汚染の部位および程度を特定するために,窓の薄いGeiger-Mullerプローブを付けたサーベイメータ(ガイガーカウンター)を用いて全身を検査すべきである。さらに,可能性のある体内汚染を検出するため,鼻孔,耳,口腔,および創傷を湿らせたスワブでぬぐい,それらをカウンターで検査する。体内汚染が疑われる場合は,尿,便,および吐物も放射活性について検査すべきである。

診断に関する参考文献

  1. 1.Toft P, Tønnesen E, Helbo-Hansen HS, et al.Redistribution of granulocytes in patients after major surgical stress.APMIS.102(1):43-48, 1994.doi: 10.1111/j.1699-0463.1994.tb04843.x

  2. 2.DeRijk R, Michelson D, Karp B, et al.Exercise and circadian rhythm-induced variations in plasma cortisol differentially regulate interleukin-1 beta (IL-1 beta), IL-6, and tumor necrosis factor-alpha (TNF alpha) production in humans: high sensitivity of TNF alpha and resistance of IL-6.J Clin Endocrinol Metab.82(7):2182-2191, 1997.doi: 10.1210/jcem.82.7.4041

放射線曝露および汚染の治療

  • 最初に重度の外傷または生命を脅かす病状の治療

  • 医療専門職の放射線曝露および汚染の最小化

  • 体外汚染および体内汚染の治療

  • ときに特定の放射性核種に対する特定の処置

  • 免疫系の障害の予防および治療

  • 炎症反応の最小化

  • 支持療法

放射線被曝には物理的損傷(例,熱傷,爆風,転倒による)を伴う場合がある。合併する外傷は被曝に比べ直ちに生命を脅かすものであり,迅速に治療する必要がある(外傷患者へのアプローチ:評価と治療を参照)。重篤な損傷のある患者の外傷蘇生を除染より優先し,特殊な放射線処理の装置や人員を待って遅らせることがあってはならない。外傷管理においてルーチンに使用される標準の普遍的予防策(ユニバーサルプリコーション)により,救命救急チームを十分に防護する。

パール&ピットフォール

  • 合併する外傷は被曝に比べ直ちに生命を脅かすものであり,迅速に治療する必要がある。外傷管理においてルーチンに使用される標準の普遍的予防策(ユニバーサルプリコーション)により,救命救急チームを十分に防護する。

表&コラム
表&コラム

準備

病院は緊急事態への準備計画の一環として,放射性物質を含む有害物質で汚染された患者に対処するためのプロトコルを策定するとともに訓練を受けた人員を確保すべきである。規制当局および認定機関(例,米国では州政府の保健局またはJoint Commission)は,しばしばこうした計画の策定を義務づけている。

実用性があれば,施設の除染に役立てるため治療区域の表面をビニールシートで覆う。この準備は,決して医学的に安定化させる手技を行うよりも優先して行うべきではない。ゴミ容器(「注意,放射性物質」とラベルを貼る),検体容器,およびガイガーカウンターを直ちに使用できるようにしておくべきである。部屋または患者と接触した全ての備品(救急車の機材を含む)は,汚染していないことが確認されるまで隔離し続けるべきである。例外は多数の傷病者がいる状況であり,その場合はヘリコプター,救急車,外傷治療室ならびにX線,CT,および手術設備など,軽度に汚染された重要な設備は,速やかに可能な限り除染し,再稼働させるべきである。

患者の治療または搬送に関与する職員は,キャップ,マスク,ガウン,手袋,および靴カバーを着用し,標準予防策(スタンダードプリコーション)に従うべきである。使用した器具は,特別に印をつけた袋または容器に入れるべきである。線量計バッジをつけて被曝のモニタリングを行うべきである。被曝を最小限にするために職員を交替させてもよく,また妊娠している職員は治療区域から締め出すべきである。

汚染された患者の大半から受けると予想される放射線の線量率は低いため,典型的な患者の治療に当たる医療スタッフが職業上の限界である0.05Sv/年を超える線量を被曝する可能性は低い(1)。チェルノブイリ原子炉事故の放射線による傷病者の極端な例でも,病院で患者を治療した医療従事者の被曝は0.01Sv未満であった。いくつかの権威のある情報源からは,救命活動においては少なくとも0.5Gyまでの線量は容認できるリスクと考えられる可能性が示唆される。

汚染の同定

患者の放射能汚染が同定されれば,患者を指定された区域に速やかに隔離し(現実的な場合),除染し,放射線源を調査するため必要に応じて病院の放射線安全担当職員,公衆衛生の当局,危険物チーム,および法執行機関に知らせるべきである。

体外汚染は,放射性物質で汚染されていると推定される患者に適した放射線サーベイメータ(例,ガイガーカウンター)を用いてスキャンすることにより判定すべきである(2)。

体外除染

典型的な順序および優先事項は以下の通りである:

  • 衣類および体外の破片の除去

  • 無傷の皮膚の除染よりも先に創傷の除染

  • 最も汚染度の高い部分を最初に洗浄

  • 放射線サーベイメータを使用して除染の進展をモニタリング

  • 汚染部位がバックグラウンド放射線の2~3倍を下回るまで,または除染しても有意な減少がみられなくなるまで除染を続ける

衣服を注意深く脱がせて汚染の拡散を最小限に留め,ラベルを貼った容器に入れる。脱衣により約90%の体外汚染が除去される。異物は,放射線サーベイメータで確認するまでは汚染されているとみなすべきである。

無傷の皮膚よりも先に汚染された創傷を除染する;生理食塩水で洗浄し,手術用スポンジで愛護的にこする。何度も洗浄を試みた後に残留汚染がある場合は,創縁の最小限のデブリドマンを行う。創縁を越えるデブリドマンは不要である。しかし,埋もれた放射性の破片は放射線線量率が非常に高い可能性があるため,長い鉗子または同様のデバイスを用いて取り除き,鉛容器に入れるべきである。

汚染された皮膚および髪は,放射線サーベイメータの測定値が正常なバックグラウンド放射線の約2~3倍を下回る値を示すまで,または連続した洗浄により汚染レベルが有意に低下しなくなるまで,微温湯と中性洗剤で洗う。洗浄中は全ての創傷を覆い,放射性物質の侵入を防ぐ。こすり洗いはしっかり行ってよいが,皮膚に擦過傷を生じさせてはならない。指の爪および皮膚のひだには通常特別な注意が必要である。汚染が残る髪はハサミまたは電気バリカンで除去し,剃ることは避ける。発汗を誘発すること(例,汚染された手にゴム手袋をはめる)が皮膚の残留汚染の除去に役立つ可能性がある。

熱傷は,こすると損傷が重症化する可能性があるため,こするのではなく愛護的にすすぐ。引き続くドレッシング交換が残留汚染の除去に役立つ。

体外線源による照射を受けたが汚染されていない患者には,除染の必要はない。

体内除染

飲み込まれた放射性物質は,被曝直後であれば催吐または洗浄により速やかに除去すべきである。口腔汚染に対しては,生理食塩水または希釈した過酸化水素での頻回の含漱が適応となる。被曝した眼は,鼻涙管の汚染を避けるために,水または生理食塩水の流れを外側方向に向けて鼻から遠ざけるように除染すべきである。

より特異的な治療法を用いる緊急性および重要性は,放射性核種の種類および量,その化学的形態および代謝特性(例,溶解度,特定の標的器官に対する親和性),汚染経路(例,吸入,経口摂取,汚染された創傷),ならびに治療法の効果に依存する。体内汚染の治療の決定には,潜在的なリスクに関する知識が必要であり,専門家へのコンサルテーションが推奨される(例,Centers for Disease and Control and Prevention (CDC):Radiation Emergencies: Clinical Guidance and Resources for Professionals,米国のRadiation Emergency Assistance Center/Training Site [REAC/TS]International Atomic Energy Agency: Incident and Emergency Centre)。

体内からの放射性汚染物質の除去(体内除染[decorporation])に用いられている方法としては(3),以下のものがある:

  • 標的器官の飽和(例,ヨウ素の同位体に対してヨウ化カリウム[KI])(U.S. Department of Health and Human Services Radiation Emergency Medical Management:Guidance on Diagnosis and Treatment for Healthcare Providersを参照)

  • 侵入部位または体液中でのキレート化とその後の速やかな排出(例,アメリシウム,カリホルニウム,プルトニウム,およびイットリウムに対してジエチレントリアミン五酢酸[DTPA]のカルシウム塩または亜鉛塩)。

  • 同位体希釈による放射性核種の代謝サイクルの加速(例,トリチウムに対して水)

  • 腸管内腔での放射性核種の析出とその後の排便(例,ストロンチウム90に対してリン酸カルシウム溶液またはリン酸アルミニウム溶液の経口投与)

  • 消化管内でのイオン交換(例,セシウム137,ルビジウム82,タリウム201に対してプルシアンブルー)

核分裂生成物を環境中に放出する深刻な原子炉事故があると,多くの人が放射性ヨウ素に被曝する可能性があるため,経口投与のヨウ化カリウムを用いる体内除染が非常に詳細に研究されている(4)。ヨウ化カリウムは甲状腺にあるヨウ素の受容体を飽和させる。経口投与のヨウ化カリウムを用いる体内除染により,罹病の主な原因である放射性ヨウ素を甲状腺で取り込めないようにする。ヨウ化カリウムは最適な時点(被曝の1時間前)に投与すれば95%以上効果的である。しかし,有効性は時間経過により著しく低下する(被曝から2時間後の投与で約80%の有効性,被曝から24時間以降の投与で保護作用なし)。ヨウ化カリウムは,錠剤または過飽和溶液のいずれかで投与できる(投与量:成人および68kgを超える小児は130mg;3~18歳[68kg未満]は65mg;生後1~36カ月は32mg;生後1カ月未満は16mg)。この化合物は放射性ヨウ素による体内汚染にのみ効果的で,他の放射性元素による体内汚染では便益はない。体内除染に使用される他の薬剤の大半ははるかに効果が低く,線量を25~75%下げるに過ぎない。ヨウ化カリウムの禁忌は,ヨードアレルギーおよびヨード過敏症に関連する特定の皮膚疾患(例,疱疹状皮膚炎,蕁麻疹様血管炎)などである。

特異的な管理

必要に応じて支持療法を行い,これにはショックおよび低酸素症の管理ならびに疼痛および不安の緩和が含まれる。痙攣発作をコントロールするためのベンゾジアゼピン系薬剤(例,ロラゼパム),嘔吐をコントロールするための制吐薬(例,メトクロプラミド,プロクロルペラジン,オンダンセトロン),および下痢に対する経口止瀉薬(例,カオリン/ペクチン,ロペラミド)がしばしば必要となる。

脳血管症候群に特異的な治療法はない。例外なく死に至る;ケアは患者の快適性に的を絞るべきである。

消化管の諸症状は,積極的な輸液蘇生(fluid resuscitation)と電解質補給により治療する。静脈栄養を開始し,腸管安静を促進すべきである。発熱のある患者では,広域抗菌薬(例,フルオロキノロン系)を直ちに開始すべきである。激しい感染症による敗血症性ショックが依然として最も可能性の高い死因である。

造血器症候群の管理は,各種原因による骨髄低形成および汎血球減少症の治療と同様である。貧血および血小板減少を治療するために血液製剤を輸注し,好中球数が0.5 × 109/L未満(500/mm3未満)の場合には造血成長因子(顆粒球コロニー刺激因子および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)を投与すべきである。好中球減少および好中球減少性発熱を治療するために広域抗菌薬を投与すべきである(好中球減少症およびリンパ球減少症の治療を参照)(5)。好中球減少のある患者もまた逆隔離すべきである。4Gyを超える全身被曝線量では骨髄回復の見込みは少なく,造血成長因子をできる限り速やかに投与すべきである。フィルグラスチムは放射線による骨髄抑制の治療に使用できる。造血幹細胞移植の成功例は限られているが,7~10Gyを超える被曝では考慮すべきである。

サイトカインも役立つことがある(5)。推奨される薬剤および用量は以下の通りである:

  • 2Gyを超える量の放射線曝露が疑われるか確認された場合は,可及的速やかにフィルグラスチム(顆粒球コロニー刺激因子[G-CSF])を皮下投与

  • サルグラモスチム(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子[GM-CSF])を皮下投与

  • ペグフィルグラスチム(ペグ化G-CSF)を皮下投与

十分治癒しない放射線に誘発される疼痛または潰瘍は,皮膚移植または他の外科的手技により修復してもよい。

特定の疾患の徴候に対する定期的なモニタリング(例,白内障に対する眼科診察,甲状腺疾患に対する甲状腺機能検査)を除いて,特定の器官損傷またはがんに対する特異的なモニタリング,スクリーニング,または治療法はない。

治療に関する参考文献

  1. 1.Mettler FA, Upton A.C, Hendee W.2008.Medical Effects of Ionizing Radiation: 3rd Edition.United States.https://doi.org/10.1118/1.3021455

  2. 2.US Department of Health and Human Services.Radiation Emergency Medical Management: Guidance on Diagnosis and Treatment for Healthcare Providers.Accessed January 2, 2025.

  3. 3.US Department of Health and Human Services.Managing Internal Radiation Contamination.Accessed January 2, 2025.

  4. 4.Centers for Disease Control and Prevention (CDC).Radiation Emergencies; Potassium Iodide (KI).Accessed January 2, 2025.

  5. 5.Armed Forces Radiobiology Research Institute (AFRRI).Medical Management of Radiological Casualties Handbook.5th ed.Bethesda, MD: AFRRI; 2023.Accessed January 2, 2025.

放射線曝露および汚染の予後

治療を行わなかった場合,全身被曝のLD50/60(50%の患者が60日以内に死に至ると予想される線量)は約3Gyであり,6Gyを超える被曝はほぼ常に死に至る。死亡までの期間は線量が高いほど短い。脳血管症候群の患者は数時間から数日で,消化管症候群の患者は通常2日から数週間で死に至ることがある。造血器症候群の患者は,併発する感染症または大量出血により4~8週間以内に死亡することがある。

被曝量が6Gy未満の場合は,生存の可能性があり,それは総線量と反比例する。全身線量2Gy未満の被曝患者は,1カ月以内に完全に回復するはずであるが,長期的な続発症(例,がん)が発生することがある。

治療を行った場合,LD50/60は6Gyである。ときに,最大10Gyの曝露で生存する患者もいる。重大な併存症,損傷,および熱傷があると予後が悪化する。

放射線曝露および汚染の予防

被曝からの防護は以下により達成される:

  • 放射性物質による汚染を避ける

  • 曝露時間を極力短くする

  • 放射線源からの距離を最大にとる

  • 放射線源を遮蔽する

これらの原則は,放射線曝露を伴う産業事故やテロ事件だけでなく,医療用放射線曝露にも適用できる。

患者の放射線曝露および汚染の予防

放射線療法の施行中は,治療の対象ではないが対象の近くに位置する部位を,可能な限り鉛で遮蔽すべきである。しかしながら,診断用X線またはCTにおいて性腺の遮蔽をルーチンに行うことはもはや推奨されていない(1, 2)。遮蔽によって診断に重要な領域が覆い隠される可能性があり,診断目的の画像検査が妨害されて検査の繰り返しにつながり,意図せずして画像検査中により高い放射線曝露につながる可能性があることが確認されている。さらに,照射野に隣接する臓器への放射線曝露の主な原因は,照射野内の組織からのX線の内部散乱である(1, 3-5)。

医療従事者の放射線曝露および汚染の予防

日常的に放射線源に曝露する医療従事者は,曝露時間を極力短くし,放射線源からの距離を最大にとり,適切な遮蔽を着用する手順に従うべきである。

鉛エプロンまたは市販の透明シールドによる遮蔽は,診断的または介入的画像検査による低エネルギーの散乱X線への被曝を効果的に低減するが,このようなエプロンおよびシールドは,テロ事件で使用されるまたは原子力発電所の事故で放出される可能性の高い放射性核種によって生じる高エネルギーγ線の被曝の低減にはほとんど役に立たない。このような場合に被曝を最小限にできる方法は,標準予防策(スタンダードプリコーション)の適用,除染を受けること,積極的治療を行っていない場合は汚染患者から距離を保つことなどである。

放射線源の周囲で働く全てのスタッフは,職業上の最大許容線量(0.05Sv)の10%を超える曝露のリスクがある場合は線量計バッジをつけるべきである(6)。自動読み取り式の電子式線量計は,事故の間に受けた蓄積線量のモニタリングに役立つ。

公衆の対応

原子力発電所事故や意図的な放射線物質の放出による広域にわたる高レベル環境汚染後に生じる被曝は,以下のいずれかによって低減できる:

  • シェルターへの退避

  • 汚染区域からの避難

どの推奨に従うかは,以下のような多くの事象-特異的な変数に依存する:

  • 最初の放出からの経過時間

  • 放出が止まったか,続いているか

  • 気象条件

  • シェルターの利用可能性とその種類

  • 避難条件(例,交通,輸送手段の利用可能性)

公衆衛生当局が簡潔かつ一貫したメッセージを発出することが,不要なパニックを軽減し,低リスク者の救急外来受診を減少させ,それにより救急外来が対応困難になるのを防ぐのに役立つ可能性がある。実際に事象が発生する前に,このような情報伝達の計画を立てておくべきである。緊急の医学的問題がない人々の応急処置,除染,およびカウンセリングのために代替の場所を提供することで救急外来の需要を減少させる計画が推奨されている。

公衆衛生当局は,緊急警報通知システムによる現地公衆衛生当局の助言に従うよう,一般大衆に助言すべきである。疑わしい場合は,追加情報が得られるまで,所定のシェルターが最善の選択肢である。シェルターへの退避が推奨される場合は,地上または地下のコンクリート製または金属製構造物(例,地下室)の中央が最善である。発生した事象が核兵器の爆発である場合は,爆発後最初の数時間は有効なシェルターを見つけ次第直ちにその中に避難し,その後は地域の緊急対応当局の指示に従う。

予防薬

原子力発電所から16km(10マイル)以内の住民は,核分裂の副産物である放射性ヨウ素が発電所から放出された場合に備えて,ヨウ化カリウムの錠剤をすぐに使用できるようにしておくべきである。ヨウ化カリウムは甲状腺による放射性ヨウ素の取込みを防ぐのに役立つ(7)。この錠剤は,地域の薬局や一部の公衆衛生当局から入手できる。

化学療法および/または放射線療法を受ける患者では,ラジカル捕捉性のチオール化合物などの放射線防護薬剤を照射前または照射時に投与すると,死亡率が低減することが示されている。医療以外の放射線曝露(例,原子力発電所事故)における便益を実証するには,さらなる研究が必要である。

アミフォスチンは,強力な注射用放射線防護薬剤である。これは放射線療法を受ける患者の口腔乾燥症を予防する目的で臨床的に使用されている。有害作用として悪心・嘔吐,低血圧,血清カルシウム低下などがある。胎児がこの薬剤に曝露すると,先天異常が起きる可能性がある(8)。

粘膜皮膚上皮増殖因子であるパリフェルミン(palifermin)は,角化細胞増殖因子(KGF)と呼ばれる自然発生するヒトタンパク質を改変したもので,人工的に製造される(U.S. Food & Drug Administration: Paliferminを参照)。高用量の化学療法および放射線療法の後に,造血幹細胞移植を受けた患者では,重度の粘膜炎が発生する可能性を低下させ,粘膜炎の持続期間を短縮するために用いられる。パリフェルミン(palifermin)はヘパリンと相互作用を起こす可能性があるため,パリフェルミンの投与前後には静脈ラインを生理食塩水で洗浄すべきである。有害反応として発疹,膵炎,発熱,末梢浮腫などがある。胎児がこの薬剤に曝露すると,先天異常が起きる可能性がある。

予防に関する参考文献

  1. 1.National Council on Radiation Protection and Measurements.NCRP Recommendations for Ending Routine Gonadal Shielding During Abdominal and Pelvic Radiography.NCRP Statement No. 13.January 12, 2021.Accessed January 2, 2025.

  2. 2.National Council on Radiation Protection and Measurements.NCRP Recommendations for Ending Routine Gonadal Shielding During Abdominal and Pelvic Radiography: Companion to NCRP Statement No. 13.January 12, 2021.Accessed January 2, 2025.

  3. 3.American Association of Physicists in Medicine.Publications: Medical Physics Practice Guidelines.Accessed January 2, 2025.

  4. 4.American College of Radiology.Patient Gonadal and Fetal Shielding Education Module.Accessed January 2, 2025.

  5. 5.American College of Radiology.NCRP Recommends Against Routine Gonadal Shielding.Accessed January 2, 2025.

  6. 6.United States Code of Federal Regulations Title 10.Energy § 10.20.1502 Conditions requiring individual monitoring of external and internal occupational dose.Accessed January 2, 2025.

  7. 7.United States Code of Federal Regulations Title 10.Energy § 10.50.47 Emergency plans.Accessed January 2, 2025.

  8. 8.Singh VK, Seed TM.The efficacy and safety of amifostine for the acute radiation syndrome.Expert Opin Drug Saf 18(11):1077-1090, 2019.doi: 10.1080/14740338.2019.1666104

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