凍結を伴わない組織損傷

執筆者:Daniel F. Danzl, MD, University of Louisville School of Medicine
レビュー/改訂 2021年 3月
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    凍結を伴わない急性または慢性の組織損傷が,寒冷曝露により生じることがある。

    Frostnip

    最も軽度の寒冷障害がfrostnipである。病変部位は感覚がなく,腫脹して赤くなる。治療は復温であり,これにより疼痛およびそう痒が引き起こされる。まれに,寒冷に対する軽度の過敏性が数カ月から数年間持続するが,深層の組織への恒久的な損傷はみられない。

    浸水(塹壕)足

    湿潤を伴う低温への長時間の曝露は,浸水足(immersion foot)を引き起こしうる。通常は末梢神経と血管が損傷するが,重症例では筋肉および皮膚組織が損傷することがある。

    最初に,足部が青白く浮腫状となり,じっとりと冷たく無感覚である。患者がよく歩く場合には組織の浸軟が生じることがある。復温により充血,疼痛,そしてしばしば軽い接触への過敏性が起こり,これらは6~10週間持続しうる。皮膚が潰瘍化したり,黒色の痂皮が生じたりすることがある。自律神経機能障害が多くみられ,発汗の増加または減少,血管運動性変化,および温度変化への局所的過敏性を伴う。筋萎縮および異常感覚または感覚脱失が起き,慢性化する場合がある。

    浸水足(immersion foot)は,窮屈なブーツを履かず,足とブーツを乾燥した状態に保って,靴下を頻繁に取り替えることにより予防可能である。

    緊急治療として,37~40℃の温水に病変部位を浸して復温し,その後滅菌包帯で覆う。ニコチンは避けるべきである。慢性の神経障害症状は治療が困難である;アミトリプチリンを試してもよい(神経障害性疼痛:治療を参照)。

    凍瘡(しもやけ)

    凍結を引き起こすほどではない湿った冷気に繰り返し曝露することにより,限局性の紅斑,腫脹,疼痛,およびそう痒が生じる;機序は不明である。水疱または潰瘍が形成されることがある。凍瘡は指および前脛骨部に最も多く生じ,自然に治癒する。ときに,症状が再発する。若年女性が最もよく罹患し,その中にはレイノー現象や基礎疾患として自己免疫疾患(例,全身性エリテマトーデス,皮膚エリテマトーデス)を有している人もいる。

    凍瘡(しもやけ)
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    この凍瘡の写真では,中節骨に限局した紅斑がみられ,腫れているようにみえる。
    © Springer Science+Business Media
    足趾の凍瘡(しもやけ)
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    この画像には,凍結することなく寒冷曝露を繰り返した結果生じた足趾部の腫脹および水疱が写っている。
    Image courtesy of Karen McKoy, MD.

    内皮および神経の損傷は,寒冷に曝露すると,血管攣縮および交感神経の過剰反応を招く。ニフェジピン20mg,1日3回経口投与,リマプロスト20μg,1日3回経口投与(米国では使用不可),またはコルチコステロイド(経口投与[例,プレドニゾロン0.25mg/kg,1日2回]に加え外用コルチコステロイド)が,治療抵抗性の凍瘡に効果的なことがある。交感神経遮断薬およびニコチンの回避も助けになるかもしれない。

    総論の参考文献

    1. Dow J, Giesbrecht GG, Danzl DF, et al: Wilderness Medical Society Clinical Practice Guidelines for the Out-of-Hospital Evaluation and Treatment of Accidental Hypothermia: 2019 Update.Wilderness Environ Med 30(4S):S47-S69, 2019.doi: 10.1016/j.wem.2019.10.002.Epub 2019 Nov 15.PMID: 31740369.

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