マダニ咬傷

執筆者:Robert A. Barish, MD, MBA, University of Illinois at Chicago;
Thomas Arnold, MD, Department of Emergency Medicine, LSU Health Sciences Center Shreveport
レビュー/改訂 2020年 4月
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米国におけるマダニ咬傷の大部分はマダニ科の様々な種によるものであり,それらは除去されなければ数日間付着し吸血する。疾患の伝播が主な懸念であり,長期間付着した場合に可能性がより高くなる。( See also page ライム病 see heading on page リケッチアとその近縁微生物による感染症の概要,および see page バベシア症。)

マダニ咬傷はほとんどが春と夏に生じ,痛みはない。合併症を引き起こさず,疾患を伝播しない例が圧倒的多数である。しかしながら,しばしば咬傷部位に赤い丘疹を引き起こし,過敏性や肉芽腫性異物反応を誘発することがある。Ornithodoros coriaceus(パハロエヨダニ)というマダニによる咬傷は,局所の小水疱形成,破裂を伴う膿疱,潰瘍形成,および痂皮を引き起こし,局所の様々な程度の腫脹および痛みを伴う。その他のマダニによる咬傷でも,同様の反応が生じている。

診断

診断は臨床的評価および付着したマダニの同定による。

シカダニ

治療

  • 弯曲した無鉤鉗子によるマダニの除去

  • ときにドキシサイクリンの予防投与

マダニの除去は,皮膚の免疫反応および疾患伝播の可能性を減じるためできるだけ早く行うべきである。患者にまだマダニが付着しているのを認めた場合,マダニをその口器も全て含めて皮膚から引き抜く最良の方法は,先端が中型で弯曲した無鉤鉗子を用いることである。鉗子を皮膚に平行に構え,マダニの口器のできるだけ皮膚に近い部位をしっかりと把持する。患者の皮膚やマダニの虫体を穿刺しないよう注意すべきである。鉗子をゆっくりと着実に引き,ひねらずに,まっすぐ皮膚から引き抜く。先端が弯曲した鉗子が最も望ましいが,これは先端を皮膚に当てても持ち手が皮膚から十分離れており,把持しやすいからである。

皮膚に残存し容易に視認できるマダニ口器部分は,注意深く除去すべきである。しかし,口器部分の残存が疑わしい場合は,外科的な除去を試みても,口器部分が皮内に残って生じる損傷より大きな組織損傷を与える可能性がある;口器部分を皮膚内に残しても疾患伝播には影響なく,せいぜい刺激が長引く程度である。マダニをマッチで燃やす(患者の組織に損傷を与える可能性がある),ワセリンで覆う(効果がない)などの,その他のマダニ除去法は推奨されない。

マダニの除去後は消毒薬を塗布すべきである。局所の腫脹や退色があれば,経口抗ヒスタミン薬が役立つことがある。実用性があることはまれであるが,ダニが患者に付着した地域において,ダニ媒介疾患の病原因子を確認するため,実験分析用にマダニを保存する場合がある。

パハロエヨダニによる病変は洗浄し,1:20のブロー液に浸し,必要な場合はデブリドマンを行うべきである。重症例ではコルチコステロイドが役立つ。感染は潰瘍期によくみられるが,局所の消毒以上の処置を要することはほとんどない。

ライム病の予防

以下の基準全てを満たす場合は,ドキシサイクリンの単回投与(成人では200mg,8歳以上の小児では4mg/kgから最大200mg)を考慮すべきである:

  • 原因となるマダニはIxodes scapularisの成虫または若虫である。

  • マダニの充血の程度または曝露の発生時期の確実性からマダニの付着時間が36時間以上と推定される。

  • マダニの除去後72時間以内に予防を開始できる。

  • Borrelia burgdorferiによる局所感染の割合は20%以上である。

  • ドキシサイクリンは禁忌ではない。

一部の専門家は,除菌を確実にするため,より長いコースのドキシサイクリン投与(100mg,経口,1日2回,10~20日間)を推奨している。

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