咬傷を起こすダニは多種存在する。ツツガムシ類がおそらく最も一般的である。ツツガムシ類は,乾燥地域を除いて野外に広く生息するコダニの幼虫である;咬みついて皮膚から餌を取った後,落下する。米国外では,ツツガムシ類はOrientia tsutsugamushi( Professional.see page ツツガムシ病 ツツガムシ病 さらに読む )を保有している可能性がある。ツツガムシ類は皮膚に穿孔しないが,体長が小さいので皮膚表面にいても容易に見つからない。
皮膚を咬み皮膚に潜り込む一般的なダニの種には, 疥癬 疥癬 疥癬は,ダニの一種である疥癬虫(ヒゼンダニ[Sarcoptes scabiei])による皮膚感染症である。疥癬では,激しいそう痒を伴う病変が生じ,指趾間,手関節,腰部,および性器部に紅色丘疹と疥癬トンネルが形成される。診断は診察と皮膚擦過物の検査に基づく。治療は抗疥癬薬の外用によるが,ときにイベルメクチンの経口剤も使用される。 疥癬は,ダニの一種である疥癬虫(ヒゼンダニ[Sarcoptes... さらに読む の原因となるヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)および疥癬様皮膚炎(ときに毛包虫症と呼ばれる)の原因となるニキビダニ類(Demodex)がある。
ときにヒトを刺咬するが通常は鳥類,齧歯類,またはペットの外部寄生虫であるダニ類や,植物性素材または貯蔵された食品・飼料に関連するダニ類によって皮膚炎が引き起こされる。
鳥ダニが,生きた家禽やペットの鳥を世話するヒトや,家に鳥の巣があるヒトを咬む場合がある。
ネコ,イヌ(特に仔犬),およびウサギ由来の齧歯類ダニがヒトを咬む場合がある。
養豚場やペットのブタ由来のブタ疥癬ダニ(S. scabiei var suis)もヒトを咬む場合がある。
シラミダニ(Pyemotes tritici)はしばしば種子,わら,干し草などの植物性素材に関連する;シラミダニはこのような素材の中にいるまたはいたことがある体の軟らかい昆虫の寄生虫である。これらのダニ類がダニが群生している物を扱う人をしばしば咬む。穀物倉庫の労働者,牧草の種子や干し草を扱う人,乾燥植物のアレンジメントを作る人が最もリスクが高い。
貯蔵穀物製品,チーズ,およびその他の食品に関連するダニのいくつかの種が, アレルギー性皮膚炎 接触皮膚炎 接触皮膚炎は,刺激物(刺激性接触皮膚炎)またはアレルゲン(アレルギー性接触皮膚炎)との直接接触によって皮膚の炎症が生じる疾患である。症状としては,そう痒のほか,ときに灼熱痛などがみられる。皮膚の変化としては,紅斑,鱗屑,皮膚の腫脹のほか,ときに水疱形成や潰瘍形成などがみられる。局在は接触部位に依存する。診断には曝露歴と診察所見のほか,ときにパッチテストの結果も用いられる。治療法としては,コルチコステロイドの外用,止痒薬,刺激物およびアレ... さらに読む やそう痒症を引き起こす。これらのダニはヒトを咬むことはないが,ヒトがダニやダニの老廃物のアレルゲンに対して感作されるため,アレルギー性皮膚炎を引き起こす。
チリダニはヒトを咬むことはないが,枕およびマットレスの中や床(特にカーペット)の上に剥落した皮膚細胞を餌とする。多数の人に,チリダニの外骨格や糞に存在するアレルゲンに対する肺の過敏性が発現するため,チリダニは重要である。
症状と徴候
症状と徴候咬傷の大部分が,何らかのそう痒性皮膚炎を引き起こす;ツツガムシ類の咬傷によるそう痒は特に激しい。
診断
臨床的評価
皮膚に潜り込まないダニ咬傷の診断は,患者の病歴(例,生活環境,労働環境,娯楽環境)および身体診察に基づき推定する。ダニは刺咬した後落下し,通常は皮膚反応が遅れて生じ,ほとんどの患者が咬まれて数日後に初めて医師の助けを求めるので,ダニ自体が見つかることはまれである。通常,異なるコダニによって生じた病変は区別できず,外見上は他の皮膚病(例,その他の昆虫刺咬, 接触皮膚炎 接触皮膚炎 接触皮膚炎は,刺激物(刺激性接触皮膚炎)またはアレルゲン(アレルギー性接触皮膚炎)との直接接触によって皮膚の炎症が生じる疾患である。症状としては,そう痒のほか,ときに灼熱痛などがみられる。皮膚の変化としては,紅斑,鱗屑,皮膚の腫脹のほか,ときに水疱形成や潰瘍形成などがみられる。局在は接触部位に依存する。診断には曝露歴と診察所見のほか,ときにパッチテストの結果も用いられる。治療法としては,コルチコステロイドの外用,止痒薬,刺激物およびアレ... さらに読む , 毛包炎 毛包炎 毛包炎とは,毛包の感染症である。診断は臨床的に行う。治療は外用クリンダマイシンによる。 ( 皮膚細菌感染症の概要も参照のこと。) 毛包炎の病因ははっきりしない場合が多いが,発汗,外傷,摩擦,および皮膚の被覆が感染を増悪させることが知られている。細菌性毛包炎の原因菌は通常,黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であるが,ときに緑膿菌(Pseudomonas... さらに読む
)に類似することがある。
皮膚に潜るダニの診断は,患者の病歴と皮膚病変の疥癬様のパターンに基づいて推定する。診断が明確でないか,または治療が効果的でない場合は,皮膚生検によって確定診断が可能になる。
治療
外用コルチコステロイドまたは経口抗ヒスタミン薬
皮膚に潜り込むダニ類に対する,ペルメトリンなどの抗菌薬療法
皮膚に潜り込まないダニ咬傷の治療は対症療法による。外用コルチコステロイドまたは経口抗ヒスタミン薬を必要に応じて使用し,過敏反応が消失するまでそう痒をコントロールする。可能性のあるダニの発生源について徹底的に話し合うことで,医師は患者がコダニに繰り返し曝露しないよう支援できる。ニキビダニ(Demodex)による咬傷は獣医師のコンサルテーションが必要となる。
要点
ヒトを刺咬するダニ類には,ツツガムシ類(目に見えない)のほか,鳥類,齧歯類,またはペットの外部寄生虫であるダニや,植物性素材または貯蔵された食品・飼料に関連するダニ類などがある。
ヒトを刺咬し,皮膚に潜り込むダニ類には,疥癬を引き起こすヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)および疥癬様皮膚炎を引き起こすニキビダニ(Demodex)が含まれる。
ヒトを刺咬するダニ類はそう痒性皮膚炎を引き起こす。
病歴,および皮膚に潜り込むダニ類に対して皮膚病変の疥癬様パターンから診断を行う。
症状に対する治療(例,そう痒に対して外用コルチコステロイドまたは経口抗ヒスタミン薬)を行うとともに,皮膚に潜り込むダニ類の刺咬を抗菌薬療法で治療する。